Le moineau 番外編

優雅な朝ごはん、のち、汗だくの奔走

1時間半ほどで目が覚めてしまった。やはり神経が高ぶっているよう。でも深く眠ったようで、意外に頭はスッキリしている。
朝食は6時からOKだと言っていた。エルベ川沿いに庭園があって、ホテルの朝食堂はそこに面しており、直接下りられる。

私はヨーロピアンタイプの小さなホテル──良く言えば雰囲気のある、悪く言えば古くて設備的にちと足りない──が好きで、そういう宿を選ぶことが多い。このウェスタン・ベルビューのような何百室もあるような宿を予約するのは珍しいのだ。
でも、たまにはこういう大型ホテルもいいなぁ。なんたって、朝食のバイキングの種類が物凄いんである。ヒナコなんて、あまりの種類の多さに全体が把握できなくて、空の皿を握りしめたまま右往左往。…いかん、逆上している。

種類の多さだけではなく、味もとても美味しかった。
あれも食べてみたい、これも食べてみたいと、少しずつ盛っても皿が5〜6枚になる。とどめにケーキまで2つも食べてしまった。チェリーのタルトとモカクリームのスポンジケーキ。今日はお昼抜きだね。
どれもこれもホントーに美味しかったのだが、感動したのは、アップルジュースと茹で卵であった。卵は黄身の味が濃くて甘味もあって…日本だったら「なんとかの極上・地玉子」とかいってすごい高値で売られてそうな感じ。
アップルジュースが美味しいのは、勿論リンゴが美味しいからよね。スペインやイタリアでのオレンジは本当に美味しかったもん。ずっと北に位置するドイツでは柑橘類よりリンゴ!なのである。
朝食ブッフェには5種類のジュースがあったので、ひととおり試してみたんである。で、アップルジュースの美味しさが断トツだったワケ。

朝からこんなに食べてしまった(ホントはこの写真撮った後、さらに食べた)

出発前からこちらの天気や気温のチェックはしていた。だって持っていく洋服の都合があるからね。10日ほど前までは最高気温が18度前後だったが、このところ急に22〜25度になっていた。東京も急に暑くなったが、こちらも初夏になったということだろう。
川沿いの庭園を少し散歩する。シャクナゲや名前のわからない花々が綺麗に咲いている。風の爽やかないい天気。まだ朝なので、シャツ1枚だと日陰では肌寒い感じ。我慢できないほどではないので、昼間はジャケットはいらないよね、きっと。

ドレスデンはまだ全然見ていないけれど、先に郊外の古都マイセンに行く。言わずと知れたヨーロッパ高級磁器で有名な街。日本の有田市の姉妹都市でもある。私は高級食器集めの趣味はないのだが、マイセンのブルーオニオンはとても好きなの。持ってないけど。

マイセンへは電車でわずか30分だが、夏場はエルベ川の遊覧船も出ている。片道は船を使うことにした。
ホテルの横の橋を対岸に渡ると、エルベ川に突き出した庭園付き遊歩道ブリュールのテラス Brühische Terrasse が左手に続いていて、真ん中あたりから川岸に下りると船着場がある。

船の時間は9:45。まだ1時間以上先だが、切符売場が開いていたのでチケットを買っておく。マイセンまでは10.70ユーロ。昨日の騒ぎでユーロの現金をおろしてないので、カードで払おうとしたが使えなかった。げげー、まずい。手持ちが心もとない。出発までにATM探しておろさなくっちゃ。ミネラルウォーターのボトルも買っておきたい。

下に降りれば船着場。私が汗みずくで走り回る間、ヒナコはここでのんびり雀と遊んでいた

ヒナコ連れで探し歩くと大変なので、日陰のベンチに彼女を座らせ、朝のパンの残りを渡し、雀と遊びながら待たせることにした。ところが…
もう、しょっぱなから「ところが」ばっかり! 普段ヨーロッパの町を歩いていると、ATMはそこらに腐るほどあるのに、ひとつも見当たらない。これだけの街に銀行がないはずはないのに……。観光客の多い旧市街エリアだから? でも、船着場に戻れる範囲しか動けない。手持ちの現金は15ユーロ程度、二人で今日の観光が出来る金額ではない。
水だって買わなくちゃ、なのに! 見つけたスーパーマーケットもまだ開店していない。屋台も出ていない。わーーん。
汗だくになって競歩のように走り回ったが、水も現金も入手出来なかった。もうダメ…船が出ちゃう。マイセン着いてから考えよう。

