Le moineau 番外編

2012年10月30日

 
     
 

ハリケーン一過……とは、まだいかない?

強い風の音は昨夜遅くに静まったが、今朝起きてすぐに見上げ空は白っぽく霞んで小雨混じりだった。

やっぱりTVは「サンディ」一色。
昨夜ニュージャージー州に上陸したサンディは、いわゆる “ハリケーンの目” がなくなってしまったので、ハリケーンではなくウィンターストームへと変わった。ところが上陸後も勢力が衰えるどころか、むしろ低気圧と合体して勢力を強めてオハイオバレーに向かって突き進んでいるという。「マンハッタンをがっつり直撃!」コースからは微妙に逸れたみたいだけど、上陸のタイミングは最悪だった。昨日29日は満月で大潮だった上、よりによって満潮時に上陸したんだものだから、海抜が低いマンハッタン南部──ロウアー・マンハッタンの多くのエリアで冠水してしまった。変電所が爆発浸水地区の住宅地で火災が起こった。何十万世帯で停電している。証券取引所は昨日に引き続き今日も取引停止。もちろん会社も学校も美術館や博物館の類いもみんなみんな休み。イベントやエンタメの類いもみんなみんな中止。公共交通機関も一切合切ストップ。数ブロック先の首吊りクレーンはまだ落下せずにすんでいるようだった。

さて、今日はどうしよう? とりあえず風はおさまったのだし、雨だって止みつつある。移動手段は相変わらず二本の足のみだけど、ハリケーン一過のマンハッタンを歩いてみようかな。勿論、危険のない範囲でね。

今朝もMちゃん特製の定番の朝食をいただいて、9時半頃に出発。空模様はというと、傘をさすべきかたたむべきか、ちょっと迷う感じ。昨日はマンハッタン島の東寄りを南下してみたから、今日は西寄りを行こうかな……ということで、9番街を下っていくことにした。今日もやっぱり歩く人もまばら、通り過ぎる車もまばら。34丁目の中央郵便局 General Post Office の裏まで来たところで、正面へ回るべく東へ折れてみる。

ボザール様式の建物はギリシャ神殿のような列柱を持っていて、郵便局としては北米一の規模だそうで、ちょっとした博物館のような威風堂々とした佇まい。NYの歴史的建造物にも指定されている。でもさあ、100年程度で歴史的建造物扱いってのはねぇ……? ヨーロッパの人たちは鼻で笑っちゃうんだろうな。

8番街をはさんで中央郵便局と向かい合う平べったい円柱形の建物がマディソン・スクエア・ガーデン Madison Square Garden で、スポーツアリーナやシアターとペンシルベニア駅(ペン・ステーション)とが共用されている。ペン・ステーションはロングアイランド鉄道やニュージャージー・トランジットのターミナル駅で、ロングアイランド方面やニュージャージー方面やニューアーク空港へのエアトレインなどがじゃんじゃん発着して、たくさんの人々が行き交っている……はず。2万人収容のスポーツアリーナでも、5千人収容のシアターでも、毎日なんらかのイベントが催されていて、たくさんの人を集めている……はず。でも、今日はどちらもひっそり。

平べったい円柱形のアリーナ。ペン・ステーションは今は地下にあるけれど、かつては向かいの中央郵便局と対をなすボザール様式の見事な駅舎があったそう

さて。
そのまま8番街を南下してもいいのだけど、もう一回9番街に戻ることにした。とにかく行けるところまで下ってみるのだ。目標は立ち入り禁止地区の境界ギリギリまで!

ハイラインからチェルシー地区へ

32丁目以南の9番街にはとりたててランドマーク的なものはなく、普通の都市の街並がダラダラと続く。昨日歩いたところでも、グランドセントラル駅からエンパイア・ステート・ビルの辺りではポツリポツリと開いている店があって歩く人も少しはいたけれど、この辺りは田舎町のシャッター街のような雰囲気で、とてもマンハッタンとは思えない寂れっぷり。雨が上がって空が明るくなってきたものだから、街全体がハッキリ見えちゃって、“打ち捨てられた感” がよけいに際立たされてしまうよう。

右手の方にハイライン The High Line [WEB] が見えてきた。かつてマンハッタンのロウアー・ウエストサイドで運行されていた貨物線の高架跡をそのまま再利用して公園に作り替えた空中緑道で、パリの12区にあるプロムナード・プランテに次いで2例めになるんだそうだ。たくさんの草花や低木の植えられたウッドデッキの散策路を、ハドソン川とか斬新な意匠の周辺建造物とかを物見遊山しつつのんびり空中散歩……なんて目論んでたんだけどなあ。歩くだけなら大丈夫なんじゃないかと思ったけど、やっぱり今日は閉鎖されているみたい。あーあ。

