Le moineau 番外編
- 紺碧のイタリアとクロアチア歩き -

サンタ・プラッセーデ聖堂で9世紀のモザイクを味わう

旅の11日め、丸一日を過ごせるのも最終日となる今日は5時半に起床。シャワー浴びたり、荷物整理したり、ネットしたりとゆるゆる過ごし、8時に朝食室へ。うんとショボくも豪華でもなく、すごく美味しいわけでもないけど別に不味くもない普通の中級ホテルのラインナップの朝食をすませた。部屋には戻らずそのままトラステヴェレ駅に向かう。

今日はローマ近郊のネットゥーノとアンツィオという町に半日エクスカーションする予定なんだけど、その前後にいわゆる「ローマの有名どころ」ではない教会をいくつか訪ねようと思うの。人がわんさかいるところに一日中いたくないっていうのも理由のひとつだけど、これまで何度もローマに来ても網羅しきれていない珠玉の教会がまだたくさんあるのでね。

とりあえずトラステヴェレからネットゥーノまで通しで切符を買おうとしたところ、カード決済用の自販機が故障していてパネルボタンが途中で反応しなくなる。途中まで出来ちゃうっていうのが曲者で、同じところで止まる。8:46の列車に乗りたいんだけど……! 隣の機械に並び直してイライラ。イタリアの自販機は日本のように「選ぶ、金入れる」の2工程では終わらずに6工程くらいあって、さらに反応がトロいので切符1枚買うにも時間かかるのだ。幸い列車が2分ほど遅れてくれたので切符購入が間に合った。ホームまで走って刻印しようとしたら、この刻印機がまた反応しない。あー、もうイタリアあるあるすぎ!
列車がホームにすべり込んでくる、私は他の刻印機を探して走る、見つからない。結局、刻印せずに列車に飛び乗った。テルミニ駅まで15分、大丈夫とは思うけど検札に会いませんようにとちょっとドキドキ。

テルミニ発ネットゥーノ行きは1時間に1本だけど、乗換えの待ち時間が40分あるので、まだ見てない教会を一ヶ所訪ねてみようと思う。去年の早朝散歩で立ち寄ったサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂 Basilica Papale di Santa Maria Maggiore の少し先のサンタ・プラッセーデ聖堂 Basilica di Santa Prassede へ行こう。40分あるといっても、単純な往復だけでも12〜13分取られるので、実は結構忙しいのよね。
サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂前の大きな広場の一番奥の道路に入り、その横の路地のさらに奥。周辺を他の建物に囲まれていて、それらしいファサードもないし、教会の全容が見えない。さらに側面から入るようになっているので、とてもとても見つけにくい。

サンタ・プラッセーデ聖堂の入口のある路地を路上駐車のクルマがびっしり埋めていて、よけいにわかりにくい。ただでさ存在感のない建物と通用口のような入口なのに……

貧弱な外観からはとても想像できない見事な堂内。モザイク以外にも、美しい格天井、たくさんのフレスコ画、コズマーティ様式の床……中心の丸は聖女ブラッセーデが葬られた井戸の跡だそう

後陣の手前に "勝利の門" と呼ばれるアーチがあり、この壁部分にもモザイクが施されている

後陣のモザイクで描かれた聖人たちの表情はちょっと愛らしくて親しみやすい感じ。左端の女性が聖女プラッセーデ

まるで教会には見えない建物の教会には見えない入口を入ると、いきなり主祭壇の真横に出た。外観のショボさにまったくそぐわない広さと美しさで、典型的な「中身はスゴイんです」状態だった。でも、超メジャースポットがてんこ盛りローマにおいて、観光重要度レベルとしてはこの教会は二軍以下なんだよね。それでもこの質の高さ。クロアチアの教会と比べてしまうのは申し訳ないけれど、これがイタリアの教会建築や装飾の "層の厚さ" とさらに "ローマの底力" なんだなあ……。

返す返すも悔しいのは、この教会にある最も美しいといわれるサン・ゼノーネ礼拝堂を見損ねてしまったこと。礼拝堂入口に床に若いカップルがべったり座り込んで語らっていて退いてくれなかったんだもん。ていうか、二人の世界に入り込んでいて側でウロウロする私の存在に気づいてなかったような……。私は駅に戻るのに気もそぞろになってきて「まっいいか」としてしまった。
帰国後に復習していて「天井や壁全体を覆う金色のモザイク」とか「丸いメダルの中に聖人たちの顔が入ったモザイク」などの記述を読んで、改めて悔しさがムクムクしてきた。ああいう場でこそ、オバちゃん特有の図々しさを発揮しなくちゃなのにねー。

海神の名を持つ町はローマからの最短リゾート地

早足でテルミニ駅まで戻り、9:42発のネットゥーノ行きの列車に無事乗り込んだ。ネットゥーノとすぐ隣のアンツィオは列車で1時間ちょっとほど南下した海辺の町で、海水浴や安くて美味しいシーフードなどのローマっ子にとってのお手軽リゾート地なんだとか。東京に住む私たちが湘南まで遊びに行く感覚かな?「ちょっと江ノ島で生シラス丼食べてこうか」みたいな? 違うか(^^)
ローマから一番近いオスティア Ostia の海に比べて水の透明度が全然違うそう。今回はアドリア海だけを味わうつもりだったけど、フェリーが取れなくてローマまで来たんだから、どうせならティレニア海の色も見てみたいと思ったのよね。

