Le moineau 番外編 - 緑のハート・ウンブリア州の丘上都市めぐり -

       
 

オルヴィエート最終日の朝がきた

6時半にセットしたスマホのアラームが鳴るまでぐっすり眠っていた。寝覚めはやや悪い。時差には完全に対応したようだけど、旅の疲れがじんわりときている感じ。でも体調はすこぶるいい。

明日はもう帰国、早いなあ。イタリア国内では列車やバスでの移動だったので、適当にスーツケースに放り込んでいたけれど、飛行機に乗るためにはちゃんとパッキングしとかなくちゃ。ちょこちょこと買いまくった瓶詰めや食品の類い、ワインボトルなどをしっかり梱包した。小さめのスーツケースだけど、まだ余裕がありそう。
しっかりと荷造りをすませた後、しっかりと朝食を食べる。今日は午後にローマに移動するので、昼ごはんを食べそびれる可能性もあるからね。Booking comの特典の12時までのレイトチェックアウトが適用されているので、まだ荷物は置いておける。さあ、午前中みっちりとオルヴィエート観光するぞ!

この町に三泊していながら、昨日も一昨日もよその町に朝一番で出かけてしまったけれど、今日は町の中心部に向かう。何度も歩いたカブール通りからドゥオモ通りに、そしてドゥオモ広場へ。初めて朝のドゥオモに対面する。あー、そうか! 真正面から西日が当たるってことは、真後ろから朝日が昇るってこと。つまり、しっかり逆光なのだ。前の日までにたくさん写真撮っておいてよかったぁ。

朝は逆光になるので、ファサードの装飾も青暗く沈んでしまうけれど、かえって眩しくなくつぶさに見られる

今日6月2日は共和国記念日という祭日に当たるらしい。イベント用らしき小さなステージは、一見豪華そうだけど、ベニアにプリントしたちゃっちい急拵えのもの

写真を撮るには適していないけれど、キラキラ照り返したりしないので、ファサードの装飾をじっくり見るにはいいみたい。旧約聖書や新約聖書のシーンを表したという4本の柱のレリーフを眺め、彫刻家エミリオ・グレコの3枚のブロンズ扉を眺め、柱と扉を囲むモザイク文様を眺める。舐めるように眺めた後、満を持してドゥオモ内部に入る。

ちなみにオルヴィエートのドゥオモには入るだけで€4もかかる。前はどうだったのかな? 両翼の礼拝堂の拝観に€1〜2かかったんだったかな? 付属美術館とか特別部分の拝観に料金がかかるところは結構あるけど、教会じたいは基本的に無料だと思うんだけど。信徒のミサや礼拝の時はどうなんだろう? さすがにそれはないか……。

ドゥオモ内部は圧倒される美しさ

堂内に入り、ドゥオモ内部と付属美術館も見られるチケットを買い、まずは左翼廊のコルポラーレ礼拝堂 Cappella del Corporale に向かった。この聖堂の礎ともなる聖布を収めた聖遺物箱のための礼拝堂。鉄格子の扉の係員が入場者の数をカウントしているのは、20人か25人までしか一度に入れないからなんだって。確かにこじんまりした礼拝堂だけど、足を踏み入れた途端、壁から天井からみっしりと描かれている『慈悲の聖母』の板絵に思わず息を飲んだ。小さい礼拝堂だから壁同士も近くて天井も低くて、そのために絵が眼前に迫って来て全身を包まれているような気持ちになるのだ。クリスチャンでもない物見遊山な私ですらつい厳かな心持ちになってしまうほど、清冽に荘厳な空間だった。
でもクリスチャンでない証拠に、周りを取り囲む絵にすっかり圧倒されてしまい、中央にちんまりと鎮座している聖遺物箱には全然気づけなかった。後で写真を見て「あー、これのことかあ、覚えてないやぁ」と思ったんだもん。

コルポラーレ礼拝堂の入口壁にはイタリアで一番大きいというパイプオルガンも置かれている。5500本ものパイプから出来てるんだって。

聖遺物箱のある左翼廊のコルポラーレ礼拝堂。なんて美しく神々しい空間かしら

礼拝堂入口はがっちり鉄格子で覆われ、厳重なチケットチェックを受けてから小さな扉から入らなくてはならない

主祭壇のフレスコ画だって素晴らしいのに、両側の礼拝堂のせいで霞んでしまっている感じ

ただ通路があるだけのドゥオモ地下遺構

右翼廊のサン・ブリツィオ礼拝堂。ちょうどいい角度に光が射し込んできてルカ・シニョッリの描いた黙示録のフレスコ画がキラキラ輝く

そして右翼廊のサン・ブリツィオ礼拝堂 Cappella di San Brizio へ。オルヴィエートのドゥオモ内部の白眉といえるのはこの礼拝堂内の壁画なのだ。フラ・アンジェリコがゴッツォリの手助けを受けて描き始め、後を引き継いだルカ・シニョレッリが完成させ、後世にミケランジェロが大いに影響を受けたとされる、『最後の審判』を題材としたフレスコ画の連作。
礼拝堂内には最後の審判にまつわるさまざまなエピソードや人物が描かれているけれど、ひときわ色彩豊かで美しく生き生きとしているのが『善人と悪人の選別』のシーン。礼拝堂に入って右手にある。悪魔にさらわれていく娼婦の顔はシニョレッリの当時の愛人だという説もあり、後に彼女は棄てられたとか……。絵の中には肉感的な裸体表現も多くあって、なるほど、これを見たミケランジェロが刺激を受けてシスティーナ礼拝堂の『最後の審判』を生み出していったということなのね。