全長1マイルのハイラインの真ん中あたり西側の10番街から11番街、20丁目から26丁目にかけてのチェルシー Chelsea 地区には大小さまざまのアートギャラリーが200軒以上あるという。そもそもがこのあたりは倉庫街だった場所で、高級化して商業化してしまったソーホーから次々にギャラリーが移転してきて、新しいアート発信の中心になってきた。つまり30年前の私が憧れたSoHoは今はここチェルシー地区にあるわけ。事前の机上計画でも、当然ここも徘徊してお気に入りのアートを探すつもりだった。勿論、そんな計画も全部パア!だ。ギャラリーやアートスペースが軒並みシャッターを下ろしていると、かつての倉庫街そのもののくすみっぷりで。とてもとてもそんな “とんがった場所” には見えない。

そういうわけでチェルシーのギャラリー巡りは不可能なので、19世紀に建てられた建造物がそのまま残るチェルシー歴史地区 Chelsea Historic District をふらついてみることにした。ギャラリーの集まるエリアとはハイラインをはさんで反対位置の東側、8番街から10番街と20丁目から23丁目との間が大まかに歴史地区と定められているよう。ストリートを通り抜けることと建物の外観見るだけなら出来るでしょ。タイムスリップしたような気分、味わえるかな?

ハイラインは閉鎖されていて歩く人はいない

ごろごろと転がされている植木鉢。大きさの対比ができるものと一緒に撮れなかったけど、この鉢は小さなユニットバスくらいのサイズがある巨大なものなのだ

21丁目のワンブロックをまるまる占める巨大なゴシック様式の建物がゼネラル神学校 General Theological Seminary。NYで一番古い建造物とのことだけど、それでも19世紀前半なのよね……。
周辺はブラウンストーンや赤煉瓦のタウンハウスが連なっている。蔦の絡まる外壁、クラシカルな鉄線細工の手すりを持つ玄関前の階段、同じく鉄線細工の柵に囲まれたささやかなスペースの前庭には季節の花々やよく手入れのされている芝や庭木、時節柄その前庭や窓に飾られているハロウィンのグッズ、鮮やかに葉を色づかせている街路樹……しっとり落ち着いた静かで瀟洒な住宅街だ。Mちゃん宅のように高層アパートメントの住まいもいかにもNYらしいけど、これはこれでNYでの生活の別の顔だ。「セックス・アンド・ザ・シティ」の主人公キャリーが暮らしていた家もこの辺りという設定じゃなかったっけ? わずかに目を転じれば、斬新で超モダンなガラス張りのビル群が頭をのぞかせていて、そのコントラストがとっても面白い。

……などという感想を述べられるような状態ではなかった。しっとり落ち着いた静かで瀟洒な(はずの)住宅街は、昨夜の強風にもみくちゃにいたぶられていた

ハリケーンの爪痕残るダウンタウン

ゼネラル神学校からの角を曲がった途端、目の前に広がったのは鮮やかな色たちに彩られた地面。赤、オレンジ、黄、緑……必要以上に落葉させられた大量の葉っぱがびっしりと路面に敷き詰められている。一見とても艶やかな秋の風景なのだけど、雨を含んでびしょびしょの葉っぱたちは踏みしめた靴裏でカサコソと乾いた音を奏でるわけではなく、ペタペタと靴裏にまといつき貼りつきヌルヌル滑りそうになるしで、歩きにくいことこのうえない。やっぱ濡れ落ち葉って鬱陶しいわぁ……。どこから吹き飛ばされてきたのか、ハロウィンのカボチャが道端に転がっていたり、鉢植えが逆さまにひっくり返っていたり。
何人かの人たちが道路や前庭に散らばった落ち葉を掃いたり折れた枝を束ねたりなどの片づけをしていた。住人総出でやっている感じではないのは、この辺りは避難対象地域だからなのかな。

ハリケーン一過のチェルシー歴史地区には折れた枝や落ち葉が散乱しまくり

吹きだまる濡れ落ち葉、なぎ倒される植木、あらぬ場所に転がされてしまったハロウィンのカボチャの飾り……前庭はぐちゃぐちゃ

玄関前に対で置かれていたはずの花鉢の片方は階段下でひっくり返っていた

落ち葉たちで埋め尽くされる路面は一見とっても綺麗なんだけどね……。掃き掃除をする人の姿が遠くに見える

庭木に吊るされた骸骨人形は、きっと片付け忘れられちゃったに違いない。一晩中雨風に弄ばれてぐったりとしょぼくれていた

無惨に痛めつけられたチェルシー歴史地区の住宅街を抜け、ハイラインに沿って下り、ミート・パッキング・ディストリクト Meatpacking District と呼ばれるエリアに入る。「ミート・パッキング」という名前の由来は、その昔精肉工場が多く立ち並んでいたから。夜には近づけないほど危険な地域だったこのエリアも、開発が進んで精肉工場跡地にお洒落なブティックやレストラン、バーなどが入って、昼間はショッピングやブランチを楽しむ場所、夜はバーやクラブへ繰り出す人たちで賑わう、ホットなエリアへと大変身!
……なはずだけど、やっぱり今日は閑散としている。ただの裏ぶれたシャッター街だ。

