Le moineau 番外編 シチリア巡遊 - 海と岩とミクスチュア文明の島を歩く -

港から大聖堂まで朝飯前のメッシーナ散歩

眠りにつく前に無糖ヨーグルトを300gも一気食いしたおかげか、腸の調子は7割がた整ってきた感じがする。まあ、気分の問題かもしれないけれどね。相変わらず3時過ぎには目覚めてしまうけど、迷惑かける同行者がいるわけでもないので、滞在中はこのペースでいくつもり。朝にダラダラできる時間があるのは悪くないし、時差を4時間くらいにとどめておくのは帰国後にも楽ちんだし。ダラダラと支度しながら残りのヨーグルト200gも食べておく。

8時、朝食は後回しにして朝の散歩に出た。昨日夕暮れが見られなかった港沿いを歩いてみようと思うの。
カイローリ広場から駅方向には折れずに港の方向に向かう。海に向かって緩やかに下る大通りの街路樹は黄色く色づき始めている。

メッシーナの港に捧げられた金色のマリア像。船でメッシーナ入りする人たちは最初にこの像に迎えられるようだけど、陸側からだと遠くてよくわからない

港には柵があって勝手に入れないので、金網のすき間からレンズを突っ込んで撮影。目の前をFSの連絡船がゆっくりと横切っていった

金色のマリア像をレンズの限界までクローズアップ。光線の向きで輝いてはいないけれど、台座の文字はしっかり読める

ムニーピチオ広場越しに町を見下ろす高台にあるクリスト・レ戦没者記念堂。山の方にはやや怪しい色合いの雲が……

毎日気にしている天気予報では、今日の午前中のうちからどんどん下り坂になっていって、さらに荒れ模様になっていくということだけど……。とりあえず今朝はまだ空は青く、ただ "シチリアにしては" 雲が多いような。雨にはなるだろうけど、嵐にまでなるのかは嘘っぽいな。

港沿いの道路は朝のジョギングをしてる人が多かった。当たり前だけど、そういう人たちはみなスリムで引き締まった身体をしているね。ネットゥーノ広場まで港沿いを歩くつもりだったけど、意外と距離があり景色は単調なので、ムニーピチオ広場で引き返すことにした。同じ道を戻るのは芸がないので大聖堂の裏側からドゥオモ広場を経由していこうっと。

まだニットコートの下は長袖1枚で事足りる気温だけど、あちこちで黄葉していて秋の気配が感じられる

改めて近くから鐘楼の装飾を眺めると、側面の天文時計がとても綺麗。上の盤面は数字ではなく12星座のアイコンになっている

大聖堂裏手の道路は路上駐車でカオスな状態だった

港沿いの道路は自動車が通り過ぎるばかりで人は少なかったけれど、大聖堂まわりでは町はすでに目覚めて活動を始めていた。バールやパン屋さんからコーヒーやパンの香りがふんわりと漂ってくる。店内に目をやると、ブリオッシュやクロワッサンの朝食を摂る人たちがカウンターに群がっている。
ショップも開店準備をしている。店の前を掃いている人、掃除機のような機械で落ち葉を吹き飛ばしている人、商品を並べている人……
驚いたのは、床屋や美容院。なんと8時台から店を開けていて、すでに客がいる! 昼休みを3時間くらいとるかわりに、朝が早いのね! 目からウロコがぼろぼろ落ちた。彼らは昼休みでサボってるわけではなく、ちゃんと働いているのね! 誤解してたわ、ごめんなさいッ !!!

高台のクリスト・レからメッシーナの町と海を展望する

1時間ほど歩き回って、9時過ぎにホテルに帰ってゆっくりと朝食をいただいた。

宿が変わってもどこでも一律同じな朝食。散歩途中で焼きたてパンやコーヒーの香りに刺激されて、ついついたくさん食べてしまった。だいぶ腸のリズムは整いつつあるけれど、とどめを刺すようにさらにヨーグルトをもう一個摂取

10時少し前にチェックアウトして荷物を預かってもらう。今日は12:40のバスに乗るつもりなので、あと2時間ほどをメッシーナ観光に使えるわ。一番目的の州立博物館も、大聖堂鐘楼のからくり時計(ガッカリさせられたけど)も、港から海峡越しに眺める本土も、見学ずみ。残すは高台からの町の俯瞰と眺望! ということで、目指すは高台のクリスト・レ戦没者記念堂 Sacrario di Cristo Re !!

