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入院の日

手術──辛く長い一夜 その1

手術──辛く長い一夜 その2

“術後ハイ”になる入院生活

とりあえず退院しちゃおう

雑踏が怖い、満員電車が怖い

おっぱいが2倍に腫れてきた!?

ああ、自分の場所に帰ってきたんだ

病理結果に打ちのめされる

感染した!!!!

どんどん変な色と形になってくる

いつまで足踏みしてたらいいのだろう

一歩進んで二歩戻る

二度目の手術は日帰りで

今度こそよくなっていくといいなあ

4ヵ月遅れの再建スタート

どうしてまた腫れてくるの!?

再建は諦めなくちゃならないのかな

「なんとかしてやれなくてごめんな」

三度目は一番悲しい手術だった

痛みより痒みの方がつらいなんて

醜い瘢痕拘縮

自家組織での再建を決意する

前を向いて歩こう


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三度目は一番悲しい手術だった

GW直前の4月26日に入院。手術前夜のこの日はとどめの免疫大暴走で、紅斑があちこちに浮いて掌がむちむちに赤く腫れ、微熱まで出る始末だった。むちむちの掌は痛痒くて眠れないほどで、ナースがガーゼに包んだ氷の固まりを握らせてくれた。氷の冷たさは1時間程度しか保たず、夜中に何度も彼女たちの手を煩わせて氷を取り替えてもらった。

ほとんど眠れないまま手術の朝を迎えた。今日の手術も午後からだ。
10時ちょっと前くらいに点滴を入れてもらい、後はじっと手術を待つのみなのだが、もうお腹が空いている。手術も三度目、それも半年ちょっとの間に立て続けとなると、もういちいち待ち時間にドキドキしたりしない。こんなふうに慣れちゃうのもどうしたものかなあ……。今日は立ち会いの家族もつけていないので、手術開始までの時間をずっと読書しながら過ごす。手術開始の1時間くらい前に手術着姿のS先生が病室に顔を出してくれた。

今回も手術室に向かう時には車椅子に乗せられて行く。点滴台を支えながら車椅子というのは、ちょっとコツもいるしあまり乗り心地もよくなくて、自分の足で歩いた方がよっぽど楽なのだけど、かつて途中で転倒して怪我した患者さんがいたとかで、車椅子で連れて行くのが決まりになったのだそうだ。

最初の乳癌手術ではオペ室にはY先生の他、麻酔医の先生とさらに4〜5人のスタッフがいて、よってたかって手術してくれた感じだった。
二度目の追加切除手術ではY先生とオペ介助ナースの2人きりで始まり、途中で乳腺センターの先生が1人手伝いに入ってくれた。
今日は一応全身麻酔なので、オペ室に入ると麻酔科の先生と他に準備をしている人が2〜3人いた。キャップとマスクをしているため顔や年齢は無論のこと性別すらわからない。
「S先生は……まだですか?」私がなんとなく口にすると
「ここにいるよ〜〜〜」とS先生の声。スタッフが器具を準備点検しているのかと思ったら、なんと先生自身だったのだ。
麻酔医の先生やオペ室スタッフがS先生と今日の段取りなどを打ち合わせ始める。全身麻酔といっても1時間程度の簡単な手術とのことだが、傍らで聞いていた私が
「簡単って言うけどさぁ……手術は手術だし……痛い思いするのは私だし……」などとブチブチ呟いていると
「おお! そうだよなあ! ワタシは可哀想だよなあ、切られちゃうんだもんなあ!」S先生は大らかに笑いながら私の両肩をがっしりつかんで前後にがしがし揺さぶった。先生の意外にお茶目な行動に私はなんだかすっかり拍子抜けしてしまい、自分でも悲しいのかつらいのかよくわからないまま手術台に上り、あっという間に心電図の電極やら血圧計やらを取りつけられ、点滴から麻酔薬が入り始めるなり瞬時に“落ち”た。