ぜひとも立ち寄りたかったチェルシー・マーケット Chelsea Market [WEB]も当然お休み。ナビスコの工場や倉庫を往時の面影を残したまま改装したショッピングプレイスには、人気のベーカリーやスイーツの店、いろいろな食材やお惣菜、ワインショップ、インテリアやファッションと、さまざまな店が入っている。まあ、つまりはお洒落バージョンの “市場” なわけ。固く閉ざされた鉄格子のシャッターから中を覗き込んでみたけれど、中は薄暗くてよく見えない。それでも一生懸命目を凝らしてみると、いろいろな店が入ってて、ハロウィン仕様のディスプレイやポップなバナーなんかが吊るされているのが見えて、楽しそうな雰囲気だけはわかる。中にはレストランもあるけれど、そこかしこにテープルが設置されているとのことだから、いろいろなお店で好きなものを買って気軽にランチやティー・ブレイクしようとか思ってたのになあ。

ハイラインに沿ってさらに南下してみよう。とにかく行けるところまで行くつもりなんだから。
歩いているうちに気がついた。そういえば交差点で信号待ちしていない。
そうか! 信号機が動いていないんだ! そういえば照明の類いもいっさい点いていない。
昼間だからわからなかったけれど、この辺りは停電エリアなんだ! 走ってるクルマは少ないけれど皆無ってわけではないし、人通りだって少ないけれど人っ子一人いないわけではない。自動車も歩行者も、なんとなくゆるゆるっと進みながらお互いに目配せし合ったりして、それなりに「譲り合い」とか「秩序」とかが生まれているのが不思議。

12丁目の2本南側のガンズヴォート・ストリート Gansevort St. がハイラインの起点というか終点というか、とにかく南端で、ここから南のブロックは「ヴィレッジ」と呼ばれるエリアになる。「ヴィレッジ」とつく街の特徴は、ミッドタウンやアップタウンのようなマンハッタン典型の碁盤目タウンの造りとは違って、小さく細かなストリートが入り組んでいるってこと。19世紀以降に都市計画が始まる前から住宅地が形成されていたためだそうで、この辺りもチェルシー歴史地区同様に風情ある街並が残っている。東側がイースト・ヴィレッジ、6番街から西側はウエスト・ヴィレッジ West Village で、別称はグリニッチ・ビレッジ Greenwich Village 。20世紀初期から文化が花開いた地であるわけ。60年代後半に同性愛運動発祥の地になって、今もゲイ・カルチャーの中心地。だから、普段だったらそこかしこでホモホモしい人たちを見かけたんだろうけど……。

でも、この辺りを歩き回りたかったのはホモホモしい人たちウォッチングが目的なわけではなくて、四季を感じられる美しい街並に連なるアートの香りのするセレクトショップなどを丹念に覗くためだったのだ。勿論、今日はショップのすべてが固くクローズされているのだろうけど、せめてウィンドウ・ディスプレイだけでも眺めることは出来ないかなと考えたわけ。

まずはウエスト・ヴィレッジの真ん中を通るメインストリート、ブリーカー・ストリート Bleecker St へ。NY発のブランドマーク・ジェイコブス Marc Jacobs をはじめ、お洒落でとんがったショップが軒を連ね、カップケーキのマグノリア・ベーカリー Magnolia Bakery も本店はこの通りにある。
とにかく行ってみたかったのは、マーク・ジェイコブスのブックストアブックマーク BOOKMARC [WEB]。オープンしてまだ2年ちょっとの新しい店で、マーク自らがセレクトした写真集やアートの本や、ロゴ入りオリジナル・ステーショナリーがとても素敵だって話だった。私の趣味や好みを熟知しているMちゃんも、私がきっと気に入る店のはずって言ってたし。

ところが! 暴風雨でウィンドウが破損することを危惧してか、ショウウィンドウのディスプレイどころか、店内の棚に並べられていた商品までもがすべて片づけられていた。ガラス越しに見る店内はまるで夜逃げの後のよう。なんだよ〜〜〜、どんな商品があるのかすら見られないのかよ〜〜〜!

老婦人が黙々と掃き掃除をしている。ポツンと置かれたハロウィンの飾りがなんだか悲し気

風にむしられて可哀想な状態になっている植木鉢。しまい忘れちゃったのかしら……

枝ごと飛ばされてきたの? こんなものが道のあちこちに散らばっている

この樹も枝が無惨に引き剥がされていた

ガッカリしながらバロウ・ストリート Barrow St コマース・ストリート Commers Stグローブ・ストリート Grove St といった小径をほっつき歩く。煉瓦や石造りのタウンハウスの並ぶ住宅街は街路樹も豊かで、きっと春は桜、夏は緑、秋は紅葉、冬は雪景色と四季の彩りがとても美しいのだろうかと思う。なのに、その豊かな街路樹は葉を毟られ枝を折られ皮を引き剥がされ、惨憺たるありさま。

飲まず食わず座らずトイレにも行かず

飲まず食わずで歩き続け、時計を見ると、もう1時半。雨はパラついたり上がったりの繰り返しでベンチなどもびしょ濡れだから腰をおろして休憩することもしていない。もちろんトイレだって行っていない。昨日歩いた時にはタイムズ・スクエアやエンパイアステートビル周辺では店を開けている飲食店も結構あったので、今日もなんとかなると思ってしまったのだけど、このエリアではそんなことは全く望めなさそう。だって停電してるんだもん、どうしようもないよね。