ビール片手にクルーズを楽しむ

エルベ川の遊覧船はいろんな種類のルートがあるが、路線バスのように好きな区間で乗り降り出来る。ドレスデン〜マイセンは「ザクセン・ワインルート」という路線のうち、2区間。

船は甲板がすべてレストランになっていた。ビールでもワインでもコーヒーでも、好きなものを飲みながら両岸の景色がゆっくり楽しめる。テーブルのメニューを一瞥すると、ビールが4ユーロ程度だった。市内の店よりは若干高めみたいだけど…よかったー、手持ちのお金で足りる〜。

直前まで走りまわった私の喉はもうカラカラ。ビールが美味しいったらない。でも情けないことに現金がないんだから、お代わりは出来ない。時間配分を考えて飲まなくちゃ(笑)。

ゆったりすべる船でのクルーズは気持ちいい。サイクリングロードが川に平行して走っている。その向こうに自動車道路が平行している。船には自転車置き場もあるので、疲れたら適当な場所で船に乗ることも出来るのだ。遠足のような小学生たちが手を振ってくれる。釣りをしている人もいる。放牧された馬や羊が水を飲みに岸に下りている。

この牧歌的なすがすがしさは何だろか? 護岸工事がされていないからだと気づく。水辺から直に草むらが立ち上がり、ずっと遠くにある家々までその緑色が続いている。日本の川べりには、こんな光景はもうほとんどないだろう。

ドレスデン〜マイセン間の川べりの光景。初夏の緑が目に優しい

ここ3年ほどは、スペインやイタリアなどの南欧地区を中心に訪れていた。街角の風景を絵にすることの多い私は建造物の造りをじっくり眺めてしまう。南欧では、教会などを除き「四角い」建物が多い。民家の屋根も平屋根や傾斜のゆるい三角。ドイツの民家は、いかにも「まあ可愛い『おうち』!」と言いたくなる三角屋根だ。北に行くほど屋根の傾斜は尖ってきつくなっていくが、このザクセン地方はそれに比べて三角度が浅い。ライン川流域の家々のような木組も見られない。

1つめの船着場についた頃、奥の乗船口近くの乗客たちが立ち上がっている。ん? 何か面白いもんでもあるの? 一緒に野次馬してみる。ここの船着場はドレスデンほど大きくないので、小さなブリッジの真ん中付近が水没してしまっているのだ。長靴をはいた船のクルーが渡し板を上にかけたりしている。それでもカバーしきれず、乗り降りする乗客は靴を脱ぎ、くるぶしまで濡らしていた。お気の毒〜〜〜。

8人がけの長テーブルにドイツ人の老夫婦と相席した。日焼け止めクリームのチューブを取出し、お互いの顔に塗りあっている。鼻と眉間に特に念入りに。うん、彼等の顔は扁平な私たち日本人と違ってそのへんが出っぱっているからねぇ。
彼等はドイツ語しか出来ないようだったが、ガイドブックの写真を見せあったりしながら「どこに行くの?」「マイセン」「私たちは、もう3つ先まで行くのよ(推測)」みたいな会話(といえるかどうか)をした。

きっちり2時間後、マイセンに到着。ひときわ目立つドーム(大聖堂)の真下あたりだ。船着場の手前で鉄道の鉄橋をくぐったので、駅はその近くだろう。河岸からの階段を登ってドームに直行したいところだが、一番にしなくちゃいけないのは銀行を探すこと。ポケットの中の現金は、帰りの電車賃にも満たないんだから。

マイセンの船着場はドームの真下。『地球の歩き方』の地図は間違っている。'97年版のものなので、その後場所が移動したか、地図を改訂したかは未確認。到着する人は構わないだろうけど、ここから乗船するつもりの人は、要注意。

陽射しがだいぶ強く感じられる。空気が乾燥しているので、直射日光にさえ当たらなければ気持ちいい温度なんだけど。
しかし、探すとなると銀行は見つからないものである。景色を楽しむ心の余裕も持てないまま30分はさまよっただろうか…ようやく道の向こう側にデカそうな郵便局(多分、本局。そこは「郵便局通り」という道であった)を見つけた。あそこならキャッシュコーナーがあるかもしれない。

