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カルテに書かれたExcellent!!

「もうメソメソ泣かないでもすむね」


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「もうメソメソ泣かないでもすむね」

顔なじみのスタッフと親密になれるのは、個人クリニックのメリットのひとつだ。気心の知れた女性スタッフに気兼ねなく相談できたりお喋りできたりするのは、デリケートな箇所の病であるからこそありがたいことだ。

エコー検査をしてもらいながらの雑談で、素朴な疑問をぶつけてみた。
医療従事者の検診ってどうしてるの?
そういえば入院中、ナースが「今日は健康診断なんですよお!」とか言ってたっけ。血液検査は自分たちで採血し合って検査室に届けるんだとか。一番数多く私の担当になってくれた新人ナースは「先輩の採血するとか、患者さん相手より緊張しちゃうんですぅ」などとも口を滑らせていた。
まあ、大きい病院のスタッフたちにはちゃんと定期健診があるだろうけど、こういう個人病院はどうなってるの? たとえば婦人科検診とか乳癌検診とか、顔見知りの先生に診察されるのってどうなの?

「ああー、乳癌検診ねえ……受けてないわぁ」私が一番心を許しているMさんは笑う。
「えッ、受けてないの?? 乳腺のエキスパートなのに? ダメじゃーん!」
「もしね、乳癌になったら、絶対Y先生に治療してもらおうと思う。でも何でもない時に触診は……嫌だわぁ」ああ、やっぱりそうだよね、顔見知りの触診は嫌だよね。私の趣味関連の友人に内科医がいるのだが、医者だと知ったのは親しくなってから2〜3年後だった。不思議なもので、その人に診察されるのは恥ずかしいと思ってしまう。最初からお医者さんと患者として出会っていれば平気なのに。
「だって、Y先生の触診て……結構しっかり触るよね?」Mさんは時々診察室に同室しているのでY先生の視触診を見ている。やっぱり他の先生に比べて懇切丁寧だってこと、知っているのだ。
「うん。しっかり触る。私、これまで受けてきた触診って何だったの?って思ったもん」だからこそ、誰も見つけてくれなかった自分ですらしこりを触知できなかった乳癌を見つけてもらえたのだけれど。
「超音波関連の講習会とか研修会とかあるでしょ。練習台になったりしてるの。画像見ながら指導したりとか。だから何かあったら見つけられるんじゃないかなって思ってるんだけど」

2015年3月、最初の乳房摘出手術から3年半、乳房再建手術からは2年ちょっと。最近は頻繁に再建乳房が中からチクチクする。だいぶ知覚が戻ってきているのかもしれない。縫合痕もかなり目立たなくなってきた。
胸部レントゲンの検査の日、脱ぐ必要はなかったのだけど、わざわざ下着をめくって技師さんに再建乳房をお披露目する。
「うわぁ、すごい綺麗になったねえ!」
「でしょ? でしょ??」
「一時はどうなることかと思ってたけどねぇ……」
あっ、やっぱりそう思ってたんだ。Y先生もクリニックのスタッフたちも何も言わなかったけど。そうだよね、異物の拒絶反応で赤黒紫に腫れて膿とか出ちゃって、エキスパンダー抜去したらケロイド状にただれちゃって、自家組織再建したら脂肪が溶解して縫い目が破れちゃって、いつまでも溶解脂肪が止まらなくていつも赤紫に腫れていて………やっぱりみんなこんなに綺麗に治るとは思ってなかったんだ。いい意味で裏切れた私、偉いッ!
「カルテにエクセレントって書いてあったよね」
「うん。花丸つきだったでしょ」
「大変だったよねえ……」
「うん。大変だった……」
「でもさ、大変だった日々が懐かしいような、そういう感じにもならない?」
ああ、そういえばそうかもしれない。大変な日々真っ最中にはとてもそんなこと考えられないけれど。つらい化学療法を乗り越えた人たちも同じように思うんだろうか。大変だった日々が懐かしいような……それは乗り越えたたくさんの人たちから漏らされた言葉なのかもしれない。

3年半目の検査結果を聞く。マンモグラフィ以外のすべての検査をした。すべての数値がパーフェクトだった。薬を切り替えた直後におかしな動きをした肝臓の数値も基準内。骨密度は1%下がっていたけど、年齢がひとつ上がったんだから、同年齢比99%は十分問題なし。
「うん、データ類は全部バッチリ! で、どう? 調子は」
「調子……絶好調です! 絶好調……、ということにしとこう、か、な」
「ん? 何かある?」
「いやっ……そうですねぇ……関節痛いのとか、もう『そんなもんだ』って思っちゃってますね」
「うん」
「最初よりは痛みも弱まってるっていうか、慣れちゃったせいもあるかしら」
「ははっ、うん、慣れるってのはいいことだ」
「立ち上がる時に『イテテテ』が口癖になってて、しばらくギシギシ歩いてますね。それが習慣化しちゃってる感じ。まあ、許容範囲なんでしょうね」
「そうかあ」
「家族とか近しい人はね『イテテテ』ってやってても『またか』って感じで取り合わずにスルーしてますけれど。他の人にはね『えっ! どうしたの!? 大丈夫?』とかびっくりさせちゃうんです」
「そうかあ。ここでメソメソ泣いてたのになあ。『ふえぇぇ〜〜』って」先生は私の泣き真似をしてみせた。それがまた、よく似ていて。嫌だわ私、そんなに印象に残る泣き方しちゃったのかしら……恥ずかしいったらない。
いや、これまでだってY先生の前で泣いた患者さんはたくさんたくさんいたはずだ。先生は30年以上を癌治療に費やしてきたのだから、もっと深刻な嗚咽や慟哭はあったはず。私が泣いたことは今こうして笑い話にできている──それはとても幸せなことなのだ。
「私だって、いい大人なんですからぁ、泣くつもりなんてなかったですよ!」
「だよなあ」
「ですよ。でも、もう想定外のことばっかり起こるんだもの」
「もう、しばらくは泣かないですむよ」先生は笑っている。

ついにサバイバー編へつづく

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