いよいよ最後の一日! どうやって楽しもう?

昨晩はディナーが遅く、お風呂に入って荷物の整理などしていたので、ベッドに入った時には深夜2時になってしまっていた。当然、早朝には起床出来ず。その上、今朝もまたヒナコの血圧が低くなってしまっているようだ。夜の飛行機でもう帰国なので最後の一日なんだけど、まあ欲張らずにのんびりしましょ。

ヒナコのことはグタグタさせておいて、私は昨晩ブラッスリーからタッパ詰めしてきた小エビで朝食。一昨日買ったポワラーヌのパンはさすがにちょっと固くなっていたが、バターをたっぷり塗って(これも昨日余ったのを持って帰ってきた)エビと一緒に食べると風味があって結構イケる。今日の分として残しておいた果物やヨーグルト、日本から持ってきたインスタント味噌汁やスープやコーヒーやお茶の類いも全部お腹に詰めこんでしまう。
毎朝見ていたTV番組が朝食のお伴だ。毎日馴染んだ男性キャスターともサブの女性キャスターとも今日でさようなら。一番熱心に見ていたお天気オバチャンのコーナーも今日で見納め。
ゆっくり朝食摂ってゆっくり身支度、ゆっくり荷造り。そうこうしているうちにヒナコの調子も上向いてきたようだ。大丈夫だよね、歩けるね? なんともう10時になってしまった。チェックアウト済ませてスーツケースをホテルに預けて、さあ! 出発だ!

クルーズでさくっとセーヌ河畔を俯瞰する

外は明るく晴れあがっている。最終日にきて初めて見るフランスの青空だ。陽射しは明るいが空気はキリリと冷たい。
帰国便は夜のフライトなので、19時頃まではたっぷり時間が使える。今日はパリをふらふら散策するつもりなのだが、その前にパリ観光の王道的なことをしてみたくなった。そう、実は一回もしたことのなかった「セーヌ川クルーズ」ってやつを! だって、せっかくのこの上天気なんだもの、川とその周辺の美しい建造物たちを船上から水の流れに身を任せじっくりゆっくり眺めてみたい。午前中はヒナコも本調子といいがたいかもしれないし、今日は歩き疲れてもホテルに休憩に戻ることも出来ないし、クルーズなら座ったままでしばらく楽しめる。ランチやディナーつきではないから予約も要らない、盛装する必要も全くない。

青空とセーヌ川とエッフェル塔。最終日にこの三点セットがきちんと見られてよかったよかった

勝手知ったる92番バスに乗り、エッフェル塔ビュー・ポイントのアルマ橋 Pont de l'Alma たもとのアルマ・マルソーで降りる。昨日も一昨日もここは何度か通過していたが、曇っていたり夜だったりだったので、最後に晴天下で眺められて嬉しい。
アルマ橋の足元から川沿いの歩道に降り150mほど先のバトー・ムーシュBateaux Mouches [WEB] の乗場へと向かう。次の便は11:00なのでまだ30分近くある。それまでセーヌ河畔をぷらぷら散歩したりしていてもいいのだが、寒いのでもう切符を買って中に入ってしまうことにした。料金は €10。うん、お手頃なお値段なんじゃない?

改札をして中に入ると、いかにもなスーベニアショップと待合室とがあり、その前には各国語のパンフレットが置いてある。小さな引き出しがたくさんついた金属製のボックスで、ひとつひとつの引き出しにさまざまな国旗のシールが貼ってあって、数えてみたら24カ国もあった。日の丸の引き出しを開けて日本語のパンフを1枚もらっておく。
いかにもなスーベニアショップには貰っても困るいかにもな観光土産が並んでいて、でも店員はいない。待合室は狭くてここで待つのはちょっとつらいかなと思ってたら、出航15分前にはもう乗船させてくれた。おかげでいい場所が選び放題。ガラス張りの天井の室内には暖房がきいているが、せっかく景色を愉しみに乗ったのだもの、寒そうだけど甲板最上部の席にしよう。

甲板の見晴らしは抜群なものの、吹きさらしで水上にいることもあり、やっぱり底冷え度が半端ではない。ものの10分座っていただけで腰から爪先から背中からきっちり冷えてきた。慌ててカイロをひとつ追加する。予備をバッグに入れておいてよかったー。
そうこうするうちに11時になり、ゆっくりと船が動き始めた。動くと余計に風が冷たく感じるが、抜けるような青空の爽やかさとこれから眼前に拡がっていくであろう美しい眺めへの期待感が、寒さを多少和らげてくれる(ような気がする)。

船はまず最初にアンヴァリッド橋 Pont des Invalides をくぐり抜ける。進行方向に見えているのは、ナポレオンの眠るアンヴァリッドとグラン・パレとを結んでいるアレクサンドル3世橋 Pont Alexandre III。中央に橋脚を建てずにセーヌ川をひと跨ぎしている単一のアーチ橋で、そのカーブラインも美しいが、橋上に並ぶアールヌーヴォーの街灯、橋桁に飾られた天使やニンフやペガサスの像、金をあしらった華麗な装飾……おそらくはパリで一番豪華な橋なんじゃないだろうか

