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入院の日

手術──辛く長い一夜 その1

手術──辛く長い一夜 その2

“術後ハイ”になる入院生活

とりあえず退院しちゃおう

雑踏が怖い、満員電車が怖い

おっぱいが2倍に腫れてきた!?

ああ、自分の場所に帰ってきたんだ

病理結果に打ちのめされる

感染した!!!!

どんどん変な色と形になってくる

いつまで足踏みしてたらいいのだろう

一歩進んで二歩戻る

二度目の手術は日帰りで

今度こそよくなっていくといいなあ

4ヵ月遅れの再建スタート

どうしてまた腫れてくるの!?

再建は諦めなくちゃならないのかな

「なんとかしてやれなくてごめんな」

三度目は一番悲しい手術だった

痛みより痒みの方がつらいなんて

醜い瘢痕拘縮

自家組織での再建を決意する

前を向いて歩こう


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入院の日

2011年9月6日。目覚めたのは朝の4時だった。お風呂を沸かし、明日切除されてしまう右乳房を掌で丁寧に洗った。細かく泡立てた石鹸の泡で慈しむように包み込むように。この中には悪いものが詰まってるんだ、それを取り除いてもらうんだ、そして中身がホリボテでも見た目は元に近く作ってもらえるんだ、だから大丈夫! 何度も自分に言い聞かせる。

それから、二つ揃った胸の最後の写真を何枚か撮った。S先生が撮ったのはサインペンの線がぐりぐり書かれていたからね。やっぱり写真に残しておきたかったのと、これから再建に至る道のりを逐一記録しておきたかったから。

8時半頃に友人のKちゃんが車で迎えに来てくれた。彼女には手術当日に母を連れて来て一緒に立ち会ってもらうことをお願いしたのだ。私は今日はまだピンピンしているから一人で電車で病院に行けるのだが、せっかくの好意なので甘えることにした。

一階の総合受付で入院手続きをし、いったん乳腺センターの受付に立ち寄る。診察があるわけではなく、患者がきちんと来たかどうかの確認後、乳腺センターのスタッフが病棟まで連れて行ってくれるらしい。相変わらず今日も待合室は外来患者で溢れていて、20分ほど待たされた。マイクを通して外来患者さんを呼ぶY先生の声が聞こえる。あ、先生、元気そう……。

病室は最上階の10階だった。M病院は東京タワー近くに立地しているのだが、病室の窓から展望出来るのは個室だけだと思ってた。私は差額ベッド代のかからない4人部屋だから、窓から見える風景なんて期待はしていなかったのだが、大きな全面窓からは街並が眼下に180度広がり正面には東京タワーが悠然と屹立していた。遠くスカイツリーのシルエットも見える。その上、私のベッドは窓際だ。ああ、この眺望はなんだかとっても嬉しい。白い壁と白いカーテンに囲まれた“いかにも病室”に押し込まれているよりは快復が早まるような気がする。
Kちゃんは昼食のお茶が配られ始めるまでいてくれた。

手術前日の午後は何もすることがなくて退屈だ。検温や計測も済んだし、もろもろの書類書きも終わったし、売店もくるっと物色してみたし、午前も午後も外来診察のY先生は夜になるまで病室には来られないだろうし。文庫本を6冊も持って来ていたのだが、とっとと1冊を読み終えてしまった。入院中に足りるかなあ?などとちょっと不安になる活字中毒な私。だけど読書でもしてないとついつい余計なことを考えてしまいそうなのだもの。
明日の手術がPMオンコール(午後の手術だが、手術室が空き次第呼ばれるので開始時間は確定出来ない)だとナースが告げに来たのは夕方に近かった。この病院は規模の割に診療科の種類が多く、手術室のやりくりが大変なようだった。午後開始ならKちゃんたちに来てもらうのはお昼直前くらいでいいだろうから、うんと早起きしてもらう必要はない。

夕食後、病棟の浴室で入浴する。自宅でも今朝してきたことだけど、丁寧に髪と全身を洗って、ゆっくりと手足を伸ばして浴槽に浸かった。術後しばらくはお預けになるだろうからね。
入浴を終えたタイミングでちょうど乳腺センターの先生たちの回診だった。びしょびしょの髪を拭きながら私が病室に戻ってくると、空のベッド周りでY先生が「あれぇ? どこ行ったぁ?」と言っているところだった。うわっ、私、あまりにも湯上がり直後すぎ! 先生、もう5分遅く来てくれればいいのに。
その時Y先生がどういう言葉をかけてくれたのか、私は覚えていない。先生の笑顔は穏やかで、同行した先生たち(針生検してくれた若先生や傷チェックしてくれた女医さん含む)がそれぞれ何か言葉をかけてくれて、その場の雰囲気は脳裏に浮かぶのだが、言葉だけを覚えていない。

回診が終わってから消灯時間まで同室のSさんと少しお喋りをした。4人部屋だが今晩は私と彼女の2人だけなのだ。昨日手術だったという彼女は、私が入院して来た午前中はまだぐったりしていたので、簡単な挨拶しかしていなかったのだ。Sさんは私より一回り年上で、同じ乳癌患者。15年前にY先生の執刀で全摘し、ずっと経過観察と定期検診をしていたのだが、今年になって反対側に乳癌が見つかって再び全摘になったとのこと。その間Y先生は病院を変わっているが、Sさんも先生について移ってきたという。15年経っての再発というのもこの病気の怖いところだが、15年間同じ先生にずっと診てもらって再び執刀してもらえるということもすごいことだなあと思った。
「前の時はまだ片っぽ残ってるからいいやって思えたんだけど。両方なくなっちゃったのはとっても悲しいわあ……」そういうものなのかな……

今朝は4時起きしてしまったというのに、一向に眠くならなかった。やっぱり緊張しているんだろうか。しばらく悶々としていたが、諦めて起き上がり窓辺に腰掛けて夜景を眺めていた。ずいぶん長いことそうしていた。

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