1時間10分で終点のネットゥーノに到着。帰りの乗車駅がアンツィオ駅になるか、さらに隣の無人駅になるかはわからないので、とりあえずテルミニまでの乗車券を買っておく。さあ、海辺のふたつの街歩きのスタート!と意気揚々と駅を出るといきなり目の前が工事現場。駅前広場なのかバスロータリーなのか全面ロープで囲われて絶賛掘り返し中だった。広場を通り越してなんとなく歩いていくと3分ほどでマリーナらしきものが見えてきた。あそこがネットゥーノ港 Porto di Nettuno だな。海の色はわからないけれど、奥にクルーザーのマストが林立している。

右手に見える砦のような城壁と塔がサンガッロ要塞 Forte Sangallo かな。16世紀初頭にチェーザレ・ボルジアが建築したもので、城壁に囲まれた内部が旧市街、要塞はコンサートやイベント会場なんかに使われているんだとか。

海辺の道から眺めるネットゥーノ港のマリーナ。まだシーズンには少し早いからか、平日だからなのか、貸しヨットやマリンアクティビティのツアー会社は全部閉まっている

城壁に囲まれた中は中世の街並の雰囲気を遺しているエリアが何区画かある

中世の雰囲気の路地裏のそこここにレストランやショップが点在している。夏や週末には賑わうんだろうなあ

16世紀にチェーザレ・ボルシアによって建築されたというサンガッロ要塞の城壁の門から中に入る

海べりから要塞を見上げてみる。元の城壁のすき間を埋め、さらに建物を継ぎ足し継ぎ足しして結果的にひと塊の砦みたいな形になったんだろうね

城壁内の旧市街は中世風に再現されたもので、こじんまりしたテーマパーク風に思える。小さな路地も雰囲気が整えられているし、こじんまりとしたマルコーニ広場 Piazza Guglielmo Marconi にはお洒落なレストランがたくさん。広場に面したサン・ジョヴァンニ教会 Parrocchia Ss. Giovanni Battista ed Evangelista の扉は閉まっていた。ネットゥーノという町の名の由来は、古代ローマ時代にネプチューン(ネットゥーノ)神殿がこの教会の場所にあったからだとか。雰囲気がいいにもかかわらず閑散として人がほとんどいないのは、バカンスシーズンにもランチタイムにもちょっと早いし、ウィークデイのせいもあるのかな。それでなおさら造りものの町みたいに見えちゃうのかも。

町の名の由来となったネットゥーノの泉は乾涸びていた。ここにもいますねー、イタリア名物・暇なじじいグループが。もっと涼しいとこに座ればいいのにと思うんだけど

ネットゥーノの旧市街はもういいや。どちらかというと私の目的はアンツィオの方にあるんだもの。その前にネットゥーノの泉 Fontana del Nettuno も見てからにしなくちゃ。でも期待に反してガッカリするしょぼい泉だったわ。まあ、全般的には普通の海沿いの町だった。

ネットゥーノからアンツィオまでひたすら歩くこと30分

アンツィオまではアントニオ・グラムシ通り Via Antonio Gramsci を歩いていく。さほど広い通りではないけれど、歩道幅は狭く交通量はそこそこ多い。地図上では海沿いの道に見えるけれど、実は建物が間にあって海はほとんど見えない。なんだよ、普通の町中の道かよ、つまんないなーと思ったら、だんだん視界が開けてきた。3階か4階くらいの建物が海沿いの斜面に並んでいて、ちょうど屋上の高さの位置に沿っている。その向こう側に海が見える。ここで暮らす人たちは、海に出る時は一階から、町に出る時は屋上から出るのね。

サンガッロ要塞を後にして海沿いの道を歩いていく。そろそろシーズンスタートだけど、今日はまだ閑散としている

途中に見晴し台のようなものがあったので立ち寄ってみる。どうやらレストランやバーを併設した海の家のような施設の屋上らしかったけれど、通行人も自由に入れるみたいね

見晴し台から見下ろしたティレニア海のビーチ。まだ海水浴をする人はほとんどいないのね

道の右側には、まるで森のような庭園が延々と続いている

塀囲いされた庭園のようなものが現れた。多少遠回りになってもカンカン照りの道を歩くより気持ちいいんじゃないかと思ったけれど、入口が全然見つからない。Google Mapで下調べした時にも入口も出口も公園名もわからなかった。地図で見る限りはかなり広大で、航空写真で見ると全面緑色で、中にボルゲーゼ城 Castello Borghese などもある。ただ、いざ現地に来てみると想像した以上に "庭園" というよりは完全に "森" だった。わさわさ茂った森の奥に城の塔らしきものの先端が見えてはいるけれど。仕方なく塀に沿ってひたすら歩く。