クルーズ船のガラス屋根の上には、ひなたぼっこするカモメたちがびっしり

前方にアレクサンドル3世橋を望みながらボートはアンヴァリッド橋をくぐる

アレクサンドル3世橋の華麗なニンフの彫刻。橋の上にはアール・ヌーヴォーの街灯も見える

ちょっと逆光で見えづらいオルセー美術館は大時計が目印

アンヴァリッド橋を越えた先で川は緩やかにカーブし、次に現われるのはコンコルド橋 Pont de la Concorde だ。左側にはコンコルド広場の観覧車が、広場中央に屹立するオベリスクの先端もわずかに見える。その先にちらりと見えた温室のようなガラス屋根は、多分オランジュリー美術館のものかしら。右にオルセー美術館が近づいてきた。そのずっと先の左にはルーヴル美術館。コンコルド橋から先はシテ島の手前まで川の流れは一直線で、ロワイヤル橋 Pont Royal、昨晩渡ったカルーゼル橋とポン・デザール、ポン・ヌフと個性豊かな橋たちが連なり、河畔の壮麗な建物と折り重なる景観の素晴らしさといったらもう……ため息モノ。うーん、おのぼりさん丸出しのセーヌ川クルーズなんて今更……などとちょっとバカにしていたのだが、どうしてどうして侮れない。

ポン・デザールをくぐるとすぐさまシテ島の先端部が目の前に現われ、その奥にノートルダム大聖堂の双塔が頭を覘かせているのが見えてくる。船は川幅の狭い方──島の右側へと進んでいく。じっくり見させるためか川幅が狭いからかは不明だが、この辺りでは進行スピードがとてもゆっくりになる。大聖堂の伽藍が眼前に迫ってきたかと思うと、その側面を舐めるように進み、裏側へと廻りこんでいく。正面からの姿は絢爛ながらも威風あるものだが、後陣側から見たシルエットはそれは優雅で、まさしく貴婦人のよう。

ルーヴル宮を過ぎるとシテ島のノートルダム大聖堂の双塔が見えてくる

ボートは聖堂の右側から側面にぴったり貼り付くように進んでいく

じっくり眺められるようにボートの速度が落とされている

後陣から望む聖堂の姿はとても優美だ

シテ島とその先のサン・ルイ島を過ぎると、川はまた一直線となり川幅もまた広くなるが、この辺りは歴史的建造物も少なくなってきた。オーステルリッツ橋 Pont d'Austerlitz の右側にあるのは、フランス南西部やスペイン方面への列車が出るオーステルリッツ駅、その奥で綺麗なアーチを描くオーステルリッツ高架橋 Viaduc d'Austerlitz はメトロ5号線が走る鉄道橋だ。その先の左側に見えているのがリヨン駅だろう。南仏に行く時はここから列車に乗るのね……。船はこの橋の真下でUターンする

オーステルリッツ橋の彫刻

鋼鉄製のオーステルリッツ高架橋にも、繊細な装飾が施されている

復路ではルーヴル美術館は左側にくる

エッフェル塔の足元ではボートを停泊してくれるので、これでもかというくらいじっくり眺めることが出来る

二層構造のビル・アケム橋。ちょうどメトロの車両が走り抜けていった

そうかあ、失敗したぞ! 両側に次々現われる美しい建造物たちに興奮して、右を見たり左を向いたりと文字通り右往左往していたのだが、同じルートを逆行していくのならバタバタ慌てずに片側だけをじっくり観ていればよかったのだ。今頃気づいても遅いのだが、復路でも結局めまぐるしく右左右左と首を巡らすこととなってしまった。
一番最初にくぐり抜けたアンヴァリッド橋を再びくぐり、その先の船着場をいったん通り越して船は下流に進んでいき、エッフェル塔の足元のイエナ橋 Pont d'Iéna 周辺で再び徐行し始める。川の中から見上げるエッフェル塔は妙にずんぐり寸詰まって見えるように思えた。

次のビル・アケム橋 Le Pont de Bir-Hakeim のところで船は再びUターン。この橋も鉄道橋で二層構造になっていて、一階が歩行者と自動車用、二階部分にはメトロの6号線が走っている。そうそう! 観光客には6号線に乗る機会は多いのだけど、ずっと地下だったのに突然地上に走り出たかと思うと瞬間的にエッフェル塔が見えたんだ。ホントに一瞬で、心していないと見逃してしまうのだが。

1時間15分程度の乗船時間でセーヌ河畔の世界遺産エリアをまるっと俯瞰して船を降りた。うん、やっぱり乗ってみて正解だった。最初から最後までオープンデッキで景観を堪能したので、気持ちは素晴らしく満たされているのだが、身体は冷え冷えになってしまった。同じ場所を通る復路では室内に引っこんでしまった人が多かったけど、この寒さじゃあそういう気持ちになるのも仕方ないよね。

