Le moineau 番外編

台湾で初詣?

昨晩、ほぼ深夜といえる時間に大量に食べたにかかわらず、早朝から胃袋はやる気満々の様子。7:00過ぎには準備万端ホテルを出る。あいにくのしとしと雨。予報ではここ1週間ずっと降ったりやんだりのパッとしない天気のよう。
実はまだ初詣をすませていないので、すぐ近くの寺廟にお参りしていくことにする。1〜2分の距離の台北天后宮へ。ここは日本統治時代に近くにあった寺の弘法大師も祀られているそうで…まあ、近かったから立ち寄ったようなものなのだが。

廟の入口は賑やかな商店街の中にある。というよりは、廟の回りに商店が立ち並んでしまった、という方が正しいかも。極彩色に彩られた建物や像はなんともパワフルな魅力があるが、ちまちま描き込む技法の私の絵ではこれを表現するのはかなり大変かも…

天后宮入口はビルに囲まれている。見落としそう。一歩くぐると中国的世界が広がっておりました

うーん、日本人では寺の池はこうは作らないだろう…

早朝なのだが何人かの参拝客もいる。他宗教の物見遊山の私たちが邪魔をしてはいけない。遠慮がちに一巡した後、すぐ近くの台北牛乳大王へ。
いわゆるチェーンの街角ドリンクスタンドなのだが、ファストフードのような明るい内装で、サンドイッチなどの軽食も取れるようだ。トーストとのモーニングセットみたいなものもあった。
木瓜牛乳(パパイヤミルク)をオーダー。目の前で大量のパパイヤと牛乳をミキサーにかけてくれる。500cc以上はあるわね。ホントーはパパイヤはあまり好きな果物ではなかったのだが…このミルクとのシェイクは美味しい。他にもいろんなフルーツとのミックス牛乳のメニューがあった。日本にも出来ないかな? こういう店。
フルーツの高い日本では無理か…

ねっとりまったり濃厚、かつ意外と後口さっぱり。ただし吸引力を必要とするドリンクではある。¥180くらい

台北牛乳大王 成都店 DATA 台北市成都路70號 MRT西門駅から徒歩約3分

ボリュームたっぷり朝ご飯

甘いパパイヤミルクでまったりした後、今度は西門駅を反対側の方向へ向かう。目当てのワンタンの店があるのだ♪ 雨足が結構強くなってきて、路地の一画の小さな店は見つけるのに少しだけ迷った。趙記菜肉●飩大王(●は食へんに昆)。メニューはワンタンと小皿のおかずのみ。大中小があるので、小腕をもらう。

小腕なのだがレンゲいっぱいを占める巨大なワンタンが6個も入っている。皮の中の具は野菜もたっぷりの餃子風。ものすごいボリュームなのだが、刻んだセロリのたっぷり入ったアッサリ味のスープが何とも美味しく、こんな朝っぱらからすいすいイケる。
テーブル10席程度の小さな店だが、雨降りの朝でもかなり客がいる。店頭でも持ち帰りのワンタンのパックがどんどん売れている。

小振りの丼くらいの大きさ。卵と海苔が乗っている。これで一杯が¥200しない

半分にかじってもまだこんなにデカイ。熱々をハフハフ…これぞ庶民の味ってかんじ

趙記菜肉●飩大王 DATA 台北市桃源街5號 MRT西門駅から徒歩約5分

結構満腹してしまった。だってまだ8:30なのである。普段ねぼすけの私は、こんな時間はまだまだ夢の中なんだから…。おまけに昨晩は23:00頃の晩ご飯(それもいっぱい)だったんだし。
腹ごなしに、すぐ近くの中国食材店で買物をする。私は中華料理とパスタ料理は割と得意分野なのである。中華調味料もいろいろ組み合わせて結構なんでも作っちゃえるヒトなのだ。調味料類は重いから買わないけど、干し海老や干し貝柱は日本で買う3分の1以下の値段。これは買わずにはいられない。もちろんカラスミも。蓮の実のお菓子も買った。甘納豆みたいで美味しいのよね…

購入したものの一部。同じくらいの大きさのカラスミが台北の空港や免税店では1.5倍くらいの値段がついてた。やっぱり市内で買うに限る。干し海老も干し貝柱も身がデカイ。貝柱なんて500円玉くらいの直径はあるかも…。乾かす前はどれほどデカかったのだ!?