喉が渇いた! お腹空いた! 足が棒になってる! トイレにも行きたい! いや、トイレはまだ切羽詰まっているわけではないけれど……でも、この先数時間も我慢しなくちゃならないの? この辺りをウロウロしていてもトイレの使える飲食店を見つけるのは不可能っぽい。どんどん南下していくつもりだったけど、街のダメージはここより状態が良くなっていくわけはないよね。引き返すにしても、どの辺りまで戻ればいいのか見当がつかない。

進退をどうするべきか悩みつつ歩き回っていると、道端でカットピザを齧っている人に行き会った。少し先ですれ違う人もピザを食べている。え? もしかしてピザ売ってるの?? ピザを食べてる人の来た方向に向かっていくと、トマトソースとチーズの香りが強く匂ってきた。30人くらいの行列が見え、その先には一軒の小さなピザ屋が……確かに店を開けている! 電気は停まってるんだから、まさか自家発電? ああ、きっと薪で焼く石釜のお店なんだ。

ただ一軒だけ店を開けていたピザ屋さんには長蛇の列。ちょっと並ぶのを躊躇した

店内にはテーブルが5〜6卓くらいしかなく、外観も内装も思い切りカジュアルな感じで、ピザスタンドに毛の生えた程度の店。だけど飲まず食わずで歩いていた人たちにはまさしく砂漠のオアシスだったわけ。店の外の行列だけで30人、店内のカウンターにはその倍の数の列。2人の店員は大車輪でピザを焼いていて、それが飛ぶように売れている。遠目に見る感じでは美味しそうだし、石釜焼きだからきっとそこそこ美味しいんだろうけど……なぜか並ぶのを躊躇してしまった。行列が嫌だったわけでもピザが嫌だったわけでもないのよね。なんだろう? 選択肢なしっていうのがささやかに抵抗あったのかなあ? もしかしたら同じように店を開いているところがあるかも。それだったら「どちらかを自分で選んだ」って気持ちになれるよね。

そんなふうに考えてもう少し周辺をウロついてみたけれど、他にはそんな奇特な店はなかった。ピザ屋の独占大繁盛を見てか、小型の自家発電機のようなものを引っぱり出してきて開店準備を始めている店は2〜3軒あったけど。

そのままフラフラと3丁目まで来た。このストリートには超有名ジャズクラブ『ブルーノート Blue Note Jazz Club』がある。私もMちゃんも一昨日のジャズライヴがお流れになったのが残念なの。いかにも古き良きNY的な場所だから、私に体感させてあげたいと考えてくれたらしく、実は私よりMちゃんの方が残念がっている感じだった。今朝ブルーノートのウェブページを見たところ、当たり前のように今日や明日のスケジュールが掲示されていて、中止だの休業だの記述はなかったので、「もしかしたら営業するのかな?」などと淡い期待を持って、どうせならと通りがかりついでに確認してみたわけ。超有名なのに店構えはとても質素でこじんまりとしていた。そして当然ながら扉は固く閉ざされてひっそりとしていた。つまりは、ウエブページのインフォメーションを更新する余裕もなかったってこと。そもそも停電しているんじゃジャズライヴが開けるわけがないわね。

ここまで来たところで、これ以上の南下は諦めて引き返すことにした。当初の目標の「立ち入り禁止地区の境界ギリギリまで」は果たせなかったけどね、心情的にはもう十分。ここまで来る時にはいつの間にか停電エリアに入り込んでいたけれど、戻る時にはどこまで電気が生きているのか確認しながら歩いてみようっと。そのうち食事が出来るところも見つかるでしょ。トイレも……まあ、何とかなるでしょ。

帰路ではどんな発見があるかしら

3丁目のニューヨーク大学 New York University の周りをぐるっと一周して、隣接しているワシントン・スクエア・パーク Washington Square Park の中を横切ってみる。グリニッチ・ビレッジのランドマーク的存在のこの公園は、NY大学の学生たちや周辺の人たちの憩いの場で、円形の噴水広場には常にさまざまなストリート・パフォーマーが集まっているとのことだけど……。やっぱり今日は技を披露する人も観客も一人もいない。ワシントン元大統領の就任記念に建てられたという凱旋門のようなアーチだけが、その堂々とした姿を雨に濡れそぼらせていた。

ワシントン・スクエア・パークから5番街を北上して、8丁目で左に折れて、6番街を北上して、11丁目で右に折れて、5番街を………。そうやって5番街と6番街を交互にジグザク歩いたけれど、信号はひとつも点いてないし、店を開けている商店も一軒もないし、人もクルマもほとんど通らないしでゴーストタウンっぷりが半端ない。ああ、お腹空いてきたなあ……ものすごく空腹になってきた。昨日歩き回っていた時は3分の1か4分の1くらいは飲食店も店を開けていたような気がしたけれど、たまたまそういうエリアばかりを通っただけに過ぎなかったのね。やっぱりさっきの店でピザ買って食べておけばよかったのかしら。何となくピザの気分になれなかったのと、ただひとつの選択肢を押しつけられている気がしたんだけど。本格的に空腹になってきた今は選り好みの余地すらない……。もう、バカだなあーっ、私!