レトロなパリを見つけにパッサージュを巡る

アルマ・マルソー駅からメトロの9号線に乗り、グラン・ブールヴァールで降りる。午後はパッサージュ巡りをするつもりなのだ。18世紀末頃から19世紀にかけてパリのあちこちに造られた美しい内装とガラス屋根を持つアーケード街のことで、最盛期には150を数えたという。その座をデパートに取って代わられその流行は終焉し、現存するものはわずかだが、丁寧に補修されて再びアーケード街として人気となっているとのこと。オペラ地区にはそんなパッサージュが比較的集中している。

パッサ=ジュ巡りのしょっぱなに、まずオスマン大通りにから北方向に延びているパッサージュ・ジョフロワ Passage Jouffroy へ。入口横にある蝋人形館ミュゼ・グレバン Musée Grévin [WEB] の看板が目印だ。建設当時は唯一の地下暖房を備えたパッサージュとして人気を集めたのだとか。暖かく雨風の心配もせず優雅にショッピングが楽しめる……最先端スポットだったのね。。

パッサージュ・ジョフロワの入口には星の飾りつけがされていた

パッサージュに入ってすぐはちょっと薄暗い。通路の敷石がお洒落だ

ガラスの天井からは明るい陽射しが燦々と射しこんでくる

突き当たりには雰囲気のあるプチホテル、ホテル・ショパンがある

ミュゼ・グレバンの入口前には雰囲気のある階段

店内のモザイクタイルが素敵だった

銀の星のデコレーションが施された入口をくぐると、目にも舌にも美味しそうなお菓子を並べたパティスリー、アンティークの木馬が飾られているおもちゃ屋さん、素朴で温かみのある雑貨店、ダリやゲンズブールも顧客だったという老舗のステッキ専門店など、雰囲気のあるショップが連なっている。
突き当たりにはこれまた雰囲気のあるホテル・ショパンというプチホテルがあり、クランク状になった角を曲がって数段の階段を下りるとその先はギャルリー・デ・リーブルと呼ばれる本屋街で、本屋さんは勿論、映画のポスターなどを集めた店や古いポストカードの店が軒を連ねている。神田神保町の古本屋街の規模をうんと小さくして横文字にしてちょっとお洒落にした感じで、じっくり探し物をしたら何時間でも楽しめそう。

全体的にはレトロでお洒落ではあるけれど、洗練されているというよりは庶民的でどこか懐かしく温かみのある場所だった。

通りを挟んだ向こう側にパッサージュ・ヴェルドーが続く

こちらのパッサージュも燦々と明るいが、人通りは少ない

小さな通りを挟んでアーケードはその先のパッサージュ・ヴェルドー Passage Verdeau へと続いている。ジョフロワと同じ年に建設されたパッサージュで、ここも古書店やギャラリーがたくさん集まっている。ガラスの天井からは陽光が降り注いでとても明るいのだが、通る人は少なくてひっそりしている。でも、物見遊山の観光客がいないだけで寂れた感じはしない。古書店街ってそもそもこういう雰囲気よね。

最後のランチは人気店のタルトで

パッサージュ・ヴェルドーの端まで行き着いたところでUターンしてオスマン大通りまで戻る。今度は大通りを挟んで南方向に延びるパッサージュ・デ・パノラマ Passage des Panoramas へ。1時半近くになってしまったので、もうお腹ぺこぺこ! このパッサージュにはタルトが美味しいと評判の店があるので、そこでランチにしよう。

交通量の多い大通りに面したパッサージュ・デ・パノラマの入口

どことなく庶民的な雰囲気が漂っているのは気軽そうな飲食店が多いからかもしれない。あまり広くない通路にテーブル席が並んで雑然としているが、活気でいっぱい

このパッサージュには飲食店が多く集まっていて通路にまでたくさんテーブルが並べられ、近くに勤める人たちがランチに来ているようだ。通路幅は先ほどのものよりずっと狭く、モザイクタイルなどではない素っ気ない敷石の床で、全体的に下町の商店街っぽい雑多な印象があるが、この賑わいには活気があっていい。
しばらく進むと20人ほどが行列が出来ている場所があり、そこが目当ての〈L'arbre a Cannelle〉[WEB] という店のようだ。飲食店のカテゴリとしてはサロン・ド・テということになるらしく、ウィンドー越しにはタルトが何種類も並んでいるのが見える。食事になる塩気のあるタルトとおやつになる甘いタルトとがそれぞれ5〜6種類くらいずつあって、どれもみんな美味しそう! 迷ってしまう。
店内は満席だが、ランチの時間帯としては後半になりつつあるので、ものすごく待つということもないだろう。

この店は19世紀の老舗ショコラティエを改装したものだそうで、優雅で見事な彫刻が施された窓枠やファサードは当時のもののままだという。木製なので派手さはないのだけどよく見るととても緻密で、茶褐色の光沢には積み重ねられた歴史が香ってくる。うむむ、こういうのって日本人の琴線に触れるのよねぇ……。
15分ほど待ってようやくテーブルに案内された。びっしりと満席だが、大半の客はそろそろ食事の終盤にかかってきている感じ。

