Le moineau 番外編 - 緑のハート・ウンブリア州の丘上都市めぐり -

       
 

早朝のローマで、朝飯前の教会巡り

昨晩は日付が変わる前にちゃんと眠りに落ちたはずなのに、朝の3時に目覚めてしまった。昔は到着した夜にがーっと眠って翌朝から現地時間に対応出来てたのになぁ。歳を重ねるにつれ眠りも浅くなるし、長時間眠れないし、時差の適応もスローになるものなのね……。ふふふ、でもねー、きっと異常に早起きしちゃうから時間を有効活用するべく、テルミニ駅近辺の朝早くから開いている教会をいくつかピックアップしてあるのだよ。さっそく早朝散歩と洒落こみましょ♪

そうこうするうちに空が明るい紫色になってきたので、ルーフバルコニーから夜明けを眺めてやろうとしたけど、西向きなので感動するような風景は見られなかった。シャワーを浴びて身支度を整え、朝食後にすぐチェックアウト出来るよう荷物もまとめておく。

6時半に外に出ると、テルミニ駅周辺の朝はもうとっくに始まっていた。駅正面の500人広場 Piazza del Cinquecento は市内の路線バスのターミナルなので、すでに何台ものバスが出たり入ったりしている。早くから観光をしようとする人、バスに乗ろうとする人、出勤途中らしき人がそこそこ行き交っている。邪魔にならない場所に立って、日常が始動していく光景をしばらく眺めていた。

教会巡りの初っぱなは、駅の南に位置するサンタ・マリア・マッジョーレ聖堂 Basilica Papale di Santa Maria Maggiore。ローマの4大バジリカのひとつで、世界中の聖母マリアに捧げた教会の総本山でもあるという。テルミニ駅近くで7時から開いているので、13年前にも朝の散歩として立ち寄った記憶がある。でも内部に入ると初めて見たように新鮮な感じがした。よく覚えていなかったか、その後の行程で感動が上書きされちゃったのね……。
13年前との大きな違いは、聖堂の前が鉄柵で囲われていて、そこに自動小銃を持った迷彩服のカラビニエリ(憲兵)が2人も立っていること。聖堂の左端にあるテントにもカラビニエリが数人いて、そこで荷物とボディのX線チェックを受けないと中に入れないこと。テロ対策?

S.M.マッジョーレ聖堂前の広場には、朝の7時過ぎというのに若い中国人女性が何人かいた。彼女たちはとにかく自撮りに余念がない様子

右側の側廊にあるシスティーナ礼拝堂はひときわゴージャス

主祭壇の下の半地下には大理石で作られた法皇像がある

法衣の模様の彫刻の繊細なことといったら!

聖堂内に一歩踏み込むといきなり眼前に絢爛豪華な世界が広がった。去年シチリアでヴァル・ディ・ノートのバロックタウン巡りを堪能してきたけれど、ローマのバロック装飾はその華美さ華麗さ豪華さの次元が桁違い。まあ、シチリアとローマのバロックは時代もずいぶん違うんだけどね。

36本の大理石の列柱の上部のモザイクは5世紀のものらしい。じっくり見ようとして、双眼鏡をスーツケースに入れたままだったことを思い出した。早起きして準備してたのにバカみたい。後陣のモザイクも薄暗くて高くてよく見えない。残念。
左側廊のパオリーナ礼拝堂ではミサの最中だった。閉ざされた鉄格子の扉の上に撮影禁止の紙が貼ってある。
右側のシスティーナ礼拝堂は中に入ることが出来た。部屋じたいが十字の形をしていて、床は色とりどりの大理石、壁も彫刻やフレスコ画で覆われ、天井にはクーポラ、中央の祭壇は金色の4人の天使が金色の教会をお神輿のように担いでいるもの。とにかく豪華だった。ここは有料で見学できる部分も多く、ファサードのモザイクを間近で見られたり、充実した付属美術館があったり、地下の考古学エリアのガイドツアーなんかもあるらしいけれど、この時間ではまだダメね。

ほぼローマ時代の遺跡の姿をしている教会

サンタ・マリア・マッジョーレ聖堂を出て、背部の広場にまわってみると左右に優美なクーポラが見える。このふたつのクーポラがパオリーナ礼拝堂とシスティーナ礼拝堂なんだろう。教会は正面の姿と後ろ姿が異なるものだけど、まるで別の教会のファサードのように完成度が高く美しい。どこにも扉が見当たらないのと、半円形のカーブを持った後陣が中央にあるので、ようやく背中側なんだと気づくくらい。

まだ7時半だというのにすでに陽射しが強く、空は抜けるように青く高く、時差に対応しきれていない寝不足の目がくらくらするほど。軽く汗ばむ中を共和国広場 Piazza della Repubblica まで歩く。
巨大な円形の広場は中心のナイアディの泉 Fontana delle Naiadi を取り囲んでロータリーになっていて、洗濯機のように自動車がぐるぐる回っているので泉の側に近づくのは容易ではない。

共和国広場は、早朝からすでに暑くなる気満々の超晴天。予報では27℃とか……

広場の北東側にローマ時代のディオクレティアヌス大浴場遺跡 Thermae Diocletiani があり、広場外周に面した部分にミケランジェロ設計のサンタ・マリア・デランジェリ教会 Basilica Santa Maria degli Angeli e dei Martiri がある。ミケランジェロは古代文明に最大の敬意を払ってオリジナルの浴場の集会所遺跡をそのまま取り入れ、ファサードは丸い広場の外周に沿って凹型の半円形をしている。私たちが想像するローマのカトリック教会とはかけ離れていて、壁の遺跡が残っているようにしか見えない。ていうか、今回調べてみるまでここには遺跡しかないと思ってたわ……

遺跡か遺構と見紛いそうな地味〜〜なファサードのS.M.デランジェリ教会

2枚の扉は前衛的デザイン。ポーランドの彫刻家の作品で2006年のものとか。そんなに最近!

