Le moineau 番外編 - ヴァル・ディ・ノートのバロック都市めぐり -

       
 

5年ぶりのヨーロッパ、12年ぶりのイタリア

長距離旅行は3年ぶり、ヨーロッパへの旅は5年ぶりだ。
私が初めて訪れたヨーロッパの国はイタリアだった。ファースト・インパクトが絶大だったせいもあって、やはりヨーロッパの中ではイタリアを訪れた回数が一番多い。にもかかわらず、最後に行ったのが2004年の南イタリアだったということに愕然とした。ついこの間のような気がしているのに、もう12年も前のことだったとは……
12年前はもうすでにネットで航空券から列車チケットからホテルから予約が出来ていたので、その前までの個人旅行の事前準備の煩雑さを思うと、ほんのちょっと前のように思えてしまうのかもしれないな。
ただ、12年経ってネット予約や現地でのモバイル通信は、もっと確実に簡単に便利になった。12年前の旅行記を読み返してみると「へえ、この頃はこんなことしてたんだぁ」などと思う箇所がいくつもあった。

今回使うエアーはやっぱりアリタリア。病気をしたりして海外旅行から遠のいているうちに私のマイレージは一切合切消滅してしまったので、もうエアライン・アライアンスにこだわる必要はない。行きたい場所に一番行きやすい飛行機を使えばいいのだ。だって、消滅してしまうのは2回目なんだもの、もうマイレージ貯めるのはあきらめたよ。

アリタリア785便は14:10、ほぼ定刻でローマに向けて飛び立った。少しばかり心に引っかかるのはローマでの乗り継ぎが1時間10分しかないこと。後続のカターニア行きの便はまだあるので、いざとなったら振り替えてもらえるだろうけど。かつて──といっても20年くらい前だけど、乗り継ぎ便では荷物のスルーチェックは成田で出来ても人間は現地で再手続きが必要だった。トランスファーカウンターでオーバーブックしてるから次の便に振り替えるだの、日本からの便が遅れて間に合わなくなっただの、ちょくちょくあった。人間はなんとか同日に間に合うものの荷物は置き去りで、翌日送ってもらうも夕方まで届かずヤキモキしたり、移動の途中で空港にピックアップに寄ったりなどしたのだ。
……そういうの、嫌だなあ。でも、ま、その時はその時。

チケットを予約する時にエコノミークラス最前方から2列目の窓側に座席指定をしておいた。足元や前が広く空いている最前列席は追加料金のかかるコンフォートシートなので、そのひとつ後ろということ。これが結果的に大正解。この日の乗客率は70%くらいの感じで、ツアー客は後方に固められたので、私は3列シートを独り占め状態。前の列は無人、後ろの列には通路側に一人なので、シート・リクライニングするにも気兼ねしないし、気兼ねされない。シートの肘掛けを全部上げてしまえば、足を抱えて丸まる姿勢にはなるものの身体を横たえることだってできる。なんせローマまで13時間もあるんだもんね。
ちょうどプレミアム・エコノミーとの境目なので、カーテンで通路が仕切られ、乗務員以外は人の行き来がいっさいないのも静かでいい。でも乗務員から見て死角になるのか、食後のコーヒーを私だけスルーされてしまった。2度目の機内食を配る時も、ワゴンを通り過ぎさせてから「あっ、そこにいたのか」みたいな顔されて渡された。

ローマ・フィウミチーノ空港を疾走する

785便のローマ到着予定は19:00だったが、約30分遅れた。1時間10分あるはずの乗り継ぎ時間が40分になってしまう。イタリア国内の乗り継ぎだから、入国手続きをしてから国内線ターミナルに移動しなくちゃならないわけで。いっそ、もっと遅れてしまえば別の便に振り替えられるんだけど、ちょっと微妙……。
だけどチェックインはもう成田ですんでいて搭乗券も手元にあるし、荷物だけ積んで乗客が来ない便を出発させるはずがない……はず。これは空港でダッシュ必須だな、迷っている余裕はないな、ローマの空港は12年ぶりだけど……めまぐるしくいろいろなことを考える。今は日本の真夜中にあたる時間だけど、眠いとかボーッとしてるとかの場合じゃない。