さて、何にしよう? 渡されたメニューを見ると、タルト以外にもチキンソテーやサラダといった食事モノがあるようだが、ここはやっぱり初志貫徹してタルトにしよう。どれがいいかなぁ?
悩みながらプロヴァンス風野菜のタルトと鴨のローストのタルトを選び出してオーダーすると、ギャルソンは無情にも「もうタルト・フロマージュしかない」と言う。ええっ、選ぶ余地ないの?? あんなに何種類も並んでいたのに、待ってる間に全部なくなっちゃうとは! ウィンドー越しに現物見て悩んでメニュー見てまた悩んでようやく決めたっていうのに……。軽くパニクって思わず「じゃあそれを2つ」と言ってしまった。うわっバカだなあ、違うモノ頼めばよかった。でもタルトを食べる気満々だったものだから、咄嗟に代替案が思いつかなかったんだもの……。

見過ごしてしまいそうになるが、クラシックな木の彫刻を施された窓枠や柱がとっても素敵

店内は照明も控えめであまり明るくない。額装した古いポスターがたくさん飾られている

よく見ると天井にもクラシックな装飾がある

飲み物はLeffeというベルギービールにした。苦みも酸味も甘みも出しゃばらず適度にマイルド、可もなく不可もなくといった味だが喉が渇いていたので美味しい。
タルトは温めなおされ、生野菜が添えられてすぐに出てきた。一切れのサイズはそんなに大きくないが、カゴに山盛りのパンが一緒についてくる。ナイフを入れるとバターの香りがふわっと鼻腔をくすぐる。フロマージュというからにはチーズ主体で、癖が強すぎたり香りがきつすぎたりしたら困るなと思ったのだが、意外にもあまりチーズ臭さはない。どちらかというと生クリームのような味わいでほうれん草がたっぷり入っているのも意外。タルト皮はあまり厚くないものの、サクサクというよりはもっちりした味わいだ。

私はとっても美味しいと思うのだが、ヒナコは半分ほどつついただけで「脂っぽいからもういらない」と放棄。えーーー!? まあ確かにバターとクリームたっぷりではあるけれど。だって朝ごはんもあんまり食べてないよね? だったらフルーツのタルトとかそういう甘いヤツ頼もうか?
「要らない。食べたくない」とヒナコは何故かむくれ顔。
パリのカフェではよくあるのだが、この店も小さなテーブルを狭い間隔でびっしりと並べてあった。いかにもパリらしくて素敵な風景なのだが、すべてのテーブルがびっしり客で埋まっているとその圧迫感たるや半端ではない。そしてその客たちは皆ほぼ全員が談笑しながら食事をしているのである。会話のざわめきやカトラリーやグラスの触れ合う音、ひとつひとつの音はささやかではあるが、全部が混ざり合うとさすがにざわざわとしている。この圧迫感と騒々しさが多分ヒナコのお気に召さずイラついているのであろう。

たっぷりの生野菜の添えられたタルト・フロマージュ。軽いランチには最適の分量だ

ほうれん草がたっぷり入っている。嬉しいね、色の濃いお野菜

勿体ないのでヒナコの残した半分も私が頂いたが、食べ続けているとチーズ独特の臭みが感じられ始めてきて、さすがにちょっと胸焼けしてきた。
入店した時にはぴっちり満席だったのに、ふと気がつくと数組を残して店内は閑散となっていた。私たちがちんたら食べている間に、ほとんどの客はさっさと食事を済ませ帰っていったらしい。おかげで天井の細かな装飾や額装した古いポスターなどの内装をゆっくり眺め回すことが出来た。

ビール2杯とタルトのランチセット2つで合計 €27.40だった。分量を考えるとちょっとお値段は高めかな? でも美味しかった! 違う種類のタルトを味わえなかったのが残念だったけど。

一番美しく魅力的なパッサージュへ

パッサージュ・デ・パノラマを通り抜け、ギャルリー・ヴィヴィエンヌ Galerie Vivienne [WEB] へは300mほど南方向へと歩く。「パッサージュ? 何それ美味しいの?」状態だった私だが、この "パリで一番美しいパッサージュ" の存在を知って、次にパリを訪れる機会があったら絶対見てみたい行ってみたいと決めていたのだ。

気品溢れるギャルリー・ヴィヴィエンヌのエントランスは、もう風格からして違う

通路にサロン・ド・テのテーブルが並べられている

シンプルな豆電球のイルミネーションは流れるように美しく、シンプルだからこそとても品がいい

自然光の射し込む今は点されていないが、天井には美しい形をした電燈があった

ため息が出そうに繊細で美しい床のモザイクタイル

パッサージュの北側入口からアプローチ。寒さを遮断するためか、入口から数歩入ったところに分厚いベルベットのカーテンがかけられている。落ち着いたダークレッド色したまるで緞帳のような布の内側に一歩足を踏み入れると、ガラス張りの天井から柔らかな陽光が差しこみ、足元には美しい模様で彩られた床が広がっていて、ほとんど気分は19世紀にタイムスリップ

