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遺伝性乳癌による予防的乳房切除に思うこと

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遺伝性乳癌による予防的乳房切除に思うこと

2013年5月14日、NYタイムズの意見欄に衝撃の寄稿が掲載された。日本でも翌日の朝刊の一面トップで取り上げられたその内容は……ハリウッド女優アンジェリーナ・ジョリーが癌になるリスクを減らすために両乳房の切除手術を受けていたことを告白するものだった。

2011年4月に乳癌検診に引っかかって精密検査を重ねている頃から7月の確定診断まで、診断がおりてから術式を決め9月に手術を受けるまで……私は、乳癌と乳房再建について脳みそがショートしそうなほど勉強しまくっていた。知識武装して恐怖を克服するため、自身の選択が正しいことを裏付けしたいため、さまざまな理由はあったが。
その時に、日本のように皆保険制度のないアメリカでは乳癌発症前にあらかじめ切除して再建することもある……ということを知って、それはまたずいぶん乱暴なことするよなあとびっくりした記憶がある。珍しくないとはいえ、世界的セレブが実際に手術してそれを公表というのは、さすがに米国内でも大きな話題になったようだ。

乳癌治療と再建についてよくわからない人たちは、アンジーが受けた手術はとてつもなく特殊で画期的なことだと思ったようだったけれど……なんてことはない、皮下乳腺全摘して同時にエキスパンダー挿入、皮膚拡張後にシリコンインプラント入れ替えをする再建手術だ。日本でも、全摘で再建する乳癌患者が毎年何万人も受けている手術で、ちっとも特別なものではない。でも、庶民の私たちなら何種類かのインプラントから自分の乳房の形に近いものを選ぶしかないけれど、彼女だったらインプラントを特注して寸分違わぬ胸を再建できたりするのかもしれないけどね。

ネット上や新聞投書欄などでは「日本でも素早い対応するべき」「対応する病院が発表されて女性にとって喜ばしいこと」「それなのに保険が効かない。片方100万で両方だと200万、そんなに払えない」「癌になるかもしれないのにどうしてなんだ」などという声があふれた。いろいろ勘違いや知識不足はあるようだが、乳癌というものは女性のシンボルである乳房を切除されてしまう病気であるということ、だけど乳房を喪っても再建という手段があることが知られたということには大きな意味があったと思う。

乳腺切除手術じたいは乳癌の人なら保険で受けられる手術だが、人工物での再建は美容整形や豊胸と同等とみなされていて自由診療するしかなく、みんな片胸100万円かけていた。再建以前にすでに乳癌治療にたくさんのお金がかかっていても、だ。シリコンでの乳房再建も近々に保険適用になる予定だったが、その時点ではまだ日時は確定していなかった。皮膚拡張用のエキスパンダーには保険適用のものがあるが、痛みや整容性ではぐっと劣る。私は保険適用外のエキスパンダーを8万円で購入した。まあ、結局無駄になっちゃったけど……。
だから予防的切除が保険適用になるはずはない。優先されるのは “現状、癌を罹患している人” でなくてはいけない。そもそも日本の乳腺外科医が健康な乳腺を切除してくれるかどうかはまた別の話だ。

肉親に癌患者がいると自分は癌家系なのでは怯える人も多いが、乳癌が遺伝するわけではなく、発症しやすい遺伝子が遺伝するものなのだ。家族性乳癌の割合は日本人では乳癌全体の5〜10%ほどだそう。
発症リスクの高い条件としては、若い年齢で乳癌を発症・両方の乳房に独立して乳癌が発症・2世代以上にわたって乳癌の発症者がいる・卵巣癌の発症者がいる・乳癌と卵巣癌の両方を発症・男性の血縁者に乳癌発症者がいる……など。アンジーの場合は、乳癌になる確率が87%と高確率であることが判明したという。手術の結果、発症確率は5%未満に下がったということだけど……。

それを聞いて「だけど13%の確率で癌にはならないんじゃない」「癌になるかもっていっても1年後か10年後か30年後かわからないのに」「切除したって完全に0%にはならないの?」と思った。
すでに癌に侵されて切除を余儀なくされた人間にとっては、まだ癌になるとは決まってないのに健康な乳房を切除するなんて、正直言って腹立たしい。私は仕方なく泣く泣く受けた手術なのに、あんな痛いことを自発的にそれも両胸によく出来るよなあ。違和感圧迫感ハンパないのに。ただ、彼女の場合はそれを上回るほどの恐怖があったのだろうと思う。家族性乳癌の場合は卵巣癌リスクも高いので、2〜3年くらいのうちに卵巣も切除するつもりなんだそうだ。乳癌と卵巣癌にはならないだろうけど、他の癌になったらどうするのかなあ……?

翌日にはがん研有明病院と聖路加病院が予防切除手術を検討するとの記事が再びトップを飾った。さすが手術件数1位2位の病院だ。日本乳癌学会のスタンスでは「予防切除はしない」なのだが、患者がやりたいって言ったら受けちゃうつもりなのね。

さらに10日後、国内の16施設が予防的な乳房切除を、21施設が卵巣・卵管切除を計画しているという記事が出た。卵巣・卵管切除に関してはすでに実施済みの施設も数カ所あった。将来、癌を発症するかもしれないという心理的負担を減らす予防策のひとつとして、国内でも広がりつつあるというわけか。
一過性の不安な気持ちから切ってくれと懇願されても、即ハイそうですかとはいかず、あくまで遺伝性乳癌・卵巣癌の遺伝子変異がある人が対象。将来の発症確率を低くすることの目的に限り、本人の強い希望があった場合にのみ検討されることで、実施までは入念な検査とカウンセリングを重ねていくとのことだ。切除してしまった乳腺はもう戻せないのだから。

とはいえ、日本人の倫理観やメンタルからいって、予防的切除が一般的になるとは考えにくい。遺伝子リスクが高いとわかっても即切除ではなく、まめに検診しながら早期発見早期治療を心がけるケースが圧倒的に多いはずだ。民間の保険に入っていないと医療費が莫大にかかるアメリカとは違い、日本では癌に罹っても保険診療や高額療養費の適用があるのだし。ただ、多くの人が乳癌に対する意識をわずかながらも高めたのは確かなことで、ハリウッド・セレブの投じた一石の影響はとてつもなく大きい。

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