教会内部は天井が高く柱もなく、気持ちがいいほどに広々とした荘厳な空間。主祭壇の前では朝のミサの最中だったので、近寄りにくかった

教会内部に入るとまず広大な空間に圧倒される。18世紀の改修で表面上には絢爛な装飾がされたらしいけれど、とにかく高い天井と柱の区切りなどない巨大な身廊からは、3000人も収容できたという浴場の名残りが十分に偲べる。 主祭壇にはサン・ピエトロ大聖堂から移設された祭壇画、他にもいろいろな美術品のコレクションが充実していて、ガリレオの振り子や日時計なんかもあってちょっと楽しい。各見どころの横のボードには簡単な説明文とバーコードがあり、どうやら教会専用のスマホアプリをダウンロードして番号を入力すると詳しい解説が読めるようになっているらしい。ほぉ、最近はカトリック教会もいろいろ新しい試みしてるんだあ。
祭壇画を近くでちゃんと見られなかったことだけに遺恨が残る。

外に出てから、共和国広場をぐるっと渡って教会の全景撮影を試みてみたけど逆光でうまく撮れない。それに遺跡の壁みたいな地味な教会って、含めての風景にしようとすると絵にならないわ。

「中身はスゴイんです!」な天使だらけの教会

もう少し時間が使えそうなので、300mほど先のサンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会 Chiesa di Santa Maria della Vittoria にも行ってみることにした。小さな小さな教会なのだけどダン・ブラウンの小説『天使と悪魔』に登場したことで一気に有名になったということ。ホントに小さく地味な外観で、最初ははす向かいの別の教会に行ってしまったくらい。教会の前にはアックァ・フェリーチェの泉 Fontana dell' Acqua Felice(別名モーセの泉)という噴水があって、こちらのゴージャスさの方によっぽど目がいってしまう。ネット情報では8時半からとのことだったけど8時20分ですでに開いていた。

>> ちなみに『天使と悪魔』は『ダヴィンチ・コード』の流れで一応読了はしたけれど、内容はよく覚えていない。そもそも『ダヴィンチ・コード』だって関連本を製作したした関係で一応読んでみたにすぎないし。だから、この教会がどういう絡みで話に登場したのかも曖昧だし、映画も観ていないのでわからない

中に入ってみて驚愕のあまりに一瞬息が止まりそうになった。凄まじいまでの絢爛世界に呑み込まれた、と言ってもいいかも。
なんていうんだろう、この感じ。すっぴんでひっつめ髪で褪せたよれよれのTシャツを着た地味な女の子なのに、服の下にはレース飾りや金糸銀糸刺繍がふんだんに施されたシルクの高級ランジェリーを纏っていた、よく見ると顔立ちも整ってるしスタイルも抜群……そういうギャップに対する驚きって言ったらいいのかしら。いや、例えがちょっと変態なおっさんみたいでアレだけども(>_<;;)

装飾の豪華さやきらびやかさの程度でいったら先のふたつの教会も少ししか負けていないと思う(負けるのかよ……)。ただ、先のふたつは堂内の広さも高さもたっぷりの空間があって、だから「壮麗」とか「荘厳」という単語も被せることができた。でもね、ここは小さな教会なのよ。狭いのよ。豪華絢爛が四方八方から眼前に押し寄せてきて窒息しそうになるのよ。写真で見る分にはその違いはあまり感じ取れないかもしれないけれどね。

S.M.ヴィットリア教会の天井画「異端に勝利する聖母」と、その回りにちりばめられた天使の像。とにかく派手派手な装飾に、お口あんぐり

小さな教会の外観は地味で古びていて、見落としてしまいそう

ここでも朝のミサの真っ最中だった。それにしても見渡す限り華美な装飾の洪水だ

公式オープン時刻より早めに開いていたのは、ここでも朝のミサのためだった。単廊式の小さな教会なので、ミサの邪魔をしないように内部の装飾を見てまわることが出来ない。仕方なく入口から数歩の場所に立ったまま、首だけ巡らせて見られる範囲のものだけ見る。

天井のフレスコ画「異端に勝利する聖母」も華やかな色彩にあふれているけれど、さらにその周りをたくさんの天使の彫像が取り囲んでいる。この天使の彫像は堂内のいたるところに飾りとしてあしらわれている。主祭壇上のクーポラのフレスコ画「聖母被昇天」は遠目ながらも見たけれど、ミサをしている頭越しに撮影するのはやっぱり憚られる。ああ、双眼鏡を持ってきていれば!
とにかく圧倒されてしまい、ベルニーニの最高傑作と言われる「聖テレーザの法悦」という彫像を見そびれてしまった。時間に余裕があればミサが終わるまで待てばよかったのだけどね。ただ、私にはこのド派手世界は居心地のいいものではなかったかな。ゴージャスはほどほどがいいね。

