フテ寝する予定だったのだが、14時間の飛行中2〜3時間しか眠れなかった。ううう、眠い。眠いんだけど、眠れない。これってちょっとつらいことになるかもしれないなぁ…。この時点で思ったのはその程度だった。
早朝4時20分、ほぼ定刻でパリCDG空港に到着。
私はCDGで過去2回ロストバゲジにあっているので、この空港が人間と荷物をきちんと同じ便に乗り継がせてくれるのか、あんまり、というかほとんど、というか全然信用していない。今回は乗り継ぎ後、移動しなくちゃならないので、「積み忘れちゃったぁ、次の便で送りますぅ」だと、困っちゃうんである。なにしろ旅程の最初の一歩──自宅を出て新宿へ向かう私鉄──に於いてからして、人身事故遭遇だ。なんとなくや〜な予感がしちゃうんである。
だから、リスボンまでスルーチェックインしないで、面倒だけど、ホントに面倒だけど、パリでいったん入国して荷物出してリスボン行きの便に再チェックインという手順を踏むことにしたのだ。どうせ3時間もあってヒマだからそれもいいか、と思って。
巨大なターミナル間を荷物引きずっての徒歩移動。「長時間機内でこちこちに縮こまったカラダをほぐす良い運動」となった。それ以上かも(笑)。
今さらながらCDGの広過ぎ度合いをがっつり再認識。夜明けのがら空き状態だから、へろへろよれよれでも歩けるが、人が右往左往していたら、かなりぐったりしたことと思う。誰もいない長〜い通路、こんな所に毛布の固まりが…?とよく見ると熟睡なさってるホームレスの方だったりして、別の意味でちょっとぐったりもするけれども。
リスボンへの飛行機は7時20分発。ここでもカフェもショップも軒並みクローズしている。することといえば、サテライトでぼへ〜〜と待つしかない。外はまだ真っ暗、搭乗の頃ようやく空が白んできた。どんより重い雲、少し霧っぽい感じで、空気もひんやりしている。パリに戻るのは2週間後。どの程度季節は冬に進むんだろ……などとつらつら思いつつ乗り込んだ小さな飛行機は、外からの印象の割には座席が広くて天井にも圧迫感はなかった。乗客率は7割程度か。
定刻通り離陸した機体が、今の気分そのままのどよどよ重暗い雲を突き抜けた瞬間──、窓の外の色彩が一変した。もこもこ羊毛のような白い雲と薄紺色の空との境目に一筋の朱赤の帯……! 帯は徐々にその幅を広げ、明るさを増し、雲と空と翼とを染めていく。そして、絞れば手がオレンジに染まりそうなほどの円く朱い太陽が……! 予想しえなかった素晴らしくも美しいサンライズ・フライトだ。
その後刻々と変わる眼下の風景は、リスボンまでちょいと一眠りする予定をまたもフッ飛ばしてくれた。飛行機の窓からの眺めをこんなに楽しんだことってなかったかも。
後で思えば、ここでフッ飛ばした眠気のツケはくるんだけどね。眠っておけばよかったよ…。
2時間半ほどで到着したリスボン空港は、一国の首都の国際空港というには、こじんまりしてどこか鄙びた匂いがした。この鄙びた感じというのが、ポルトガル全体──人や町──に漂う雰囲気だったのだろうと、帰ってきた今ではそう思う。
時間帯のせいもあって、夜の成田より早朝のCDGより断然ヒトはうじゃうじゃいるんだけど、それを差し引いても、どこかのんびりと穏やかで緩やかな雰囲気があるのだ。
さて、2時間待ち。オリエンテ駅の背後には巨大なヴァスコ・ダ・ガマ・ショッピングセンターがあり、さらに水族館や様々なパヴィリオンや遊覧ロープウェイまでが控えているので、2時間はおろか半日でも遊べるのだけど、それはスーツケースなんて持っていないことが前提である。第一、私たちは眠いのだ。かくして、またもや待合室でぼへ〜〜〜と過ごすしかないのであった。
ただ2時間待ちではさすがにつらいので、ヒナコを荷物番にしてショッピングセンターのスーパーマーケットに買い物に行ったりした。とりあえずミネラルウォーターが欲しかったから。パリの空港サテライトの売店では500mlのボルヴィックが€ 2.80もしてたので、憤死しそうになって買わなかったのだ。
スーパーマーケットはおそろしく広大で、凄まじい種類と数の食品があった。見ているだけで楽しい瓶詰缶詰調味料。でもこういうものを買うのは旅の最後だ。いくら楽しそうだからといっても、今荷物を膨らませてしまうわけにはいかない。
ヒナコはおとなしく待合室で2時間を過ごしていた。年寄りは病院の待合室などで待たされ慣れしてるんである。流石に最後は「もう飽きた、ここ」と言っていたが。
お腹も空いているんだけど、パンなどを買って食べる気分にはなれない。カフェ入ってお茶する気分にもなれない。ただただ早くポルトのホテルに入りたかった。
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オリエンテ駅背後の巨大なヴァスコ・ダ・ガマ・ショッピングセンター。さらに後ろに万博会場跡の国際公園が広がる(らしい) |
疾走するAPの車窓から。赤茶色の大地と青空の対比が鮮やか |
APの一等車では有料だが食事サービスがある。ランチタイムのせいもあり何人かの客は注文していた。美味しそうな匂いが漂う。でも、お腹空いてるけど、食べたくない。機内食ばかり3回続いたので、なんというか、食事がああいう四角いトレイに乗っているだけでイヤなんである。スーツケースからあられの小袋を取出してこそこそつまんだ。車窓の景色を楽しみたいところだが、なにしろスピードが速いので、景色もすごい勢いで飛びすさっていく。やっぱり高速列車というものは、移動が短時間だというメリットしかない。
眠さが最高潮に達した頃、列車は定刻より5分遅れて終点ポルト・カンパニャン駅Estacão Campanhãのホームにすべりこんだ。市街地の玄関口サン・ベント駅Estacão São Bentoまでは一駅だけ普通電車に乗り換えなくてはならない。はあ……あと少しあと少し。