ふたつの礼拝堂に圧倒されてぼーっとしたまま外に出た。同じチケットでドゥオモの地下遺構も見られるので脇に回って入ってみた。ドゥオモ内にはそこそこ人がいたのに、入口がわかりにくいせいかこちらは誰もいない。あるいはコンビチケットを買ってないのかも。奥まで歩いて突き当たりを折れると、眼前にリアルなキリストの磔刑像が。たぶん後になって置いたものだと思うけど、誰もいない地下空間でいきなり出くわすとびっくりする。地下遺構はそれだけだった。

オルヴィエートはやっぱり宿泊するが正解

ドゥオモ右横のソラーロ宮 Palazzo Solianoエミリオ・グレコ美術館 Museo Emilio Greco になっていて、コンビチケットで入れる。エミリオ・グレコはイタリアを代表する現代彫刻家で、名前に覚えがあるなあって思ったら、箱根の彫刻の森美術館に作品が多くあるんだった。歴史的建造物の中で現代アートを楽しむのもちょっと趣向が変わって気分転換になる。

次にドゥオモ附属博物館 Museo dell'Opera del Duomo di Orvieto に入ろうとすると「このチケットは違うよ」と断られてしまった。どうやら違うミュージアムらしい。グレコ美術館とドゥオモにはさまれた並びにあるからてっきりそうだと思ったよ。だけど附属博物館だからといって必ず隣接しているわけでなく、むしろとんでもない場所にあるのが "イタリアあるある" なのよね〜〜。ドゥオモはさんざん堪能したし、附属美術館はもういいや。

堪能したと言いつつもやっぱり名残惜しくなってもう一度正面からしっかり眺める。太陽はだいぶ高く上がり、斜め上からの逆光でファサードの装飾も黒っぽく沈んで見づらい。でも私は夕刻のあの美しさと比較するからそう思うのであって、初めて見ればどの時間帯でも感嘆する美しさではあるはず。オルヴィエートのドゥオモを見るなら、外観はファサードに西日の当たる夕刻に、内部は朝日の射し込む午前中早めがいい。ワインも美味しい、食事も美味しい。となるとやっぱり宿泊しなくちゃね。
広場はたくさんの人々で溢れかえっていた。ローマあたりからの日帰り客がちょうど到着する時間帯なのね。広場の端にはツアーバスも何台か停まっている。昨日も一昨日もこの時間にはよその町にいたので、こんなに観光客がぞろぞろ押し寄せてるって知らなかったよ。

ドゥオモ通りからカブール通りもすごい人混みだった。ああ、もう観光客が行きそうなところはいいや。裏道や脇道みたいなところを意図的に選んで歩くことにした。魅力的な一画が探せるかもしれないし。

腕時計なくしちゃった……

メインストリートには沿わずに共和国広場を横切って静かな路地に入った。旧市街の北側に抜けてみるつもり。東側の鉄道駅からケーブルカーで登ったところの公園から、西端のサン・ジョバンナーレ教会前の広場から、地下ツアーの入口のある南の縁から、ウンブリアの緑の丘陵風景をそれぞれ堪能してきたんだもの。北側からも見なくちゃね。

観光客の多い通りから路地に入り込むととても静か。洒落たトラットリアもまだ開店前みたい

弾み転がるように駆けていったFIAT 500。中にはおっさん2人とヨボヨボのじいちゃん1人がミチミチに詰まっていた

オルヴィエートは旧市街は東西に長い楕円形をしているので、ほんの数ブロック歩くだけですぐに北側の縁に突き抜けた。さて、これからはホテルのチェックアウト時間や出発時間を意識しながら行動しなくちゃな、と左手首を見ると……腕時計がない! はめてきたのはGUCCIのバングルウォッチで、とはいってもすでに製造中止になってる25年モノ。そもそもGUCCIにしてはそれほど高額でもなく、中古市場でまだ売買はされているけど、特別レアものでもないので、プレミアも何もついてない。まあ、25年使い倒した歳月で、金具もバカになりかけてたし、私の手首も変化してはいたけれど(緩くルーズにつけるデザインのはずなのにぴったりフィットしている)。でも愛着があってずっと使ってきたものである。趣味で何本か買い求めた腕時計の中でこれが一番好きだったのに。電池交換だってついこの前したばっかりなのに。

共和国広場のあたりで時刻確認した覚えはあるので、ここまで来る路地のどこかで落としたのね。戻って探そうかなと行きつ戻りつしかけてみたけど、潔く諦めることにした。イタリアで生まれて(買ったのはグアムの免税店だけど)、25年間あちこちの国に一緒に旅した腕時計だけど、こうしてイタリアの土に還ってゆくのね(いや、還りませんから)。当分雨は降らないだろうから壊れることもないだろうし、誰か拾って使ってくれたら報われるんだけどな。

