Le moineau 番外編

出発の朝。残暑の東京は雨だった。

実は昨晩、キチンと寝そびれ一睡もしていない。
だらだら本を読んでいるうちに夜が空けてしまう。

飛行機は成田10時25分発。8時半に空港に着くためには逆算して6時には家を出ないといけないのだ。
なんだか空模様が怪しいので、とっとと家を出てしまうことにした。どうせ10何時間もの空の旅、退屈な機内でさぞや眠れることでしょう。生ゴミを全部出し、ドアの新聞受けの裏蓋を開いて、出発!

明け方の住宅街にスーツケースのガラガラ音を響かせ歩く。最寄り駅に到着寸前、パラパラと雨粒が…新宿駅に到着すると、土砂降りに。あ〜早めに家を出ておいてよかった! もう雨でも関係ないもんね。

新宿駅のホームで成田エクスプレスを待つ。私の席は6両編成の5号車。ぼーっと待ってると、さっきから大荷物を持って右往左往しているドイツ人のおっさんに「8号車はホームのどこにいたらいいのだ?」と聞かれる。あー、やっぱり私に聞いてきたか!(ホントに私はこーゆーコトよく聞かれるんです。こんなにたくさんヒトがいるのに何故か「選ばれ」てしまうのだ)
おっさん、パニックになっている。列車の号数や出発時刻を尋ねるが「8号車はどこだ、8号車」と繰り返すだけ。「とりあえずアンタの切符を見せてみろ」と言う。思った通り、私の次の列車の切符で、それは12両編成らしい。なので、『成田エクスプレス・12両編成の場合の8号車・このへん』の表示の前まで連れていってあげました。

思うのだけど、国際空港へ向かう列車の発着するホームに日本語の表示しかないってのは、ずいぶん不親切な話ですね。直前の列車の表示は電光掲示板に英語で出るのだけど…
列車に乗り込む時、さっきのおっさんが大きく手を降って見送ってくれる。ありがと。気をつけて行ってくるよ。おっさんもね。

すずめ、機上のヒトとなる

今回のヒコーキはKLMでアムステルダム経由。イタリアに直行するアリタリアは3万以上高かったのだ。
KLMは個人的によく利用する航空会社。まず他社の欧州便に比べ成田発の時間が早いので、そのぶん早くヨーロッパに入れること。乗り継ぎ地のアムステルダムからはヨーロッパ各都市への便が頻発していること。巨大な空港だが、ターミナルはひとつきりなので、乗り換えに迷ったりしないこと。
などなどの理由で、もう10回近くはココを使っている。
私は過去4回ほどロストバゲジ経験があるのだが、他社便でロンドンのヒースローやパリのCDGで乗り継いだ時だった。何故かKLMのアムス・バウンドでは一度もない。そういうワケで私にとって「いいジンクス」の航空会社と空港なのだ。

70代のヒナコの動きのトロさを考え、空港や駅に行くにはとにかくたっぷりと余裕を見ている。
にもかかわらず、諸々の手続きはアッサリすんでしまった。横に並んだ団体客は、ヤレ人数が揃わないの預け荷物はいくつだの…とごちゃごちゃやっていたが。

機内においては特筆すべきはなし。
欧州へのヒコーキなんて、単なる夜行列車みたいなもの、寝てる間に遠くへ連れていってもらえるだけでしかないから。12時間の辛抱。
…のつもりで寝まくるつもりだった。だって昨晩一睡もしてないし。…が、何故か眠れない。文庫本を1冊読み終えてしまった。映画も2本も見てしまった。やっと本格的に眠くなった頃、そろそろアムスに到着だと言う。寝そびれた。

長い長い長い一日…

アムステルダム到着15:15。ホントは、1時間後のローマ行きに乗り継ぎたかった。でも、予約が取れなかったのよね…。しかたなく最終の20:05発の便。5時間近く待ち時間がある…。