"おばあちゃんち"の朝ごはん

2時間ほどの早朝散歩はなかなか充実して楽しめた。踵を返し早足でホテルに戻り、朝食へ。レセプションの奥のルーフバルコニーが朝食室になっているらしい。ルーフバルコニーといっても、元々下の階の屋上だったスペースに、壁囲いと屋根をつけてリフォームしただけのようなもの。家具調度も安物だけど、光が燦々と注ぐ中での食事は気持ちがいい。

昨日とは違う花柄の簡易ワンピースのおばあちゃんは今日もにこにこしてて、今日もたっぷりと太っている。トレーを両手で持ってゆっくりゆっくりパンを盛った籠とカプチーノを運んできてくれた。籠の中には普通の硬いパンとチョコ入りの柔らかいパン。たいして美味しいわけでもないけれど、すごく不味いわけでもない。6Pチーズのようなものはあるけどハムも卵もない。カプチーノもちょっと薄い。でも値段を考えればこれで不満はないよ。

私が食事をしていると中高年から初老の頃合の女性3人組がやって来た。最初「オラ!」と声をかけてきて、あわてて「チャオ、ハロー」と言い直していたからスペイン人なのね。50代後半から60代くらい? もしかしたら私と同世代なのかもしれないけれど、少なくとも子育ては完全に終わった年齢なのは確か。日本のおばちゃんたちがバスツアーや温泉に連れ立って行く感覚で友達とのイタリア旅行を楽しんでいるのかしら。未亡人なのか、離別なのか、亭主をほっぽってきたのかはわからないけど、おばちゃん3人は開放感ではち切れんばかり。はち切れそうなのは彼女たちの体型もなんだけどね。私にも「ひとりで来てるの?」「いいわね」「楽しい?」などと話しかけてきて、とにかく賑やかでパワフル。おばあちゃんがチョコのパンの追加を持ってくると「きゃあ♥」と歓声をあげる。うわ、まだ食べるんだ……あ、大きなお世話ですね。

9時半には出発しようと思っていたのに、なんだかんだで45分になってしまった。乗るつもりのバスは10:30発だから多分余裕だとは思うけど、そのバスはテルミニ駅発ではないので微妙に不安ではある。

チェックアウトの時カードで払おうとすると、おばあちゃんは申し訳なさそうにキャッシュにしてくれないかと言った。そうね、小さな安ホテルでは手数料もバカにならないものね。
支払いを終えると「荷物は預からなくていいの?」と聞いてきて、必要ないと告げると「Grazie! Arrivederci!!」の挨拶とともにウィンクと投げキッスを寄越した。うふっ可愛い。ローマのホテルの女主人なのに全然都会的な感じはしなくて、どこか「故郷のばっちゃん」のような懐かしい雰囲気のおばあちゃん。今ひとつ垢抜けない内装でも清潔で落ち着くし、すごく美味しいわけでない朝食もホッとするし。もしかしたら、このおばあちゃんの存在が評価ポイントに加算されているのかも?

狭いエレベーターでゆっくりゆっくり下がりながら、さっきのスペインおばちゃん3人組が一度に乗ったら身動きとれないだろうなあなどと考えた。

一路、ウンブリアへ! まずは州都ペルージャへ

テルミニ駅から国鉄ティブルティーナ駅までメトロのB線で移動しなくてはならない。
ホテルを出てメトロ乗場に降りるまでは3分なのに、8台くらいある切符販売機にはそれぞれ2〜3人ずつが後ろについていて、切符を買うのに10分近くかかってしまう。日本人ほど自動販売機の操作に長けている人種はほとんどいなくて、さらに日本の自動販売機ほど操作性に優れて反応の早いものはない。イタリアの券売機は日本のものの5倍くらい反応がトロくて、さらに購入行程が2つくらい多い。みんな悩みながら操作していて、機械の反応も遅いものだから「壊れてる?」と取り消してやり直したり、その後ろの人は別の列に離れかけては「やっぱり大丈夫か」と戻ったり……などということをあっちでもこっちでもやっているので、さらに時間がかかってしまうのだ。まずここで地味にイラッ。

メトロに乗ってしまえばティブルティーナまでは10分ほど。ローマから他都市への長距離バスのほとんどが出るターミナルはここにある。まず地下のメトロ駅から国鉄駅まで上がる。駅と線路は一番低い谷底に位置しているようで、エスカレーターを登って外に出ると、だだっ広いだけの、駅前ならぬ "駅上広場"。道路はずっと離れた上の方で立体的に交差していて、どっちに行ったらいいのかちょっと悩む。時間は迫りつつあるし、荷物があるから迷って行ったり来たりする余裕はないのよね。目を凝らして観察しているとバスの屋根らしき色とりどりのものがいくつか動いているのが見えた。きっとあっちだ!