モノとしての腕時計に未練は断ち切ったけれど、時刻を見るための腕時計がないのはちょっと不便だ。特に旅先では。時間を見るのにいちいちスマホを取り出すのは性に合わないのよ。

風に吹かれてのんびりそぞろ歩き、といきたいところが……

旧市街外側の北辺は町を取り囲むプロムナードになっていた。ちょうど太陽が凶暴になってくる時間帯なので、木陰と吹き渡る風とがとても涼やかで気持ちいい。そのまま崖沿いの道なりに東側に向かってそぞろ歩いた。左側の崖下には美しい丘陵や田園が広がっていて、右側には林。緑は瑞々しく、空は青く高く、木漏れ日がきらめき、鳥が唄い舞っている。私は心も身体も弛緩しきって、心地よさを満喫していた。あー、明日はもう帰国日なんだわ、9泊の旅なんてあっという間。

時々、犬の散歩をしている人、ジョギングしている人、展望テラスに佇んでいる人などがいるものの、基本的にほとんど人に行き会わない。こんなに気持ちのいい場所なのに、どうして人がいないのかしら? 観光客は仕方ないにしても地元の人とかもうちょっといてもいいと思うんだけど? そうよ、イタリア名物・暇なじじい軍団はどうしていないの? ベンチだってこんなにいっぱいあるのに。

北縁の展望台。つがいの鳥が大空を舞い、涼やかな風が吹き抜ける

身を乗り出すと、西端の教会が見えた。一昨日はあそこから夕暮れを味わったんだっけ

旧市街外側を取り囲む木陰のプロムナードは気持ちのいい散歩道

歩いているうちに人に会わない理由がわかった。しばらくプロムナードを歩いて適当な場所から旧市街内部に戻るつもりでいたけれど、内部に入れる道がないのだ。そういえば昨日の地下ツアーのガイドが、旧市街の北東部はアーミーのエリアだからアンタッチャブルで調査が出来ないとかなんとか言ってたような。地図で見てもかなり広い部分が空白になっている。そうか、軍の管轄なのかあ、横切れないんだぁ。つまり町の外周の5分の1ほどが途中離脱不可能なのである……ということにいきなり気づいた。Google Mapで見てみると、どうやらサン・パトリツィオの井戸手前くらいまで脇道なしの一本道みたい。うわぁ、12時までにホテルに戻れるかしら? かなりギリギリかも。

心もちスピードアップしてみたものの、歩けども歩けども一向に一本道のまま。途中で本格的に焦り始め、最後は競歩さながらにわさわさと小走りになってしまった。でも、このプロムナードは人が少なくて本当に気持ちのいい散歩道なので、"時間に余裕がある時" にのんびりと歩くのはおススメ! 一応 Strada Della Stazione という名前もついている。

やっぱりワインをもう1本買おう!

汗だくになってホテルに戻ってこれたのは12時10分前。部屋に散らばった荷物をスーツケースにぶち込んでチェックアウトをすませ、改めて荷物を預かってもらった。実はお土産のワインをもう1本買いたくなっちゃったの。やっぱりサグランティーノ・ディ・モンテファルコを!

ホテル近くからカブール通りを少し歩けばワインを売る店は何軒かある。こだわりの品揃えをしているでろうお洒落な店構えのエノテカとか、ボトルが3本突っ込まれた手提げ袋に「Special Price €10!!」などの手書きカードを貼ったものを店頭ワゴンに並べているスーベニアショップとか。そのどれをも無視して、ドゥオモ通りに急ぐ。一昨日、サラミと一緒にサグランティーノをいただいて、オルヴィエート・クラシコを買った《Bottega Vera》という店を目指して。この町に観光客が一番集まっている時間帯なので、カブール通りもドゥオモ通りも人だらけで小走りも大変。

目的の店に着いて「サグランティーノ・ディ・モンテファルコを1本ください」と言うと、店の男性は私のことを覚えてくれていた。私が何を飲んで、何を買ったかということも。アジア人のおばちゃんひとり客が珍しいってのもあるだろうけど、やっぱりそういうのって嬉しいわぁ、わざわざこの店に来てよかった。
サグランティーノ・ディ・モンテファルコは4種類の銘柄を揃えていて、値段は€25〜€30くらい。私があの日飲んだ銘柄を買ってもいいんだけど「あなたはどれがお奨め?」と尋ねてみると、何と4種の中で一番安いものを奨められた。小さなカンティナ(醸造所)であまり出回らない銘柄なので試飲もグラス売りもしないけど、僕はこれが好きなんだ、美味しいよ、とのこと。へえー、一番高いの売りつけちゃえばいいのに、なんて正直で良心的なのかしら。もちろん彼の言葉を素直に信じてそのお奨めを買った。

