Le moineau 番外編 シチリア巡遊 - 海と岩とミクスチュア文明の島を歩く -

想定外にバタバタしてしまった帰国の朝

帰国の日の朝は5時起き。せっかくバスタブ付きの部屋なので、ゆっくりと朝風呂に浸かってシャンプーも入念にすませた。空港バスの乗場と時刻は確認ずみ。ホテルから徒歩20秒のバス停から9:10発。しっかりたっぷり朝食も摂れるのがありがたいわ。

お風呂と身支度をすませて、9割がたすませた梱包の仕上げをしようとしたら、うまく入らない! そもそもスーツケースのサイズが2週間分としては小さいのよね。でも自分ひとりで階段やら石畳やらを取り回さなくちゃいけないんだから仕方ない。荷物は厳選してゆるめに詰めてきたけど、そのスペース以上にお土産を買い込みすぎてしまったかも。ふーむ……。いったん取り出して考える。
物理的に入らないなら、物理的に減らすしかない。私は基本的に要らないものを旅先で処分していくことはしない。ボロ下着などを身につけていってどんどん捨てていくのが賢い旅の極意みたいに言う人がいるけど、そういうのすごく嫌なのだ。旅する上で自然に出るゴミならともかく、わざわざ要らないもの持ってって押しつけるってどうなの?って思う。「旅の恥はかき捨て」みたいなこと大嫌い。国によってどうかは知らないけど、ゴミを処分するのにもお金かかるでしょ。だけど、申し訳ないけど、初日の夜に壊れてしまった簡易湯沸かし器はここで捨てさせてもらおう。テーブルに置いて、忘れものと勘違いされないように「Please dispose」とメモを添えた。
湯沸かし器一個出したくらいでスペースはどうにもならない。こうなったら衣類は身につけてしまうしかない。そう思ってかさばる厚手のセーター着てるんだけど、下に一枚薄手のセーターも着込んだ。さらにストールも羽織っていくしかないな。エンナで買った帽子もかぶって帰るか……。これでどうにか無事収まった。うわ、8時過ぎちゃった。

帰国の日の朝ごはん。毎日違う組み合わせの朝食が選べるほどに種類豊富で嬉しい。スイーツもよりどりみどりで、自分でクリームを詰めるカンノーロがあったので嬉しくなって取ってきた。初日は真っ白だったカプチーノには、昨日はハート、今朝はチューリップを描いてくれた

昨日は朝一番でガランとしてた朝食室は、今朝はかなり混んでいる。そんな状態であっても朝食の給仕の女性は、私の顔を見るなり「おはよう。カプチーノだったわよね?」と微笑んでくれる。アジア人オバちゃんひとりが珍しいせいもあるだろうけど、これだけ客数の多いホテルでこういうの、とっても嬉しいな。最後の朝食がとても幸せなものでよかったわ。

十二分な時間の余裕があったはずなのに、お風呂も梱包も朝食もゆっくりしすぎてしまった。チェックアウトからバス乗場まではバタバタになってしまった。

>> このバタバタで、テーブルの上に帽子とお気に入りのプーさんのタオルハンカチを置きっぱなしにしてしまった。そう、帽子とハンカチの横には壊れた簡易湯沸かし器がある。そう、「処分してくださいな」のメモが添えられて。このことに気づいたのは、帰国の翌朝にスーツケースの荷物をバラしている時だった。時すでに遅し……!

シチリアよ、イタリアよ、しばしさようなら

チェックアウトは数人待ちしていてちょっと慌てたけれど、先払いして追加もないのでキーを渡すだけですぐ完了した。ホテル出口からわずか10数歩で空港バス乗場だ。空港バスの標識よりもその上のPRADAの看板がとてもよく目立つ。パレルモ空港までは€6。乗場の係員から買えた。予定どおりに9:10発のバスに乗り込めた。ふうぅ……とりあえず帰国への第一関門は突破したわ。

