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1年めの検診を迎える

皮膚パッチテストの一週間

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いよいよ入院

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手術まで首を洗って待つのみ

手術──再び辛く長い一夜

なんでこんな手術受けちゃったんだろう……

再建乳房と感動の初対面!

再び苦しむ激痛の夜

入院生活のタイムテーブル

快復停滞の分岐はどこにあるの?

そろそろ退院が視野に入ってきたかな

30日ぶりで外の世界へ

背中の大怪我、続行中

ドレーンを入れての強制排液

「カサブタ剥いじゃおうね」

恐怖の溶解脂肪ダダ漏れ事件

医療従事者と患者との間には温度差がある

傷口が裂けちゃった!

背中の傷に植皮を開始

遺伝性乳癌による予防的乳房切除に思うこと

いっこうに脂肪流出が止まらない

乳癌治療に関するいくつかのニュース

そろそろ心が折れてきた

身体はちゃんと頑張っていたんだね

旅立ってしまった友

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傷口が裂けちゃった!

溶解脂肪ダダ漏れ騒ぎから4日目、形成外科を受診した4月7日。
最初の狂乱状態からはだいぶ落ち着いたものの、私の頭の中はまだまだダダ漏れパニックの余波でいっぱいだった。予期せぬトラブルは起きたけど、胸は胸、背中は背中で、それぞれ別進行で治していかなくちゃならない。そういうわけでその日はT先生の治療進行計画どおりに背中の傷のドレーンを抜かれた。ほんの10日ほど前にカサブタを引き剥がされた傷口は、まだ赤くざっくりえぐれている。少しずつ肉が盛り上がっていくとのことだけど、これだけの窪みが埋まるのはいったいどれだけかかるんだろうか……。来週からはここに少しずつ植皮をしていくそうだ。

先週注射器で抜いた脂肪を分析培養した結果も出ていたが、わずかばかりの常在菌が出ていたそうだ。感染などの悪さをするような菌ではないはずだけど、白血球の数値も上がっていたという。
……ああ、そうなのだ。私の白血球はめちゃくちゃ頑張る奴らなんだった。おかげで私は傷口が化膿したことはほとんどない。困ったことに、見当違いの方向にもめちゃくちゃ頑張る奴らでもあるんだけど……。それはエキスパンダーの異物排除攻撃で思い知った。だからこそ、人工物でなく自家組織なら大丈夫だろうと思ったのに。定着しきれてない脂肪を異物と見なしたってことだろうか? 腰の辺りの脂肪だから、遠い場所からもってきた組織だから、自分の組織でさえ受け容れないってことなのだろうか?

Y先生は溶けた脂肪は9割がた絞り出したと言ったけれど、それからもチョロチョロ漏れ続けている。粘る感じに傷穴にこびりつくようになったので、朝晩シャワーでよく洗って、イソジンゲルを塗ったガーゼを3時間おきに取り替える。半分に切ったパンティーライナーで上から押さえ、ズレないようにうまく胸帯にはさむ。テープ止めしないのは、日に何度も貼ったり剥がしたりすると、私の肌は絶対にトラブルを起こすからだ。余計な軟膏を塗る作業まで加わるのはまっぴらご免だもの。背中の傷にもゲルを塗ったガーゼを当てて2枚並べたナプキンで押さえる。
このゲル状のイソジンは洗顔フォームのようなチューブ入りで、とても使い勝手がいい。液体のイソジンでは綿棒が必要だし、こぼれるし、いちいち傷口に触れなくてはならないけれど、ガーゼの上にをムリムリと絞り出して傷穴に当てるだけですむのだ。消毒が容易にできるので、高価な滅菌ガーゼを使う必要がない。

形成外科の受診から3日たった夜、胸の切開傷が急にヒリヒリ痛み始めた。胸元を覗き込んでガーゼをはずしてみると、乳房半分が鮮血でべっとり染まっている。何?? 今度は何が起きたの??
どうやら7〜8mm程度だった切開傷が縫い目に沿ってぱっくり裂けたようだった。再建胸は移植した背中の皮膚がリーフ形のパッチワークになっているのだけど、角の部分が「く」の形に切れてしまっている。2cm+1.5cmくらいだろうか、饅頭にアイロンの先っぽを突き刺した感じに陥没していてた。黄色い脂混じりの血液はテラテラとした艶があって、おそろしく鮮やかだった。かなり出血していたのでちょっとビビったけれど、拭ってみた感じでは裂けた皮膚からの出血のみで、内部からドクドクと流れ続けているわけではなさそう。

この流血が起きたのは木曜の夜。形成の外来は月木だから、もう一日早ければ診てもらいに行けたのに……などと考えながら、傷が裂けたっていうのにほとんど動じていない自分にちょっと驚いた。というか、いちいち半狂乱になっていると身がもたないと悟ったのかも。

それでも翌朝になって一応病院に電話してみた。外来診察はないけど手術があるので先生たちは病院にはいるはずだから。T先生を呼び出してもらったのに、しばらく待たされたあげくに受話器から聞こえてきたのはS先生の声だった。S先生には溶解脂肪流出事件はまだ伝わっていなかったので、大急ぎで顛末を説明する。先生の反応はというと、なんとなく想像していた通りのもので「ああー、そうですかぁ。時々あることなんですよ〜〜」だった。ああ、やっぱり医師と患者の微妙な温度差がここにもある。仕方ないことなんだけど。
「心配だったら診ようか? 午後から手術あるけど11時半までに来られるようなら時間ありますよ」
これから大特急で身支度すればギリギリ間に合わなくもないけれど、私はわざわざ着替えて化粧して病院に出かけるのが面倒になってしまっていた。
「とりあえず新しい出血はしていないようなんで。イソジンゲルも持ってるし、まめにガーゼ取り替えていれば大丈夫ですよね? 来週の月曜日にT先生の予約あるんで……」
「そうお? じゃあ、月曜にT先生に診てもらって。僕が診る必要があったら診るからね」

電話を切った後、思わず深々と嘆息してしまった。あーあ、先週のY先生の言葉じゃないけど “本当に災難が絶えない” なあ、まったく……! これから治っていくばかりかと思っていたのに。私はいつも足踏みばかりだ。

ドレーンを抜いた背中の傷からもリンパ液や脂肪が漏れているので、ガーゼとナプキンを日に何度か取り替えなくてはならない。背中は朝晩だけの交換で大丈夫だが、胸は頻繁にガーゼを取り替えないと漏れて下着や洋服に脂染みをこしらえてしまうことになる。シャツの襟の皮脂汚れ程度でもなかなか黒ずみや黄ばみはスッキリ落としきれないものだけど、身体の内部から直接出てくる脂肪の強力っぷりといったら比べ物にならない。煮沸洗いしたとしても落としきれるかという脂染みなのである。いったい何枚の下着やパジャマに染みをこしらえたことか。ああ、面倒。本当に面倒。

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