バカバカと自虐しつつペコペコのお腹を押さえながら歩くうちにフラットアイアン・ビル Flatiron Building のところまで来た。5番街と22丁目とブロードウェイに囲まれた三角地帯に建つ三角形のビルで、ルネサンスリバイバル式の意匠はクラシカルでなかなか素敵。昨日もこのビルの足元を通ったんだよね。ビルの面する道路の信号は点いていない……ってことは、まだ停電エリアを抜け出せていないというわけだ。昨日は意識してなかったので気づかなかったけど。
三角形のビルの頂点部分が突き刺さっているのは23丁目、その向こうに樹々がこんもり見えるのはマディソン・スクエア・パーク Madison Square Park。昨日は素通りしちゃったので、今日は無人のパークの中を突っ切ってみる。再び道路に出て、そのまま26丁目を渡ろうと信号待ち……って、あれっ? 信号点いてる??

どこまで停電してるのか調べるつもりだったんだよね! 道は渡らずに回れ右。マジソン・スクエア・パークの周りに沿って歩きながら信号を確かめてみた結果、26丁目の交差点を境に南が停電していることが判明した。さっき渡ろうとした信号が境界だったってわけね。

強風で壁が崩落したらしきビル。面した通りには立ち入り禁止のテープが貼られていた

あああ! 信号が点いてる! 電気が来てるよお!! ※この写真は26丁目よりはだいぶ北のもの

電気が生きている範囲はわかったけれど、だからといってそのエリアが通常営業しているわけではないので、すぐに昼食にありつけるわけではない。ああ、もう空腹が限界。グリニッチ・ヴィレッジのピザ屋さんは本当に奇跡みたいなものだったんだと今更ながらちょっぴり後悔した。
とりあえずはエンパイアステート・ビルを目指そう。あの周辺なら少しは人が集まってるだろうから、商売っ気のあるところが何軒が店を開けてるかもしれない。

ようやくお昼ごはんにありつけるゥ!

行き倒れ寸前の体で5番街をヨロヨロ北上。30丁目周辺まで来るとハングル文字の看板が増えてきた。ああ、この辺りはコリアンタウンなのね。相当お腹がペコペコだと思ってたけれど、韓国料理を食べる気はこれっぽちも起きなかったので、本当の限界まではまだかなりの余地があるってことかな。そもそも店は一軒も開いていないけどね。

コリアンタウンを抜けてエンパイアステート・ビルの足元まで来ると、カットピザのスタンドに10数人の行列が出来ていた。うーーん、でもなあ、$0.99Pizzaって……いくらなんでも安過ぎない? お腹ぺこぺことはいえ、ちょっと食指わかないなあ。この期に及んで贅沢かしら、私。他に店はないかとエンパイアステート・ビルの根元をぐるぐる歩き回ってみたけれど、普段はおのぼりさん観光客だらけという場所柄もあるのか、開いている店は屋台に毛の生えたレベルのスタンド店ばかり。空腹を満たすのももちろんだけど、腰を下ろしたいのよね。欲を言えばトイレも使えるとさらにありがたいんだけど……。
この辺りをいくら徘徊していても望み通りの店はなさそう。それなら昨日パニーニを食べた店に行こうかな、他にもベーグルサンドなんかもあったしね。そう決めて34丁目を東に歩いていくと、セルフサービスのピザレストランが店を開けていた。日本のファミレスのような明るいカジュアルな雰囲気で、抵抗なく入れそう。ここでいいや、いや、ここにしよう! 結局今日はピザを食べることに決まってたんだあ。

開いている店の選択肢がほとんどないからか、3時半というランチには遅過ぎる時刻にも関わらず、店内はかなり混んでいた。うなぎの寝床式のかなり奥行きのある店舗のようで、奥の方のテーブルはいくつか空いている感じなので、安心して列に並んだ。出勤できたスタッフも少ないのか、焼き担当のスタッフ1人とレジ担当スタッフ1人きりで馬車馬のように頑張っているんだけど、焼き上がるスピードが客の数に追いついていってない。そのかわり焼きたて熱々が食べられるもんね! いつもなら数種類のピザが並べられてるはずの空っぽのショーケース前に、私を含め数人の客がトレーを手にじっと待つ。焼き上がってきたピザはすぐに切り分けられ即座になくなった。私も1枚ゲット。私が買ったのはサラミのピザだったけど、前後してキノコのピザが焼き上がってきた。あー、あっちの方がよかったなあ。ま、しょうがないか。

トマトソースとチーズとサラミソーセージのみのシンプルなどうってことのないピザだったけど、飲まず食わずの空腹にはご馳走だった。それにしても一切れの大きなこと!