>> 公園名がないのも通り抜けできないのも当たり前で、ここは17世紀に枢機卿の命で建設されたボルゲーゼ家の城で、私有地なのだった。クーポラと塔のある屋敷は見学できるそうだけど、ボルゲーゼ家の御曹司に電話して許可をもらってから予約しないといけないらしい。そんなのめちゃくちゃハードル高すぎるでしょ

延々続いていた森のようなボルゲーゼ家の庭もようやく終わり、このあたりからアンツィオの町のエリアになる。ここにも古代ローマ時代からの歴史があって、カリグラ帝とネロ帝の生まれ故郷なのだそうだ。カリグラは避暑地としてここで過ごし、ネロ帝はローマ大火の後にここに移り住んだとか。ボルゲーゼの庭の端で道は二股に分かれ、ホントは海沿いを行きたいところをぐっと堪えて右側に。この先にある考古学博物館 Museo Civico Archeologico di Anzio を覗いておきたいのよね。午前中は12時半までなので、もうギリギリ。

博物館は Villa Adele という公園の一画にある。汗だくになってなんとか12時に辿り着くと、門前にパトカーが2台、救急車が1台停まっている。博物館のエントランスに警官が数人、博物館の職員らしき人たちと何か話している。え、何、何? 何かあったの? でも門のところに開館中の表示は出てるよね? 戸惑って棒立ちになっていると、職員らしきおばさまと目が合った。入っていいかジェスチャーすると、おばさまはうんざりしたような顔で首を振る。私ががっかりしたポーズをすると、おばさまは「ポリスがね……」と言いながら肩をすくめる。男性職員と警官は深刻な表情で何かを話し込んでいる。まあ、何かしら面倒なことが起きたってことね。

超絶品の魚介パスタは今回のベストプレートに決定!

考古学博物館に対しては「どうせなら見たい」という程度でしかなかったので、さしてがっかりもしないけど、だったら二股で逸れないで直接海の方に歩けばよかったな…そんなことを思いながら道なりに下っていくうちに海が見えていた。どうやら、このあたりがアンツィオ港になるらしい。ネットゥーノの港はクルーザーばかりのマリーナだったけど、こちらは漁船が多い感じがする。海に面した海岸通りにはレストランがずら〜り。ただ、そのどこもががガラガラなんですけど……。アンツィオで海産物ランチを堪能するつもりだったんだけど、もしかして寂れているのかしら……?

閑古鳥の鳴いているレストラン群に入る気が起きずに、とりあえず港の桟橋に沿って歩いてみることにした。とりあえずは港の湾に突き出している岬の突端まで行ってみよう。……などと思って歩いてはみるものの、港湾倉庫のような素っ気ない建物しかなくとりたてて珍しい風景があるわけではない。突端まで行くことに何の意味があるのかと、結局道半ばで引き返してきた。そのおかげで漁船の脇で糸を垂れていたおじさんがタコを釣り上げる瞬間に出逢えたんだんだからいいよね。思わず「ブラボー!」って拍手しちゃった。

アンツィオ港から眺めるティレニア海の色。やっぱりアドリア海とは違いますねえ……明るい青ではあるけれど、緑がかって若干白濁しているような

湾の中に突き出した桟橋のような岬の突端まで歩いてみる。磯の匂いはあまりしない。クロアチアの方が磯臭かったかな

目の前でおじさんがタコを釣り上げた! 写真撮らせてって頼んで、おじさんの笑顔ごとパチリ

海岸通りにズラズラと並ぶレストラン群まで戻ると、ほんの20分前までガラガラだったテラス席があっちもこっちも賑わい始めている。ええっ! いつの間に! 事前チェックしておいた《Da Romolo al Porto》という店に行くと、さすがの評判店らしくすでに7割ほど埋まっているではないの! なので、アサインされたのは道路際の小さな2人席のテーブルだった。でもそのタイミングがギリギリだったよう。閑古鳥だと思ったのは単に時間帯のせいだったようで、続々と客が押し寄せてきてあっという間にテラス席は満席になり、レストラン前の道路は大渋滞となった。なるほど、ローマあたりから昼食目当てで来るとこの時間になるわけね。テーブルのすぐ横をクルマが走るのは気にならないではないけれど……まあ、仕方ないか。おひとりさまだしねぇ。

海岸沿いの道路に面してシーフードのレストランが軒を連ねてよりどりみどり

魚介どっさり、卵たっぷりもちもちのフェットゥチーネ。これがもう、美味しい美味しい美味しいの三乗!

注文したのは海の幸の自家製フェットゥチーネ。これがもう、激ウマ! 海の幸といってもムール貝もアサリも海老も小さいし、イカゲソやタコの切れっぱし、アサリの半分以下の名前のわからないような小さな貝も入ってて、どちらかというとクズ魚介ばっかり。でも、だからこそ美味しい。アラ汁が美味しいのと同じことね。すぐ脇を自動車が絶えず通過していることなど、眼中になくなるほどに美味しいんだもん!