時間制限がある上に高台まで登らなくてはならないので、ちょうどいい市内バスの便がないか調べてみた。でも、起点到着点ともに停留所が離れている上に本数も少ない。うーむ、これは自分の2本の足を頼った方がきっと確実だわ。登りはきつくても、帰りは下りだしね。Google 先生に尋ねるとホテル近くからクリスト・レまでのルートは3〜4種類あり、所要時間は23〜25分。持ち時間2時間でかなりギリギリだな。迷っている余裕はないので、多少距離があってもわかりやすい道にしよう。

標高60mの高台にあるクリスト・レ戦没者記念堂。かつてここにあった城塞の跡地に建てられたそう。このあたりは起伏が激しく道が重層的になっていて地図がわかりづらい

戦没者記念堂前の道路は展望スペースが設えられていて、港と海峡が一望できる。本土側のレッジョ・ディ・カラブリアもすぐそこに。本当にこれから雨になるのか疑わしいような空と海の色だけど……

だいぶ雲が増えてきていて、南側に向いてみると不穏な感じの雲が……。あちらは午後から向かうタオルミーナの方向だわ。下り坂に向かっている感じの風も吹き始めている

港から見上げた時もかなりの高さと距離がありそうと思ったけれど、実際には見てる以上に「山登り」だった。GoogleMap のナビに忠実に従って迷いはしなかったけれど、どうしても時間が気になって心持ち早足気味になるものだから、息があがって切れ切れ。気温も20℃近くあり汗だくだく。ようやく記念堂の青いドームが見えてきても、そこから先がまた遠いよ……。

えっちらおっちらと辿り着いたご褒美はパノラミックな展望だった。眼下にメッシーナの街並、イタリア半島へと続くメッシーナ海峡の輝き、レッジョ・ディ・カラブリアの美しい山並。記念堂の敷地を取り囲むように道路が馬蹄形にカーブし、いくつもベンチが並んだ展望台になっている。ここは地元の人々に愛される定番のお散歩コースらしい。さもありなん、気持ちい〜い(^.^) 夜なんかカップルがいっぱい来てそう。

ネット情報によれば記念堂のオープンは不定期とのことだったけど、今日は開いているようなので一応入ってみる。

城塞の一部を組み込む形で建てられたという記念堂の鐘はイタリアで3番目に大きいとか。ここに見えている鐘ではないよね、そんなに大きくないものね

教会ではなく第一世界大戦で亡くなった兵士たちの墓所であり慰霊堂なので、戦没者たちの名前のプレートが壁一面にびっしりと並べられている

中央には横たわる兵士像の棺が。大きな鐘はこの真上のドーム内にあった。大戦の相手方の大砲の青銅を溶かして作ったものだそう

戦没者記念堂のテラスからはさらに高みからメッシーナ海峡を見下ろせる。強い風の起こす葉ずれ、鐘の響き、鳥の声、救急車のサイレン……いろいろな音も立ち上ってくる。あ、またFSの連絡船が横切っていった

記念堂には戦没者たちを悼む静謐な空気が満ちていて、それでいて窓や天蓋からの採光はたっぷり、明るい雰囲気で意外によかった。展望も素晴らしいし、メッシーナで2時間を過ごすなら港や大聖堂よりお奨めスポットでもあるかも。
クリスト・レ周辺で30分近くを過ごし、時刻は11時。展望台のベンチでジェラートなんか食べたりする時間はまだありそうだけど、展望台横のカフェで休憩がてらトイレ借りるのもありだけど、でも移動日はギリギリの行動は避けておくが無難。だって、今日は土曜日なのでタオルミーナ行きのバスは2便しかないんだもの。早め早めに動いておくに限る。あっ! トイレ借りるのが最優先になってないってことは、だいぶ腸リズムが整いつつあるってことね !! 一安心だわぁ……

25時間のメッシーナ滞在の最後に出会ったおばあちゃん

帰りは別ルートをとってみた。Google 先生に従ってとにかく降りていけばいいとはわかっていても、知っている道に出るまでは気持ちが急いてしまって、やっぱり息が切れ切れ、汗だくだく。急な階段を一気に駆け下りたから膝もガクガク。やあねえ……もう、ババアなの実感しちゃう(TT)
ようやく何度か通った大通りに出た。安心し、時計を見てまだ十分に時間の余裕があるとわかったら、ホテルまでたった数分の道が歩けなくなっちゃった。周辺には緑の植込みやベンチが設えられていて、ちょっと公園のような憩える空間になっている。裁判所前のベンチにへたりこみ、しばし休憩。

復路は崖側面のジグザク階段から。往路でこのルートを使ってたら絶対に迷ってたろうし、登りがきつくて途中でへばったかも

堂々とした建物が多く並ぶトンマーゾ・カンニザーロ通り。道の向こう側にメッシーナ大学が見えている

メッシーナ大学の対面にあるのはメッシーナ裁判所。道路沿いでありながらも前庭にはゆったりとスペースがあり、ちょっとした緑地公園のような趣き

途中でバスの中で食べるお昼ごはんを購入。ホテルのすぐ近くに腕組みをして微笑むシェフのおっさんの看板のあるパン屋があり、いつ通ってもめちゃくちゃ混んでいる。看板には「なんとか賞グランプリ!」みたいな文言と金色のメダルのようなトロフィーのようなマークも描かれてるし。そもそもイタリアのパンの味はフランスのものに遠く及ばないけれど、最近は結構頑張っていると思うの。これは絶対美味しいヤツよね !!!