人がうじゃうじゃするカブール通りを戻る途中、まだちょっと時間あるからと覗いた文具店にすっかり魅せられてしまった。手染めのマーブル紙を表紙に、背と四隅を革で装丁してある分厚いノートを友人のプレゼント用に思わず買ってしまう。ノートとしてはありえない値段だけど、とても素敵だったし、たぶん喜んで使ってくれるだろうことが想像できたから。ギフト用にラッピングしてもらい、ついでに自分用にグリーティングカードのセットも2種類買う。どの柄にするか迷ったり、その間に他のお客さんが来ちゃったりして思いのほか時間がギリギリになってしまった。

お昼ごはんはお肉屋さんのポルケッタ

さらにホテルの1ブロック手前の肉屋でお昼ごはんも購入。外の黒板に大きく書かれた Porchetta の文字と、その隣のニコニコ笑う豚さんの絵に引き寄せられて(^^)ポルケッタとはローストポークのこと。地域によって使う部位やレシピはいろいろなんだろうけれど、肉屋のものなら間違いなく美味しいはず。店内のケースにびっしり詰まった肉類やサラミやハムやソーセージを見て、確信はさらに強まった。

「ポルケッタのパニーノを1個」と頼むと、お店のおばさんは大きく頷いて「これでいいか?」とこんがり焼けた巨大な肉の塊を見せてくれた。これをスライスしてパンにはさむみたい。ちゃんと温めてパンもトーストしてくれるので、渡された包みはホカホカだった。値段は忘れちゃったけど、たぶん€3とかそのくらいだったかなあ。なんだかんだで時間がかかってしまった。わー、もう12時50分だぁ!

おばさんとおじさん二人がかりで、私のためにポルケッタのパニーノを作ってくれている

どれもこれもなんて美味しそうなの! ああ、日本に持ち込めないのが悔しいったらないわ

急いでホテルに戻り、荷物をピックアップし、ケーブルカー駅に向かう。列車は13:25発だけど、まだケーブルカーの切符買わなきゃならないし、それからケーブルカーに乗って、列車の切符を買わなきゃならないし、乗車ホームまでだって階段のアップダウンかもしれないし……いろいろあるんだもん。
などと焦ったものの、結果的にサクサク順調に進んだ。ケーブルカーはちょうど出発するところに乗り込めて、駅の券売機にも誰も並んでなくて故障もしてなくてちゃんと切符も買えて、発車ホームの確認までして、まだ13時10分だった。パニーノは列車の中で食べるつもりだったけど、待合室で食べちゃえ。

駅の待合室で慌ただしくポルケッタのパニーノを頬張る。これでもかというボリュームで、途中で油と塩がきつくなって残してしまったけれど、温かいうちだったら完食できたと思う

パニーノの包み紙は油染みと湿気とでヨレヨレになっていた。破かないようにそっと開くと、薄切りとはいえ大盤振る舞いされたたっぷりの肉が片寄ってはみ出している。トートバッグの上部に放り込んでわさわさ運んだからなぁ……。パンにも油が染みてしまい、表面は固いのに中はヘナヘナして食べにくい。あー、でも肉は美味しい! とてもジューシーで柔らかいから仔豚かうんと若い豚じゃないかしら。ハーブの香りが効いていて、こんがり香ばしいけれど、ちょっと塩気が強いな。あと、やっぱり油っぽいなあ。温かいうちなら気にならないんだろうけどねぇ。

ローマに戻ってきたよ〜〜!

列車はちゃんと時刻通りにやってきた。フィレンツェ発ローマ・テルミニ行き。私はテルミニまで行かずにひとつ前のティブルティーナ駅で降りる。ここまで1時間10分。ああ、旅の最初にこの駅のバスターミナルからペルージャに向かったんだった。訪れた町や村は10にも満たない数だけど、ウンブリア州の中をぐるっと回って、再びここに戻ってきた。時刻は14時35分、乗り換え列車のプラットフォームはそこそこ離れていたけれど15:01発なので余裕余裕。フィウミチーノ空港行きのローカル電車に乗り換えて20分、ローマ・トラステヴェレ駅で下車。

ローマには一泊するのみで、明日の午後には帰国の飛行機に乗る。今回最後の一泊をテルミニ周辺ではなくトラステヴェレにしたのはちゃんと理由があるの。その第一がローカル電車で "安く" "早く" 空港に行けるということ。確か30分足らずだったはずで、本数も1時間に2〜3本ある。帰国前のローマ滞在は20時間くらいしかないので、ギリギリまで有効に使いたいわけよ。
トラステヴェレはテヴェレ川の西岸に位置するエリアで、日本語に訳せば「テヴェレ川の向こう側」という意味で、つまりは「川向こうの下町」ってこと。前々回の訪問でディナーに来たことがあるけれど、このエリアを明るい時間に歩いてみたいというのも理由のひとつ。あまりに見どころの多過ぎるローマでは、数回の訪問ではこのエリアまで足を伸ばす時間はなかなか取れないもの。