ペットボトルのアイスティーと合わせて$7.16と、ちょい高めだけどピザ一切れのサイズはとても大きい。生地は薄めだけどモッチリしていて、チーズはモッツァレラではないけれどトマトソースはもうちょっと酸味を押さえて欲しいところだけど、そんなのは些末なこと。なにしろ限界ギリギリの空腹だったんだもん、焼きたてピザは本当に大ご馳走だった。一気にむさぼり食い。500mlあるアイスティーも一気飲みしてしまった。想像以上に喉もカラカラになってたみたい。ちなみにレモンフレーバーのアイスティーが微炭酸だったのは軽い驚きだった。多分、紅茶の味も香りもほとんどないのを誤摩化してるんだろうけど。喉カラカラじゃなきゃ、全部飲めなかったな……

さらにありがたいことに、この店にはトイレがあったのだ! ばんざーい! 男女共用のがひとつしかないけれど、10人くらいが順番待ちしていた。もちろん並ぶ。

>> 何を当たり前のことを喜んでいるかというと、このクラスの飲食店に客の使えるトイレがあるのはNYでは全然当たり前のことじゃないから。支払いにチップが必要なレベルの店でないとトイレはないと考えた方がいい。マクドナルドやスタバでは大抵の場合ダメ。ヨーロッパでもトイレ探しは苦労するけど、少なくともカフェに入れば使えるぶんマシ。日本の公衆トイレの数の多さと綺麗さは世界でも特異なわけで……

ああ、お腹も満たされてトイレもすませて、これで安心だわ、2時間は余裕で歩ける。よく我慢したよなあ……

首吊りクレーンを野次馬しに行く

休憩も食事も排泄も全部クリアして何の心配もなくなって足取りも軽やかになった気がする。鼻歌混じりで6番街をぐんぐんと北上。ミッドタウンの方向に進むにつれてだんだん人通りも増えてくる。
55丁目まで来るとその先の道路が封鎖されていて、パトカーが何台か止まっていて、10数人ほどの警官たちもいる。え? 何? 何か起きたの? あーっ、そうか、ここ、首ちょんぱクレーンのせいで強制避難させられてるエリアなんだ! 警官の封鎖ラインの先(上って言った方がいいかな?)にあるのは、昨日のTVで見た建設中の90階建て高層ビル『One57』。警官もいるけど野次馬もうじゃうじゃいる。とりあえずクレーンはまだ落下を免れてはいるし、壊れっぷりは今朝TVで見た状態から進んではいないみたいだけど、かといって撤去作業にも入っている様子もない。
封鎖されているのは6番街から7番街の間、55丁目から57丁目にかけて。とりあえず封鎖ラインぎりぎりを辿りながら、いろんな方向から首吊りクレーンを観察してみた。One57は周辺の高層ビル群に比べて、頭ひとつもふたつも突き出すのっぽビルなので、どの方向からでもよく見える。どの方向から見ても壊れっぷりはよくわかるし、どの方向から見てもとても怖かった。

首ちょんぱクレーンを多方向から激写。いざ足元に立ってその高さの半端なさを目の当たりにする怖さといったら……!

3日前にセントラルパークを散歩した時の写真。この群を抜いて背高のっぽのビルのてっぺんでクレーンが首ちょんぱになっているわけだ

時計を見るともう5時近い。Mちゃん宅に帰るべきかどうするか、コロンバスサークルのタイム・ワーナー・センターの前からMちゃんに電話してみると、今は自宅ではなくZ夫妻と一緒に彼らの滞在ホテルのティールームにいるとのこと。本当だったら彼らは昨日のうちに帰国便に乗るはずだったのにね。ハリケーンのせいでフライトキャンセルで延泊せざるを得なくなっちゃって。でもそこそこ高級ホテルだし幸い大きな被害のない立地だったから、それなりに滞在を楽しむしかないかと開き直ったら、首ちょんぱクレーンの極近という限定的な避難対象ブロックに引っかかってしまって、嵐の夜の大移動。ホントにお気の毒。彼らの場合はツアー会社に全部手配してもらえたけれど、自力で航空会社と談判して自力でホテル移動の交渉して自力でタクシー呼んで移動して……その煩雑さ、考えただけでゾッとするわ。

タイムズスクエア近くのホテルとのことなので、私がそこまで行って合流することにした。ここからだとMちゃん宅をいったん通り越してしまうことになるけど、私だけひとり先に戻るのもMちゃんのご主人に余計な気遣いさせてしまうものね。

タイムズスクエア近辺は昨日以上に賑わっていた。もちろんミュージカルの類いはお休みだから “いつものタイムズスクエア” の賑わいにはほど遠いだろうけど、ついさっきまでチェルシー地区やグリニッジ・ヴィレッジの停電エリアを歩いていたものだから、ビルボードのネオンやディスプレイがチカチカしているのを見るだけで山から下りてきた狸みたいな気持ちになってしまう。

日中歩き回った範囲ではチェーンのカフェやファーストフードはすべて閉店していたけれど、ホテル併設のスターバックスは営業していて、おまけにとんでもなく混んでいた。賑わう様子を見ていたら、昼間の飲まず食わずの渇望感が唐突に甦ってきて、思わずコーヒーを買ってしまった。それもうっかりGrandeを。こっちではShortというサイズは存在せずTallが最小なので、Mサイズのつもりで真ん中を選ぶとGrandeになってしまうのだ。直前までグラグラ沸騰させてたんじゃないかと思うほどの熱湯コーヒーが口すれすれまで入っていて、冷まそうにもミルクを加える余地もない。歩きながら飲むつもりだったのに、紙コップも熱すぎて持つのも難儀する。ああ、もうバカだなあ、一昨日に失敗したばかりだったのに!