ガラスケース内に並んでいるのはいろいろな種類のパン。パニーノはないみたい……と思ったら、いわゆる「包みピッツァ」のカルツォーネみたいなのが3種類ほどある。Pidone al Forno とあるけれど、シチリアではそう呼ぶのかな? ハムとモッツァレラときのこのピドーネ、1個€2なり。温めてもらってから冷めちゃうとかえって不味くなりそうな気がするので、そのまま包んでもらった。

ホテルで荷物を返してもらってトイレを借り、ついでに汗だくになった服も着替えちゃおう。大急ぎで荷造りし直し、さあ出発! 遅れちゃいけないと気持ち早足になったせいもあって、30分以上も早く12時5分にはバス会社のオフィスに到着。人気観光地のタオルミーナ行きだから行列でも出来てるかと思ったら、全然そんなことはなかった。今日の窓口担当は昨日のおばちゃんではなく、別のお姉さん。待合室のベンチのおばあちゃんとお喋りしていた。おばあちゃんはどう考えても中距離バスの乗客じゃないよなーという雰囲気。脇に置かれたカートから野菜が顔をのぞかせているので買い物帰りかな?

メッシーナからタオルミーナまでは€4.50。切符を買っている私におばあちゃんは「タオルミーナは美しいわよ〜とてもとても素晴らしいところ!」と話しかけてきた。断片的に理解できるイタリア語単語から類推すると……たぶん。
おばあちゃんはまくしたてるわけではなく上品で穏やかな口調ではありながら、それでもイタリア語オンリーでいろいろ語ってくる。何やらいろいろ尋ねてもくる。うーーん、シチリア訛りか方言もあるのかな? さらに老人特有の滑舌も加わって聞き取れる単語がほとんどない。全然わかんない。
両手の平を合わせて甲を片頬に当て「ねんね」のポーズをしたので、「タオルミーナで泊まるところはあるのか」と心配してくれてるのだとわかった。「B&Bの予約がある」と片言イタリア語で返してみたけど通じている気配はない。こちらの返答も反応もお構いなしにおばあちゃんはさらにいろいろ話してくる。窓口の女性に通訳を求める目を向けてみても彼女はニコニコと微笑んでいるだけ。あー、そうか。世間話していたようだけど、実は会話のキャッチボールにはなってなかったってことか。買い物帰りに立ち寄って一方的にお喋りして暇つぶししていくおばあちゃんなのね。
私が宿泊施設をちゃんと予約してあることが伝わったとは思えないけれど、おばあちゃん的には納得したらしく「じゃ、帰ろうかしらね、よっこいしょ」みたいなことを言って立ち上がり「Ciao Ciao」と手をひらひらさせて去っていった。

イオニア海沿いをタオルミーナへひた走り

待合室にバールはなかったけれど自動販売機があったので、試しにエスプレッソを買って飲んでみた。うむ、お値段も€0.80だし、味もまあまあだわ。よくホテルの朝食会場にあるコーヒーマシンよりだいぶマシ。
しばらくして窓口のお姉さんに促され、12時30分に車内に乗り込んだ。有名リゾートのタオルミーナ行きなんだからそれなりに乗客がいるかと思いきや、ほんの数人。バスは定刻の12:40に発車し、途中の停留所でちょこちょこ乗っては来たものの、合計10人程度。ま、これなら車内で食事してても迷惑にならないわね。いただきまーす(^^)

シチリアのピドーネは三日月形ではなく10日目の月くらいの形をしているけれど、まんまカルツォーネ。同じものが大判焼だったり今川焼だったりするようなものかしら

温めてもらわずそのままだけど美味しい。パン生地がとにかく美味しい! さすが人気店なことはある。あー……これ、熱々のチーズとろとろで食べたかったなあ……

2日目の朝パレルモ空港に降り立ってから、パレルモ、チェファルー、サント・ステファノ・ディ・カマストラ、メッシーナとずっと北側の海岸線に沿って列車で移動してきた。逆三角形したシチリア島の上辺部分ね。東端の角近くのメッシーナから先は東の海岸線を南下していく。これまで見えていたのはティレニア海だけど、ここからはイオニア海になるわけ。タオルミーナは、メッシーナとシチリア第二の都市カターニアとのちょうど真ん中あたりに位置していて、メッシーナからは列車でもバスでも行け、ルートもトータルの所要時間もほとんど変わらない。バスを選んだのは、タオルミーナの町は崖上にあるので乗換えなしに近くまで行けるから。列車のガラス窓は埃まみれだけど、バスの窓は綺麗なので、車窓風景もバスに軍配があがるね。

列車の窓は汚なかったけど、バスは丸ごと車体を洗うのでピカピカに綺麗。車窓は明媚だけど進行方向に嫌な色の雲があるのが気になるなあ

メッシーナ市内からバスに乗ったのは10人くらいの乗客は、途中で三々五々に降りていき、ここで私ひとりになってしまった。
この道路端のモニュメントは何かしら? 周りには何もないのだけど……

道路も線路も海辺をずっと寄り添って走り、たまに内側に入りそしてまた寄って……という感じでルートはほぼ一緒

干潮時には歩いて渡れるという島イソラ・ベッラ Isola Bella が見えてきた。ここから一気に崖を登ってタオルミーナはもうすぐ

途中で乗客は私ひとりになってしまったけれど、タオルミーナの手前でアジア系の女性が一人だけ乗ってきた。大きな荷物などもないので旅行者ではないみたい。そのまま私と彼女の二人だけのまま、14時半にタオルミーナのバスターミナルに到着した。メッシーナからは2時間弱。
シーズンオフの11月ともあって、バスターミナルのしょぼくれ具合は名だたる高級リゾート地の玄関口とはとても思えない。でも、一応「バスターミナル」の体裁は整っているみたいだけど。トイレは閉鎖されていたけれど、「チェックインをすませてからでもいいや」と思えたのは、いつの間にか便秘問題はほぼ解消してたってこと。大量ヨーグルト作戦の成果!