トラステヴェレ駅前はターミナル駅らしい賑わいと喧噪があった。駅前はトラムやバスのロータリーとなっていて、その向こうにトラステヴェレ大通り Viale di Trastevere が一直線に伸びて、自動車やバスがガンガン行き交っている。うわぁ、これまで長閑な田舎町ばっかりだったから、一気に都会に来たって感じがするわぁ……。

とりあえずホテルにチェックインしよう

予約した Hotel Villa Rosa は駅から徒歩数分程度の3星ホテル。途中に20段ほど階段を登らなくてはならない箇所があるけれど、ほんの数十秒だけ頑張ればいいだけのこと。レセプションにスタッフが常駐していて、駅から10分以内で、出来るだけリーズナブルでということで選ぶと、おのずと選択肢は限られちゃう。それでも一泊€89と、今回の旅では一番の高値なわけで……やっぱりローマの宿泊費は高ぁい! でも他のエリアでは同等の宿でも2倍近くかそれ以上する。同じ価格なら交通の便が悪いし。まあ田舎町のB&Bと比較しちゃあいけないか……(^^)
Booking.comの特典で12時までのレイトチェックアウトがここでも適用してもらえるのがありがたい。

今回の旅で泊まった部屋の中で一番狭く、一番ベッドも狭かった。なのに料金は最高値。仕方ないよねー、ローマだし

さあ、残された時間を無駄にはできないのだ! 休憩も15分ほどにとどめ、最後の "ローマの休日" を楽しむべく外に出た。まず駅前広場の売店でATAC(ローマの市内交通)の24時間券を買う。€7。これでメトロもバスもトラムも乗り放題、5回で元が取れる。

10分か15分おきくらいに頻発している8番トラムに乗った。トラムはごとごととトラステヴェレ大通りを北上し、テヴェレ川を渡り、終点のヴェネツィア広場 Piazza Venezia に着いた。ここまで約15分。トラムから降り立っていきなり、凄まじいまでの交通量とひしめく大量の観光客たちに圧倒されてしまう。いやー、トラステヴェレ駅前程度の喧噪なんて喧噪のうちにも入らないわ。ずーっと田舎町ばかり歩いていたので、山から下りた狸のように固まる私。特にヴェネツィア広場は "ザ・観光地・ローマ" のド中心部で、市内バスやトラムのターミナルでもあるんだもの。今日6月2日はイタリアの共和国記念日なのでそのせいもあるのかな。

まずはチョコレートを購入すべし!

いわゆる「菓子折り」に相当する贈答用のお土産を買わなくてはならない。万人受けするもので、日持ちがするもので、ちょこっとつまめるもので、ちょっと高級そうでお洒落な感じだとなおいいもの……となると、やっぱりチョコレート。フランスやベルギーならそういう店にも事欠かないけれど、イタリアは実は高級チョコレート店って少ない。ペルージャはチョコレートの町だったので、よさそうな店はあったけれど、旅の初っぱなに買うわけにもいかないじゃない。おまけに連日のこの暑さ、溶けちゃうし潰れちゃう。で、最後にローマで買うことにしたわけ。

目当ての店はイタリアでは珍しいフランス風のショコラティエ。スペイン広場の近くなので、ここからだと直線距離で1.5kmほど。ちょうどいいバス便もないし、20分くらいだろうから歩いちゃえ。
ところが、一直線にのびるコルソ通り Via del Corso を歩き始めたものの、あまりの人の多さにげんなりした。休日の原宿や渋谷並みに歩道に人がびっしりで、スムーズに歩けないんだもの。全然進まないし、追い越せない。オルヴィエートの観光客の多さなんて比較にならない混雑っぷり。でも下手にショートカットを目論んで路地に入ったりすれば、絶対に裏目に出るはずなので、わかりやすい大通りを行くのが一番確実なんだけどね。

じりじりしながらちんたら歩き、買い物客でさらに賑わうブランド通りのコンドッティ通り Via dei Condotti を通り越す。ここから一本入ったカロッツェ通り Via delle Carrozze に目指す《Quetzalcoatl Chocolatier》はあった。これまでの喧噪や雑踏が嘘のような静かな小道で、店の入口も見落としそうなほどさり気なく小さい。

パリのショコラティエのような洗練された雰囲気の店内には美しく美味しそうなチョコレートがたくさん。お手軽な板チョコやドライフルーツにコーティングしたもの、トリュフやボンボンショコラだけでも80種類以上はある。あーこれはとてもじゃないけど選べないよ。25個入るギフトボックスにおまかせで詰めてもらうことにした。

おまかせで詰めてもらったチョコレート。「若い女性たち5〜6人と、甘党のおじさんが1人」向けセレクトにしてもらった。
美味しそう〜〜〜〜♥

柔らかな物腰のマダムはチョコレートを選びながら途中でいきなり「ジンジャーは好き?」と聞いてきた。頷くとケースから商品をひとつ渡してくれる。見た目はオレンジピールチョコレートみたいだけど、中身は砂糖漬けのジンジャーチップだった。かなりピリリとするけど、不思議に美味しい! 自分用に買っちゃおうかと思ったくらい。

綺麗にリボンをかけてもらったギフトボックスを大事に持って店を出た。さあ、買い物は終わった! 今度はこの短いローマ滞在の重要なテーマをこなすのだ!

