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入院の日

手術──辛く長い一夜 その1

手術──辛く長い一夜 その2

“術後ハイ”になる入院生活

とりあえず退院しちゃおう

雑踏が怖い、満員電車が怖い

おっぱいが2倍に腫れてきた!?

ああ、自分の場所に帰ってきたんだ

病理結果に打ちのめされる

感染した!!!!

どんどん変な色と形になってくる

いつまで足踏みしてたらいいのだろう

一歩進んで二歩戻る

二度目の手術は日帰りで

今度こそよくなっていくといいなあ

4ヵ月遅れの再建スタート

どうしてまた腫れてくるの!?

再建は諦めなくちゃならないのかな

「なんとかしてやれなくてごめんな」

三度目は一番悲しい手術だった

痛みより痒みの方がつらいなんて

醜い瘢痕拘縮

自家組織での再建を決意する

前を向いて歩こう


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二度目の手術は日帰りで

2011年12月14日。今日は乳頭乳輪切除の手術である。サインと捺印をして持参した手術承諾書には「乳癌術後 乳頭内癌遺残疑い」とある。同意書を書きながらの説明時、Y先生は「手術に伴う危険性」の欄には大きな字で「感染症」と書いた。「んー、あと何だろうな……」と呟きながらその後には走り書きのような文字で「その他予期せぬ合併症」と十把一絡げ。
「とにかく私は感染症が要注意!ってことですね?」私の言葉にY先生は笑顔で頷いた。

手術予定時刻は今回もPMオンコールで、午後ではあるけど開始時間は確定できないとのことだった。多分1時か1時半くらいだろうけど手術室の空き次第では12時くらいからというのもあり得るので、11時から11時半くらいまでには来て欲しいと言われていた。
局所麻酔での手術なので、朝ご飯は普通に……いやむしろお昼抜きになる分までモリモリ食べてきた。水分もいっぱい取った方がいいというので、バッグにはミネラルウォーターのボトルも2本入れてきた。手術前には気持ちを落ち着けておきたかったので、早めに11時5分前に到着。いつもの外来受診と同じ手順で一階の受付機で診察券を通してから乳腺センターの受付に行く。水曜日は乳腺の手術日に充てられているので予約外来はなく、緊急の再診患者を先生たちが交替制で診ているらしかった。だから、いつもはてんこ盛りで患者が溢れている待合室には誰もいない。

まず検温と血圧測定をして手術を受けられる状態かチェックされ、あとはじっと待つだけだ。2時間くらいの待ちを覚悟して文庫本を広げたら、ほんの2〜3ページ読んだか読まないかのうちに「今、Y先生と手術室に確認したら、早めに一室空いたんで11時半から始めちゃいましょう」と言われた。手術に向けて徐々に心の準備をしていこうと思ったのに、慌ただしくバタバタと手術室に連れて行かれる。

入院中の手術の時は病室で準備万端整え、家族の付き添いつきで、病棟ナースに車椅子で連れて行かれたのに、今回は着てきた服のままだ。受付で迎えてくれる手術室のスタッフも一人きり。半畳もない更衣室で手術着に着替え、荷物は備えつけのロッカーに。まるでこれから受けるのは単なる検査で手術なんかではないようなお手軽な感じである。
連れて行かれた手術室は一番小さな部屋だそうで、スチールの戸棚などが並んでいたりして、雰囲気としてはなんだか学校の保健室みたい。オペ介助のナースも一人きりのようだ。全身麻酔手術と局所麻酔の日帰り手術ってこんなに違うものなの?
手術台によじ登って待ってるとほどなくY先生が「はい、おはよう〜〜〜〜。よろしくね〜〜」とやって来た。本当にY先生とナースと私と3人きり。
「ねえ、先生。私、手持ち無沙汰だからいろいろべらべら喋っちゃうかもしれません。うるさい黙れって言われれば黙りますけど?」と聞いてみると
「アハハ〜。喋ってても黙っててもどっちでもいいよ〜。どうせ45分とかそこらのことだから」Y先生が気難しい先生でなくてホントによかった。

前回の手術は意識がない間に終わってしまったが、今回は一部始終まるわかりである。怖いことは怖いけど、おもしろくもあった。まず、イソジン液を乳房に念入りに塗られ、私のおっぱいは真っ茶色になった。目の前に細い鉄棒が渡されて目隠しの布がクリップで留められる。それからいよいよ麻酔だが、やっぱりキシロカインのアンペア1本では効きが悪く、もう1本追加してもらった。
レーザーメスで切開が始まると、チリチリという音がして肉の焼ける匂いと細く白い煙が立ちのぼったのでびっくりした。
「先生! 焦げる匂いがするッ! 煙も出てるッ!」
「ああ、そうか。珍しいかあ。僕なんかいつものことで気に留めたことないからなあ」先生はのんびりした口調で笑った。
途中で午前中の診察を終えた乳腺センターの先生が手伝いに来てくれた。ちょうど乳頭乳輪の切除が終わったあたりなのだが、そろそろわずかに痛みを感じ始めた。
「ちょっと、痛くなってきた……かも。あ、痛ッ、痛ああああい」
「あっ、ごめん! 今深いところ切ったから。麻酔追加追加」この追加の麻酔注射がすさまじく痛かったのだ。これまでの人生で一番痛い注射だった。
「痛いいいいいいいいい!」絶叫してしまった。
「ああああ、ごめんごめんごめん、これ麻酔だから! すぐ効いてくるから!」