1826年に造られた当時はたくさんの高級店が集まる最先端の流行スポットだったのは想像に難くない。高級店がみなシャンゼリゼとマドレーヌに移転した第二帝政期の時代には一時寂れたようだが、今は再び華やかな活気を取り戻している。そもそも、パッサージュ(通路・抜け道)ではなくギャルリー(回廊)という名前がつけられているように、その美しさと洗練度は確かに段違いに素晴らしい。とにかく印象的なのは床のモザイクの華やかさだが、アーチ梁に施された繊細なレリーフや流麗な曲線を持った鉄線のシャンデリア、艶やかに磨かれた木製の窓枠、ドーム型のガラス天井などなど、どれも気品があってうっとりするほど美しい。さらにこの季節は、小粋で洗練されたノエルのデコレーションが華を添える。

一番人気のパッサージュなだけあって観光客で溢れている

クリスマス一色に彩られていて華やかなことこの上ない造花の専門店

立ち並ぶショップも厳選されていて、鳥居ユキやゴルチエがブティックを構えている。人気のハイソなサロン・ド・テ〈A Priori Thé〉もここにあり、時間帯が合えばランチをするかケーキで一服、という心づもりだったのだけど……。たった今ランチ休憩してきたばかりだし、今日は観光終了時間が厳密に決められてるんだもんね、ここは次回送り(願望)としましょ。

ギャルリー・ヴィヴィエンヌは隣り合ったギャルリー・コルベール Galerie Colbert と奥で繋がっているのだが、こちらは国立図書館が所有して別館扱いの講義室や展示室として使われているらしい。通り抜け出来るのだが、あまりにもひっそりとして誰もいないので足を踏み入れるのが躊躇われてしまう。窓枠や梁の形はヴィヴィエンヌとよく似て洗練されているが、華やかさはぐっと控えめで、この静謐な空間はアーケードというよりは美術館の廊下のようだ。

樅の木を赤く塗っただけでいわゆる装飾をいっさいされていないツリー。この空間になんて似合っているんだろう! 樅の木は本物だったので可哀想だけど……

次のパッサージュ巡りの目的地はギャルリー・ヴェロ・ドダ Galerie Vero-Dodatパレ・ロワイヤル Palais Royal とルーヴル宮とフォーロム・デ・アールのちょうど真ん中辺りで、ジャン=ジャック・ルソー通り Rue Jean Jaques Rousseauブロワ通り Rue Bouloi を結んでいる。
パレ・ロワイヤルの中庭を抜けて行こうと思ったのだが、入る道を一本間違えてしまった。途中、低音量の音楽を流しながら無言でカードのみを捧げる小さなデモに行き会う。うーむ、彼らは何を訴えたいのだ?

最短ルートを外しながらも辿り着いたヴェロ・ドダは通路幅もゆったりと広く、天井のフレスコ画やギリシャ神話風の彫刻、黒褐色に磨き込まれた木製のファサード、さり気なくあしらわれている繊細な金細工、暖かい光を放つガス燈(今は電灯になっているだろうけど)、市松模様した大理石の床などなど、ベル・エポック調の内装の美しいパッサージュだ。ここも「ギャルリー」の名がついているだけのことはある。洗練されて華麗というよりは、高貴で格調あるという印象なのだ。ルーヴルやパレ・ロワイヤルにほど近いという場所柄もあるだろう。

ブロワ通り側からのヴェロ・ドダの入口。ギリシャ神話風彫刻で飾られていて格調ある雰囲気

通路の幅は広いのだが、通り抜ける人は少なくひっそりしている

天井のフレスコ画もギリシャ神話風。ちょっとどこかの邸宅っぽい感じがする

ブロワ通りの入口近くにはオーダーメイドのファンデーションの有名店があり、華やかな活気に満ちている。出口側の高級そうな靴屋の店内にはハイソな方々が優雅にお買い物されているのが見える。手頃なお値段で美味しいと評判のビストロもあるのだが、時間帯が半端なせいで閉まっている。他にも上質そうなショップがぽつりぽつりとはあるのだが、テナント料が高いのだろうか半分近くは空いたままだ。そのせいか眠っているようにひっそり静かな回廊で、19世紀のセレブたちの亡霊でも出てきそうだけど(笑)。天井画のあるパッサージュは他にはないので、通り抜けてみるだけでも一見の価値はあるんじゃないかしら。

オペラ大通りを一路北上!

パッサージュを抜け、ルーヴル宮に沿ったリヴォリ通り Rue de Rivoli を戻って、アンドレ・マルロー広場 Pl.André Malraux まで来た。サントノレ通り Rue St.Honore がパレ・ロワイヤルの角にぶつかった場所にある広場だ。広場に面している部分は古典劇の殿堂コメディー・フランセーズ Comédie Française で、その奥にパレ・ロワイヤルの壮麗な建物が続いている。省庁が入っているので内部の見学は出来ないが、噴水や花壇のある中庭は散策に最適な憩いの場となっていて、庭を囲む優美な回廊にはギャラリーやアンティークショップなど芸術的香りのするテナントが集まっているのだ。ただ花壇といってもこの季節だしなあ……噴水ってのもいかにも寒々しいよなあ……アンティークショップで何か掘り出したいと思っているわけでもないしなあ……逡巡していると、ヒナコが遠くを指差して「あっあれ綺麗! あれ何?」と叫んだ。

途中で見かけた建物全体を覆ったクリスマスの装飾。コレ、暗くなると灯りが点るんだろうか? 綺麗だろうなあ

アンドレ・マルロー広場にあったペットボトルで作られたクリスマスツリー。何てアイディアなんでしょ! すごいすごい!!