坂道と階段を登って眺望抜群かるリーズナブルなB&Bに

夕方からの降水確率は50%とのことだけど、だいぶ増えてきた雲のところどころから青空がのぞいていて、まだ天気はもっている。でもなあ、明日の降水確率は100%なんだよなぁ……。とりあえず予約したB&Bに電話をかけ、今バスターミナルに着いたのでこれから歩いて向かうことを伝えた。

バスターミナルはタオルミーナ旧市街を囲む道の北東に隣接している。タオルミーナの町じたいが東に向いた斜面にあり、これから2泊予定の B&B Tauromenion は旧市街から少し上の高台に位置している。眺望は抜群だし、シチリア一の高級リゾート地であるにもかかわらず今回の旅で一番安価な一泊€38の宿泊料。そのかわり坂道と階段をいっぱい登らないとならないわけで。まずはバスターミナルから坂道を約700m登る。そのあとは階段、階段、建物内でも階段。とはいえ空身で普通に歩けば10分、道を探しながら荷物つきでゆっくり歩いても15〜20分もあれば到着できる程度に近い。

旧市街内には入らずにメッシーナ門を通り越して少し上まで行くと、建物4階分くらいの階段が崖にジグザクと架かっている。階段だけど Via Giuseppe Verdi という通り名がちゃんとある

崖のジグザグ階段を登りきり、さらにその先の階段の上から3段目くらいにB&Bの建物入口がある。さらに館内を3階まで階段。陶器なんて買ってたら泣きをみるところだった……

ターミナルからかけた電話に出たのは男性だったけれど、迎えてくれたのは女性だった。B&Bの入った建物の入口は急な階段の途中にあるので、注意して開けないと荷物ごと下に転落しそう。

爽やかミントグリーンの壁紙、ベッドは天蓋つき、テラスからの眺めは良し。こじんまりとして可愛いインテリアの部屋

部屋からの眺望が楽しめるのはたぶん今日だけ。明日と明後日の朝は雨なんだろうなあ……。バルコニーのテーブルでビール飲みたかったんだけどなあ……。くぅーーー(TT)

屋上には朝食室があり、ここからの眺めも抜群。360度ぐるりと見渡せる。バリアフリーではないとはいえ、手頃な値段でこの眺望の宿に泊まれるのは嬉しいな

別方向の山頂には中世の城塞であるカステッロ Castello が見えている

ひととおり館内と設備を案内してもらったところで、明後日のバスのストライキについて確認した。そうなのだ、タオルミーナにも乗り入れているバスのETNA社が24時間ストライキなのだ! 実はそのせいで旅の行程の修正を強いられちゃったのよね。いずれかの方法でタオルミーナを出ないとならないので、ETNA社はストライキだけど、鉄道は大丈夫なのか、ローカルバスはどうなのか、確認が必要なわけ。迎えてくれた女性は英語が出来なかったけれど、「ショーペロ」とか「ドマーニ」とか断片的な単語で知りたい情報は確認できた。

時間の押してくる中、誘惑に負けて食べたカンノーロは絶品だった

すぐに雨が降ってきそうな気配はないので、今のうちにタオルミーナ旧市街をぐるっと巡っておこう。荷物解きもそこそこに外に出た。

タオルミーナの代名詞となるものはたくさんあるけれど、そのうちのひとつギリシャ劇場 Teatro Greco も今日のうちに行ってしまうことにした。海やエトナ山の眺めがいいのは午前中とのことなので、本来なら明日の予定だったけど、どのみち眺望が望めないなら足元が乾いているうちの方がいい。11月は16時でクローズなのでもう30分くらいしかない。だから急がなくてはならないのだけど……。

タオルミーナで一番だという《Pasticceria Gelateria D'Amore》。旧市街からちょっと外れているけれど、私のB&Bからは通り道にある。私はどうしてもカンノーロの誘惑に勝てなかった。後でもいいのに、どうしても "今" 食べたかった。
お菓子は持ち帰りのみで飲食スペースはない。店内は狭く、ディスプレイは赤が基調でゴテゴテし、さらにたくさんの豆電球がチカチカしていて、あまり品のいい内装とはいえない。昔ながらの地元民御用達のお菓子屋さんそのものの雰囲気で、ケース内にびっしり並んでいるお菓子もビジュアルは素朴、でも たぶん美味しいんだろうなー。カンノーロは€2で、当然注文を受けてからクリームを詰めてくれる。厨房に通じる小窓からシェフが直接差し出してくれた。

そのへんに適当に腰掛けていただくカンノーロ。リコッタクリームはちょっと冷やっとして滑らかで爽やかで、皮はサクサクかつカリカリ。トッピングは片側がピスタチオ、もう片側はオレンジピールとチョコチップ。クリームの中にもチョコチップ少々。あーーーー、美味しい、すっごく美味しい。今のところこの店の味が一番好みだぁぁ !!!