予想外にあれこれ買い込んでしまい、重い。腹ごなしに、一旦ホテルに置きに戻る。帰国ギリギリまで冷蔵庫に入れておいた方がいいものもあるし。何故「腹ごなしに」を繰り返すかというと、このあと麺を食べることを目論んでいるからなのだ(笑)

ホントーは、特大スペアリブの乗った排骨麺が食べたかったのだが、さすがにあの巨大ワンタン6個の後では油で揚げた排骨はキツい。なので、鴨肉扁というガチョウ料理の店の麺にすることに急遽予定変更。どちらの店もホテルからは5〜6分の徒歩圏。
この店も、40年以上続くガチョウ料理専門店といいながら、メニューは3種類しかない。ガチョウの燻製とガチョウスープの麺とガチョウスープのビーフンのみ。店頭にズラリと並ぶ黄金色の燻製も魅力的だけど、さすがにお腹が…ね。
ガチョウのスープは、油は強いが意外とサッパリしている。味が薄いので、テーブルに乗っていた調味料をテキトーに混ぜてみる。甘酸っぱくて激辛トマトケチャップみたいなアレは何だったのかな? 一片だけ乗っていたガチョウ肉は、鶏よりは野性味があり、鴨よりはクセがなく柔らかい。あー、胃袋を一時的に広げられるなら、ぜひ燻製も食べてみたかったよー…。

手前が鵝肉湯麺、奥が鵝肉湯米粉。モヤシがしゃきしゃきで美味しい。ガチョウ肉も一片乗っている。小腕で¥130ほど

鴨肉扁 DATA 台北市中華路一段98-2號 MRT西門駅から徒歩約5分

自然を感じに1DAYトリップ(…のハズ)

雨は降ってるんだか止んでいるんだか、という具合である。空は暗いまま。今日は台湾北部海岸の野柳風景特定區と、最近日本人観光客にも人気の出て来た小さな街、九●(●はにんべんに分。以下便宜上「九分」と標記します)を訪ねる予定。勿論、土地の美味しいモノも食べるつもり。というか、歩いて腹を減らすつもり…の方が正しいか?

とりあえず、基点となる基隆という街に向かうべく列車に乗らなくては。台北駅に向かう。ここからMRTではなく、台湾鐵路(国鉄)に乗る。国鉄台北駅は広くて綺麗だった。ホームは全て地下なので、いくつかの売店と切符売場のみの1階のホールはすっきりと広い。

基隆行きの電車は乗客2割程度でガラガラ。基隆までは40〜50分ほど、切符の値段は¥150くらい。東京の地下鉄最低運賃より安い(笑)

車掌が来たが、案の定、私は地元の人と間違えられた。韓国ではあまりないが、アジアの国々では、そのへんを歩いていると現地語で話しかけられることがあまりにも多いんである。
キョトンとしていると、人の良さそうな車掌さんはしばらく考えて「あぁ〜〜、アナタ、ニホンジンデシタカァ!」と言う。どうやら切符を買い間違えてたらしい。ちょっと高く買っちゃったようで(¥15くらいだけど)わざわざ教えてくれていたのだ。でも別にお金返してくれるわけじゃあ、ないのね(笑)
ひととおり検札をすませた車掌さんは、そのあとはずっと座席に座って乗客とお喋りしていた。

基隆に到着。ガイドブックには「香港と横浜を合わせたようなエキゾチックな港町」とあった。…そうなのか? 駅前の風景だけを見るとそこそこ大きな普通のターミナル駅という感じだが。すぐ近くの港からは那覇や石垣島へのフェリーも出ているらしい。

それにしても、雨がかなり本降りになっている。ここからバスに乗り換えて、10kmほど北西の野柳に向かうつもりだった。岬の海岸一帯に、潮風や波の浸食で出来た奇岩怪石群があるのだ。私は、鍾乳洞などと並び、こういう自然の造った意図しないヘンな造型物にはココロひかれちゃうのだ。

だが、しかし、雨がひどいのである。海岸は全部見てると2〜3時間はザラにかかるくらい広いらしい。こんな海も綺麗に見えやしない悪天の中、すべりやすく休憩する場所もないような岩場を歩く意味はないような気がしてきた。

おまけにバス停が見つからないのである。基隆の駅が思ったより大きかったので、地図で覚えていた距離感がピンとこないせいもあるかも…。行きたい地名を表示したバスは何台もガンガン走っているが…みんな走っているのだ。どこに停まるのだ…?? ウロウロ歩いてイライラしてきたので、そのへんにあった屋台で牛肉餡餅とかいうモノを買ってみた。肉饅頭を焼いたもの。バス停探していたはずだったのに(笑)。だって、食べてくれって言わんばかりに目の前にあるんだもの…

薄い餅皮の中から熱い肉汁がじゅわ〜〜と出てくる。拍手喝采!

やっぱり野柳風景特定區に行くのは止めにした。止めにしようと決めた途端、バス停が見つかった。世の中って結構そういうモンなのである。

詩情あふれる街・九分を歩く

でも、バス停は見つかってよかったのである。九分へ向かうにもバスには乗らなくてはならないのだから。5分ほどで目当てのバスは来た。

九分までは山中のくねくね道を約1時間。基隆から南へ10km、大平洋を見下ろす山の斜面に貼付くようにこの小さな町はある。かつて金鉱として賑わい、今も独特なレトロ感覚の町並を残している。ベネチア映画祭で金獅子賞を受けた映画『悲情城市』の舞台となってからは、観光客も多く来るようになったそう。

町の南北中央に急階段が一直線に走り、ここがメインストリート。そこに土産物屋や食堂、屋台が軒を連ねる2本の通りが交わり、この3本の道を中心に無数の小道が広がっている。町のすぐ外側でバスを降りた。バス料金は¥120ほど。