カラヴァッジョの祭壇画たちに逢いにゆく

10数年前からカラヴァッジョがとても好きになった。正確には、ローマのカピトリーニ美術館 Musei Capitolini で、扇情的かつ官能的な『洗礼者ヨハネ』に出逢ってから。
ローマ市内には多くのカラヴァッジョ作品があり、その中のいくつかは教会の祭壇画。美術館所蔵の作品なら展覧会に貸し出されることもあるし、現に2016年には上野の国立西洋美術館でカラヴァッジョ展が催されたけれど、おいそれと動かせない祭壇画はそこに行って見るしかない。で、今回のテーマに「ローマの教会のカラヴァッジョ巡り」を掲げたというわけ。カラヴァッジョ作品は合計7点、ポポロ広場近くとナヴォーナ広場近くの3つの教会にある。これを教会の閉まる19時までに一気に巡るのだ!

ポポロ広場までは徒歩なら再びコルソ通りを1.5kmほど歩いていかなくちゃならない。たいした距離ではないけれど、コルソ通りの人混みにウンザリしてしまったので、一駅だけだけどメトロを使うことにした。せっかく乗り放題チケット持ってるんだしね。

まず最寄り駅の Spagna まで行くのに大混雑のスペイン広場 Piazza di Spagna を通り越していかないとならない。広場のみならず、スペイン階段にも、広場からのびる数本の通りにも、とにかく人人人。その合間を縫ってようやく地下鉄入口を見つけて入ったものの、この出口は駅から離れているようで延々と地下道。ようやくホームに着いたら電車は今出てしまったところ。10分近く待った次の電車に乗り、2〜3分後に隣の Flaminio で降りる。目当てのポポロ広場まではまた延々と地下道。途中の分岐点で間違えてまた延々戻るというおまけまでついた。

結果的に時間短縮になったのかわからないけど、とにかくポポロ広場 Piazza del Popolo に着いた。予備知識なしにこの大きな円形広場に立つと、真っ直ぐにのびたコルソ通りの両側に神社の狛犬よろしく並んだ双子の教会がとにかく印象的。でも今回目指すのは広場のすみっこにひっそりと面したサンタ・マリア・デル・ポポロ教会 Basilica Parrocchiale Santa Maria del Popolo なのよ。

見落としてしまいそうに地味な外観のサンタ・マリア・デル・ポポロ教会

この地味な小さな教会も、ダン・ブラウンの『天使と悪魔』に登場するらしい。もともと古くから由緒正しい教会だけど、一気に有名にもなったみたいで、入口前にはびっくりするほどの人だまりが出来ていた。人を避けながら近づくと、扉前に仁王立ちした男性が「今はミサをやっているから入れない」と叫んでいる。何時に終わるか尋ねる人もいるけれど、仁王立ちした男性の多少キレ気味の答えはまだ30分以上先だった。うーん、今回は諦めるか……。ペルージャでサン・ピエトロ教会のカラヴァッジョ見つけ損ねちゃったのにな。

>> ちなみにサンタ・マリア・デル・ポポロ教会には『聖パオロの改宗』と『聖ピエトロの逆磔刑』のふたつのカラヴァッジョ作品がある。他にもラファエロがデザインしたキージ家の礼拝堂やベルニーニの彫刻など、小さいながらも美術館のような見応えのある教会なのだ。ローマ中、そんなところばかりだけど

カラヴァッジョのある教会ひとつめはあえなく玉砕。ここひとつだけ離れていてわざわざ来たのに、無駄足になっちゃった。でも、今度はちゃんと来てやるぞって思えるから、こういうのも悪くない。

残り2ヶ所のカラヴァッジョを求めてGO!

ポポロ広場からナヴォーナ広場までは直線距離で2km弱だけど、メトロもバスもうまく連絡していない。無理に交通機関使って迷うくらいなら自分の足に頼るのが一番確実よね。そういうわけで、Google先生のナビに頼ることにした。通信料の問題があるからいつでも使うわけではないけど、時間限定のローマ歩きには必要でしょ。

途中の路地で見つけた手彫りの案内表示。あまり正しく示せているとはいえないけど……。たぶん個人で勝手に作って勝手に貼りつけているんだと思うわ

観光客がごちゃごちゃいそうなルートは避けてせっせと歩くこと25分、ナヴォーナ広場やパンテオンのあるエリア近くまで来た。この辺りは道が込みいっててショップや人通りも多く、ランドマーク的な建造物ならともかく小さな教会を探すのは本当に大変。
そうしてようやくサンタゴスティーノ教会 Chiesa di Sant’Agostino を見つけた。ここもひっそりと小さな地味な外観をしていた。入るとすぐ左側にカラヴァッジョの『ロレートの聖母』があった。堂内装飾はあまり派手派手しくはなく全体に薄暗い。カラヴァッジョの絵のあるあたりも暗く、高い位置にあってとても見づらい。聖母のモデルは当時の彼の恋人の娼婦だったそうで、この薄暗さがかえってスキャンダラスなカラヴァッジョらしさを浮き上がらせているようにも思えた。巡礼者の足の裏の汚れなどもかなりリアル。