わずか3分で慌ただしくカンノーロを食べ、でもしっかり味わって満足満足、誘惑に負けてよかったわぁ(^^) さ、急がなくては。
先ほどは通り越してしまったメッシーナ門 Porta Messina から旧市街に入る。さすがシチリアで一番のリゾート地のタオルミーナ、シーズンオフとはいえチェファルーよりはずっと観光客が多く華やいだ空気を感じるわ。ほんの50mほどでギリシャ劇場通り Via Teatro Greco へと折れる。案内表示がなければちょっと間違えてしまいそうな脇道。

メッシーナ門前の緩やかに下っていく道路の先には聖パンクラツィオ教会 Chiesa di San Pancrazio の塔、さらにその先に広がる海と空は……青くない。確実に天気は下り坂に向かっている。それも急激に(TT)

ギリシャ劇場へと向かう通りの両側には土産物店がびっしり並ぶ。ここはシーズンオフも昼休みもあまり関係ないみたい

タオルミーナはリゾート地としてのイメージが強いけれど、町の歴史的背景を忘れちゃいけない。実は紀元前4世紀半ばからの歴史がある町なのだそうな。これから向かうギリシャ劇場は当時の繁栄ぶりを表すもので、シチリアで2番目に大きいのだとか。一番大きいシラクーサのギリシャ劇場は2016年に訪れたっけ。

超駆け足観光のギリシャ劇場は不完全燃焼に終わった

ギリシャ劇場の入口周辺はそれなりに混んでいた。観光を終えて出てくる人たちがほとんどだけど、まだこれから入ろうと切符売場にも数人並んでいる。時計を見ると15時40分。げー、20分しかないじゃない! それでもカンノーロを食べるのは譲れなかったわけだけど。切符は€10もした。パンフも何もくれずに地味〜なチケット1枚のみをぴらんと渡される。

パンフはないけれど見学順路というものが一応存在していて、番号をふった案内板がある。でも、無視無視! 20分しかないんだもの、順番通りにのんびり見ているわけにはいかないわ。
劇場を入ってすぐの場所は昔の舞台装置置き場。古代ローマ時代のモザイク床や座席と思われる石などが展示してあり、大型スクリーンに3D動画が流れているけれど、断腸の思いで後回しにする。まずは借景ごと劇場全体を俯瞰したいと、とにかく上へ上へと階段を登った。今にして思えば、順路の流れに逆行してて降りてくる人たちの邪魔になってたかも。狭い階段ですれ違う人ばかりだった……ごめんなさい。

そうして辿り着いた劇場のてっぺん。ミュージアムとブックショップがあるのも無視して建物裏の絶景展望台へ。かのゲーテ先生が『イタリア紀行』の中で「世界中のどんな劇場の観客もこれほどの舞台後部の景色を目にすることが出来ないだろう」と記した世界一の眺めだという絶景 !!! ……えー、絶景どこ! 海とエトナ山の向こうにはメッシーナ海峡とさらにはイタリア本土まで見渡せるとのことだけど、海すら目を凝らさないと判別できない。

直径109m。タオルミーナで一番見晴らしのいい丘をくり貫いて造られたという。さもありなん。だけど、今日は見晴らしは今ひとつどころか今三つ四つ、空も海も山も残念な感じ

湾の向こうに、あの雲の中に、エトナ山があるはずなんだけど……たぶん

グラウンドレベルから観客席を見上げてみる。下部はかなり崩れてしまっているのね

赤煉瓦造りの部分は古代ローマ時代に改装されたものとか。ローマのコロッセオと同じく剣闘士や猛獣の戦いが行われていたらしい

観客席をぐるっと端まで行って側面からも見下ろしてみた。クローズ間近で人もまばらで、改めて大きさを感じる

持ち時間20分では広くて高い劇場内の階段を登ったり降りたりするだけで精一杯。ミュージアムもショップも映像もちらりとも見ることは出来なかった。「息を呑むように美しい眺め」は残念極まりないものだったし。たっぷり時間を費やして展示物をしっかり見学し、さらに天候がよければ€10の入場料だって決して高くないと思う。

>> 入場してすぐの場所でスクリーンに流れていた3Dの動画はYou Tubeに公開されている。帰国後に見つけて観てみたら、当時の劇場の様子をCGで再現したもので、なかなかよい出来だった。確かに、まず映像を見てから実際にその場に立てば、よりロマンチックに在りし日のイメージをかき立てられたんだろうな【動画】

