Le moineau 番外編

中欧で迎えた最後の朝は、雨ではなかった。心なしか、昨日や一昨日より空も明るいようだ。
昨晩はそこそこ美味しかったとはいえ、冷え冷えハンバーガーだけだったので、お腹はぺこぺこ。この後は日本に到着するまで不味い機内食しかないんだから、しっかり食べておこう。

生野菜の種類が毎日変わるのが嬉しかった。初日は黄ピーマンとプチトマト、昨日は緑のオリーブとラディッシュ。今日はヤングコーンとブラックオリーブだった。スパイスを練り込んだチーズも密かなお気に入り

ホテルをチェックアウトして中央駅へ。9:03発のミュンヘン行きに乗る。
ルフトハンザ航空だったので、最初はザルツブルクから飛行機に乗る予定でいた。でも、フライトスケジュールを見ると、フランクフルトの乗継ぎ時間が3時間半もある。
ザルツブルクからミュンヘンまでは列車でわずか1時間半。ミュンヘン〜成田の便は15:30である。それなら、ミュンヘンにちょこっと寄れるんじゃない? そういうわけで帰りの便を乗継ぎでなくミュンヘン発の便にしたのだ。

名物白ソーセージとからくり時計

チェコやスロヴァキアでの国際列車は、一応パスポートのチェックがあった。通貨だって別だったし、国境越えという感じだったが、オーストリア〜ドイツ間では出入国審査もない。言語だって通貨だって一緒なんだもんな…。

わずか1時間半の距離だが、ドイツ側の空は綺麗に晴れていた。しかし、気温は低い。飛行機に乗って梅雨真只中の蒸し暑い東京に帰るのだから、今日は服の重ね着はしていないのだ。ううう、寒いかもしれない。
ミュンヘンに来るのは、12年ぶりくらいかな。8月だったけど、異常な寒波の夏だった。ここでは寒い思いばかりする運命なのかな?

とりあえず、荷物を全てコインロッカーに預ける。ヨーロッパの国々の駅でコインロッカーが完備してあるのは、ドイツがダントツだ。数も多いし故障も少ない。過去ドイツ鉄道旅行を何度かした頃は、まだ会社勤めしていて休みの期間も限られていた。勢いタイトなスケジュールを組むこととなり、移動の途中で荷物を預けて観光して…という旅だった。なので、ドイツの駅のロッカーにはあちこちでホントお世話になったんである。イタリアやスペインではこうはいかない(笑)。ドイツやスイスなどは融通のきかない部分も多いが(ラテン系の国は融通きき過ぎだけど)機能的できっちりしている。

が、きっちりしている国は物価も高いのだ。スーツケースの入る大型ロッカーは4ユーロもする。¥500かよ、高ッ! チェコの荷物預けは¥45だったのに(笑)。
コインを入れて鍵を抜く。抜く寸前に「しまった! 財布を出していない!」と思い出したのだが、手の方は鍵を抜いてしまった。ああーーッ!
ポケットを探ってみる。5ユーロ札1枚とコインがいくつか。ああ、もう馬鹿馬鹿馬鹿。有人窓口なら「あー、ちょっと待って!」も出来るが、機械は無情なり。

ヒナコお得意の「何か変だと思ったのよ」が出た。えーい、うるさいわい! 空しく鍵を開ける。お金もちゃんとポケットにしまったが、今度はちょうどのコインがない。ヒナコを待たせて両替に走る。ようやく見つけた両替機は壊れていた。売店で両替を頼むが断られたので、隣の店でガムを1個買って崩した。うーむ、荷物預けるのにお金を¥1000も時間も30分も使っちゃったよ。

空港駅に向かう電車の時刻もホームも調べ、自動販売機で切符も買っておいた。今日は絶対に遅れられないからねー。ま、最悪タクシー飛ばす手もあるけど。

相変わらず端正な姿のネオ・ゴシック様式の新市庁舎…と言いたいところだが、右半分はシートに覆われていた。中央の塔の真ん中あたり、屋根の高さにからくり人形がある。
この広場は以前の滞在でも何度も訪れた。10年以上たっていても印象的だった記憶って意外に鮮明なものである

以前のミュンヘン滞在で一番お気に入りだった、新市庁舎のからくり時計を見るつもり。こういうからくりはドイツ中あちこちにあるが、私の見た限りではミュンヘンのものが一番だと思う。プラハの天文時計のからくりはショボかったからねぇー、口直しにミュンヘンのを見ましょ。ついでに名物白ソーセージも食べましょ。おまけのようなミュンヘン滞在はジャスト2時間。いや、コインロッカーで時間くっちゃったから1時間半?