ハリケーンの爪痕はどれほどのもの?

帰宅するとMちゃんのご主人とワンコたちが迎えてくれた。ミッドタウンの飲食店は今日の夜から店を開けるところもずいぶんあるそうなので、晩ごはんは3人で外食することに決めた。それまで1〜2時間ほど休憩だぁ。飲まず食わず座らずトイレに行かず……で酷使したものね、今日の私の身体。
ついさっきまで停電してゴーストタウン化した街を歩いてきたわけだけど、こうしてMちゃん宅のソファでダラダラ横になっているととても快適で、ハリケーンの甚大な被害を受けたなんて嘘のような気がする。でも嘘でない証拠に、TVでは激甚被害の様子を逐一映し出しているし、ネットに繋いでみると被害を撮影した写真たちが次々とアップロードされ始めているのだ。
「川と化したストリートに半分浸水した自動車がプカプカ」
「滝のように水が流れ込むグラウンド・ゼロの建設現場」
「冠水した公園に浮かび漂うメリーゴーランド」
「突き破ってきた大木に屋根を串刺しにされている住宅」
「壁がごっそりスケルトン状に剥がれ落ちて中が丸見えのテラスハウス」
「電線に引っ掛かるトランポリン」

そして「90階の高層ビルのてっぺんで首吊り状態になっている破損したクレーン」

海抜の低いマンハッタン南部はそのほとんどが冠水してしまった。そのギリギリまで見に行くつもりだったけど、そこまでは全く到達出来ず、せいぜいが停電した地域を数時間フラフラしたのみだったのね、私は。

なんといっても大変なのが地下鉄。NYの地下鉄のインフラは100年超だもの、“かなり激しい雨” 程度でも入口から吹き込んで水浸しになってしまう駅がいくつもあるそう。こんなハリケーンが直撃しちゃえば大冠水は必至で、ロウアー地区の地下鉄駅では入口がすでに水深何mというところもあってスキューバでもしなくちゃ入れないレベル。いや、冗談でなく。雨はたいしたことなかったのにね、大潮と老朽インフラのせいで駅ごと水没とは……。

対して風は凄かったみたい。とはいっても最大風速で48.6m/s。ちなみにその1ヶ月前──9月28日に石垣島や沖縄を通過した台風17号は最大風速55m/sで最大瞬間風速は75m/sだった。欠航や運休で交通機関がメタメタになったり避難勧告があったり冠水や停電したりの被害もそれなりにあったけど……台風の多いエリアの人たちなら今回のハリケーン・サンディのレベルでこんな激甚災害になっちゃうのは理解出来ないかもしれないね。ていうか、日本の台風クラスのハリケーン来たらNYどうなっちゃうの? ……なんて、ちょっと思っちゃったり。

ハリケーン一過のディナーはどこにしよう?

日が落ちてからMちゃん夫婦と3人で食事に出た。ミッドタウンからアップタウンにかけては半数くらいの飲食店が今晩から店を再開していて、道行く人の数もそこそこあり、ネオンの灯もそこそこ戻っていて、バスも何路線か動き始めて、どことなく街の雰囲気が華やいできている。歩く人たちの纏う空気も、拘束から解放されてホッとしたような気持ちが浮き立っているような……私たちもきっとそう。

さて、どこで何を食べようか? 手軽で美味しい飲食店の選択肢が多いヘルズ・キッチンの方向に歩いていたけど、どんな店が開いているか閉まっているもよくわからない。私がなんとなく「ああー美味しいハンバーガー食べたいなあ……」と呟くと「じゃ、ハンバーガーにしようか!」ということになった。この場合のハンバーガーはマクドナルドやバーガーキングのようなファストフードではなくて、ナイフとフォークがセッティングされたテーブルでちゃんとウェイターがサービスしてくれる肉の焼き方も聞いてくれるようなお店のハンバーガーのことね。

おススめの店はリンカーン・センターの近くだかで、今向かっているヘルズ・キッチンとは真逆の方向。くるりと踵を返してまたもグングン歩く。
目当ての店は、いかにもアメリカン・ダイナー風なカジュアルレストランという感じで、店内はメチャ混み、入りきれずにいる客が店の外に溢れていた。おまけに入口脇の小さな黒板には「No Dishes, Bar Only」の文字。えーっ、料理ないの? でも、店内のテーブルでは食事をしているお客さんもいるみたいだけど? 念のため店員に聞いてみると、料理は終わっちゃってチップスのようなスナックとドリンク類だけだそう。きっと食材のストックがなくなっちゃったんだろうね。昨日も今日も流通が閉鎖されちゃってるから補充されてないものなあ……