ここでコンサートなどのイベントも行われるせいか、劇場や座席の部分などが整備されていて全体に雑多な印象がある。ギリシャ時代の劇場としてはシラクーサのものの方が大きく、かなり往時の姿をとどめているのにも関わらずタオルミーナの方がいいとみんな言うのは、空と海とエトナ山の借景効果のおかげだと思うわ。その借景が散々だったので、私としては晴天に恵まれたシラクーサの劇場の方に軍配をあげてしまうの。パンフレットもくれたしさ。
まあ、仕方ないよね。天候気候は、かなり印象を左右してしまうものだから。

タオルミーナ旧市街のメインストリートをそぞろ歩き

タオルミーナのメインストリートウンベルト通り Corso Umberto はメッシーナ門からカターニア門まで旧市街を南北に貫く歩行者天国道。ここをとりあえず通り抜けてみよう。どんどん怪しくなる雲模様だけどまだしばらくはもちそう。暗くなるまではあと1時間もないわ、急がなくちゃ!

ギリシャ劇場通りの陶器店や土産物店はすでに閉店準備を始めていた。袋小路なので、ギリシャ劇場が閉まると通行人もいなくなるからね

劇場に向かう分岐点にあるサンタ・カタリーナ教会 Chiesa di Santa Caterina の前には、シチリア名物 たむろす親父たち。とりあえず内部見学は後回し

建物の隙間には人ひとりの幅しかない階段路地。ギャラリーやアートショップらしき看板が見える

とてもお洒落なメインストリート。シーズンオフでも閑散とすることなく適度に賑わっているので、ハイシーズンにはとんでもないことになっちゃうんだろうなぁ


一階の店舗ばかりでなく、2階の窓辺にも花鉢が美しく飾られている

そもそもシーズンオフの11月だから正確に比較はできないけれど、同じシチリアのリゾートといってもチェファルーとタオルミーナは全然雰囲気が違う。カプリ島ほどハイソな感じはしないけど、華やかでお洒落。チェファルーでは店のほとんどが閉まっていたけれど、こちらでは一応開いている。

約800mあるというウンブリア通りのほぼ中間あたり、4月9日広場 Piazza IX Aprile に出た。あー、タオルミーナの写真で必ず出てくるところだ! 広場は白黒格子の敷石が美しい展望台になっていて、海とエトナ山が望め、空気が澄んだ晴天の日には何十キロも先の海岸線まで見える……とのこと。もちろん今日は……うーーーむ、残念だわ。
テラスのような広場の端っこにはゴシック様式のサント・アゴスティーノ教会 Church of Saint Augustine、ウンベルト通りをはさんで広場を見下ろすのはバロック様式のサン・ジュゼッペ教会 Chiesa di San Giuseppe、その横にはもともとアラブ時代に建てられたという時計塔 Torre dell'orologio、背後の山頂の十字架はマドンナ・デッラ・ロッカ教会かな? 広場に面してお洒落なカフェもいくつかある。

さほど幅のないメインストリートの途中、4月9日広場でいきなりぽかっと空間が開けてた。暮れる前、降る前に辿り着けてよかったぁ!

超A級観光地である広場だけど、地元のママ友と子供たちが集まる公園でもある。彼らはキックボードレースの真っ最中。観光客だらけの夏にはこんなことできないのかもね

華やかな雰囲気の広場に面してサン・ジュセッペ教会と時計塔、高級そうなホテル、立ち並ぶお洒落なカフェ……華やかな空間だこと

実をつけたサボテン越しに見下ろすタオルミーナの崖と海と残念な夕暮れ。海岸線に沿って線路が走っているのが見える

ハイシーズンならは観光客がいっぱいで似顔絵描きや大道芸人も出てとても賑やからしいけど、今は「地元の住人たちの憩いの場」の色が強いみたい。もちろん観光客の姿もそこそこあるけれど、子供連れのお母さんたちや犬を散歩させる人、行き会って立ち話に花を咲かせる人たちなんかが目立つ。

だから、まったく、イタリア男ときたら……!!!

広場のベンチでぼーっとしていると、ひとりのおじさまが声をかけてきた。すらりと背が高くて豊かな銀髪でワインレッドのマウンテンパーカーがほどよくカジュアルで似合ってて、一見ダンディな風貌。観光客とコミュニケーション出来る程度には英語を話し、その物腰も柔和で紳士的な雰囲気。でも残念なことに彼は前歯が3本ほどなかった……(><) この瞬間、私の脳内ではおじさま≠ゥらおっさん≠ヨグレードダウン。

最初は道でも尋ねられているのかと思い、次にセールスか勧誘かなと軽く警戒したけれど、彼はイタリアにはよくいる地元愛全開のおっさんだった。
「日本人? どこから来たの? いつ来たの? いつまでいるの?」という当たり障りのない会話から始まり、東京だと答えると「東京はTVで観たことがある。超大都会だよね」と言う。
私の返答を待つまでもなく彼の地元愛トークが炸裂し始め、タオルミーナで生まれてタオルミーナで育ってという自分語り、さらにタオルミーナの美しさと素晴らしさを延々と語る。
「イソラ・ベッラも、マドンナ・デッラ・ロッカも、カステルモーラも、楽しみにしてきたんだけど。でも明日は雨だよね」と言うと、おっさんはギリシャ悲劇の俳優のような大仰なポーズで「そうなんだ、残念だ、雨なんだ! タオルミーナの美しさが見られない」と天を仰ぐ。うーん、タッパもあって押し出しもよくて、ダンディなんだけどなあ、この人……。口を開くと残念だよなあ……。頭の隅っこでそんなふうに思いながら彼の演技≠見ていると、唐突に「今晩、夕食を一緒にどう?」などと言う。はあっ??? なんだよ〜、ナンパかよ!!