>> 乗るのはSulga社の高速バスで、フィウミチーノ空港からティブルティーナを経由して、ペルージャ、アッシジまで行くもので、一日に5〜6便ある。日本からの直行便で着くと最終バスには間に合わないけれど、時間帯によっては空港からウンブリアに直通できるわけ。「Sulga」は「スルガ」と読むので一瞬日本の会社のように錯覚してしまう。「駿河交通」とかありそうよね

私の勘は当たり、そこがバスターミナルだった。切符売場はバス会社ごとではなく、ここから発着するものがすべて買えるようだった。窓口は3つ開いていて、客が5〜6人ずつ並んでいる。まだ15分あるから余裕と思っていたら、私の前には3人しかいないのに列がちっとも進まない。隣の2列は普通に進んでいるのに。窓口にいるのは若い女性なんだけど、客を置いて席を立ったまましばらく戻ってこない。何かプリントみたいなものを持ってタラタラと戻ってきて少し話をして、また席を立ってしまった。少しして戻ってまた話している。んもう〜〜何をやってるのよ〜〜!

ようやく私の番になった時には、10時半までは3分しかない状態だった。私の目は三角になってたと思う。
「ペルージャ!」と叫ぶと、彼女はちらっと時計を見てレシートのような切符をピッと出し「10時半発車だから、急げ!」と言う。ちなみにペルージャまでのバス料金は€17だった。間違えて€10札と€5札1枚ずつを出すと「セ・ブ・ン・ティー・ン!」と不愉快そうに言う。ごめんよ、ちょっと間違えただけじゃん。
「乗場は! どこ! こっち? あっち?」再び叫ぶと、彼女は手をぐるぐる振り回しながら「この裏! 急げ! 走れ、走れ!」
人に走れとか命令する前に、あんたがもっとてきぱき動いとけと言いたいよ。

言われた通りにバスまで走っていくと、運転手から直接切符を買っている人もいた。なーんだ、バスまで来ちゃえばよかったんだ。でも間に合ったんだから結果オーライよね。見渡した感じでは乗車率は8割くらい。
ティブルティーナのバスターミナルからバスに乗るのなら、テルミニ駅から1時間は余裕みておいた方がいい。私のように切符がすんなり買えないとか、ターミナルを見つけるのにも多少迷うし、そこまで上がるには階段や道路横断の信号待ちなどがあるので。

車窓には緑のハート≠ノふさわしい丘陵光景が広がる。のんびり草を食む牛さんたち

山の上には黄色い花が咲いている。ミモザみたいな色だけど季節が違うし、何の花だろう?(花の名は数日後に判明する)

バスは5分遅れで発車。私は立て続けに切符購入でやきもきしたことにすっかり消耗し、さらに時差も寝不足もあったので即座に眠りに落ちた。ところが2列前の席に騒々しいおっさんがいるわけですよ! 電話の着信音、通話、大いびき……これを7〜8回繰り返すの。すべて大音量、トリプル大音量。斜め前の若夫婦は2歳くらいの子供にタブレットでアニメを見せていて寝落ちしてしまったため、けたたましいアニメ声や音楽が絶えず響いている。そんな中でも1時間ちょっと熟睡したけどね、私は。

目覚めるとバスは緑の大地のただ中を疾走していた。ゆるやかな起伏の丘陵、田園、森林、陽光と青い空……とても気分が落ち着く。
ローマのターミナルを出て2時間15分後、ほぼ定刻でペルージャに着いた。

ペルージャの宿はガーリッシュテイストいっぱい

ペルージャは丘の斜面に縦長に広がる町で、古代から中世にかけて城壁や城塞が上に上にと積み上げられて造られてきた。
高速バスが発着するバスターミナルのあるパルティジャーニ広場 Piazza Partigiani は斜面の低い位置にあり、旧市街の中心部まではかなりの高低差があるのだけど、なんと城塞遺跡の地下をぶち抜いてエスカレーターや通路が通してある。そのせいで世界遺産になれないという話だけど、住む者歩く者には便利なことこの上ない。

「→Centro Storico(旧市街)」の札の方に坂道を進むとその先の建物に入口がありエスカレーターが動いているのが見える。乗り込むとそこはパオリーナ城跡 Rocca Paolina に続いていて、エスカレーターを4〜5台乗り継いでいくと、旧市街の入口であるイタリア広場 Piazza Italia に出る。途中に数段のステップもあるけど、基本的にスロープとエスカレーターだけでここまで登ってこられるのはありがたいわね。広場の左端の階段を降りて路地を右に折れて20mも進めば、ペルージャでの宿 B&B Le Naiadi [WEB] に到着だ。普通のアパートメントのワンフロアなので看板などはなく、通りに面した扉には小さなネームプレートのみなので、探すのはちょっと大変だけどね。

ネームプレート横のブザーを押して名前を言い、開けてもらった扉から入って一階ぶん階段を上がると踊り場がある。2つある扉の奥の方がB&Bの玄関で、若い女性が迎えてくれた。中に入ってさらに一階ぶん階段を登る。2〜3階程度の階段を厭わなければ、B&Bでの宿泊は女性一人旅には最適だと思う。オーナーが親切で感じがいいとさらに滞在は快適なものになる。今はネットで口コミも部屋の雰囲気もしっかり下調べ出来るのだし。口コミで書かれちゃうからこそ、とんでもないオーナーは淘汰されているんじゃないかな。