白ソーセージは、基本的に朝作って昼までに食べてしまう「鮮度命」のもの。以前は、観光客の多いビアホールで夜食べたから…。からくり時計は、毎正時にスタート。
市庁舎のあるマルクト広場裏手に市場があって、どうせならそこの肉屋併設のスタンドあたりで食べたかった。しかし、そこまで行くと時計の12時の回が見られない。1時の回を見ていると中央駅に戻れなくなる。時計を取るか、ソーセージを取るか………

ほかほか白ソーセージ。コレが最後に食べたかったのよ〜

当然のことだが、市庁舎のからくり時計は人気なので、真ん前のカフェレストランにはずらっとテラス席が並んでいる。一等地のカフェだから値段は高めだろうけど、ここからなら時計見物とソーセージ&ビールの摂取が同時に出来る。事実、以前の訪問ではいつ行ってもこの店のテラスは満席で、広場に直に座って時計を見たのだ。しかし、今日はこの寒さである。

12時近くなって時計目当ての人垣が出来始めた。同じ思いの観光客はいるらしく、ちらほらとテラス席に座る人たちもいる。他も店のテラスはガラ空きだが、真正面のこの店だけは別。よしッ座ろう!
それにしても寒いぞぉ。温かい飲み物が欲しいけれど、ソーセージにはビールよね、譲れないよ。
茹で立ての白ソーセージがやって来た。小さな鍋ごとお湯に浸かっている。甘いジャムみたいなマスタードで食べるのが基本だけど、で、個人的にはこのマスタードがあまり好きではなかったのだけど。運ばれてきたソーセージはハーブを練り込んだものだった。あら、美味しそうじゃない?

このソーセージは皮を剥いて、ふわふわの肉部分だけを食べる。「よっしゃ、上手く剥けるかな?」と取り皿に出す。時計を見るために集まった人垣の中から、お爺さんが近づいてきた。手にジャックナイフを持っている。うわー、助かりますぅ! お爺さんのナイフを借りて切り目を入れ、ナプキンで拭いて返した。手がかじかんでいたからね、フォークとナイフで上手に剥くの自信なかったの。

うーん、美味しいよお。ふわふわの肉を口に運びつつ、からくり人形をゆっくり見学。
12時ちょうどに鐘が鳴り、オルゴールの音楽が始まって人形が動き出す。何度見てもミュンヘンのからくり時計は素晴らしいやね。あの人形ひとつが等身大の大きさがあるのだ。ちゃんとストーリーになってるし。お姫さまを守って一騎討ちする騎士、片方が刺されて落馬すると、拍手と歓声が湧く。その後村人たちがくるくるダンスをして、終わったと見せかけて今度は下段の人形たちがくるくる踊る。
人形たちの踊りはかれこれ15分近く続く。プラハの天文時計の15秒とはエライ違い。
あー満足満足。

踊る人形たち。お姫さまの出てくるシーンは撮影し損なってしまった

その後、マルクト広場近くの教会などを2、3覗いて、中央駅に戻った。荷物を出して空港行きの電車へ。いよいよ帰国の途につくわけだ。でも、今日の時計見物とソーセージ、最後の楽しいおまけだったよね。

成田行きの便の出る搭乗口には、当たり前だが大量の日本人がいた。その時点でもう帰国したような気持ちになる。すでに頭に浮かぶのは、機内食をすっ飛ばして醤油ラーメンや納豆ご飯のことばかり。
いっぱい休んじゃったから、またガンガン働かなくッちゃ! いっぱい食べちゃったから、スポーツジム通いも再開しなくッちゃ! 頑張ろう。12時間後にはまた東京での日常が始まる。

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