おっさん、どう見ても60歳を超えていると思うけど、まあ私の方だってずいぶんなオバちゃんなわけで。たぶん、おっさんの思っているほど私は若くはない。そもそも前歯は直した方がいいと思うけど。でも歯があっても若くてもお誘いを受ける気はさらさらないので、丁重にお断りした。お腹が空いていないのよ、と。嘘だけど。おっさんは引き下がらない。
「じゃあ、あそこのバールでワインを飲もう」
「私、アルコールは飲めないの(大嘘)」
「じゃあ、カフェでも」
しつこーい! だけど、一応しつこくするのはイタリアメンズの流儀っていうか、お約束なんだろうな。3回か4回は必ず押してくるもんな。オバちゃん一人旅は基本的にナンパや下心の探り合いの心配は少ないんだけどねー……、時たまこういうおっさんに出くわすから完全に気は抜けないわぁ。ただ、脈がないとなると引き際はあっさりで「何だよ、このブス!」みたいな捨て台詞は吐いたりしない。
あー、思い出した。3年前にも列車の中で定年間近っぽいおっさん車掌に業務の合間に夕食に誘われたんだった。そうそう、あっさりの引き際も共通だったわ。

さらに夕暮れまで旧市街をそぞろ歩き

本当は広場に面したカフェでワインの一杯でも飲みたいと思っていたところだったのよね……。でも、「お酒飲めないの、今日は疲れていてお腹も空いてないから食事しないで早寝するの」という大嘘でおっさんを断った手前、そうもいかない。ベンチにいつまでも座っているわけにもいかない。仕方ない、もう少し歩こう。せめてウンベルト通りの終点まで。

広場に跨がるように建っている時計塔の下はトンネルになってウンベルト通りが貫いていて、ここが中間門 Porta di mezzo らしい。中間門を抜けた先がドゥオモ広場 Piazza Duomo で、ドゥオモ Duomo di Taormina がある。もうだいぶ薄暗くなってしまったので、さらっとシャッターを切るにとどめてさらに進むと、すぐ先がカターニア門 Porta Catania だった。門の外側にもレストランなどが数軒並んでいたけれど、ほぼこのあたりで繁華エリアは終わりっぽい感じね。じゃ、Uターン。

4月9日広場に比べてずっと地味でささやかなドゥオモ広場には、映画『グランブルー』に登場した噴水がある

イルミネーション装飾が町のところどころで始まっていた。クリスマスの飾付けにはやや気が早いけれどね

もしかしたら少しは夕暮れらしきものが、エトナ山のシルエットらしきものが見えるかもと期待したけれど、とても残念な状態でいつの間にか日は没して暗くなってしまった。ああ、エトナ山はあの雲の中に……

4月9日広場まで戻ってきたけれど、さっきのおっさんはもういなかった。よかったぁ……。食事かアペリティーボにつき合ってくれる相手が見つかったか諦めたか、さてどっちでしょ。わざわざ戻ってきたのは、広場のテラスから夕暮れの海やエトナ山が望めるのではないかと、一抹ながらも期待したわけだけど、それはこれっぽちも叶えられなかった。まだ雨が降り出してないだけマシって考えるしかないなあ……

秋の日はつるべ落としというけれど、ここシチリアでもやっぱり同じ感覚がある。一気に空の色は夜になってしまった。おっさんには食事しないで早寝すると断ったけれど、本音はさっさと食事すませて早寝したい。とはいえ、まだ17時半にもなっていない。ディナーはいったん部屋に戻って出直さなくちゃならないなあ、でも店を見繕いがてらもうちょっと散策してみるか……。メインストリート沿いの店は観光客仕様な気がするので、ちょっと横道に入ってみた。タオルミーナ旧市街は斜面にあるので、横道は高低差が激しく意外に込み入っていて、地図上では隣の道に出るのにぐるっと大回りを強いられたりもする。

さくっと歩き回ってみた感じだと、メインストリート沿い周辺の店は9割がた開いているようだけど、ごちゃごちゃ込み入った旧市街横道に軒を連ねている店の半分以上は閉まっている感じ。休業なのか、夜から開けるのかはわからないけれど。もともと行きたいと目をつけていたのは《Bottega del Formaggio》という店名がチーズ屋さん≠サのままのところ。チーズだけじゃなくてワインやハムサラミ類や簡単なお惣菜類もある食料品店で、併設したテーブルでおつまみ盛り合わせとワインがいただけるところ。オバちゃん一人旅の夕食にはこういうところがうってつけなのよね。店の雰囲気を窺ってみたかったのと、場所がわかりにくそうなので道筋を把握しておきたかったのだ。飲食店が集まっている路地を抜けてちょっと閑散としたあたり、3軒隣はミニスーパーという地元民のためのエリアにあった。うん、よさそうな感じ。

