Le moineau 番外編

ナポリ下町の喧噪に呑み込まれる

昨晩は、楽しみしていたピッツァに裏切られたショックで、BBSに書き込む気力もなくフテ寝してしまった。朝も9時過ぎまで寝坊してしまう。団体ツアーならとっくにどこかの観光を始めている時間だ。まあ、いいや、のんびりいきましょう。

朝食をすませてホテルを出たのは10時を少し回っていた。今日はナポリの下町、スパッカ・ナポリにたくさん並ぶ教会を巡るのだ。教会は1時半〜2時頃までで、閉まるか、4時までの長い昼休みに入る。さて、どこまで廻れるか。駅近くの露店商のテントが連なる広場を抜けて、喧噪の下町地区へと向かう。

狭い通りには小さな店がごちゃごちゃと並び、猥雑で渾沌として、そして活気に満ち溢れている。行き交う人々の間をスクーターが猛スピードで抜けていく。立ち食い用の切り売りピッツァやコロッケのようなもの、お菓子などが店頭のケースに山積みになり、八百屋の店先ではイタリアマンマが巨大な尻を振りながら家族のためにトマトや茄子を選んでいる。
プレセピオ(クリスマス前に飾る精巧な人形飾り)の店先で仁王立ちする店主の二の腕には、カタカナで「アントニオ」のタトゥが。誰に彫ってもらったか知らないが、日本人としては恥ずかしくなる下手くそな字。グラフィックデザイナーの立場としては許せない字でもある。「マソトニホ」とも読める。彼が良しとしてるのならいいけど。

ごちゃごちゃとした下町地区。暗く汚いと感じる人もいるかもしれない。でもこのカオスな世界も、私は好き

クルマのボンネットの上で店開き。わー、屋台よりお手軽かも

最初はドゥオモDoumoだ。これだけの規模の街のドゥオモはやはり立派である。側廊の装飾を眺めているとウェディングマーチのオルガンが流れてきた。結婚式のようだ。とすると、さっきずかずか踏んでいた赤い絨毯はヴァージンロードだったのね。他生の縁の異国のカップルに、しばし祝福の気持ちを贈る。

続いてジロラミーニ教会Grolaminiサン・ロレンツォ・マッジョーレ教会S.Lorenzo Magioreと廻る。S.L.マッジョーレには地下にギリシャ・ローマ時代の遺構がある。洪水などで埋もれた都市の上に次々と新しく街が形成されていったのだ。まだまだ発掘途中とのこと。他にもナポリには見学出来る地下都市が何ケ所かある。

入口に小さなしゃれこうべの像のあるサンタ・マリア・デッレ・アニメ教会〈プルガトリオ・アダルコPurgatorio ad'Arcoへ。ここの地下埋葬室は、骨をそのまま並べてあるのだ。ひんやり暗い地下には頭蓋骨が並んでいるが、怖いとか気持ち悪いとかは思わない。花やお菓子や衣類などが供えてある。大切な人の死を悼む気持ちは万国共通。骨壷に入って地中にあるか、外に出ているかだけの違いでしかないと思う。20代にしか見えない遺影もある。この若さで死なれては家族もたまらなかったろう。御冥福をお祈りいたします。

石畳のでこぼこ道は、足にくる。喉も乾いたし、広場のテラス席でビール休憩。ヒナコは、紅茶のグラニータ。冷たくしゃりしゃりのグラニータは、暑く乾いた南伊の昼にはぴったり。

一番の目的にしていたサンタ・キアーラ教会Santa Chiaraは、午前中は12:30までで間に合いそうもない。午後改めて来ることにし、先にサンセヴェーロ礼拝堂Sanseveroに行く。小さな礼拝堂だが、内部は華麗だ。ヴェールに包まれた横たわったキリスト像の彫刻が見事。オーガンジーのような半透明の布1枚の下の表情など秀逸だ。ロープの仕切りギリギリまで近寄り、なおかつオペラグラスで細部をとっくりと見る。地下には血管だけを残した人体があった。ちなみに、500円くらいで売っているプラスチックのオペラグラスは便利だ。教会の天井画や屋根の彫刻などを見るのに威力を発揮する。軽くて小さいし。

郷に入っては郷に従うべし

やはり、それなりに疲れた。お昼ごはんの後、現地の人に倣って少し昼寝をしよう。これまで歩いた道を戻る。町は急速にお昼休みへと向かっている。行き交う人々の数が減ってきた。飲食店以外の商店はシャッターをおろしたり戸締まりを始めている。子供達がカバンを振り回しながら、歓声をあげて学校からの家路を駆けていく。道草なんてしてると、パスタの茹で上がりに間に合わなくなって、マンマの機嫌が悪くなるよ。