これから2泊する予定のここも3部屋のみのB&B。キッチュなガーリッシュテイスト満載の手作り感あふれる可愛い宿で、家具類は高級なものではなく、どちらかというとむしろチープなんだけど、センスとアイディアでカバーしていて、それがいっそう素敵になっている。イタリアというよりは、フランス的な小粋なセンスを感じる。若いパリジェンヌが一生懸命工夫して作り上げた自分好みの居心地のいい部屋みたいなね。キャンディが3〜4個乗せてある小さなトレーも、木製のティッシュボックスも、小花模様のシャワーカーテンも、ワイヤーと造花をねじり合わせてあるタオル掛けも、レース柄のラップを裾に巻いた歯磨き用のコップも、どれもみんな可愛くて、おばちゃんはちょっと照れちゃうな(*^.^*)

B&Bの扉を入ってすぐの階段には、たくさんのポストカードや小さな額が飾られている

部屋の窓から路地を見下ろして。お向かいは小さなホテルみたい

壁にヘッドボードがペイントされているので、マットレスのみのシンプルなベッドが一見立派なものに見えるというアイディア

クローゼットはなく、細いバーに数本のワイヤーハンガーがあるだけ。壁にペイントした絵のせいで貧乏たらしく見えないし、むしろ可愛い

部屋の扉には大きくプリントした本棚の写真が貼ってある。私の泊まったシングルルームは左側

これで一泊€45。これだけ随所に手作り感が溢れているんだから、朝ごはんにも期待出来そう。でも男性一人旅の人はここのシングルルームには泊まらない方がいいと思うわ。きっと気恥ずかしくなっちゃうだろうから。

チェックインの時にペルージャのタウンマップをもらったので、休憩がてら午後の観光計画を練った。

ペルージャ歩きのウォーミングアップをしておこう

14時頃に街歩きに出た。
まずはペルージャ観光のスタート地点となるイタリア広場に行き、広場裏側のカルドゥッチ公園 Giardini Carducci の眺めのいいテラスからパノラマを堪能する。イタリア広場は城塞によって出来た崖の端っこにあり、ここからは町の南側3分の1くらいの部分を見下ろすことになる。

崖下にバスターミナルの建物が見える。地図上ではたいして離れていないように見えたけど、こんなに高低差があったのね。そりゃエスカレーター何台も乗り継ぐわけだ。
テラス正面に鐘楼のある教会のファサードが、その右手奥に別の教会の尖塔も見える。家々の屋根の連なりはそのまま鮮やかな緑の丘陵へと続いていき、左奥のスバージオ山 Monte Subasio 中腹に霞むように見えている街並がアッシジかしら。さらに後方に連峰が長く連なっている。美しい……美しいなあ……。特に新緑のこの季節、自然と街並の調和バランスが絶妙で、本当に美しい。
陽射しは強いけれど、木陰に入れば風は涼やか。木漏れ日の下で大きく深呼吸してみる。ああ、気持ちいい!

イタリア広場裏手のカルドゥッチ公園のテラスからの眺め。パノラマ機能を使って撮ってみた

ひとしきり眺望を満喫してから、旧市街の中心部に向かう。イタリア広場の中央から北側に一直線にのびるピエトロ・ヴァンヌッチ通り Corso Pietro Vannucci が街のメインストリートで、両サイドにはお洒落なブティックやショップが、道の中央にはリストランテやトラットリアのテラス席がズラズラ並んでいる。
そのままフラフラと通りを直進していくと広々とした11月4日広場 Piazza W Novembre に出た。南側のサン・ロレンツォ大聖堂 Cattedrale di San Lorenzo(ドゥオモ) と、北側のプリオーリ宮 Palazzo dei Priori に囲まれた広場の中央には13世紀のものという大噴水 Fontana Maggiore

ドゥオモが広場に面しているのはファサードではなくて右の側面部分だ。素朴な雰囲気の荒々しい石組みで、広場に面した一部に大理石の装飾がされているけど、大部分は未完のままで、ファサードも粗石がむき出しで地味なことこのうえない。

ドゥオモやプリオーリ宮などの堂々とした建物に囲まれた11月14日広場は旧市街の中心部

テラス席で食事しているのは中年から年配以降の人たちが多く、広場の階段に腰掛けて時間つぶししているのは若い人たちばかり

ほんの一部だけ白とピンクの大理石で装飾されている。本当は全部覆うつもりだったんだろうね

ウェディングケーキみたいな繊細な美しさの噴水。やっぱり白とピンクの大理石で、水槽は精緻なレリーフで彩られている

広場をウロウロして建物の外観だけは眺めたものの、この時間ではドゥオモもプリオーリ宮も内部観光は出来ない。13時から16時頃まではみんな昼休みでどこにも入れないのよねぇ。ブティックも閉めているところがあり、開いているのは飲食店だけ。うーん、これは昼食かカフェ休憩するしかないか……

ルッコラたっぷりパニーノは意外に大当たり

ヴァンヌッチ通りを引き返して、びっしり並んでいるテラス席の様子を伺ってみたけれど、ちゃんとしたレストランのちゃんとした食事っぽい。今晩はしっかりディナーをとりたいと思っているので、あんまりたっぷり食べておきたくはないんだよなあ……。

