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なんでこんな手術受けちゃったんだろう……

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快復停滞の分岐はどこにあるの?

そろそろ退院が視野に入ってきたかな

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背中の大怪我、続行中

ドレーンを入れての強制排液

「カサブタ剥いじゃおうね」

恐怖の溶解脂肪ダダ漏れ事件

医療従事者と患者との間には温度差がある

傷口が裂けちゃった!

背中の傷に植皮を開始

遺伝性乳癌による予防的乳房切除に思うこと

いっこうに脂肪流出が止まらない

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いっこうに脂肪流出が止まらない

5月に入っても、胸からの脂肪流出はなかなか止まらなかった。傷穴も裂けたりくっついたり、時々ちょっと出血したり、びちゃびちゃしたリンパ液のようなものが出て来たり。溶解脂肪も最初ほどトロトロ液状ではなくなってベタベタと粘度が出てきて、黄色い塊がいつも傷穴にこびりついているので、朝晩にたっぷりの熱いシャワーを当てて綺麗に洗わなくてはならない。黄色いこびりつきが溶けると、クリーム状の脂肪がしばらくニュルニュルと流れ出てくる。カッテージチーズのようなポロポロした滓のようなものが混じっていることもある。

5月10日の朝もいつものようにシャワーを当てた。
ところがお湯をかけ続けていても傷穴のこびりつきが溶けない。軽くこすって剥がしてみようかと指でつまんでみたら、ぽっかり開いた傷穴から小指半分くらいの塊がズルズルっと出てきた。
「ぎゃああああああっ!」私は驚愕のあまり潰れた蛙のような悲鳴をあげて、その塊をシャワーヘッドもろとも放り出して飛び退いた。何? 今の何??? 顔を覆った指の隙間からおっかなびっくりで放り投げた先を見てみると、カイコの幼虫のような白っぽいものが排水溝の手前辺りに転がっている。じゃーじゃーと流れ続けるお湯にどっぷり浸っているというのに溶けもせず……。何? 何これ。恐る恐るつまみ上げてみた。掌に乗せてためつすがめつ、指先でチョンチョンと突ついてみる。軽くギュッと握ってもみる。ぐにゃっと柔らかいのに弾力があり、押したくらいでは崩れない。まるで汲み上げ湯葉を団子にしたみたいな感触……。怖い、怖過ぎる。
「何よお、何なのよお! もうやだやだやだ」私は得体の知れない湯葉団子を握りしめたまま、わざと駄々っ子のように声を上げて泣いた。バスルームで泣くのはいったい何度目のことだろう。同居家族に無用な心配をかけずに文字通りの号泣ができる場所はここしかないのだ。シャワーの音は嗚咽の声を隠し、たっぷりのお湯は涙を洗い流してくれる。

5月13日の形成外来でT先生に汲み上げ湯葉団子の正体を尋ねてみた。脂肪にも繊維組織というものがあるらしい。
「筋子にもイクラの部分と筋の部分があるでしょ?」またも食べ物の喩えかあ……。でも、そういえば筋子の筋に感触は似ていたなあ。
「栓になってた塊がなくなったから、そろそろ止まるかもしれない……」
「ほ、ほほ、ホントですか?? まだ破片みたいなのが出てくるんですけど、出し切っちゃった方がいいですかね?」
「えっ、駄目駄目! むやみに触っちゃ定着しかけた組織壊しちゃうから! そっとそっとしておいてね」T先生の口調が厳しくなった。Y先生がギュウギュウ押して絞っちゃったこと、かなり根に持っている感じ。

胸はそんな案配なのだけど、背中のざっくりクレーターには一応薄く皮膚が被さった状態になったので、その日の植皮はもうなし。背中に当てたガーゼやナプキンににもほとんど体液がつかなくなってきてたものね。圧迫して絞り出す必要もなくなったので、腹帯やウエストニッパーも外してよし。これまではシャワーオンリーだったけれど、半身浴がOKになった。
薄い皮膚で覆われたとはいえ、まだ鮮紅色の筋肉組織が透けてるし、カルデラ状に凹んでいるし、縫合跡も袈裟懸けに30cm近くある。いきなり傷むき出しで服を着るのも怖くて、腹巻はまだ巻いておくことにした。背中の傷の治癒への道のりはまだまだ遠い。

5月も下旬になり、退院して3ヶ月が経った。同時期に入院していた人たちも、始めの1〜2ヶ月はそれなりの頻度で通院していたので、外来待合室には誰かしら知った顔がいて待ち時間も退屈することはなかったけれど、みんなだんだん通院の間隔が開いてきて、最初から最後まで誰にも会わない日も出てきた。
「次は2ヶ月後なの」
「8月まで来なくていいんだって」
「じゃあね、またメールするね」
「早く脂肪止まるといいね」
そんな言葉を聞かされるばかり。いまだに私ばかりが毎週通院って……!

6月になっても脂肪漏れは止まらず出続けていた。
ほぼ2ヶ月かかって乳房の下半分は溶け終わったようだが、今度は上部が痛み始めてきた。カチカチだった乳房全体は柔らかくなってきて、前屈みになると左右が同じように垂れるようになった。でも鎖骨下のデコルテ部分だけがまだ硬い。今度はここが溶けてくるってことなのかしら。3〜4時間おきのガーゼ交換もいい加減ウンザリだし、いつもヌトヌトベタベタしてるから痒いしかぶれるし、皮脂汚れを10倍濃縮したような臭いは常に胸元から立ちのぼってくるし。時折汗ばむ季節になって薄着にもなったから、いっそう不快なことといったら極まりない。

「どうして自家組織の脂肪が溶けたのか」という疑問は、この2ヶ月間ずっと心に渦巻いていたのだが、突然ひとつの仮説が閃いた。もしかしたら私の身体が縫合糸を異物認定しているのではないか……と。
単に傷を塞ぐための縫合とは違い、これだけ乳房の形状を整えるために内部を何百針と刺し子状に縫ってあるはず。内臓を縫う糸は数日〜1週間くらいで溶けるらしいけれど、形成で使う糸には完全に溶け終わるのに3ヶ月以上かかるものがあるらしい。抜いた脂肪の中に大量の白血球があったということだし、これは私の推理で合ってるんじゃないだろうか? だからってどうしようもないのだけど、やっぱり理由や原因は知っておきたい。
とりあえず来週には執刀医のS先生の術後初めての外来があるので、聞いてみるつもり。

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