横断歩道のない場所を渡る時は、年寄りのヒナコを私の腕につかまらせる。右腕をヒナコに貸して車の切れ目を待っていると、地元のお婆さんが寄ってきて、何やら言いながらがっつりと左腕につかまってきた。
ドイツ語だからわからないんだけど、多分「はい、ちょっとアナタにつかまって道渡るからね、よろしくね」てなこと言ったんだと思う。両腕に日独のバアさん二人をぶら下げて道を渡る。
以前ヨーロッパの別の国でも、列車の中でお婆さんに「網棚の荷物をおろしてくれる?」と頼まれたことがある。こっちの人たちは本当に年寄りには親切。それもさり気なく。だから年寄りの方も気軽に「ちょっと手伝って」と頼んでくるのだ。
ヒナコは、海外を歩くと本当にたくさんの親切に出会うと言っている。病院への検診に月1で通う電車では40分間立ちづめで、席を譲ってもらえることはほとんどないそうだから。

お婆さんと手を振って別れてから入った郵便局内には、ちゃんとATMがあった。これで一安心。

職人技に、ため息ため息

マイセンに来たかった一番の目的は、マイセン磁器工場 Porzellan-Manufaktur-Meissen の見学。やっぱり最初に向かうことにした。
ATM探しでほっつき歩いてしまったので現在地をびしッと確認後、歩き始める。ここであってるの?と若干不安になりつつ人の少ない道を15分ほど歩くと、観光バスが何台も停まって人だかりがしているのが見えてきた。あそこだッ!
見学用工房 Schauwerkstatt磁器博物館 Porzellan Museum のセット券を買う。7.50ユーロ。

博物館では芸術品のような陶磁器の数々に、もう、うっとり。入口の吹き抜けには磁器製のオルガンがあり、ちょうど演奏が始まった。なんとも柔らかな音色。ガラスのベルにも似ているが、それほど硬質ではなく、やや半透明にしたような雰囲気。

博物館の入口にあったブルーオニオンのテーブルウェア一式。食器コレクターには堪らない図かも…(私にとってはそうでもないが)

高さ5メートルはあるかと思われる壺の細工のまあ見事なこと。磁器のチェス盤なんかもあった

見学工房は、マイセン磁器の歴史のフィルム上映に始まって、ろくろの実演、成形の実演、絵つけの実演などの部屋をガイドツアーで廻る。日本語のオーディオガイドを無料で貸してくれる。簡単なガイドラインを引いただけで、直接細かい模様を描いていく職人の技術は、目の当たりにすると、やっぱり凄い。いわゆる観光客向けのものなんだけど。
年に2回のオープンデイでは、工房をすべて開放して職人たちの作業部屋を直接自由に見られるらしい。職人さんへの質問も自由。聞いてみたいことは山ほどあるけど、ドイツ語じゃあ無理よねぇ…。いや、英語でも突っ込んだ話は出来ないわ、私。

ろくろ職人。写真に写ってないけど、足のペダルで速度を調節している

成形をする人。一応、陶土を詰め込む型はあるのだった

絵付けをする人たち。細かい作業だ

つい性分で、手元を覗き込んでしまう

絵付けを終えて釉薬を塗る前のブルーオニオンのカップ&ソーサー。焼くとあの綺麗なブルーになるのに、この段階ではこんな色

当然のお約束だが、工房と博物館の出口には広大なショップがある。「少々難アリ」品のみのショーケースもある。どこか線がゆがんだりしてるのかしらね? ちょっと見にはわからないけど。それでも高価い、高価い。博物館の延長のような気持ちで商品を見て歩いた。

ショップで見つけた雀の壁掛けプレート。421ユーロ(¥58,000くらい)もする。20cm程度の大きさしかないのに……仕方ないな、手描きだもんなぁ。指をくわえてこっそり撮影だけする。

磁器工場を出ると、もう時計は2時をまわっていた。
朝ご飯を山ほど食べたので、お腹なんて全然すいていない。このまま夕方まで持たせて夜をしっかり食べることにし、とりあえず旧市街の方へ向かう。大聖堂 Domアルブレヒト城 Albrechtsburg は、さらに旧市街の奥の一番高い場所にある。あそこまで登る前にひと休みしとこうね。

聖母教会 Frauenkirche に面した街の中心広場は、小さな街の規模にあった可愛らしいスペースだった。風通しのいいパラソル下のテラスで、建物&人物ウォッチング。隣にあるのが聖母教会。広場の反対側にあるのは市庁舎 Rathaus。その脇にのびる大聖堂に続く小道には土産物屋やレストランが並んでいて、先がかなりの登り坂になっているのがわかる。

3時ちょうどに、聖母教会のマイセン磁器製グロッケンシュピール(小さな鐘を組み合わせたカリヨンのこと)が優しい音色をたてた。さーて、登るとするか…暑そうだなぁ。
実際に歩くと、坂は見た目よりも楽だった。ちょっと休憩したからか…? 楽勝じゃーん!て感じで進むと最後に心臓破りの急階段があった。物事、甘くはない。