無言の歓声をあげながら一口一口を味わっていると、タオルで鉢巻きをしたシェフらしき人がしょっちゅう出てきてはあちこちのテーブルで挨拶して談笑したりしている。"シェフ" というよりは "大将" という呼び名の方が似合う風体の人だけど。常連さんに愛されている店なんだろうなぁ。

その間にも続々とクルマが横付けされ、ぴしっとスーツで決めた男性やちょっとお洒落した女性やよそ行き着の幼女などがしては店内に入っていく。そのうちのひとりの若い女性が可愛く着飾った赤ちゃんを連れていた。ようやく首が座ったくらいの月齢、可愛いレースのドレスに、まだほとんど髪も生えていない頭には大きな造花のヘアバンド。あ、このコがきっと主役なんだわ。親族を招いての内祝いの食事会なのかも? お食い初めみたいな……ファミリーを重視するイタリアにならでは行事なのかもね。

グラスワインと水のボトル、合わせて€23。たぶん、ローマ市内でこれだけ魚介ふんだんのパスタ食べたらこの値段ではすまないように思うわ。今回の旅では大きく外すことなくいろいろ美味しいものを食べたけど、これはもうずば抜けていた。この一皿をこの旅のベストプレートとしたい。

アンツィオ歩きは途中でいきなりどうでもよくなった

心もお腹も満たされて、店を出た。じゃあ腹ごなしがてら、アンツィオの海岸線を歩いてみようかな。といっても砂浜を歩くわけではなく、海沿いの道路から見下ろしながらだけど。

公園のような展望台のような広場に銅像が立っている。ふんぞり返って仁王立ち、遠くを指差しているのはたぶん皇帝ネロらしい。この広場の下にネロの洞窟 Caves of Nero と呼ばれる遺跡がある。"洞窟" ってことはどこかから入れるのかな? どこから砂浜まで下りられるんだろう? お腹いっぱいだし暑いしで頭がボーッとして働かず、あまり興味も引かれず、行き方がわからなかった。ま、いいや。単に遺跡が洞窟化してるってことでしょ?

偉そ〜〜うな皇帝ネロの銅像の立つ公園は見晴し台になっていて、青い海の展望が180度広がる。

更衣室やシャワーやパラソルやデッキチェアがレンタルできて、カフェが併設されている。つまり、イタリア版・海の家?

見下ろしてみると確かに遺跡らしきものが。どうやら洞窟の入口部分みたい。立ち入り禁止というわけでもないようで、カップルが入り込んで甲羅干ししていた。……いいのか?

海水浴日和の快晴だけど、ビーチに遊ぶ人はまだちらほら程度。やっぱり平日だからかなあ? 割と最近までまだ肌寒かったりしたのかもしれないしね。しばらく海岸を歩いてみたけれど、ただただ白い砂浜の綺麗な海が続いているだけなので飽きてきた。なにしろね、暑いのよ。陽射しに炙られてどうにかなりそう。
この先には皇帝の別荘だったというインペリアーレ邸 Villa Imperiale があるはずだけど、もうどうでもよくなっちゃった。ネットゥーノ&アンツィオ観光はこのへんで切り上げてローマに戻ろう。観光といってもただ歩いてただけで要塞も遺跡も博物館も見てないけど、アドリア海とは違う青いティレニア海を見比べられたこと、あの魚介フェットゥチーネが食べられたこと──それでもう大満足だわ。

>> アンツィオとネットゥーノは第二次世界大戦時に重要な戦闘の舞台になった地でもある。米英連合軍がこの海岸に上陸を果たし、ドイツ軍の包囲網突破しローマを解放したとされる。『アンツィオ大作戦』という映画まであるので、戦史好きな人には記憶に残る地名なんだろう。考古学博物館の隣には上陸作戦博物館なるものもあった

一目散でアンツィオ駅までの坂道を登り、15:11発の列車にギリギリ間に合った。ああ、結構歩いた! 疲れた! ローマまでの1時間10分は休息タイムに当てると決め、ぼーっとしたりトロトロ微睡んだろりして過ごした。
ここで心身リラックスさせておいたのは正解で、到着したテルミニ駅のホームはいきなり雑踏のカオスだった。実際は新宿駅や東京駅の足元にも及ばないカオスでしかないけれど、ほんの1〜2時間前には海辺をのんびり歩いてタコ釣りのおっさんと話してたりしてたんだもの、一瞬そう感じるのもしかたないよね。でも東京で生まれ暮らしていることが幸か不幸か、都市部のターミナル駅の波に入り込むと無意識に同じテンポに切り替わる。とりあえず改札を出てメトロに乗り換えよう。

市内交通の24時間チケットは今朝のうちにトレステヴェレ駅前のタバッキで購入済み。明日の正午にチェックアウトするまで、メトロやバスやトラムを使い倒すつもりなのだ! メトロの改札を通して最初の刻印をする。

カラヴァッジョに逢いにゆく、再び

メトロA線の Flaminio で下車。ここは地下道が縦横にのびているので、しっかり出口を見極めないととんでもないところに行き着いてしまう。 まずはポポロ広場 Piazza del Popolo に出る。ローマが初めての人でも必ず訪れるだろう場所、私もなんだかんだで毎回訪れてる場所、スペイン広場 Piazza di Spagna から真っ直ぐにのびるコルソ通り Via del Corso の行き着く先だ。