前方の席に座っててよかった。ずいずい進んで一刻も早く降りようとしたのに、ビジネスクラスとプレミアム・エコノミーの客の降機が優先なんだそうだ。やんわりとブロックされてしまう。ボーディングブリッジでなく、タラップ前にバスが来てターミナルビルまで運ばれる方式なのだが、彼らだけ乗せてスカスカのままバスは行ってしまった。我らエコノミー客は2台にまとめてギュウギュウに詰め込まれるので、全員が降りきってしまうまでバスは動かない。つまりは我先にと飛行機降りてもそのぶん早いわけではないの。むしろ一番に乗り込んじゃうと奥に押し込められて、かえって遅くなるってことなのね。

ターミナルビルに着いて、いよいよダッシュ開始。入国手続きは窓口が3ヶ所も開いてて、並んでいる人は少ない。たったひとりしかいない列についたら、なんとまあこのひとりがごちゃごちゃモメてて、全然動かない。先に隣の列がサクサクと10人通ってしまったので、見限って並び直したら、ものの30秒で終わった。隣はまだモメていて、後ろに並んでいる人は誰もいない。

パスポートコントロールを抜けて手荷物検査に猛ダッシュ。ここでボディチェックに引っかかって、ベルト外せとか靴脱げとか手荷物開いて見せろとか言われたりしたらどうしよう。そんな暇ないよ。カターニア行きのAZ1759便は20:10出発、19:40には搭乗開始、19:55にはゲートが閉まるはず。手元の時計はもう48分を指している。焦る焦る。
手荷物およびボディチェックは問題なかったが、慌てて忘れ物ををしてしまったら大変。意外にここで手荷物のピックアップミスは多いのよね。恥ずかしながら私も、台湾からの帰りにお土産入れた紙袋を忘れて、いったん乗った飛行機に待ってもらって取りに走ったことがある。JALだったから頼みを聞いて待ってくれたんだと思う。「2分だけですよ」って言われたけど。
うーん、よく空港で走ってるんだよね、私ってば(^^;)

再び猛ダッシュした先には国内線ターミナルに移動するバスが待っていて、またも人がたまるまで動いてくれない。思わずバスの中で足踏みしてしまいそう。気持ちばかり焦る焦る。
ターミナルビルに着いた時にはもう55分になっていた。ゲートはB09、さあ、全力疾走だ。この時間は乗客ももう少なく、ショップもいくつか店じまいしていたので、余計な情報が目に入らずにBの表示を探せた。血相を変えてバタバタと走っていく私にびっくりして道を開けてくれる人もいる。

あっ、あった! B09! CATANIAの表示が出ている! うわあ、ゲートが閉まってる。でもまだ係員はいる!
「Weit! Weit Pleeeeeeeease!!!!」走りながら絶叫してしまった。まったくもう……路線バスじゃないっての。係員は「アラ良かったわ、来たのね」と笑ってすぐ通してくれた。
大汗かいてゼーコゼーコと息をあがらせ肩を上下させながら機内に駆け込むと、目に飛び込んできたのはなんだか黒っぽい世界。この時間帯のローマ〜カターニア便は完全にビジネス便のようで、ざっと見えた限り95%が出張帰りらしき30〜50代のビジネススーツ軍団。濃い〜〜いイタリアおっさんでみっちり埋めつくされてる中、ポツンと空いてるのが私の席なのね。汗だくだくで息も絶え絶えの赤いセーター姿の中年の東洋人女は、この雰囲気の中で明らかに浮いていた。

さて、私は頑張って走ってなんとか乗り継げたけど、果たして荷物はどうだろう? 間に合わない可能性大だな、カターニアには一泊だけだからホテルに送ってもらうわけにはいかないな、次の移動先のシラクーサに送るってわけにもいかないしな、移動途中で空港に立ち寄ってピックアップしていくしかないのかな、まだ最終便が残ってるけどそっちに積んでくれるわけないしな………。1時間15分の飛行中、ずっと荷物は間に合わない前提でいろいろ算段を考えていた。会話帳をめくって会話交渉の予習もしたりして。

だから、カターニアに到着して、ターンテーブルが回り始めて3番目に私のスーツケースが出て来た時には本当に驚いた。「ショート・コネクション」のオレンジ色のタグが目立つ場所に結んである。一番最後に積み込まれたから最初に出て来たのね。アリタリア航空、あなたはダメな子なんかじゃない、やればちゃんとできる子!