アルブレヒト城と大聖堂もセット券が売られていた。5.50ユーロ。城から先に入る。最初の王立磁器工場は、最初この城内に置かれたそう。1708年にヨーロッパで初めて宮廷錬金術師が白磁の製造に成功したわけだけど、彼等が仕えていた例の「アウグスト強王」が、磁器製造の秘密を守るためアルブレヒト城に幽閉しちゃったのね。それが1710年。しかし、東洋での磁器の歴史に比べて、ヨーロッパはたかだか300年なのね。ちなみに「チャイナ」は磁器のことだけど、「ジャパン」は漆器のこと。
ちなみに、白磁製造法を編み出したナントカさんは、幽閉されて10年後にアル中でお亡くなりになったそう。こんな薄暗いところに閉じ込められていたら、中毒になるほど飲まずにはいられないでしょうて…

小さな古都マイセンの街はしっとり落ち着いた、それでいて可愛らしい町並

ドレスデンに戻るのは電車を使うことにした。船に比べて、値段半分、時間4分の1だ。手前のノイシュタット駅まででなく中央駅まで行ってみようか。明日の夕方にプラハ行きの列車に乗るのに様子も見ておきたいし。

35分ちょっとで到着した中央駅は、来年のワールドカップのためなのか、駅前の広場やトラム乗り場などを含めて改修工事の真っ最中だった。本来高く広がっているはずの丸天井は鉄骨やシートで覆われまくり、ベニヤ板の迷路のような仮通路をばこばこ鳴らして人々が行き交っている。トイレも切符売場も、仮設のもののようだった。「→WC」などのワープロ打ちの貼紙がところどころにある。うわー、下見に来ておいて、よかったー。明日いきなり来たら、大荷物持って戸惑うところだったよ。
ついでだからプラハ行きの切符も買っておこう。仮設の切符売場は窓口が少ないもんだから、長蛇の列がとぐろを巻いている。買えるまで20分くらいかかった。いよいよもって、今日のうちに来ておいてよかったー。より万全にと、発着番線もしっかり確かめておく。明日、一直線にホームへ迎えるように。ドレスデン→プラハ 25.40ユーロ。約3500円。

ヒナコ連れでなければ、ここまでしつこい念押しはしないんだけどね。彼女の足では「あッ、隣のホームだった。もう一度階段の登り降りッ」とか「あッ、発車しちゃう。走れーッ」てなことが、もうとにもかくにも遅いんである。ま、転んで怪我でもされたら困るしね…。

ゆったり長い夕暮れの時間

美術館や教会はもう閉まっているけど、外はまだまだ明るい。まだ日没までは3時間近くあるのだ。美味しくディナーを食べるために少し旧市街を徘徊してみることに。

明日の夕方まではドレスデンを観光するので、トラムのフリーチケットを買うことにする。ドレスデンの旧市街は徒歩で十分回れる規模なのだが、高齢者連れの場合は少しでも余計に歩かずにすむにこしたことはない。気軽に飛び乗れることや、切符売場を探したり小銭の持ち合わせの心配したりしなくてすむよう、市内交通のフリーパスは積極的に利用することにしている。一日券は8ユーロだが、大人2人+子供4人の24時間ファミリーカードなるものが12ユーロである。これだったら二人で2回乗れば元取れちゃう。ドイツって、同行者割引が太っ腹なのが嬉しい。

街全体の雰囲気と、いろんな建物の場所などを把握するために、中央駅から旧市街まで歩くことにした。デパートやレストランなどが両側に並ぶ、幅広の歩行者専用の一直線道。

私は各国で雀ウォッチングをするの楽しみにしてるのよね。こういう「車が通らない」&「人々がたくさん来て飲み食いのパン屑などを落とす」場所に「早朝」とか「日暮れ前」という条件を加えると、絶対絶対お腹を空かせた雀たちがたくさんいるのだ。
いたいたいた! ヒナに毛のはえたようなのもいる。朝ご飯の残りのパンはまだバッグに持っている。植え込みの前のベンチに腰掛けて、しばし雀たちと遊ぶ。足元10センチくらいの距離まで近寄ってくるんだもん。嬉しい嬉しい♪

ゼンパーオペラ(ザクセン州立歌劇場)Semperoper カトリック宮廷教会 Katholische Hofkirche フラウエン教会 Frauenkirche など、もう内部には入れない時間だが、まわりを建物ウォッチングして歩く。
近くで見て驚いた。壁や彫刻など黒ずんでいる箇所と白っぽい箇所がモザイクのようになっている場所がある。そう、みんな第二次世界大戦の空襲で破壊されたんである。これはみんな戦後にそのまま復元されたものなのだ。この古色蒼然さは、50年かそこら前の建物とはとても思えない。ドイツ人の「徹底的にオリジナルに近く復元する!」という意思は物凄いもんだわね。

こんなにたくさん集まってくれた雀たち

この町並がすべて戦後復元されたものとは!