ポポロ広場のすみにひっそりと建つ地味な外観のサンタ・マリア・デル・ポポロ教会Basilica Parrocchiale Santa Maria del Popolo。最近ではダン・ブラウンの『天使と悪魔』の舞台となった場所として有名だけど、私の目的はカラヴァッジョ。ローマにはカラヴァッジョの祭壇画を持つ教会が3つあり、去年の旅でその制覇を目論んだものの、たった1ヶ所しか見られなかったのよ……。この教会では「これからミサだから」と一般客は入れてもらえず玉砕した。その雪辱なのだ。

オードリーがジェラートを食べていたスペイン階段から一直線のコルソ通りの終点地ポポロ広場。オベリスクが広場中央に立ち、双子の教会が神社の狛犬よろしく左右に並ぶ。「ちゃんとローマにいるよ」の証拠写真ね

堂内に入り、まずは一番奥へと一目散に突進した。カラヴァッジョ作品のあるチェラージ礼拝堂 Capella Cerasi は中央の主祭壇のすぐ左脇、そこだけ人だかりがあるのですぐわかる。そればかりではなく、この礼拝堂は外側の天使の彫刻からして壮麗で豪華で、遠目にもとても目立つ。

もともとカラヴァッジョの色彩は暗い上に、堂内は薄暗い。絵のすぐ下には近寄れないし、カラヴァッジョ作品はメイン祭壇画をコの字の形ではさんでいるので、斜め方向から見なくてはならない。礼拝堂脇の料金ボックスに€1コインを入れるとしばらく照明が点るしくみで、順繰りに誰かしらがコインを入れてはその場のみんなでおこぼれに預かる。私も喜捨のつもりで一回入れた。

ローマの教会は絢爛豪華な教会が多いので、足を踏み入れてすぐは薄暗くて色彩もなく、床装飾も地味に見える。それも一瞬のこと。左右の柱の柱頭がコリント式とイオニア式の複合様式になっている

カラヴァッジョ作品のあるチェラージ礼拝堂前には人だかりがしていて近寄らないと見えない。元々2枚の作品は両脇にあって真正面から見ることは出来ないのだけど

中央がアンニーバレ・カラッチの『聖母被昇天』、両脇の2枚がカラヴァッジョで、左側が『聖ピエトロの磔刑』、右側が『聖パオロの改宗』。斜めにパースがかかってしまう上、これ以上近寄れないので、ここでも双眼鏡の出番。十字架を支える男の足裏の汚れまでもしっかりと見る

それにしても、どこか背徳な匂いのするカラヴァッジョだけど、美術館よりも教会内で見るとその異質さが際立つように思う。異質でありながらも似つかわしい。この小さな狭い礼拝堂に、豊かな色彩のカラッチと迫力のある暗さのカラヴァッジョが同居しているという驚き。なんとも強烈な空間だった。

カラヴァッジョはとことん堪能した。でも、それで終わっちゃ絶対に勿体ない。ローマの教会としては決して大きくはないこの教会にはカラヴァッジョ以外にも珠玉の芸術作品が詰まっている、まるで美術館のように見ごたえのある教会なのだ。

入口すぐ右にあるのはローヴェレ礼拝堂 Cappella della Rovere。ヘブライ語の聖書をラテン語に翻訳した聖ヒエロニムスの捧げられたもので、ピントゥリッキオの祭壇画が美しい穏やかな雰囲気の礼拝堂。
向かい合わせの左側に位置しているのがラファエロが設計してベルニーニが完成させたというキージ礼拝堂 Cappella Chigi。私は未見なのでわからないけれど、映画『天使と悪魔』で最初に登場した場所らしい。

あまりにも美しく官能的な『ハバククと天使』。天使が微笑みながら、当惑するハバククの髪をつかんでバビロンに運ぼうとするところ。天使の人差し指が折れて欠落している。

ローヴェレ礼拝堂。ピントゥリッキオの祭壇画『キリスト降誕』と『聖ヒエロニムス』、上の半月形のルネッタには同じくピントゥリッキオの『聖ヒエロニムスの生涯』

祭壇画の両脇に『ハバククと天使』と『ダニエルとライオン』のベルニーニの彫刻が並ぶ。クーポラを飾るモザイクもすべてラファエロのデザインによるもの

シックで静謐な雰囲気の漂うチボ礼拝堂。祭壇画はカルロ・マラッタの『無原罪の御宿り』。カラバッジョばかりに人は集まって、この前に立つ人はほとんどいないのでゆっくり見られる。照明がないのが残念だけど……

側廊に並ぶ礼拝堂ひとつひとつがいちいち素晴らしい。こういっては語弊があるけれど、主祭壇や天井や柱の装飾よりそれぞれの礼拝堂の方がよほど豪華。ローマ中の多くの名家が贅を競いあったに違いないわ。豪華といっても、全体的に重厚で、バロック特有の派手派手しさはなく、私はものすごく好みだった。ああ、雪辱を果たした甲斐があったわぁ……!

