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皮膚パッチテストの一週間

検診結果は無事クリア

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いよいよ入院

乳房再建のためのデザインを施す

手術まで首を洗って待つのみ

手術──再び辛く長い一夜

なんでこんな手術受けちゃったんだろう……

再建乳房と感動の初対面!

再び苦しむ激痛の夜

入院生活のタイムテーブル

快復停滞の分岐はどこにあるの?

そろそろ退院が視野に入ってきたかな

30日ぶりで外の世界へ

背中の大怪我、続行中

ドレーンを入れての強制排液

「カサブタ剥いじゃおうね」

恐怖の溶解脂肪ダダ漏れ事件

医療従事者と患者との間には温度差がある

傷口が裂けちゃった!

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いっこうに脂肪流出が止まらない

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手術──再び辛く長い一夜

昨晩は睡眠導入剤を飲んで9時半の消灯と同時に横になった。薬のおかげでほどなく眠りに落ちたが、夜中の3時頃にぱっちり目覚めてしまい、それきり眠れなくなってしまった。やっぱり緊張しているのか、不安なのか……。5時間ほどの眠りだったがそこそこ熟睡した感じはするので良しとしよう。
空が明るくなってきた。先週の予報では昨晩は雪かもしれないとのことだったが、外れたようでよかった。足元が悪かったり交通機関に影響が出るようだったりでは、手術の立ち会いに来てくれる友人に申し訳ないもの。とにもかくにもこの日は来た。1月23日。「1・2・3!」と勢いをつけていけるだろうか。

これまでの手術は午後からばかりだったけど、今日は朝一番のスタートだ。手術時間はトータル6〜7時間予定で、S先生が言うには「自家組織再建手術としては特別短くも長くもなし、特別簡単でも難しくもないだろう」とのこと。同室の人たちに運ばれてきた朝食の匂いに空腹を刺激され、デザインを施している時の雑談を思い出した。
「先生、7時間もの手術の時はお昼ごはんはどうするの?」
「アハハっ、普通食べないよねー」
「えー、お腹空いちゃいません?」
「いやあ、いつもそんなもんだよ。お腹空いたとか……考えたことないなあ」
私もどちらかというと、いったん夢中になると「寝食を忘れる」タイプだから、その気持ちはちょっとわかる。S先生は手術するのが楽しいのだ。大変な作業ではあるけれど、ぜひとも楽しんで美しい乳房を作ることに没頭していただきたいものである。

8時半になって手術着に着替え、弾性ストッキングを穿き、T字帯を装着した。5分で終わってしまった。あまり自慢にならないことだが、手術前の準備もすっかり手慣れてきている。今日の手術に立ち会ってくれる友人Tちゃんも到着。Tちゃんは私より1年半先輩の乳癌サバイバーだ。
8時50分、車椅子に乗せられ、いよいよ手術室フロアへと向かう。扉の前で待っていてくれたナースに私の身柄は引き渡され、病棟ナースとTちゃんとはしばしお別れだ。じゃ、頑張ってくるね! ま、頑張るのはS先生たちなんだけどね!

2回めの手術の時はY先生とナースの2人きり、3回めの手術の時はS先生とナースと麻酔科医との3人だったが、今回は手術室には6〜7人のスタッフたちがいて、いっせいに迎えてくれた。大きな声で「今日はよろしくお願いしまーす!」と挨拶し車椅子に座った状態ではあるけれど、深々一礼。深呼吸をひとつして手術台によじ登る。わーっと寄ってきたスタッフたちに点滴の針やら血圧計やら心電図やら取りつけられているところに、S先生が大股で元気よく入ってきた。すぐ後ろにT先生の姿も見える。
「はいはい、おはよう〜〜! さあ、始めましょう〜、みなさんよろしくお願いしますねえ〜〜」S先生の声はワクワクした感じに華やいでいる。あー、やっぱり先生ってば、絶対絶対、手術が楽しみなんだ!
「あっ、先生、今日はよろしくお願……」言っている途中で吸入マスクが当てられた。S先生が片手を上げてOKサインを作るのが見えたと同時に麻酔薬が入り始め、今回も私は即座に“落ち”た。そして今回も体感感覚として数秒後に名前を呼ばれた。
「終わりましたよー」

これまでの手術終了時と違ったのは、その声かけでいったん覚醒したものの、すぐに再び意識がなくなったことだった。私は割と全身麻酔のオンオフがハッキリしていると思ってたのに。麻酔の量にも麻酔をかけられていた時間にもよるのかしら。ストレッチャーに乗せられたことも、手術室を出て付き添いの友人の顔を見たことも、エレベーターで運ばれたことも、病棟の廊下でナースに迎えられたことも、病室に着いてベッドに移されたことも、なにもわからない。最初の乳癌手術の時は、こうしたひとつひとつを覚えていたし、圧迫されるような痛みも自覚していた。
ふっと意識が戻った時には、もう個室のベッドに寝かされていて、まわりは静かで薄暗かった。えっ、もう夜になってしまったの? と同時に胸と背中に強烈な痛みが襲ってきた。どのように形容したらいいのか……痛みが海の波のような大きなうねりとなって私を呑みこみ翻弄しているような。これは最初の全摘手術の痛みの比ではない。あの時は前だけだったけど、今度は前も後ろもなんだもの。

ベッドの脇にはTちゃんが待っていてくれた。
「お帰りなさい。目が覚めた?」
「今……何時?」
「もうすぐ4時だよ。手術は3時半頃に終わったって」
じゃあ6時間半くらいかかったのか……。7時間くらいかかるかもって話だったけど、少し早めに終わったんだ。部屋が薄暗いのはもう夕刻に近いせいもあるけど、窓にシェードが下ろされているからだった。そこへS先生たちが入ってきた。
「とっても綺麗に作れましたよ、よかったですね」S先生の声にはしみじみとした達成感のような響きがあった。そうか、先生は出来に満足してるんだ。だったらきっと綺麗なんだろう、そうなんだろう。でも今はとても出来映えに思いを馳せることは出来ない。
「……ありがとう、ござい、ます……」かろうじて謝意を伝えられたが、“激痛”を通り越した“爆痛”とでもいうような痛みに、本心は「バカヤロー痛えよおお」だった。

S先生たちが去り、師長さんが様子を見に来てくれた。激励の言葉を残してTちゃんが帰り、昼夜勤の担当ナースが交替した。今晩の担当ナースは以前の入院でとてもお世話になった。エキスパンダー抜去の手術前夜、自己免疫が大暴走して全身むちむちに赤く腫れ痒がる私を心配し、掌に氷の塊を握らせてくれ脚に氷枕を当ててくれ、それを何度も取り替えてくれた人である。今晩は彼女が看てくれるのだと思うと心強い。

さあ、長く辛い一夜が始まる。

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