さあ、雀と遊んでココロも満たされたし、ドイツ人の復元にかける情熱にも驚嘆したし、ディナーとしましょ。今朝、銀行やスーパーを探して走り回ってた時に、カジュアルな雰囲気のビアレストランが何軒も並んでいる小道を発見してたのよね。あのあたりなら、帰りも夜景を楽しみながらホテルに戻れる場所だしね。

だが、時刻は8時をもう回っていたんである。暗くならないもんだから、夜になってる実感なかったよ。気持ちのいい外のテーブルは、もうびっちり満席。でも店内に入れば席がないってことはないでしょ。道の両側の店がそれぞれ長テーブルを並べるものだから、通行出来るスペースはすれ違うのがやっとくらいの幅しかない。店を選ぶフリしてのろのろと何往復かして、皆がどんなもの食べてるか、とっくり観察させてもらっちゃった。一番美味しそうなモノが多そうな店を選ぶ。

入った店には、ビールの銘柄は10種類くらいあった。焼きソーセージとハムとサラミのサラダをもらう。パンもいっぱいついてくるから、ヒナコと二人ならコレで充分なのだ。
私は「日本人としての『人並み』」は食べられるが。ヒナコは「人並みの半分」である。普段は高血圧食を食べているから薄味(というよりほとんど「味なし」)が当然で、味や油がちょっとでも強いと、さらに食べられる量が減る。私は基本的に好き嫌いは全くないのだが、彼女は結構受け付けないモノが多い。

今日のメニューでも「じゃがいもはお腹いっぱいになるからいらない」と、マッシュポテトは5分の4、「酢漬けは嫌い」とザウワークラウトは全部、「油っぽいのは気持ち悪い」とサラダのドレッシング漬けになった部分3分の2、私の胃袋に収めなくてはならなかった。

あと、私の性分なんだけど、出された食べ物を残すことが出来ないの。「お金払うんだからいいじゃない」と、ごっそり残すことが、どうしても出来ないのよ〜。とにかく頼んだ料理は空にしたい。
……てなワケで、彼女と一緒の海外でのメニュー選びは本当に苦労するんである。

2種類の銘柄をオーダー。つい写真撮影の前にキュ〜〜ッと飲んでしまった。個人的にはBECK'Sの味の方が好き(これはブレーメンの地ビール)。もうひとつは軽くて爽やかな飲み口。勿論どっちも美味しい。

とぐろを巻くソーセージ。味はいわずもがな絶品。下にはびっしりとマッシュポテトとザウワークラウトが敷かれている。ソーセージ半分以外は、ほとんど全部私の胃袋に

生野菜のつもりでオーダーしたら、何種類かのハムとチーズだけだった。野菜はオニオンだけ。なので見た目の大きさよりボリュームがある

でも味は美味しかったので、満足。食後のコーヒーももらってから店を出ると10時になっていた。日は沈んでいたけれど、空の色は明るい紺色…いや暗めの青か、とにかく真っ暗にはなっていない。気温はシャツ1枚でも大丈夫だけど上着を羽織っても暑くはない程度。

ブリュールのテラスから、アウグスト橋の上から、川面を渡る夜風にあたりながら眺める景色は美しい。ライトアップされた歴史的建造物たちが紺色の空に浮かび、黄色い灯りが水面でチラチラ揺れる。塔の間に狙ったかのように三日月が昇ってきた。

もしかするとドレスデンは、夜景の方が美しいかもしれない。ていうか、古い建物の一つ一つは美しいんだけど、綺麗な写真は撮れないかも。社会主義時代に建てられたと思われる新しい建物──真四角で無骨で色気のない──がいくつかあって、それも一緒に写ってしまい、何とも興醒めなのだ。歴史的建造物だけがライトアップで浮かび上がる夜景の方が綺麗なの。でも、プロカメラマンでない人間には、上手に夜景写真を撮るのは至難のワザ。

レストランがたくさん並ぶ小道。この中の一軒で夕食をとった

夜10時をまわっても、空はまだ紺色で、黒ではない。ブリュールのテラスの上には、食後の散策を楽しむ人たちがいっぱい。川風の気持ちのいい夜だ

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