空港までは40分ほど。パレルモ市街地を抜けると鉄道を並行した高速道路をひた走る。ぼーっと車窓から遠くの風景を見て、ふっと視線を下に下ろしたら数台の古いフィアット・チンクエチェントが併走している。そう、小さくて丸まっこくて可愛らしいルパン三世の愛車。大きな象さんの横を野うさぎが跳ねているような感じで、蹴り飛ばされてしまいそう。奴らは意外に速く、ヴィイイイイイイーンと甲高いうなり声をあげながら弾むようにバスを追い抜いていく。追い抜いていく、追い抜いていく、追い抜いて……ええっ、いったい何台くるの??? 数え切れなかったけれど、たぶん20台近くはいた。きっと愛好家たちのミーティングがあるんだろうなあ。チンクエチェントの群れは途中の分岐点で連なりながら分かれていく。しばらくすると海沿いの道の向こうに壁のような大岩が見えてきた。

空港はそこそこ混んでいる。ウェブチェックイン済みではあるけれど、やっぱりセルフチェックインのマシンはないのでカウンターに並ばなくてはならない。カウンターには行列が出来ているのに、窓口が1つしか開いていない。さらに係員が途中で席を立ってしまい、乗客たちはまるっと15分近く放置されていた。まだ時間あるけどさあ、地味に苛つくよね、こういうの。ようやく私の番が来て受け付けてもらえたものの、やっぱりスマホ画面の搭乗券は一瞥すらせずに紙の搭乗券を渡される。ウェブチェックインしておく意味ないってことかしらね?

「次はいつになるかな?」と思いつつ見おろすシチリアの青い海。この数ヶ月後に世界中が未曾有のパンデミックに襲われ、なかなか収束しないなどということはみじんも考えもしなかった。
次がいつになるのか……本当にわからない

ローマ・フィウミチーノ空港にはほぼ定刻どおり到着した。成田行きAZ784便の出発までは2時間半ある。搭乗ゲートはまだ未定のようだった。ターミナル1から日本便の出るターミナル3までは延々と歩いていかないとならないけれど、以前の空港内のバス移動よりずっと精神衛生にいい。出国審査もそこそこスムーズにすんだ。うん、まだ十分に余裕あるね。

ところが、いつも軽食をとるカフェに行ったら店舗が入れ替わっている。ナポリに本店のある店で、ここで最後にパニーニとスフォリアテッラ食べるって決めてたのに! 半年前に来た時はまだあったのに! このカフェでって決めてたのは、ベンチ型のカウンターテーブルにコンセントがあって、スマホやPCの充電が出来たからでもある。入れ替わった店ではテーブルレイアウトは同じままなのにコンセントが撤去されていた。なんと! 他の店にも探りを入れてみたけれど、コンセントがある様子はない。さらに、さらに、さらに驚いたことに、ロビーのあちこちにあったコンセントつきのベンチもすべて撤去されている。なんで? なんで?? 充電できないの? なんか、圧倒的に使いにくくなってないですか? アリタリアも、空港も!

時々モニターをチェックするけれど、成田便だけがいつまでもゲートが未定のままで、ちょっと嫌な感じ。もう充電は諦めて適当にパニーニでも食べちゃうか、いや機内でPC使いたいしやっぱり……と、うろうろしているうちに、ようやくゲート表示が出た。ほぼ同時に最終の搭乗案内のアナウンスが流れてくる。はあ?? まだ55分も前だというのに。結局、軽食も充電もできないまま、でも最後にイタリアの味を口内に残したくて、カフェ・マッキャートをぐいっと立ち飲みした。そういえば、到着して最初に空港でカフェ・マッキャート飲んだんだった。最後もカフェ・マッキャート飲んで〆ね。

ゲートに向かうとちゃんと搭乗が始まっていて、まだ給油をしている機体に早々と乗り込まされる。そしてそのまま延々待たされた。隣には滝藤賢一をイタリア人にして太めにしたような男性。気さくそうな人だけど、ずーっと貧乏揺すりしているのが地味にうざい。さらに隣の通路側席の男性はスリムだけど身長195cmはありそうで、長い足が狭いすき間にぴっちり格納されている。うわー、すごい窮屈かつ圧迫感。隣席ガチャはハズレだったかぁ。
そんなこんなで、できるだけ貧乏揺すり男から離れるよう窓側に身体を寄せて、ひたすら眠ってフライトの時間を過ごした。

ちなみに長身男性は足だけでなく手も長かった。目の前をにゅうーっと腕が通り過ぎて窓のシェードが下ろされたのにはびっくりした。え? 届くんだ、そこから……通路側C席からだよ?

座席は窮屈だったけれど、フライトは順調で、ほぼ定刻に成田に到着した。これにて12泊14日のシチリア旅は無事終了。

- the End -




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