緑色のペットボトルを潰したもので、赤く染めたボトルを所々でアクセントにしてある。青いボトルキャップもちゃんと並べてある

広場からは斜めの方向にオペラ大通りAv.de l'Opéra が分岐している。これはオペラ座の正面から真っ直ぐに延びてきている幅30mもある大通りなのだが、ヒナコの指先はその大通りの突き当たりを差している……西に傾き始めた陽射しに煌めいているオペラ座──パレ・ガルニエ Palais Garnier のドーム屋根だ。エレガントな青銅のドームの頂上には金の竪琴を抱いた音楽の神アポロンの像が屹立し、両端には芸術の神ミューズの彫像が金色に輝いている。
そういえばヒナコはオペラ・ガルニエの内部を見たことないんだっけ? 大広間がすごいゴージャスなんだよ、シャガールの天井画もとても素晴らしいんだよ。昼公演がない日なら内部見学出来るはず、今日が大丈夫かどうかも終了時刻もわからないけど、行ってみる?

そういうわけでパレ・ロワイヤルの回廊散策ではなく、一路オペラ座に向かうことになった。道が一直線なのですぐ近くにあるように見えるが、多分1kmちょっとは距離があると思う。ヒナコ連れのノロノロ歩きのせいもあり、思った以上になかなか近づいてこない。オペラ大通りは歩道の幅もたっぷりあって歩きづらい通りではないのだが、とりたててヒナコの興味を引く店などもなく、ヒナコは歩くのに飽きたようだった。終了時刻に間に合うかと考えていたので、私が心持ち早足になっていて息が切れたのかもしれない。ちょうど半分を過ぎた辺りまでオペラ座に近づいてくるとキラキラ輝いていた丸天井も見えなくなってしまう。そのせいもあって「つまんない、もういい」などと言い始めた。

えー! オペラ座の内部、ホント素敵だよ。絶対気に入るって!
だけどヒナコはどうやら依怙地モードに入ったよう。「私は内部なんて見たくないんだもん、どうでもいいんだもん、あの丸い屋根が気に入ったんだもん」とぶつぶつ。またそういう身勝手なことを……。いつものことなので、あまり取り合わずにそのまま歩いた。

傾き始めた陽射しを浴びて、オペラ・ガルニエの美しいドーム天井が艶やかに浮き上がる

オペラ座真正面の広場は七叉路となっている。ここから向き合うパレ・ガルニエは、優美でエレガントでありながらも威容ある佇まいだ。とりあえず至近距離からちゃんと外観を観察してみよう。足元からでは青銅の丸天井や金の彫像は見えないが、ファサードに施された彫刻が見事なことはちゃんと見える。
二重列柱のバルコニーは中央ロビーへと続いている。えーと、内部見学の入口はどこだったかな? うろ覚えだけど正面ではなくて裏側だった記憶がある。裏に回ってみると最終受付は16:30となっており窓口はもう閉まっていた。うわー5分過ぎてる。残念! 間に合わなかった〜〜!

まあ、いいや。オペラ座の内部見学も「次の機会」にとっておこう。時間と演目が合えば、バレエやオペラの公演を観に入るのも素敵。「次」がいつになるかわからないけれどね。そう考えているのは楽しいでしょ?

オペラ座の真裏から50mほどの位置にオスマン大通り Bd.Haussmann が横切っていて、ギャラリー・ラファイエットがある。あらら、結局またここに来ちゃった……。でもこの間は私が具合悪かったもんね、ラファイエット店内の大ツリー、見ておかなくちゃ。だけど昼食の時以来歩き詰めだったので、さすがに疲れてきたし身体も冷えてしまった。ラファイエットの斜向かいのカフェでショコラを啜りながらしばし休憩する。たっぷりのホイップクリームをトッピングしてもらったショコラは温かく甘く、心身の疲れを緩やかにほどいてくれる。パリのカフェでの最後の寛ぎタイムをしみじみ味わった。

点灯したばかりのギャラリー・ラファイエット。最後にまたここに来てしまった

道路に面したガラス張りのテラス席に陣取っていたので、5時ちょうどにラファイエットのイルミネーションが点灯する瞬間もしっかり見届けられた。うん、うん、何度見ても綺麗だ。

クリスマス・イルミネーションを見納める

身体も十分暖まり足の疲れも取れ、カフェを出た。さあ、あと2時間弱のパリ滞在を楽しむぞ! とりあえずは、ついさっき外観のイルミネーションが点灯したばかりのギャラリー・ラファイエット本館の店内に入る。店内は大変な賑わいだ。人が多くてざわざわしてて照明が過剰にキラキラしてて、長居しているとヒナコがちょっと嫌がりそう。