バス移動のスムーズに行かなささは、さすがのイタリア品質(^^;)

サンタ・マリア・デル・ポポロ教会の見学に約50分を費やしてしまった。実は「私の行きたいところグループ」から、この教会ひとつだけがポツンと離れていて且つ交通の連絡がよくない。わざわざ来て時間もたっぷり使ったことに後悔はないけれど、他もあるんだからちょっと慌てないと。時刻は17時20分、19時までに2ヶ所の教会見られるかな?
とりあえずはトラステヴェレ地区まで行きたいのだけど、ここからは直通の交通機関はない。バスやトラムなどを2本ないし3本乗り換えたり、離れたバス停から歩いたりと、ルートの組み合わせは膨大にある。頼みの綱のGoogle先生はいっぱいルート候補を出してはくれたけれど、今度はバス停が見つからない。いや違う。バス停がたくさんありすぎてどれだかわからないの。ここはちょっとした中間ターミナルで、10も20もある標識の停留所名が全部 Flaminio なんだもん。

わかりにくいターミナルから乗るのはやめて、路地のバス停まで1停留所分歩いた。ところが今度はバスが来ない。時刻表には10分に1本とあるけど、30分近く来なかった。バス停の電光表示には「すぐ」と出ているのにちっとも来ない。まあ、さあ……イタリアだからね。ちょっとでも信用しようとした私が悪かった、ごめん!
ようやくバスに乗れたのが18時ちょうど。乗ってしまえば意外にスイスイで、15分ほどで目当ての場所まで走ってくれた。

大行列のできていたサンタ・マリア・イン・コスメディン教会。最近はインスタ映えを求めて特に大混雑なんだろうなぁ。私の時は4〜5人待ち程度だったけど

パラティーノ橋から見下ろすテヴェレ川。左下の影になって見えにくいけれど、ローマ時代の橋が壊れかけた状態で残されている

降りたのはテヴェレ川の手前のチルコ・マッシモ Circo Massimo 側。ここから川を渡れば対岸はトラステヴェレだ。アテにならない乗り継ぎルートを選ばないでむしろよかったかも。橋まで回り込んでいく緑地の丘の向こうにサンタ・マリア・イン・コスメディン教会 Basilica di Santa Maria in Cosmedin の塔が覗いている。そう、ここは『真実の口』のある教会。口に手を入れた写真を撮るための行列が道路にまではみ出しているのが遠目ながらもよく見える。私はね、30年近く前の初訪問時に撮ってあるんでね、ピッチピチの20代だったしね、もう必要ないんですわ(^^)

川縁の道路まで降り、交通量の多い道路を「みんなで渡れば怖くない方式」でクルマをせき止めて渡り、さらにパラティーノ橋 Ponte Palatino を渡る。

第2のリベンジはサンタ・チェチリア・イン・トラステヴェレ聖堂

橋を渡ってすぐに脇の小道にちょこちょこっと入り込んだ先の目的地は、去年も訪れたサンタ・チェチリア・イン・トラステヴェレ聖堂 Chiesa Rettoria di Santa Cecilia in Trastevere。特徴ある店などのない生活圏の真ん中にあり、教会全体が前庭ごと門や塀で囲まれているので見つけにくい。前回は、迷っている道端でしずしずと歩くシスターたちの列に出くわし、彼女たちの後をついていってここまで辿り着けた。ただ、彼女たちが何をしに教会に向かったのかというとミサのためだったわけで。あまりに清らかで敬虔な空気の中に入り込むのは気が引けて、内部見学をしてこなかったのだ。そういうわけで、ここもポポロ教会に引き続いての雪辱戦。

今回は迷わず見覚えのある優美なバロック装飾の門まで辿り着き、ワクワクと足を踏み入れた瞬間……ショック! 前庭で咲き乱れていたブーゲンビリアが全部切られていたのだ。清楚な印象の白いファサード、赤茶色のロマネスクの鐘楼、抜けるような快晴の青空、鮮やかな濃いピンクの花……その組み合わせが最高に綺麗だったのに。同じ時期の再訪だからまた見られると楽しみにしてたのに! つまり、同じ季節に同じ場所でも風景は同じとは限らないということね。旅先で出逢う一瞬一瞬はすべて一期一会なのだと改めて認識した。大切にしなくては。

花壇の薔薇もパラパラ咲き始めているし、初見ならば十分に美しく感じるファサードと前庭ではあるけれど、左側に満開のブーゲンビリアの木が数本あった光景を知る身には何だか素っ気なく感じてしまう。そのかわり "ローマ唯一の斜塔" の傾きがキチンとわかるけど

前回は入口から覗き込むだけだった堂内にもちゃんと足を踏み入れた。静謐で凛とした雰囲気の中、天井画の華やかさが際立つ

祭壇下に横たわる聖チェチリアの像は彫刻家ステファノ・マデルノの代表作。聖チェチリアは首を切られて殉教したので、彼女の像にも首筋に深い切れ込みの線がある。痛々しくも艶かしい

ラヴェンナのモザイクよりもっと粒っぽい感じのモザイク。キリストは頭でっかちだし、聖人たちの表現も稚拙で薄っぺらい感じがするけど、コミック大国日本の感覚で見ると逆に "今っぽい" 表現のように思えなくもない……かな?