ピンとくる店も見つかられず、もうお菓子で小腹満たしとけばいいかと大聖堂の反対側側面に面したバールに入った。ショーケースの中は、お菓子っぽいものはクッキーやビスケットみたいなものばかりだけど、パンやサンドイッチ関連が種類豊富で美味しそう。やっぱりお菓子で誤摩化さないでちゃんとお昼ごはん食べよう! 私の身体が"葉っぱ"を求めたので、ルッコラのパニーノを選んだ。

強烈な陽射しからの避難と街歩き作戦の検討を兼ねて、パニーノとビールで遅めの昼食

さっぱりした苦みが美味しかったルッコラぎっしりパニーノ

まずはビールをきゅーーーっと飲む。うう、沁みる。温めてくれたパニーノにはルッコラがぎゅうぎゅうに詰まっているけれど、チーズも少し入っている。チーズの種類はわからないけれど割とあっさりめ、ルッコラの苦みと歯ごたえがサッパリしていい感じ。グラスビールと合わせて€7だった。

フレスコ画満載の「公証人の間」

15時を過ぎたのでそろそろ内部見学が出来る。ドゥオモの昼休みは16時までなので、先にプリオーリ宮 Palazzo dei Priori 内の「公証人の間 Sala dei Notari」から見てみよう。現在は市庁舎として使われているプリオーリ宮は、見学できる箇所がいくつかあるのだ。ちなみにそれぞれオープン時間が違い、入口も違うので注意が必要。
「公証人の間」は14世紀のフレスコ画で飾られた中世の集会所で、入口は11月4日広場のドゥオモに面した側にある。

幾重ものフレスコ画装飾は圧巻だった。今でもイベントや講演会などに使用しているようで、椅子がびっしり並んでいる。今晩か明日あたりにコンサートでもあるのか、ピアノの調律や音声機器の調整をしている最中だった。

14世紀のフレスコ画で埋め尽くされた公証人の間

描いてない場所はないというくらい、びっしり

天井や壁や窓枠までびっしり埋められた装飾をくまなく眺め回す。しまった、また双眼鏡を部屋に置いてきちゃったよ。半開きの扉を覗いてみたら事務机とパソコンが置いてあり「OFFICE」と書いた紙が貼ってある。ああ、ここは入っちゃダメなところだと引き返そうとすると、上品そうなおばさまが声をかけてきた。咎められちゃった!と謝ろうとすると、おばさまは穏やかに微笑みながら「なにそれの部屋を見る?」というようなこと言っている。sala(ホール)は聞き取れたのだけどその後がわからない。戸惑っていると「どうぞ」と案内してくれた。

オフィスを突っ切って奥の部屋に行くと、緩やかなカーブを描くヴォールト天井の小さなホールがあった。おばさまはイタリア語しか話さないので、知ってる単語とニュアンスで汲み取るしかないのだけど、「ここで結婚式をあげるのよ」みたいなことを言っている。そういえばイタリアに嫁いだ友人は、振袖を着て市役所で結婚式をあげたと言っていたっけ。
ホールに続く小部屋には、両袖の立派な机に高い背もたれの椅子、紋章の旗が数本、壁にはおじさんたちの肖像画がズラリと並んでいる。100年200年前らしき服装の人から現代のスーツ姿まで。歴代の市長さんかしら? なんらかの"長"の立場にあった人たちなんでしょうね。

この部屋はおばさまの好意で見せてもらえたって考えてもいいのかな。だって、あのオフィス部分をずかずか通り抜けていく観光客はいないだろうもの。結局「なにそれの間」は何だったんだろう? 市長の部屋? 市民の間?

中世の名残りあるプリオーリ通りから、夢のような美しい教会へ

ドゥオモはまだ閉まっているので、先に旧市街の北西部を歩き回ってみることにした。かつては古代都市を結んだ「帝王街道」のひとつだったというプリオーリ通り via dei Priori を行こう。プリオーリ宮のアーチから西にのびている狭い石畳の小道で、両側に古い建物が残っていて中世の雰囲気たっぷり。陽射しを遮るもののない広場では暑さと眠さでフラフラするけれど、こうした小道なら建物が深い影を落としているのでずいぶんと楽だ。気温が高いことには変わりはないけれど。

風情ある小道の途中には、いくつかの小さな教会やシーリの塔 Torre degli Sciri などがあった。13世紀の頃のものというシーリの塔は何の変哲もない四角い塔で、気力がないから登るのはパス。この町では塔の上から見下ろすよりも、町の要所要所でパノラマを楽しむ方がいいように思うしね。

中世の雰囲気そのままのプリオーリ通りを進んでみる

S.アガタ教会の天井は輝く星空のように清楚で可憐な美しさ

古い小さな教会から出てきた老シスター。その横では散歩途中の老人と犬がひと休み。ペルージャの住人の日常があった

塔を過ぎると、ほどなくトラジメーノ門 Porta Trasimena聖ルカのアーチ Arco de S.Luca)に突き当たる。ここにはエトルリア時代の基部が残っている。エトルリア人は古代ローマが興る以前(遅くても紀元前5世紀)に中部イタリアで高度な文明を築いていた民族で、他のイタリアの町ではその遺跡の多くが「地中から発掘」されているのに対し、ペルージャではその痕跡が多く「地上に残って」かつ「現在と共存して」いるのだ。