ラファイエット本館の中央部は7階分の吹き抜けになっていて、各階層のバルコニー部分や梁には精緻な彫刻が施され、その上をステンドグラスのクーポールが覆っている。この吹き抜けと円形の天井だけでも素晴らしいのだけど、今は20mはある巨大ツリーが据えられて一層の華を添えているのだ。
ウインドウディスプレイが毎年違う趣向を凝らされるように、このツリーも毎年デザインが変わるらしい。今年のツリーは色鮮やかなボールをたくさん身にまとい、その隙間をびっしりと小さな豆電球が埋めている。ボールの半分は金色や銀色をしていて、館内の照明や豆電球を反射してとても煌びやかだ。近寄ってよく見ると、ツリーは床に据えられているのではなくクーポールの中心から吊り下げられている。床と円錐形のツリーの間には3mくらいの空間があり、真下からツリー越しに見上げるクーポールも美しく面白い光景だ。

クーポールの中央から吊り下げられた巨大ツリー。リボンをかけたギフトボックスのオーナメントも可愛らしい

ツリーの真下から見上げる光景も面白い。底面部も色鮮やかなボールで飾られている

このツリーは上からは見られないのかしら? ためしにエレベーターで4階くらいまで上がってみたが、吹き抜けに沿ってテナントが円形に並びその外側を通路が巻いていて、各テナントの奥は壁のようで見下ろせるテラスにはなってないようだった。

さて、あと1時間ほど時間が使える。見納めのとどめはイルミネーション輝くシャンゼリゼの散策に決〜めた! ギャラリー・ラファイエットを後にし、2枚残しておいたカルネでメトロに乗った。シャンゼリゼ通りの中間地点のフランクリン・D・ローズベルトで降りる。ここからイルミネーションを楽しみながらぶらぶら歩いてホテルまで戻ろう。

降り立った場所からはコンコルド広場の観覧車が、反対側には凱旋門が、左右に見える。

キラキラ・イルミネーションで華やぐシャンゼリゼ通り

青い電飾ツリーをいっぱい並べて飾っているのはアルザス料理のレストラン。店内も照明がキラキラ……

建物丸ごと電飾デコレーション。ちょっとケバケバと派手過ぎるかなあ?

観光客に大人気のラデュレは、この寒さでも店外に行列が出来ている

赤い豆電球が目を引くが、窓のリボンのデコレーションが地味ながらもセンスよくて素敵

老舗のカフェ、フーケ。印象的な深紅のテントがしっとり落ち着いた雰囲気

一昨日の晩も少しシャンゼリゼを歩いたが、今日はまだ6時台ということもあって人通りの賑やかさが段違い。立ち並ぶブティックやレストランはどれもこれを意匠を凝らした飾りつけがされ、そこにマロニエ並木のイルミネーションの煌きが加わってきらびやかなことこの上ない。ここ10年くらいの流行ではあるがLEDの青っぽいイルミネーションが多い。私は寒々しい感じがしてこの青色はあんまり好きじゃないんだけどなぁ……。もう20年近く前に初めてパリに訪れた時、クリスマスの時期は終わっていたけれどシャンゼリゼの街路樹はイルミネーションに彩られていて、それは明るいオレンジ色の豆電球だった。キリリとした冷気の中、その暖かな美しさに本当にうっとりして「ああ、ここはパリなんだなあ、シャンゼリゼにいるんだなあ」としみじみ感動した記憶がある。私は青山にある会社に長らく勤めていたが、表参道のケヤキ並木のイルミネーションもオレンジ色の豆電球だった。だから私の脳内ではお洒落な通りの街路樹のイルミネーションは暖色の豆電球というのがデフォルトなのである。

緩やかな勾配を持つシャンゼリゼのゆったりと広い歩道をそぞろ歩き。右側を歩いては左に渡り、しばらく歩いてまた右にとを繰り返し、連なる店々のイルミネーションの華やかさとセンスの良さとをとことん味わい尽くす。最後に凱旋門の真下からその威風堂々とした姿を見上げ、東方向に目を転じて、ルーブル宮まで一直線に繋がるシャンゼリゼ大通りの夜の美景を目に焼きつける。うん、もう十分楽しんだ。

さあ帰国の途につこう

7時を目処にしてホテルに戻った。預かってもらったスーツケースを返してもらい、洗面所を借りて、出立。空港へ行くエールフランスバスの乗場はホテルから1〜2分。このことを考慮して選んだホテルだったが、観光の足回りも至便だったし、凱旋門近くというロケーションも気分が浮き立つものだったし、日光は射さないけど部屋も可愛かったし、スタッフも感じがよかったし、お値段だってそこそこだったし。まずまずのホテルだった。

空港バスの運行は30分刻み。次は19:30だ。ここが始発のはずなのだがバスを待つ人は誰もいない。15分ほど待つ間も誰も来ない。乗場の場所はここでいいんだよねぇ?と不安になった頃、ようやく中年男性が一人来た。きっとみんな直前に来るのね……と思っていたら、バスもすぐに来た。運転手から切符を買って乗り込むなりすぐに発車した。数十人は乗れそうな大型バスなのに、乗客は私たちの他に中年男性の合わせて3人しかいない。途中のポルト・マイヨ Porte Maillot でそれなりに乗り込んでくるかなあ……と思ったら2人だけだった。あとは空港までノンストップなので、こんな大型バスにたったの5人! 採算取れるんだろうかとお節介な心配してしまうが、時間帯や曜日のせいでたまたま5人なのよねぇ?