そして私の体感感覚としては数秒後、「終わりましたよ〜」の声に瞬時に麻酔から覚めた。私は局所麻酔のキシロカインの効きは悪いようだが、全身麻酔の場合は電気のスイッチのオンオフのようにパッと落ちてパッと覚める。
「終わったよ〜〜。今エキスパンダー洗ってるからね〜」S先生の声がした。そう、私は取り出したエキスパンダーを処分しないでくれと頼んでおいたのだ。だって、高いお金出して買ったんだから私のものなんだから! 十月十日とは言わないけれど7ヶ月半も大事大事に胸の中に入れておいたのだから、記念に取っておきたいんです! シリコンインプラントに入れ替えて用済みになるはずが、中途で役立たず終わったのはめちゃくちゃ腹立たしいから、いったん壁にでも投げつけて足でバンバン踏みつけてやりたいの! 術前検査の日、手術説明を受けている時の私の言葉にS先生は「えー。可哀想だから踏まないであげてよ〜」と大笑いしていた。

私の要望通りS先生は取り出したエキスパンダーをバットの中でちゃぷちゃぷと洗っているところだった。「えー、そんな。先生自ら洗っていただかなくても。もう消毒とか関係ないんだから私が後で自分で洗いますよぉ」
「いやいやいや、ついでだから。じゃ、はい。渡しとくね」S先生はビニール袋に入れたエキスパンダーを私のお腹の上にポンと置いた。えっ、そんなところに置かれても……。
「あっ、私エキスパンダーの実物見たことないんです。見てもいい?」と麻酔医の先生。毎日手術室で働いていても、麻酔医はモニタとにらめっこで術野を見ることは少ないものね。

今回は短時間の手術のため尿道カテーテルも入っていないので、ストレッチャーではなく車椅子に乗せられて病室へ戻った。ベッドの上にも自分で上がる。術後の痛みは過去2回に比べてびっくりするほど弱い。一晩中眠れなかった初回の手術は無論のこと、2回目の手術は日帰りだったがエキスパンダーの再挿入があったので、もっともっと痛かった。そーっと腕をのばしてベッドサイドの引出しから携帯電話を取り出して、布団の中でこっそり「手術終わったよメール」を数人の友人に打てるほどに、私は手術直後とは思えない状態だった。

それでも一応全身麻酔手術の術後なわけだから、飲水は明朝までお預けだし、痛み止めと抗生剤の点滴は持続的に入れられている。塞栓防止の弾性ストッキングは着用したままだが、鬱陶しいフットポンプは夜中に外してもらえた。介助つきだけど自分の足で歩いてトイレにも行けるのは助かる。

手術から一夜明け、朝一番の検温と血圧測定をすませるなり水をコップ2杯もガブガブ飲んだ。それから出てきた朝食もモリモリ食べる。
私の身体は異物が入っているのが本当に嫌だったようで、術前にあんなにひどかった掌や足の腫れも、痒みも、紅斑もすーっとひいていた。「ああ、そう! そんなにせいせいしたわけね! ああ、そうですか、はいはい」という感じだ。朝食後、S先生は傷を診に来てくれた。手術着姿だったからオペの前に来てくれたんだろう。ガーゼを取り替えてもらう時にちょっと見たが、手術直後というのに赤黒紫っぷりが術前より薄くなっている。でも、せっかくエキスパンダーで膨らませていた乳房は、空気を抜かれたボールみたいにシオシオぺた〜んとひしゃげてて悲しかった。
「じゃあ僕、次は1日の夕方に来るから、状態がいいようなら退院を決めようね。2日はオペあるけどその前に一度診てあげるね」
「えっ! 2日……ってことは先生、私2日の朝まではいなくちゃいけないってことですね?」
「うん、まあ、ゆっくりしてってよ」
などというやりとりがあり、結局一週間の入院は確定してしまった。明日あたりに帰りたいと思っていたのに……

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