Le moineau 番外編 - すずめのポルトガル紀行 -

旅立ちに至るまでの大いなる序章

繰り返しになるが、私は個人事業主である。平たく言うと「フリーランス」。ま、ぶっちゃけて言うと「収入が一定でないヒト」である。仕事が減れば収入もがっくりと減り、仕事いっぱいあってもカラダひとつじゃ限界あってボロ儲けなんて出来ないヒトなんである。

一昨年、私の仕事は低空飛行の自転車操業状態であった。なのに無理矢理17日間も中欧に行ってしまった。どこか出かけたら運勢変わるかなー…とか根拠なく考えて。当然そのツケは来るべくして来た。
で、怒濤の営業活動(笑)をし、馬車馬のごとく(笑)働いた。経営(笑)を立て直し、さらに次の欧州旅行に行くために。

「そろそろ安定してきたかなー」という頃、母ヒナコに乳癌が見つかった。旅行どころではない。治療費だってかかる。私はさらに馬車馬となった。
しかし、ヒナコの癌はあっさりと手術で治癒してしまった。後遺症もほとんどない。喜寿の年齢も越えており、治療費も拍子抜けするほどかからなかった。半年後の検診でも1年後の検診でも問題なかった。……これは行けるかもよ?

私の祖父母─ヒナコの両親─は、どちらも今のヒナコの年齢で癌で亡くなっている。ヒナコもなんとなく自分の人生もそのくらいで充分かな、などと考えていたようである。でも、生き長らえてみれば、やっぱりまだまだ「どっか行きたい欲」は尽きないようだ。
癌の完治は5年が目安。彼女の年齢を考えれば、これからはサッカー試合のロスタイムのようなものかもしれない。それなら元気な限り、本人が行きたいと言う限り、出来るだけ連れて行ってあげよう……そう思った。

早い話が、ヒナコは元気な年寄りなんである。長年降圧剤のお世話になってるとか、網膜剥離で片目が半分見えにくいとか、ビミョーに血糖値が高いとか、足腰それなりに弱ってるとか、ちょぼちょぼ不具合はあれど決定的に悪いわけではないのだ。食事だって普段は気をつけているし、主治医のもとで血液検査や尿検査を毎月受けている。癌手術の際、全身くまなく検査して、どっこも問題ないこともわかっている。忙しいと徹夜を繰り返し、食事もジャンクなものになり、健康診断も満足に受けていない私なんかよりも、もしかしたらずっとずっと健康体かもしれないのだよ。

実際は「よし行っちゃえ」と決めてから実行まで、何ヶ月か待たねばならなかった。
2年半前と今回の旅での最大の違い……それは、円安・ユーロ高!
2002年のユーロ導入後、最初はUS$と同じくらいだったものの、じわじわじわじわ上がり始め、¥は下がりはじめ……。一昨年は€ 1が¥142〜145くらいで「うーん、若干割高感あるなあ」という感じだったのが、その後上がるわ上がるわ、今年の冬あたりは¥170近かった。初夏のヨーロッパ、綺麗なんだけどねぇ……。ホテルも航空券も夏料金、めちゃくちゃ躊躇する数字である(涙)。

幸いなことに、ポルトガルは比較的物価が安い…ざっくり言えばユーロ圏の貧乏国。でもって気候は比較的温暖。ローシーズン料金に切り替わった直後なら、うら寒すぎる風景ということもなく、予算は夏の半分強ですむ。
いろいろ予定をすり合わせて根回ししまくって、11月上旬に決めた。夏の間ほぼ不眠不休で休日返上で馬車馬化(笑)したので、遅い夏休みというところである。そうと決めたら、じわじわっとユーロは下がり始め、8月末には¥159くらいになった。いいぞいいぞと思っていたが、またじわじわっと上がって、結局出発時は¥162〜165ほど。ま、仕方あんめぇ。

註)最終的に出発時は¥170を超えた。あんまりだ。旅の後半は¥165ほどに下がったが。前半に多めにお金おろしてるのよねぇ…

…と、前ふりが長過ぎた。

「ポルトガルは坂が多いよ」
私の言葉を聞き、ガイドブックの写真を見て、ヒナコもこれはいかんと思ったらしい。自宅マンションの階段往復という「自主トレ」を開始した。おお偉いじゃんと思っていたら、10日で飽きたようだった。

今回の旅立ちは朝ではない

初めて使うエールフランスの夜便。成田を21時55分に発って、パリに早朝到着する。
ポルトガルに行くには必ず乗り継ぎしないとならないし、大抵の欧州便の10時〜13時頃の出発では到着が夜中になってしまうから。それに帰りに久しぶりでパリに寄ってみたかったからね。

当日の夕方、新宿駅の改札でヒナコと待ち合わせて成田EXPに乗ることにした。私は事務所でちょっと仕事も出来ちゃったし、ヒナコは掃除や洗濯とか出来ちゃったし、夜便って時間有効に使えていいかも、などと実際に乗ってもいないうちに思っていたところ………新宿に向かう私鉄で人身事故で運転見合わせですってさ! 私はもう改札で待っていたのだけど、途中で停まってる電車にヒナコが乗っている。結局どーすることも出来ずに30分閉じ込められていたそうで…
ヒナコ連れで動くようになってから、列車や飛行機などの予約モノにはこれでもか!と時間の余裕を持たせているので、乗り遅れはしなかったけども。まあ、実際は新宿駅でオニギリと味噌汁を食べてから成田EXPに乗り込む余裕がしっかりあったわけだけど。でも、あんまり幸先のいい気分じゃないな。

>>幸先悪い予感というのは結構適中するもの。この旅では、電車やバスなど小さな移動に於いてプチ・トラブルが起こるのであった。

ほんの何本かの離発着を残すのみの成田空港は閑散としていた。空港駅出口のチェックもエールフランスのカウンターもX線チェックも出国審査も免税店もがらんがらん。すいすい進んでしまい、カフェの類いもほとんど閉まってるし、サテライトでぼへ〜〜〜〜と待つだけだった。だけど、明日の早朝パリ着、リスボンに乗り継ぎ、続いてポルトに列車移動…と、到着後はなかなかヘビィなんである。体力温存、体力温存…

ぼへ〜〜と待っている間にアナウンスがあった。
「本日、乗務員なんたらかんたら組合のストにより、通常より少ない人数での対応になります。機内食サービスに若干の弊害が云々云々……」はぁっ? そうですか、でも欠航じゃないなら良しとしなくちゃ。ファーストやビジネスはそう極端にサービスの質落とすワケにいかないだろうから、その『弊害』ってのは我々エコノミー庶民が被るコトになるんだろうけど(笑)

エールフランスはエコノミーでもシャンパンがオーダー出来る。ええ、小市民な私としては、それを楽しみにしてたんですけどね。エコノミー庶民たちに割り当てられたシャンパンは、私の前の列のおっさんのが最後の1杯だった。ち〜〜く〜〜しょおぉぉ…。フテ寝である。


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