万一の渋滞を考えて時間の余裕をとっておいたのだが、道路はガラガラでバスはガンガン走り、たった35分で空港に到着してしまった。フライトまで3時間以上ある。余裕充分を通り越して時間あり過ぎ。 そうそう! 今朝ネットで調べたところでは、東京は12月にしては異常に暖かく20℃近くある様子だった。フランス滞在中は連日0〜2℃前後の中にいたのでそのままの服装で成田に降り立っては暑くてたまらないに違いない。重ね着していた服を脱いで預託荷物に詰め込んでおくことにした。飛行機内は毛布もあるし暖房が効いているので薄着でも大丈夫なのだ。ところが、朝テレビを見ながら適当に荷造りしたスーツケースの中は結構ぐちゃぐちゃで、脱いだセーターなどをささっと突っ込める状態でない。で、あんまり格好いいものではないのだが、むしろそういう人を冷ややかな目で見ていたのだが、ロビーの端っこで全開オープン荷造りし直す羽目になった。……とほほ。

どうせ時間はどっさりあるのだからとゆっくり丁寧に再梱包したのだが、チェックインカウンターもX線検査もイミグレッションも笑っちゃうくらうガラガラで、スイスイスイスイ進んでしまう。ものの15分とかからなかった。さて、どうしよう? そういえばお腹が空いている。だってもう8時半なんだもの、晩ごはんの時間じゃない! ヒナコは朝も昼もほとんど食べていない。離陸時刻が23:20なのだから機内食にありつけるのは多分真夜中、恐らく1時近くになっちゃう。何か食べておかなくちゃ。

セルフサービスのフードコートが閉店時間が一番遅いようだ。早々に追い出されずにすむ。フードのラインナップをさくっと眺め回してみると、結構バラエティに富んでいて種類も豊富。ヒナコは疲れすぎたのか胃もたれしたのか相変わらず食べたくないだなんだブツブツ言っているが、チャーハンがあるの知ると食指が動いたようだった。ちょっと脂っぽくぺしゃっとしたチャーハンだったが、ヒナコにはフランス料理よりはずっと馴染みやすい味だったようで、喜んで平らげた。
私はハムサンドの食べ納め。うむうむ、やっぱりこんな空港のフードコートのバゲットサンドでも、ちゃんとそこそこ美味しい。今回の滞在でいろいろ食べたけど、一番美味しいものってバゲットだったように思う。皮がパリパリで中はもちもちはしていないけど、もちもちどころか結構硬いんだけど、噛みしめると味わいが深い。香り高いたっぷりのバターだけで十分美味しい。これって「炊きたての銀シャリとお新香があれば一番のご馳走!」って感覚に近いかな。

9時半頃までだらだらとフードコートのテーブルで粘ったが、他の客はほとんどいなくなるし横で掃除機はかけられるしで、仕方なく席を立った。出発までまだ1時間半以上あるっていうのに……。免税店での買い物もないし、そもそももう閉店しているし、搭乗口近辺でぐだーっと待っているしかなさそう。

私たちの乗るAF278便の出るゲートはサテライトビルの端っこ──奥から2つ目くらいの位置なのだが、最先端部の半階分下がった場所に仮眠スペースがあった。ほぼフラットになる柔らかそうなリクライニングチェアが十分な間隔をとって並べてあり、通り抜ける人もなく静かだ。ゲートまでもすぐに戻れる距離ではあり、アナウンスもちゃんと聞こえる。フラフラと近寄りこの身をまかせたい欲求がムクムクしてきた。うーむ、でもさあ、ちょっと考えてみろよ? こんなに座り心地(いや、寝心地?)のよさそうな椅子に一日中歩き回った身体を横たえたら、仮眠どころかがっつり眠ってしまう。アナウンスを聞き逃して飛行機に乗り遅れたらどうするの !? 気持ちよさそうなリクライニングチェアは諦め、ゲート周辺の固い椅子でじっと待つ。……ああああ、眠い、眠い、眠い、とんでもない睡魔が押し寄せてきた。

10時50分、ようやく搭乗開始された。うう、待ってたぞ、これで日本まで一直線だ。立ち上がりざまにチェックした万歩計の数値は17362歩。最終日、そこそこ歩き回ったようである。 まだ14日へ日付は変わっていないが、飛行機に乗り込んだ時点でフランス滞在は終了ということに私は定義した。ボーディングブリッジの先はもう「日本への道」である、と。従ってまだ1時間あるが、これ以降のことは翌日ということで。

 
       

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