チーズショップでのディナーは叶わず。徘徊の末、イワシを食べる

いったん部屋まで戻って小一時間ほど休憩し、20時頃に到着するよう出直した。店の灯りはついていたけれどさっきは開いていた窓の鎧戸が閉まっていて、大きなゴミ袋を2つも抱えたスタッフらしき女性が出てきた。何ともう閉店なんだって! ウェブでは23時までってあったけどオフシーズンは早じまいなんだって! で、明日は日曜だから定休日なんだって! うわーん、残念。さっき覗きにきた時に入ってしまえばよかった……

仕方ないので路地を徘徊して、感じがよさそうでいてバカ高そうではない店を見繕う。やっぱり半分以上が休業中のようで、夕方通った時に暗かった店は今も暗かった。開いている店も客はポツリポツリで賑わっている様子はない。店頭のメニューに見入っていると暇そうなカメリエーレが近寄ってくる、店内を覗くとやっぱり近寄ってくる。かわしつつ適当なトラットリアで手を打った。もちろん「メイン料理一皿でもいい?」と念を押すのも忘れない。

店内は意外に広く、でも客は5人くらいのグループが一組と、中年夫婦一組しかいなかった。どちらももう食後の談笑モード≠ノ入っている。

本日のディナーはイワシのロール焼き。リコッタチーズとパン粉、松の実やレーズンなどを練ったものを開いたイワシでくるくる巻いて焼いたもの。付け合せにはルッコラのサラダを選んだ

イワシのロール巻きの中身は昨日のイカの詰め物と同じものだった。シチリアではポピュラーなフィリングなのね。イワシの脂と香りがしみ込んで美味しいけれど、小骨がちょっと残ってて、それが気になるな。ルッコラのサラダはというと、添えられたバルサミコ酢がめちゃくちゃ酸っぱい。ハウスワインも赤なのに酸っぱめで、全体的に酸味好みの店のようだった。まあ、すっごく美味しいというわけでもないけれど、不味いわけではなかったからそれでいいや。
料理そのものの値段はさほどでもないけれど、コペルトや水の値段が高め設定されていて、これだけの量での支払い総額が€32だった。リゾート地仕様なんだな、やっぱり。

カメリエーレや厨房スタッフは男性だったけれど、レジで会計してくれたのは優しそうな老婦人。そうだ、ここの店名は《Trattoria Mamma Rosa》だった。もしかして彼女がマンマ・ローザ? カメリエーレは息子か孫かしら? そういえば顔立ちが似ているような気もするし、何よりふたりの間の空気感が家族っぽい。私が最後の客だったので、彼らは外まで出てきて寄り添ったまま手を振って見送ってくれた。

もう21時半を回ったけれど、まだ雨は降ってこない。サンタ・カタリーナ教会 Chiesa di Santa Caterina がまだ開いていたので入ってみた。小さくて質素だけど、この教会はなかなか興味深いなりたちをしている(後で調べたことだけど)。紀元前4世紀のギリシャ神殿の基壇の上に、1世紀に古代ローマの小劇場が建ち、さらに覆い被さる形で17世紀にこの教会がアレクサンドリアのサンタ・カテリーナに捧げられて建てられた。ほぼ2000年にまたがる3つの時代の建物が重なり合っているということ。

サンタ・カタリーナ・アレクサンドリア教会は背後の劇場の一部を覆う形で建てられていて、教会内部からも遺跡の一部を見ることができる

だから教会の裏手にはオデオン劇場 Teatro Odeon がある。柵に囲われていてライトアップされているわけでもなく、よく見ないと遺跡だとはわからない。案内プレートも小さいし、学校の運動場と言われても納得してしまうくらいささやかな劇場。

>> シチリアにおいてはギリシャ時代の遺跡に価値がありすぎて、古代ローマの遺跡は扱いがぞんざいだ。現代の東洋の地に住まう者の感覚としては、どちらも「うーーんと昔のヨーロッパ」でしかないけれど、実はその時代には何百年もの開きがあるので。ギリシャ劇場が有名すぎるためにあまり知られていないけど、実はタオルミーナはシチリアの町の中で、古代ローマ時代の遺跡が2〜3番めくらいに多い町なんだそう

午後から降る予定だった雨はまだ降ってこない。雨粒がポツリとも当たらないし、雲の間から星空まで見えている。いっそ予報が外れてくれちゃったらいいんだけどなあ……。

宿に戻ってきたのは22時近かった。本日の歩数はやっぱり微妙に2万歩に届かずの19025歩。大部分はメッシーナでの早朝散歩とクリスト・レの丘の上り下りで稼いだ歩数だと思う。
2日続けての町の移動はやっぱりじんわりと疲れる。さらにイタリア到着からずっと細切れ睡眠だった寝不足も蓄積している。ああ〜〜シャワー浴びなきゃなあ……と思いながらも瞼が重くなってきて、いつのまにか寝落ちしていた。




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