エキスパンダーは胸筋の下に挿入してあるので、かなり狭くきつい部分から出し入れすることになる。
「うーん、狭いよなあ。きついぞお、これは」Y先生はかなりの力でぎゅうぎゅう押したり引っぱったり、思わず私まで力んでしまう。外科手術って相当荒っぽい。あまりぎゅうぎゅう力をこめるものだから手術台ごとユサユサと揺れ、目隠しに下げられた布がズレてしまった。手術台に傾斜をつけて上半身を若干起こしてあるので、視線をチラリと下におろすと……術野が見えているではないの。意外に「あれぇ……?」という感じだった。ぱっくり開いた胸の中身を正面から見せられたらもっと怖かったと思うが。
「……先生、あの……見えてます」
「え?」
「あの、手術してるとこ」
「あ、そっかそっか」Y先生は布を直してくれたが、この見えてます発言はいたくウケたようだった。
「『見えてます』って……ハハハ。普通あんまり言わないよね。結構、度胸すわってる?」
「そういうわけでもないですけど。でも初体験ですし、こういう状況」
手術の一部始終の録画などあったら観てみたいという気はするが、それは後日のことでいい。さすがにリアルタイムで見るのは嫌だな……。

エキスパンダーを取り出した乳房内部は文字通り“洗われ”た。しつこいようだが、外科手術って相当荒っぽい。管突っ込んで生理食塩水じゃぶじゃぶ、切開した部分から指突っ込んで引っぱりながら細部まで洗う洗う洗う、バキュームのようなものでじゅじゅじゅじゅじゅーっと吸い込む、その繰り返し。痛みはないのに皮膚をびよんびよんと指で引っぱって押し広げる感触だけがわかって、それがとても気持ち悪い。とにかく盛大にじゃばじゃばするものだから背中も腰もびしょびしょだ。ナースの判断で手術台に上がる際に術着は脱いでおいたのだが、ショーツは穿いたままである。
「先生。パンツびしょびしょなんだけど」
「僕も靴下びしょびしょだあ」
「あの、先生。私、パンツの替えなんて持ってきてないですけど」
乳房の手術をするのにショーツがずぶ濡れになるなんて誰が想像するだろうか。

そうやって徹底的に洗った後、別室で手術していたS先生にちょっと来てもらってエキスパンダー再挿入の位置を確認してもらった。今度は胸筋の下にねじ込む感じである。ホント、手術って繊細でいて大胆なものなのね……。45分くらいで終わるとのことだったが、結局1時間25分もかかってしまった。後半はY先生とTVドラマの話とか、焼き肉の部位はどこが好きなんて雑談をべらべらしつつ、会話の雰囲気だけはなごやかなムードなのであった。さっきのような超激痛は金輪際ご免蒙りたいので、ちょっとでも麻酔が切れてきたと感じるとどんどん申告した。トータルで4〜5本くらい足してもらったと思う。
Y先生はその日もう一件手術があるそうで、縫合が終わった段階で私のいる部屋から去って行った。

迎えに来てくれた乳腺センターのナースと一緒に戻り、点滴ルームで抗生物質の点滴を受けて経口の抗生剤と痛み止めを処方してもらい、30分ほど休憩してから帰ることにした。外来患者のいない点滴ルームは私だけのためにわざわざ暖房を入れてくれて至極快適だったのだが、支払いをしに一階ロビーまで降りて行くと、精算を待つ他科の外来患者たちが溢れていて、ほとんど別世界だった。
私は一分一秒でも早く家に帰って休みたいというのに、精算書が出てくるまで30分以上も待たされた。今日の手術の内容が保険点数的にどういうカテゴリーに入るか確かめたかったらしいのだが、次の手術に入ってしまったY先生に連絡が取れないのでちょっと待ってくれと言うのだ。待たされているうちに麻酔が完全に切れて傷の痛みが耐えがたくなり、痛み止めの処方薬だけでも先に出してもらえないか受付に泣きついた。結局手術中のY先生には連絡が取れず、45分も待たされたあげく、使用薬剤や処方箋料の支払いのみでいわゆる手術の手技料に関しては後日別精算ということになった。だったらこんなに待たせないで始めからそうして欲しかった。もう一刻も早く家に帰りたい。お腹も空いた。煮込みうどんとか卵雑炊とか、そういうもの食べて早く眠りたい。

こういう時に限って、いつも正面玄関の車寄せで客待ちしているタクシーが1台もいない。よろよろしながら道路まで出て流しのタクシーを拾って乗り込んだものの、夕方の渋滞に巻き込まれ、とどめに途中で事故渋滞にまで遭遇した。何かの罰ゲームかと思うほどにしんどかった。

ちなみに支払い明細書の使用薬剤内訳には生理食塩水3リットルとあった。そんなにざぶざぶ盛大に使ったのか……

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