いよいよ入院
2013年1月21日、入院の日。
しばらく病院食になる名残り惜しみということで、ちょっといいランチを楽しんでから病院に乗り込むことにして、病院近くの老舗フレンチレストランで、きちんとコース料理を取った。アルコールともしばらく疎遠になるので、グラスワインもちょっといいものを奮発。手術へのぞむ勢いづけしなくちゃ! 開店ギリギリの11時半に予約し、13時に入院受付なので12時45分までには食事を終わらせたい旨を伝えておいたら、デザートの大サービスをしてもらえた。ランチのコースでは3種類の中からひとつしか選べないのだけど、10種類の中から3つも選ばせてくれた。
「お元気そうに見えるのに……」と言われたけれど、ふふっ、そうでしょうとも。体調整えまくってジム通いで筋トレとシェイプアップして、今は一番元気で健康な状態なんだから。いくぶん慌ただしくはあったけれど美味しい食事を十分に堪能した。よし! これからの入院生活に弾みがついた!
入院手続きをすませて病棟にあがる。9ヶ月前にエキスパンダー抜去で入院した時と同じ病棟で、ナースや看護助手たちスタッフの異動もほとんどなくメンツもほぼ一緒。顔見知りの人たちがたくさんいるのは心強い。最初の乳癌手術の時の看護チームの主任ナースが師長に昇格して、1月からこの病棟に異動してきたということは、さらに嬉しいことだった。たった8日間の入院だったが、ベテランならではの細やかな看護やアドバイスに、いろいろ助けられたものだ。
入院生活では治療以外にもさまざまな問題が起きるのは必至。要望や不満などを気軽に伝えられそうだということは、療養のストレス軽減としてはとても大事なことだ。なんだかんだ言って病棟での最高権力者は師長さんなんだから。
私は今回の入院では差額ベッド代のかかる部屋をあえて希望した。保険適用手術なので高額療養費の適用もあるし、医療保険の給付が充当できるから、収支はプラマイゼロになると踏んだ。といっても一日27,000円の個室はとても無理で、5,000円の4人部屋なんだけど。4人部屋であっても、隣のベッドとの仕切りが小さいながらもデスクのついた間仕切り家具になっているので、ちょっと個室感覚がある。ベッドサイドに小さな冷蔵庫が備え付けられているのも助かる。無料の4人部屋は床のままだが、こちらはカーペットが敷いてあるので足音も静かだ。そういう設備的なこともありがたいけれど、私が最重要視したのは、同室者が「差額ベッド代を払ってもいいと思う価値観」を持っている人たちだろうということだった。
病室の同室者同士のトラブルは結構あるものだ。人がたくさん集まれば、その中に何人かは「ヘンなヒト」は必ずいる。元気な時ならともかく、心身ともに弱っている時にはストレス耐性もめちゃくちゃ弱くなっている。そういう「心身ともに不健康な人たち」ばかりが集められているのだから、思いもよらない軋轢も起こるってもの。1週間程度ならしばしの辛抱でも、今回は3週間も4週間もいなくちゃならない。大部屋にいる以上はあまり自分の要望ばかり前面に押し出しているわけにもいかないでしょ。だから私は「ストレスを軽減できる可能性」を「いくばくかのお金で買う」ことにしたのだ。
間仕切り家具での仕切りは個室感覚があっていいけれど、廊下側のベッドは薄暗くなってしまって逆に閉塞感が強くなり、わざわざ差額を払う意味がない。カーテンだけの仕切りで光の入る無料部屋の方がずっとマシってもの。だから長期であることを理由に、窓際のベッドに入れてもらえるよう強く強く希望を出していたが、めでたくそれも叶った。痛いことされるんだから“楽しく快適な病院ステイ”とはいかないけれど、療養以外のストレスはかなり低くすみそう。
ナースのアナムネ聴取を終えた後は、これから1ヶ月近くを過ごす空間を出来る限り快適に整える作業に没頭した。手術後の不自由な身体でも困らないよう、収納と配置にはとことんこだわる。私は右半身の手術なので、ベッドの乗り降りのための空間は左側に広く欲しい。力仕事の出来る今のうちにベッドを心持ち右側に寄せる。不自由な右腕でも引出しが開けられるようベッドサイドチェストも心持ちベッド近くに引き寄せておく。コンセントの位置と数を確認して、ノートPCのアダプターや充電器もセット。携帯電話やiPod、箸やスプーン、リップクリームなど細々したものはボックスにひとまとめにしてベッドテーブルの上に。ウェットティッシュもボックスティッシュもすべて手の届く位置にセットする。わずか1年4ヶ月の間に4度目の手術、3回めの入院だもの、さすがに要領も心得るというもの。まして今回は万全を期すべく周到に準備を整えてきたのだから。
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