この絵の横のボックスに€1入れてボタンを押すとしばらく照明が点く。誰かがコインを入れるとその場の数人が見に来たり写真を撮ったりし、消えるとまた誰かが入れる。せっかくの照明だけど、変なピンスポットみたいで一部だけがテカってしまい、全体が明るくなるわけではないので、あまり効果的とも思えない。

照明当てたものよりも、暗めに撮ってレベル補正した方がマシな写真になった。こんな条件下で見ても、中央のカラヴァッジョ作品が抜きん出ていることだけは確実にわかる

この教会にはラファエロの『予言者イザヤ』という絵もある。まあ、ラファエロのムチッとした筆致は個人的はあまり好きではないのでね。やっぱりよく見えなかった。とにかく堂内が暗過ぎる。
カラヴァッジョの照明が不満だったので絵はがきでも買おうかと思ったら、「40年前の印刷かよ」って思うくらい低品質なものだったので、結局やめにした。

超有名なチョコレートジェラートに心蕩かす

カラヴァッジョのある教会巡り、残るひとつはサン・ルイジ・ディ・フランチェージ教会 Chiesa San Luigi dei Francesi。そこには『聖マタイと天使』『聖マタイ召し出し』『聖マタイ殉教』というカラヴァッジョのマタイ三部作があるという。この近くにあるはず……なんだけど。都会でありA級観光地であるローマの大混雑、時間に追われてワサワサ歩き、おまけに一ヶ所で空振り一ヶ所で若干期待はずれ、すっかり気持ちが萎えてしまったのよ。疲れた……もういいや。いつかまた機会はある、と思うことにする。

そのままナヴォーナ広場 Piazza Navonaに向かった。造られたのは紀元前というこの美しく芸術的な細長〜〜い広場、中心には四大河の噴水 Fontana dei Quattroネプチューンの噴水 Fiumi Fontana del Nettunoムーア人の噴水 Fontana del Moroの3つの噴水。噴水で区切られた4つの広場、中央に屹立するオベリスク、豪壮な教会やパラッツォがぐるりと取り囲み、一階にはお洒落なバールやレストランがずらり。何度見ても美しいけど、何度来ても凄まじいほどの人、人、人! この広場は車両禁止なのでいたるところに人がふらふら、噴水の縁には人がびっしり腰掛けて、彫刻なんて隙間からしか見えない。

>> 一度だけほぼ無人のナヴォーナ広場を堪能したことがある。お正月休みに母を連れてきた時で、雨降りの元日の朝だった。カウントダウンの馬鹿騒ぎの名残りの割れたワインボトルなんかが散乱していたけれど、噴水の彫刻などもつぶさに見ることができた

わざわざ人だらけのナヴォーナ広場に来たのは理由がある。広場に面した《Ristorante Tre Scalini》の有名メニューの "タルトゥーフォ" を味わうためなのさ! ウンブリア地方ではさんざん目にした名物のタルトゥーフォ、もちろんトリュフのことだけど、この店ではトリュフの形をしたジェラートのドルチェにその名前がついている。

うんざりするほどみっしり人だらけのナヴォーナ広場。さすが大観光地ローマならではの風景

小さく見えるけれどゲンコツ大のサイズ。カロリーのことは……考えたくないや(^^;)

広場の見えるテラス席でそのタルトゥーフォをオーダーした。ゲンコツ大のそれが私の目の前に置かれると、隣のテーブルのアメリカ人夫婦が「それは何だ」と聞いてきた。私が答えようとするとすぐさまカメリエーレが飛んで来て、「ウチの名物のチョコレートのジェラートなのだ、超美味しいのだ、超お奨めなのだ」と立て板に水でアピールする。彼らは早速追加オーダーしていた。すご〜い、商魂逞しいわぁ。各国の観光客に対応するため各国人スタッフを揃えているようで、日本人女性もひとりいた。

さて、タルトゥーフォのお味はというと、ビターで濃厚なチョコレートジェラートがダークなチョコのブロックでざくざく包まれてて、甘さ控えめ生クリームがこんもり乗っている。カロリーのことは考えたくないけど超美味しい。隣のテーブルにも運ばれてきて、彼らは一口食べると私に向かって親指を立ててウィンクしてきた。うん、美味しいよね、美味しいけどさあ……これ€9もするんだよ。場所代のせいもあるけれど、高いよねぇ。

ローマの裏道ふらふら

19時近くなって吹く風が心地よくなってきた。ゲンコツ大ジェラートでお腹が冷えちゃったので、ちょっと肌寒く思うくらい。さて、今日の夕食はローマ風ピッツァにするって決めているの。下町トラステヴェレには気軽で美味しいピッツェリアがたくさんあるのだ。美味しく食べるためにもジェラートの腹ごなしに歩いて戻ろう。あれ? せっかく買った24時間券をまだ1回しか使ってないような……まあ、いいや。