シチリア最初の夜

時計を見ると21時45分。着陸してからたった15分でもう外に出てこれてしまった。荷物も無事に手元にきたし、明日からの行程に備えて早く休息をせねば。出口から外を見るとタクシーがズラッと客待ちしているが、これを使うのは最終手段。カターニア空港のタクシーはあまりいい評判聞かないからなぁ。夜遅くで荷物つきだと€100とかふっかけてくることもあるとか。まあ、私は立派な中高年だけど、一応女性ひとり≠ネわけだしねえ。警戒しておくに越したことはないわけで。

カターニアは空港と市内がとても近いので、市内バスの457番・通称 Alibus が安くて早くて便利。
ターミナルビルから出てバス乗場方向に進んでみると、中長距離のバスはもう終わっているのでチケットブースは閉まっている。何種類かのバス会社の標識が並んでいて、その先にAlibusの停留所があった。路線マップは貼られているが時刻表はない。自販機のようなものもない。同じ方向に歩いていく人たちは駐車場の方へと通り過ぎていき、ベンチには誰もいない。一応24時くらいまでは10〜30分おきにバスはあるって話だけどなあ……どうなんだろう。5分ほど待ってみたが、ちょっと不安になってきて、やっぱりタクシーにしようか逡巡し始めたところ、20代のカップルがバス停のベンチに座った。どうやら大丈夫そうだな……。

彼らと一緒にしばらく待っていると、側面に大きくAlibusと書かれたバスが勢いよくやってきた。車内にはすでに3人ほど乗客がいる。空港に立ち寄るだけで、普通に市内走ってる路線バスなんだもんね。
切符は車内で運転手から買えた。市内まで€4。カターニア中央駅前には15分ほどで着いた。予約したホテルはここから200メートル程度の距離のはず。Googleストリートビューで予習しておいた道を進むと、ものの数分で Hotel Villa Romeo [WEB]と書かれた緑色の幌と小さなネオンサインが見えてきた。夜遅くの到着だったのでちょっと心配していたが、何も怖いことはなかった。たった€4で、着陸から1時間以内にもうホテルに入れるなんて!

レセプションの男性はとても感じがよく、にこやかに私を迎えてくれた。
手続きを終えて「Buona notte」と去ろうとすると、彼は「Good Nightは日本語でどう言うの?」と聞いてきた。そして今覚えた「オヤスミナサイ」を私に言ってくれた。でも多分、彼は本当はオヤスミナサイという言葉はもう知っているような気がする。だけどきっと、日本人客にはあえて毎回尋ねているのだ。それだって立派なサービスのひとつのような気もするの。

私の部屋はくねくねと廊下を折れ曲がって進んだ一番奥にあった。まあ、シングルだからホテル内で一番環境のよろしくない場所でもあるんだろうしな、一泊だし仕方ないよな、と扉を開けると意外に広いスペースとシングルベッドがまず目に入った。一瞬こんなもんだろうなと思ったら、右奥がもっとずっと広くてそちらにはダブルベッドがある。なんとトリプルルームがアサインされていたのだった。夜遅くだったからシングルルームが足りなくなったか、オフシーズンならではのホテル側のグレードアップ・サービスか。
何度か折れるようにくねくね進んだのは、このホテルはいくつかの中庭を取り囲むように部屋が配置されているからのようだった。周辺の景観は全然よくないんだから、外に向けてのバルコニーよりこちらの方がずっといい。これで料金はシングルルームの€44.10(それもBooking.comのタイムセールで12%OFFされたもの)なんだから、かなりお得。

扉を開けたら正面に見えるのはシングルベッド。ひとりで一泊だったらこれで十分なんだけど

部屋の形状はL字になっていて、奥にどどーんとダブルベッドが。もちろん、こちらのベッドを使わせていただき、広々のびのびと寝ましたよ!

トリプルならもしかして……と期待してバスルームを覗いてみたら、バスタブはなくてシャワーのみだった。とりあえず身体を洗おう。乗り継ぎ含め15時間半のフライト、9日の朝に自宅玄関を出てから23時間近くたつわけだし、なんたってローマの空港での汗だく大疾走があったんだから。

シャワーを浴びてスッキリしたら小腹が空いていることに気づいた。ローマ到着前の17時頃に機内食食べたきりだものね。「どん兵衛天ぷらそば・ミニ」と「赤いきつね・ミニ」を1個ずつスーツケースに忍ばせてきたのだが、早速出番があるとは。そうだ、カターニア行きの機内でもらったスナック菓子もあったっけ。カモミールティーのティーバックも持参してるから、淹れて飲もう。
とにかく到着した最初の晩はしっかり眠っておくことが肝要。お腹空いて目を冴えさせてしまうよりは、軽く胃に入れて速やかに眠りにつくに限るのよ。

 
       

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