4世紀からこの地にあったという教会の現在の建物は9世紀のもので、改装や改築が重ねられてはいるけれど、入口のアーケードに7世紀のモザイクがちょこっと残っていて、まるで柄もののリボンやマスキングテープをぴーっと貼ったみたいで可愛らしい。天井や柱などの内装は白を基調とした優美で清楚な雰囲気で、聖チェチリアの像が横たわる主祭壇は金や色大理石を使った豪奢なものだけど、天蓋には9世紀のモザイク装飾。これがまあ不思議に融合して美しい。
うーん、今回の旅のイタリア部門ではモザイクを堪能しているなあ。首が曲がりそうに反っくり返って双眼鏡で細部を丹念に観察し、何歩も下がって全体を眺める、また近寄って見る。時代による表現というものもあるけれど、製作者個々の違いも色使いや表情などに現れているように思える。

ここには地下遺構もあり、4世紀以前のかつての住居跡や中世期の地下礼拝堂などが有料で見学できるらしい。でも、それも19時まで。もう10分もない。あーあ、バス移動がスムーズにいってればなあ。今回の再訪でかなり満足したけれど、やっぱり雪辱はすべては果たしきれなかった……。
実はトラステヴェレ地区ではサン・フランチェスコ・ア・リーパ教会 Chiesa di San Francesco a Ripa も予定していて、そして今回も行けなかった。ま、いいよね、また来なきゃなーっていう理由がちゃんと出来たわけだし。

下町裏通りでビスケットを買い、オーガニックなジェラートに舌鼓

トラステヴェレでの大きな目的はこれだけではない。チェチリア聖堂近くの《Biscottificio Innocenti》で、今年はクッキーやビスケットをいーーーっぱい買うのだ! 地元の人たち御用達の100年続くビスケット屋さんで、去年は帰国日の午前中だったので、小さな袋にビスコッティと「パイの実」みたいなのを5〜6個だけ買った。これがもう、素朴ながらもすごく美味しくて!

下町の裏通りにひっそり佇む店は、去年と同じように扉の立付けが悪くて軋み、去年と同じようにレトロな大きな秤やタイル壁や曇った鏡が古色蒼然としている。そして去年と同じようにクッキーやビスケットが何十種類も並んでいる。去年はリアルタイムでどんどん焼いていて、店内に小麦や砂糖や蜂蜜の香りや暖気が充満していた。今は夕方なので甘い香りはやや落ち着いていて、奥の厨房も照明が落とされている。肝っ玉母さんのようなマンマの笑顔も去年と同じ。白衣の前をはだけたおっちゃんが店の片隅でビール片手に寛いでいた。ふふっ、今日もいっぱいクッキー焼いたのね、お疲れさま。

値段は全種類同じで、キロ単位の量り売り。手でハンドボールくらいの大きさを示して、違う種類をいろいろミックスして欲しいと頼んでみると、12cm角くらいの立方体の箱に30〜40個詰めてくれた。全部違う種類! うわーーー、楽しみだわあ! 超超美味しかったビスコッティも小袋で買う。
クッキーが一箱€12、ビスコッティが€2、嬉しい下町価格。

去年も訪れた下町のビスケッテリア。見た目は地味だけど絶対美味しいクッキーやビスケットが何十種類も並んでいる

マンマに丸投げしたクッキー詰め合わせ一箱とビスコッティ一袋。クッキーはイタリアのお菓子にしては甘さが控えめで、ビスコッティは歯ごたえしっかり、小麦の味が深くナッツが香ばしい。帰国後、毎日3時のおやつに3〜4個ずつ食べて10日間も楽しめた

念願のクッキーとビスコッティを買ったものの、実は店内にいる時から少しお腹がしぶり始めていた。私は働きものの肝臓とちょっとやそっとではへこたれない消化器官を持っているのだけど、さすがに寄る年波と10日超の滞在でそろそろ負担がきたのかもしれない。夕暮れ近くで少し空気が冷えてきたのも加味されて、だんだん切羽詰まってきて、裏路地を小走りしてウロウロとトイレを探す。ずっと歩きづめだったから、そろそろ休憩のタイミングでもあるし、適当な店に入ろう。いかにも地元御用達っぽいバールやトラットリアがところどころにあり、食事前の軽いつまみとアルコールとお喋りとを楽しんでいる人たちがちらほら。
結局カウンターのみの小さなバールに飛び込み、カフェマッキャートをオーダーしてトイレを借り、用をたしたらスッキリ元気になった。それなら予定通りにジェラート食べようーっと。