アムステルダムのスキポール空港は、とても便利な場所にある。空港駅から中央駅までは電車でたったの20分。頻度も10〜15分おき。
煉瓦造りの中央駅をもう一度じっくり見てみたかったので、待ち時間の間ちょっくらアムス市内まで出かけて、小一時間ほど散策しお茶でもしてこようと思ってた。
そしたら、今日はアムスの市内交通はストライキやってるって言うじゃん! 空港〜市内は動いているらしいけど、ダイヤ乱れまくりのようだし…乗り遅れて荷物だけローマに行っちゃいましたぁ、では困るので。

じっと待つ5時間は長い。
買う気もないけど、さまざまなショップを逐一見てまわる。
洗面所でゆっくり顔を洗い、歯も磨き、化粧も一からし直して、ゆっくりゆっくりトイレに入る。
階上のヒトの少ないフロアに、飛行機の発着風景を見渡せるところにズラリと寝椅子の並んだ場所を発見。しばし眠る。
が、このまま本気で眠りこむとヤバイことになるので、カフェに入り、たった1杯のコーヒーをゆっくりゆっくり飲む。

千里の道も一歩から、だ。あまりに遠く思えた搭乗時刻も近くなってきた。

とどめの「列車タダ乗り事件」

ローマ・フィウミチーノ空港22:20到着。
とりあえず今晩の宿は、テルミニ駅近くに取ってある。まずはぐっすり眠って明朝から移動を開始するつもり。空港からテルミニ駅までは列車で30分。あと少しだ〜〜。そろそろ真剣に眠くなってきた。

空港駅に向かって歩いていると早速白タクのおっちゃん達が声をかけてくる。「列車はもう終わったよ」とも言う。ふーんだ、そのテには乗らないよ。まだ2本は列車があるコト、イタリア国鉄のHPで調べてあるもんね。もし電車がなくても、タクシー乗るんならキチンとタクシー乗り場から正規のタクシーに乗るからね。

しかし、落とし穴はあった。
長い動く歩道とエスカレーターで空港駅に到着すると………列車はちゃんと動いていた。が! 切符売り場が閉まっている! 8台並んだ自動販売機は全部壊れていた!(全部試した)
同じように途方に暮れるアジア人の男性が2人いた。「あなたもテルミニに行くの?」
共同宣戦を張り、自動販売機の使い方をいろいろ試してみる。そのへんにいるイタリア人にも聞いてみる。

…ダメ。買えない。

えーい、こんなコトしてると終電なくなっちゃう。とにかく乗っちゃおう!と、4人でテルミニ直行の列車に乗り込んでしまった。車掌が来たら申し開きすりゃーいいんだ。

註)ヨーロッパの列車には日本のような改札はありません。誰でも駅には入り放題。切符は事前に買っておき、乗車時に時刻を刻印する仕組み。バスや市電などにおいても同じ。日本のように車内精算などもありません。有効な切符を持っていて初めて乗車の権利が生じるという考え方のようです。車掌が検察に来た時、不正がバレると高額の罰金を請求されます。

乗った列車は「レオナルド・エクスプレス」と名のついた専用列車。なのに、車内には私たち4人だけ。いつ車掌さんが来るかと、ドキドキしながら30分。列車はするするとテルミニ駅の構内へ…。

あら、着いちゃった。
そそくさと逃げるように列車を降りる。ホームに降りちゃえばソコは公道と同じ。切符のないことを咎められはしません。
タダ乗り共犯の二人組に別れを告げ、駅を出てホテルへ向かう。徒歩5分。
チェックインしてベッドに倒れ込む。あーもうシャワーは翌朝でいいや。チラリと時計を見ると24時を回っていた。日本時間では朝の7時か…前日の5時半に家を出たんだな、その前も寝てないし、えーと何時間起きてたコトになるんだろ、ヒナコは結構ウトウトしてたけど私はそういうワケにもいかなかったしな…そのあたりで記憶が途切れ、雪崩れるように眠りに落ちる。

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