門の先から右に進んでいくと、目の前に緑の芝生の広場が開けた。学生らしき若い人たちがたくさん腰を下ろしたり寝そべったりして過ごしている。その奥にサン・ベルナルディーノ教会 Oratorio di San Bernardino がある。

S.ベルナルディーノ教会前の芝生広場には、学生らしき若い人たちがたくさん

扉の両側に施されている彫刻は音楽を奏でる天使たち。あまりに繊細でため息が出そう

パステルカラーの大理石を組み合わせたファサードには、半円形の部分に聖人と天使、最上部にはキリストの姿が彫られている

とても小さな教会なのに、ルネサンス様式のファサードの装飾があまりにも見事なので驚いた。パステルカラーの大理石の組み合わせも美しいし、柱の彫刻も扉上のレリーフもどれも繊細で美しい。一対の扉には天使と守護聖人の姿がある。こんなに美しくも愛らしい外観なのに、内部はあまりにも簡素で、主祭壇なんて古代ローマ時代の石棺だ。「これは遺跡か何か?」と思うほどに質素だった。

ペルージャの立体迷路を存分に満喫する

教会前の広場から北に進んでいくと、ペルージャ大学 Universita degli Studi di Perugia に突き当たった。広場にたむろしていたのはやっぱり学生さんたちだったのかな。

大学の前から右に折れ、そのまま道なりにしばし歩く。ここは町の中で一番高台なんだろうけど、林があるので展望はあまりよくない。だけど木漏れ日の中の散歩は気持ちいい。ぷらぷら歩いているうちに水道橋の名残りらしきものが見えてきた。ヨーロッパの町のあちこちに残っているローマ時代の水道橋だけど、ここペルージャではアクアドット通り Passeggio dell'Acquadotto として遊歩道に転用されているのだ。このアクアドット通りに細い小道のアッピア通り Via Appia が寄り添っていて、さらにこの2本に交差する道もあり、地図で見た時にはいったいどう繋がっているのかわからなかった。
アッピア通りが本来の道で、交差していた水道橋の上も道にしてしまった。もともと起伏がある土地なので、さらにその上に道が交差して重層的に積み上がって、立体迷路が構成されているわけ。実際にその場に来て、そういうことかと納得した。百聞は一見にしかずだね、ホントに。

何度も書いてるけど、私は高低差が生むリズムを感じる風景が大好き。立つ位置によって視点が変わってまるで違う表情が見えてくるのもとても面白い。私は一気に高揚状態になり、暑いとか眠いとかも全部吹き飛んで、鬼のようにシャッターを切りながら思いつくままガンガン歩き回った。そして突然「しまった、足が棒のようだ、腰にもきたかも……」と気づいてしまう。ここどこ? 道なりにふらふら進むと、不意に昼食をとったバールの斜め裏手に出た。あー、ここに繋がるんだー! 安心した途端に急激に力が抜けて目眩がした。ほんの150m先に何とか門があるという標識が見えたけれどもうダメ、歩けない。

大学の門は閉ざされていた。でもコレ裏門だよね? あまりに簡素すぎるもの

重層的に道が交差し積み上がる光景はとても面白い

高低差のある風景って大好き! 歩くのは大変なんだけど……

一番上を横切っているバッティスティ通りのアーチをくぐってアッピア通りが伸びてきている。手前に見える橋のようなものがアクアドット通り

疲れ果てて、一息つく。メインストリートから外れた地元民用のバールなら、カフェも€1程度

時計を見ると18時少し前。ヴァンヌッチ通りのテラス席は、アペリティーボ(いわゆるハッピーアワー。夕食前の一杯と軽いおつまみ)を楽しむ人たちがいっぱい。ちょっと食指が動いたけれど、今アルコール飲んだらディナー前に沈没してしまうと考え直した。メインストリートから外れた場所に地味なバールを見つけ、舗道のテラスにへたりこむ。宿までのあとちょっとがもう歩けない。そういえば初めてのカフェ休憩だ。

休憩時の定番カフェ・マッキャートを啜りながら、地図を広げて今日歩いたルートを、特にあのアクアドット通り界隈を復習してみた。ドゥオモ脇からカーブするように進む道はアッピア通りに至り、アッピア通りからアクアドット通りが枝分かれし、その先でアッピア通りはエリザベッタ通りとなりアクアドット通りの下をくぐる。やはりドゥオモ脇から始まっているバッティスティ通りがアクアドット通りの上に立体交差している。さらにアクアドット通りはいろいろな道と立体交差しながらペルージャ大学の方向まで続いている。まさしく立体迷路!