とりあえずナヴォナ広場から南西方向に向かっていけばいいかな。そのうちテヴェレ川にぶつかるだろうから、適当に橋を渡ればトラステヴェレに入る。そこで改めてピッツェリアの多く集まるエリアを目指せばいい。

大まかな方向だけ決めて路地をふらふらした。満開の藤の花が壁全面を覆っている一画にいきなり吸い寄せられた。日本では藤は棚に這わせて花房を垂れ下げるけれど、ヨーロッパでは蔦のように壁を覆わせることがほとんどで、日本の藤より赤み寄りの薄紫色をしている。

路上ライブのおっさんたちにも出会った。ナヴォナ広場のギター弾きはヘタクソだったけど、彼らはそこそこ巧い。立ち止まって聞いていたら、目のあったひとりがCDをかざしてアピールしてくる。うーーーん、CD買うほどじゃないんだよなぁ……ごめんね。でも去り際に楽器ケースの中にちゃんとコインは入れてくからね。

これは藤ではなく全面蔦で覆われた建物。お化け屋敷のような圧倒的な存在感……

路上ライブのおっさんたち。いろんな楽器の持ち寄りでポップなクラシックなようなジャズなような……

さらにふらふら歩いていくうちにテヴェレ川近くに出た。路地内をちまちま歩くうちに目測を誤って出たいなと思う部分でなかったけれど、ちょうど8番トラムの乗場があったので2停留所だけ乗ってしまうことにした。せっかく乗り放題チケット買ったんだもんね。

美味しいピッツァで最後のディナー

Trastevereの停留所から徒歩3分ほどの《Ivo a Trastevere》という店に入ってみた。安くて美味しいピッツェリアの集中するトラステヴェレ地区には人気店もたくさんあって、ここもその中のひとつ。巨大濃厚ジェラートがまだお腹にもたれているので、本当はもう少し遅い時間にしたかったけれど、祝日の夜だしおひとりさまだし。19時過ぎという早めの時間に入店したにもかかわらず、かなり広い店内はすでにほぼ満席だった。休日ならではなのか、7〜8人くらいのファミリー総出のグループもあちこちに見受けられる。
私は普通なら嫌がられそうな端っこの小さいテーブルにすぐ通された。でもひとり客ならこういう位置の方がありがたい。混んでる時間に占領している後ろめたさがないもの。

オーダーはすませたものの、肝心のピッツァが待てど暮らせど出て来ない。別にアジア人でおばちゃんでひとり客の私を差別しているわけではなく、本当に混んでいるのだ。ビールをちびちび舐めながら店内を観察してみた感じでは、一気にお客が押し寄せて満席になったのでオーダーも一気に押し寄せて、調理してもしても追いつかないというわけのよう。お喋りしながら待てない一人旅はちょっと困る。
厨房出口に近い席なので、ひっきりなしに料理を持ったスタッフが脇をすり抜けていく。私のオーダーを取ってくれた年配の男性は、若いスタッフにガンガン指示を飛ばしているので店主なのかもしれないけど、自分自身もよく動く。実は彼は足が悪く、片足を引きずりながら弾むように行ったり来たりするので、転ばないか心配になっちゃう。手持ち無沙汰の私とは何度も目が合い、そのたびに「待たせてごめんね」と言ってくれる。すごい働き者で気配りの人なのだ。

とろとろの茄子がたくさん乗ったピッツァは、待った甲斐あって何倍も美味しく感じた。どうせならお店の一番の売りのカプリチョーザのピッツァにすればよかった

半立体のトイレ表示は、可愛いけれどちょっとお下品………

店の外まで大行列!

結局30分以上待ったかな? おじさんはぴょこぴょこ弾みながらピッツァを運んで来ると「召し上がれ〜」とウィンクしてすぐさま踵を返していった。ああ〜待った甲斐あったよ、巨大ジェラートも消化しきって、さっきから胃袋スタンバイ状態だったんだよ〜! さっそくナイフを入れ、熱々のところを一口ぱくり。美味しい! ナポリ式の縁がもちもちのピッツァもいいけど、私はローマ式の薄いのが好みだなあ……。でも一昔前に日本で流行ったようなぺらぺらヘナヘナのものではなく、具材に負けない程度にしっかりしている。余裕で完食。

食後にカフェも1杯いただいて、合計€15.50。さすがの下町価格、めちゃめちゃコスパ良しだわ。さっきのジェラート€9が頭をよぎった。帰り際にトイレを借りる時に厨房の様子が垣間見えた。大きな調理台にざっと20枚はピッツァが並べられ、数人が群がってわさわさ作業している。
外に出たら30人くらいの行列ができていたのでさらにびっくりした。さすがに人気店だわ。持ち帰り用にもオーダーしている人もたくさんいるみたい。うーん、厨房はまだしばらくあのペースでピッツァを焼き続けないといけないみたいねぇ……。

祝日で金曜夜のトラステヴェレはすごい人出と賑わい。まだまだ夜はこれからなんだろうけど、私は今晩のうちに飛行機搭乗用の梱包しとかないといけないので、早々に引き上げることにする。明日は早朝から12時までにいろいろ勝負もかかっているしね。

 
       

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