そういうわけで、私たちはディナー難民となってしまった。うわーん、ごめんなさい、私がハンバーガー食べたいとか言ったばっかりに! 戻ってくるのに時間ロスしちゃったから! 今日の私の星回りは「レストラン難民になる」なんだわ。まあ、昼間の私は受け入れ先なく彷徨う難民というよりは遭難者に近かったけど。
結局、10番街と58丁目の角にあった『グリーク・キッチン The Greek Kitchen』 [WEB]というギリシャ料理レストランに入ってみることにした。Mちゃんたちもちょっと気になっていながらまだ入ったことないそうで、じゃ試してみようということになったわけ。

まずまず満足のギリシャ料理ディナー

店内は青と白を基調としたインテリアで、テーブルクロスは紺と白の大判チェック、床も紺と白のタイル貼りで、南欧の気取らない食堂風の印象。白亜の建物と青いエーゲ海と空をイメージしてるのかな? うん、悪くなさそうだね。かなり混んでいたけれど思った以上に店の奥行きはあって一番奥のテーブルにいくつか空きがあった。席まで案内される途中で他のお客さんのテーブルをチラ見した限りでは、どの料理もなかなか美味しそう。

さあ、どれを食べようか? 3日目の中華の時と同じく今日もMちゃんのご主人が一緒だから、いろんな種類のものがたくさん頼めるね。

メニューの表紙は爽やかで可愛いらしいイラストで飾られていた。結構私好みの絵

まずはキリリと冷えた白ワインで乾杯。適当に選んだけど辛口で美味しかった

グリーク・サラダにはタコスのようなクレープのようなフォカッチャのようなパンがついてくる

大ぶりのホタテやイカ、タコ、エビなどをシンプルに焼いたシーフード・グリル

3人いればワインも赤白1本くらいずつイケるよね、ということでまずは白ワインを選び、ハリケーン一過を祝して乾杯。明日以降の交通機関がどうなるのか、明後日に私は予約したフライトに無事乗れるのか、まだ全然わからないけど、とりあえず乾杯。メニューに並んでいた真ん中から適当に選んだけど、あまり酸味は強くなくしっかり辛口でなかなか美味しい。私、フルーティ過ぎる白はあんまり好きじゃないので、よかった。

ワインを飲みながらオーダーを決める。
オリーブとチーズがたっぷり入ったグリークサラダは、サラダの量はさほど多くはなかったけど、クレープかタコスみたいに薄焼きにしたパンが添えられてきた。モチモチした歯ごたえがあって香ばしくて美味しい。
やっぱり地中海の国の料理なら魚介だよね、と頼んでみたシーフードのグリルは、ホタテやエビ、イカやタコをシンプルに焼いたのみのもの。大ぶりの魚介はみんなプリプリで、味つけもオリーブオイルとビネガーと塩胡椒のみのシンプルなもの。さらにグリーンサラダもたっぷり添えられてきたので、生野菜だけでも結構な量になる。わざわざグリークサラダ頼むまでもなかったかな? まあ、いいよね、野菜はたっぷり食べましょ。

シーフードグリルも頼んだけど、肉厚のイカ──カラマリも外せない。いわゆるイカリング、イカフライなのだけど、香味風味の粉だけの衣でオリーブオイルでサクッと揚げてあるので、日本のイカフライやイカ天よりアッサリたくさん食べられる感じ。うん、南欧風のイカフライはホントに美味しいわぁ。クレープ風の薄焼きパンはここにも添えられてきた。

肉厚のイカをカラッと揚げたカラマリ。スペイン風のものほどニンニク風味は強くない

ナスと挽肉がたっぷり詰まったムサカ。照明が暗いので綺麗に撮れなかった……

ばくばく食べながらアルコールもグイグイ進む。最初の白ワインはとっとと空けてしまい、今度は赤ワイン。ややしっかりめのものを選んだ

いい加減お腹がいっぱいになってきたところで、いわゆる “定番・ギリシャ料理” のナスのムサカが出てきた。ううっ、デカイ。……でも、美味しそう! ムサカはソテーしたナスとラム挽肉にたっぷりのベシャメルソースが重ねられ、さらにマッシュポテトでぐるりと包んで、オーブンでこんがり焼いた料理。ただでさえボリューム満点の料理なのに、ハンドボールくらいの大きさがある。切り分けるナイフの刃が押し返されそうになるほどに、中身はみっしり。うん、ナスがとろとろで美味しい。スパイスが効いていて思ったよりサクサクと食べ進められるけど、やっぱりマッシュポテトとベシャメルソースのコンボは胃袋にズシンとくるわぁ……

さすがにお腹がはち切れる寸前で、デザートに心惹かれる余裕もない。とはいえ、とどめのムサカがボリューミィすぎてちょっと胸焼け気味なので、カフェだけもらおう。料理が割とちゃんとしたヨーロピアン・スタイルだったので、コーヒーにもちょっと期待したわけ。イタリアやフランスのビターな濃厚カフェには及ばないけれど、しっかり香る細かな泡立ちの濃いめのコーヒーだったのはまずまず期待どおり。少なくともスタバの熱湯コーヒーレベルでなかったのはよかったわ。

満足して帰宅。今日は一部のバスが動いたけど明日はどうなるのかな? 地下鉄はまだ無理だろうな。でも、私には2本の足があるもんね。そう、結構頼りになる足が! 明日の予定は明日また考えよう。

 
 

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