日没まではまだまだあるけど、風が冷たくなってきた。カフェ休憩の後は宿に戻って少し横になることにしよう。

満腹ディナーと夜のお散歩、デザートまでのフルコース

しばらく部屋でゴロゴロして、20時に昼間の街歩きで目をつけておいた路地の奥のトラットリアに向かった。おひとりさま客の私がテーブルをひとつ占拠してしまうのが申し訳ないので、なるべく開店直後の空いてる時間帯に入店することにしているの。今日は昼食が15時だったので完全な空腹には今ひとつなんだけどね……。
トラットリアの店名は『Al Mangiar Bene』、直訳すると「ザ・食・良い」。なんかいいでしょ、美味しいもの食べさせてくれそうでしょ(^^)

「ひとりなんだけど……」と言いながら店の奥を一瞥してみると空いている。ところが、予約がいっぱいだから9時までだけどいいかと言われてしまう。うわぁ、やっぱり混んでるんだあ! 1時間しかないのなら、むしろ一品しか頼まないですむ理由になると思って快く了承した。間口が狭いので小さなお店なのかと思っていたら奥はかなり広そうだった。ここが満席になっちゃうの?

機内食とかサンドイッチとかばかりが続いていたので、今日はしっかりしたものが食べたい。ていうか動物性タンパク質が食べたい。つまりお肉がガツンと食べたかったの。で、牛肉のタリアータ。ミディアム・レアのややレア寄りに焼いてもらう。
どんッ!という感じで出てきたお肉は300g以上ある感じだったけど、なんともまあ食欲をそそるビジュアルをしていること! こんなに食べられるかなあと思いながら一切れ口に入れてみると、肉汁がじわっとして、柔らかながらも適度な歯ごたえを残していて、すごく美味しい。頼んだのは安いハウスワインだけど渋みのあるフルボディの赤で、これがまたお肉に合う合う。9時までしかないという焦りもあって、一心不乱にぱくぱく食べ、ワインも水もクピクピと飲んだ。

気取った雰囲気のない気軽なトラットリア。20時過ぎの段階では店内はまだガラガラ

お肉もたっぷり、ルッコラもたっぷりで、今日はルッコラ祭りだな(^^)散らばっている白い粒粒は岩塩

ペロリと完食……と言いたいところだけど、最後の3〜4切れはちょっとつらくなってきて無理矢理つめこんだ。一品じゃ申し訳ないと前菜も頼んでいたら多分食べきれなかったと思う。
ガラガラだった店内も8時40分過ぎから予約のお客さんたちが続々やってきた。10人以上のグループも2組くらいいる。やっぱり人気店なのね。
セコンド一品にガス入り水とハーフの赤ワイン、食後のカフェももらって€22だった。ちょっと慌ただしかったけど、いいディナーだったな。

21時というのは、ちょうど夕暮れから夜へと切り替わる瞬間だった。店を出た時はわずかに残照を残した薄明、それが夕闇となり宵へと移っていく、それはほんの10分足らずでしかなかった。早めに店を出されてこの光景が見られて、ラッキーだったかも。お腹も満たされてワインの酔いがほどよく回って気分のいい私は、さらに嬉しくなって、その勢いであたりをしばらく徘徊することにした。町は閑散としている。だって、み〜んな今はディナーの真っ最中なんだもんね。

外に出るとまだ完全に暮れきっていなかった

雰囲気のある路地を適当にほっつき歩く

パオリーナ城塞の地下遺構にもおりてみる

適当に地下を歩いたら城塞の外に出てしまった

見ているうちにどんどん暗くなってくる

イタリア広場裏のテラスから。うーむ、キラキラの夜景というのはやっぱり都会のものだな……と東京っ子の私は思う

地下遺構であると同時に地下通路でもあるので、こんなふうにあちこちで分岐もある

適当に路地を歩いていたらイタリア広場に出たので、広場裏のテラスに夜景を見に行く。3組くらいの若いカップルがいた。
バスターミナルから上がってくる時は荷物つきでちゃんと見てなかったので、地下通路にもおりてみた。昼間はそれなりに人が行き来してて、ショップやギャラリーみたいなものもあって賑やかだったのに、無人でエスカレーターの音だけがごんごんと響いている。これが都市部のメトロの地下通路っていうなら危険なのかもしれないけど、ペルージャは地方都市だからなあ。地下通路はいくつか分岐していて意外なところに繋がったりしているようで面白そう。昼間歩いた町の北部が空中迷路なら、こっちは地中迷路だね。でもやっぱり無人の地下通路はちょっと怖いので、ちゃんと見るのは明日以降にすることにした。

1時間近くほっつき歩いて、最後にB&Bの数軒手前の店でジェラートを買った。だって店の灯りを見たら、誘蛾灯のようにフラフラと吸い寄せられてしまったんだもの。5種類あるコーンの真ん中のサイズを指差し、いくつ選べるか尋ねたらなんと4種類もですと!
片手にてんこ盛りのジェラート持ったまま、3ヶ所もの鍵を開けるのはちょっと難しかった。ジェラートは美味しかったけど、満腹のところに4種類はちょっときついわね。お腹冷えちゃった……

選んだフレーバーはミルクチョコ、ピスタチオ、ヨーグルト、ミルクフローラ。特に奇をてらわずに濃厚そうなのとスッキリぽいのを半々で組み合わせてみた。これで€3.20は安い!

あーもう眠い。このままばったり寝ちゃおう。どうせ明日も異常に早く目覚めちゃうんだろうから。 こんな具合にペルージャの一日目は終わった。

 
       

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