お昼ごはんは決めていた。
中央駅からホテルに向かう迄の間には、テーブルをいくつか置いただけのバール兼総菜屋のような店がたくさんある。店頭のケースでくるくる回りながら焼かれているローストチキンが食べたかったのだ。丸ごと1羽を買い、部屋に持ち帰る。ソーセージ1本と青菜を炒めたものも温めてもらう。
チキンは皮がパリパリで、身は味が濃くジューシーで、特に胸肉は美味しかった(背中はパサパサしてたが)。口の周りをベトベトにしながら1羽ぺろりと平らげる。

チキンはPolloという。青菜はちょっと火を通し過ぎでクタクタ。デザートは八百屋で買ったリンゴ。ジュニアスイートの部屋で安上がりな食事(笑)

昨日は早寝して今朝も寝坊したくせに、30分ほど昼寝する。怠惰? いいんです、ナポリではナポリ流で。

3時少し前、午前中に見そびれたサンタ・キアーラ教会へ同じ道を向かう。歩き始めてなんか感じが違う気がする。そうだ! この広場には朝は露店商のテントがぎっしり並んでいたのだった。今はテントはすべて片付けられ、無人の広場に膨大な量のダンボールや紙屑が積み重なっているだけ。

サンタ・キアーラの向かいにはジェズ・ヌォーヴォ教会Gesu Nuovoがおろし金のようなギザギザとした壁を見せている。無骨な外観に反し内部は豪華なのだそうだが、残念!午前中で終いのようだ。
フランチェスコ派のサンタ・キアーラ教会の内部は、質素。でも、一番の目的は教会の裏手にあるクラリッセのキオストロChiostro delle Clarisse。マヨルカ焼タイルの列柱やベンチが整然と並ぶ空間は、夢のように綺麗。陽射しの強さも、外の喧噪もしばし忘れてしまう。ベンチの背もたれは絵物語になっている。筋はよくわからないが1枚1枚丹念に見た。

ジェズ・ヌォーヴォの壁

キオストロは、外の喧噪とは別世界。しばし夢を見る

ベンチのタイルも1枚1枚全部違う

博物館のモザイク。撮影は出来ないので、パンフの写真をスキャニング

このあとは国立考古学博物館Museo Archeologico Nazionale。明日ポンペイやエルコラーノの遺跡見学予定だが、出土品はすべてこの博物館に収蔵されている。遺跡だけでは単なるヒトの多い廃虚でしかない。
近くにメトロの駅がある。一駅だけだが乗ることにした。広い博物館を歩くことを考え、メトロ駅そばのバールでひと休みしておくことにする(休んでばっかり?)

バールの男のコは、もみあげを伸ばしたマッシュルームカットで刈り上げという不思議な髪型をしていた。「中国人か?」と聞くので、日本人だと言うと、両手を合わせてパンパンと打ち深々とお辞儀をする。あの、それって、神社の参拝なんですけど…(笑) 彼はコーヒーを運んで来る時も、会計をする時も、私達に「参拝」していった。

博物館の内容はとてもよかった。遺跡から出土したモザイクや壁画の数々は本当に緻密で美しい。ここでもオペラグラスは威力を発揮。明日の遺跡見学を頭に浮かべ、7時の閉館時間までたっぷりと味わう。我に返ると、足はガクガクになっていた。

ナポリめしはホントーに塩っぱいのか?

懐疑的になっているのである。材料が新鮮だから薄味であると考えるのは間違いかもしれない。そのくらい昨日のピッツァの塩塩攻撃は凄まじかった。昼の青菜も塩がキツめだったが、あれは作り置きの温め直しだから仕方ないだろう。
今日はとにかく歩いて足はワギワギに疲れているので、遠出はイヤだ。ホテルから2、3本路地を入った場所で大衆的なトラットリアを見つけた。すでに9時半だが店は大賑わい、これから入る客もいる。良さ気だ、自分の嗅覚を信じよう。

とは言え、ついつい「味の想像出来る」メニュ−選択になってしまった。
お決まりのワインとガス入り水と「分けてもいい?」のフレーズ。30年前はおそらく絶世美人、現在は豊満な魅力をたたえるカメリエーラはにっこり頷く。

メニューには、スパゲッティ・ボンゴレ・フレッシュトマトとあった。甘さと酸味が程よい感じ

赤っぽい魚と青っぽい魚。でも白身。彼等の名前はわからない…

定番・ボンゴレスパゲッティと魚のフライ、ミックスサラダ。全〜然塩っぱくなんてないじゃない! パスタのアルデンテ具合は絶妙だし、2〜3種類の小魚とヤリイカのフライは頭からサクサクいける軽さである。生野菜も久し振りでたっぷり食べた。食後のエスプレッソまで美味しく頂き、大満足の夕食。

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