トラステヴェレ大通りに出て反対側に渡り、《Fatamorgana》というジェラテリアへ。原材料はオーガニック素材のみで添加物なしというのがウリのお店で、ローマ市内に数店舗あるうちのトラステヴェレ店だ。
狭い店内には数組のお客さん、ショーケースの中には美味しそうなフレーバーがズラリ。全体的に地味な色みで、種類も一般的なイタリアのジェラートとはちょっと違う感じ。とりあえずピーチワインというのが気になるけど、何を組み合わせたらいいのかわからない。なので、私に向かってニコニコしているイケメン兄さんに「ピーチワインにあなたのお奨めを合わせて」とまたもお任せ。迷った時はコレに限るよね!
彼はうーんと考えてコーヒーラムというフレーバーを提案してくれた。おお! お酒フレーバー同士で大人の味わいにしてくれるのね。うん、うん、とコクコクする。生クリーム乗せるか尋ねられたので、やっぱりコクコクしちゃう。

桃が甘く香る「ピーチワイン」とほのかな苦みの「コーヒーラム」。素材の味の生きたスッキリした上品な甘さで、ワインとラムの風味はあるけれどアルコール分はほとんど感じない。うん、さすがのマッチングだわ。トッピングの生クリームもたっぷり♥ これで€2.50

ベトベト汚れた指を拭こうとして、バールのトイレにポーチを忘れてきてしまったことに気づいた。トイレットペーパーが切れてたから自分のティッシュを出して、タンクの上に置きっぱなしにしちゃった! 何が入ってたっけ? ポケットティッシュとウェットティッシュ、バンドエイド数枚、のど飴、目薬、口紅……。目薬はほとんど終わりかけてたけど口紅は新品だ。靴下とハンカチと丸形物干し、バッグの縁に留めておいたヘアクリップ、そしてティッシュ類のポーチ……旅行中に細々となくしたものだ。口紅以外はどれも大した値段のものではないけどさぁ、ちまちまと注意力散漫になってるってことだよなぁ。これも寄る年波なのかな、あーやだやだ。

最後の夕食はアペリティーヴォを楽しむ

まだ明るいけれどすでに19時半を回っている。明日は帰国日だから荷造りも早寝もしなくちゃならないし、しっかり食べた魚介パスタの昼ごはんと今食べたジェラートがちょっともたれているので、夜はアペリティーヴォで軽くすませよう。……なーんて、カッコつけて言ってみたけど、実は初アペリティーヴォ体験にちょっとワクワクしてるの。

アペリティーヴォとは直訳すれば「食前酒」。でも単なる食事前の一杯ではなくて、軽食を取りながらという意味もある。もともとイタリアではアルコールドリンクを頼むとちょっとしたおつまみがついてきたけれど、最近ではそれがビュッフェ式の料理になっているところが増えてきた。日本の居酒屋やカフェレストランのハッピーアワーは17時から19時前くらいまでだけど、こちらは21時まで。ちょっと一杯飲んでちょこちょこっと軽くすませたい時にはバッチリなのだ。

トラステヴェレ地区の路地をウロウロしてよさそうな店を物色した。もちろんいくつか候補は下調べ済みなんだけどね、実際の雰囲気見てみたいっていうか。基本は「軽く呑み喰いとお喋りで夕食前のひとときを過ごす」というのがコンセプトなので、あまりワイワイ盛り上がり系の店だとおひとりさまは居心地がよくないもん。
立ち並ぶバールやカフェには「Aperitivo」とか「Happy Hour」とか書かれた黒板や看板などが出ていて、どこもみな賑わっている。第一候補にしていたのは《VinAllegro》という小さなワインバーで、外のテラス席は満杯だったけど、店内の席は空いていた。ひとりでも大丈夫そう、初志貫徹でここにしよう。

しっかりした赤が飲みたくて、シチリアのネーロ・ダヴォラを選んだけど、暑くて汗いっぱいかいた日にはちょっと重かったかも。胃もたれ気味なので、残念ながらおつまみは控えめ盛り

外のテーブル席は呑み喰いするよりもお喋りに花咲かせている人ばかり。アジア人のおばちゃんひとり、この真ん中に座って黙々と食べるのはちょっと勇気いるわ(>_<)

アペリティーヴォのメニューはドリンク一杯と食べ放題のビュッフェが込みで€10ぽっきり。ワインバーなのでワインの銘柄がすごく豊富で、ワインだけでも10数種類くらいの中から選べる。もちろんビールや何種類かのカクテルでも可。ノンアルコールカクテルもある。おつまみもハム&チーズにオリーブやピクルスやポテチなんてレベルではなく、ちゃんとした料理が20種類以上ある。ラザニア、クスクス、小さなハンバーガー、小さな三角サンドイッチ、ミートボールとか魚のフライとか、野菜のグリルとかサラダとかマリネとか、豆料理とか、オムレツとか……中高年日本人ならひととおりつまむだけでそこそこ満腹しそう。

ガリバルディ橋の上から、遠くヴァチカンのサン・ピエトロ寺院のクーポラを望む夕暮れ。でも、この橋の上は交通量が激しいので、非常〜〜〜〜〜にうるさいんだけどね

初アペリティーヴォ体験は首尾よく終了し、テヴェレ川にかかるガリバルディ橋 Ponte Garibaldi まで気分よくふらふら歩いてきた。ちょうど日没時刻。ここで最後の夕焼けを眺めてからホテルに帰ろう。

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