日本人観光客のみならず、休日には台湾人たちもたくさん繰り出すらしい。狭い階段は通行もままならないらしいが、平日の悪天のせいか、観光客はまばらだった。大学生くらいの若いカップルやグループがちらほらいるだけ。
雨は基隆よりは小降りになってきた。でも、しっとり落ち着いた雰囲気のこの町には小雨の風情がひどく似合う。晴れていれば、眼下に海岸線も広がる眺望もそりゃあ美しいのだろうけれど…。

どこか懐かしいような町並。歩くのは大変だが、坂の町には、高低差が奏でる美しさがある

茶藝館があちこちにある。
昭和レトロのような雰囲気

鮮やかな寺廟の屋根も雨の中では煙って見える

表情に惹かれてしばし購入を考えた貯金箱。でもデカすぎる。500円玉なら何百万か入りそう(笑)

とりあえず名物のお菓子、タロイモを練った団子・芋圓を食べよう。あちこちにある「芋圓」の看板を無視し、行列の出来る元祖の店目指し階段を登る。上りきった先、九分國民小学校のすぐ下にある阿柑姨芋圓。控え目というか、目立たないというか、人が並んでなかったら素通りしそうな地味な店先。
買った芋圓を受け取って奥の通路に向かう。団子を丸めたり芋を剥いたりの仕込みをしている作業場を抜け、材料の積んである倉庫を抜け、電子レンジや鍋釜の置かれた台所を抜け、テレビやテーブルのある食堂らしきところを抜け………どうも自宅部分を通らされているようだ。辿り着いたのは全面ガラス貼りの展望台スペースだった。椅子やテーブルがびっしり並んでいる。ここで景色を眺めながらのんびり食べられるようだ。

芋圓の容器はカップヌードルくらいの大きさで¥120くらい。寒いので温かい方にしたが、夏ならカキ氷にトッピングした冷たいものも良さそう。あんまり甘くない白玉ぜんざいという感じで美味しい。でもなかなかのボリューム。

眼下に広がっている(はずの)海と九分の町

タロイモの団子は白・黄・緑と三色入っていて、しこしこモチモチ歯ごたえがある。小豆のような豆も何種類か入っている

阿柑姨芋圓 DATA 瑞芳鎮福住里豎崎路5號

さて、芋圓で満足した後は、この町一番人気の名茶藝館でお茶である。階段道を戻る。人の出足が悪いせいか、何軒かの茶藝店の店先で店員が人待ち顔で立っている。申し訳ないけど、目当ての店があるのよ…目を合わせないように俯いてしまう私は小心者だ(笑)。階段のほぼ中腹、一番雰囲気のあるあたりにその阿妹茶酒館はある。

大変な人気店らしいが、やはり天気のせいか混んではいない。陶器のような白い肌のお姉さんが席に案内してくれた。切れ長の目許が涼し気な、かなりの美人。
片言の日本語でお茶やお菓子の説明をもらう。お茶はお薦めの中から真ん中の値段のものを選ぶ。お茶受けのお菓子は、お姉さんのお薦めに素直に従った。緑豆の羊羹、里芋のお菓子、ジャスミン茶のパイ。私、美人には従順なの(笑)。

ひときわ目につく「悲情城市」の看板。移転して、スクリーンとは場所が異なる

竹のテーブルや椅子のインテリアはゆったり落ち着ける雰囲気

頼んだ茶葉の名前を失念してしまった…! 多分、凍頂烏龍茶の一種。固く丸まった茶葉はお湯を含むと何倍にも広がる

テーブルの足元に火鉢と大きな鉄瓶が運ばれてきた。ひとつひとつ丁寧に作法を教えてくれる。それにしても、お茶を入れるお姉さんの手は、剥きたて茹で卵のように白くて肌理が細かい。指も細く長く、美人はパーツパーツまで綺麗なのね。うっとり見つめていて、ろくに聞いてなかったかも…
はっと気がつくと、目の前に聞香杯(香りを楽しむためのもの)が置かれた。言われるとおり器の匂いを嗅ぐ。金木犀の花のようなふんわり柔らかな香りが鼻孔を突き抜ける。身体がすぅーっと軽くなるかのような…。思わずツレと二人して「…ぅわぁ〜……」と、間抜けな声で嘆息する。お姉さんはにっこりして飲杯を置き、下がっていった。

お通しで出された梅のお菓子。ちょっと固いがゆっくり噛んでいると、杏のような甘酸っぱさが広がって美味しい。お茶に合うこと! 冷たい緑豆の羊羹は、水羊羹とゼリーの中間という感じ。
里芋のお菓子は、薦められた時「え?」と思ったのだ。どうも里芋って言うと和食の煮物のイメージしかなくて…。ところがこの「芋餅」というシロモノ、めちゃくちゃ美味しかった。この字面からは、この味はまず想像出来ず、薦められなければまずは頼まなかっただろう。里芋をスイートポテトの要領でお菓子にした、という感じである。確かに里芋の香りがする。でも、煮っころがしのイメージからはほど遠く、上品かつ繊細な味わい。

梅も羊羹も芋餅も感動の美味しさだったが、白眉はジャスミン茶のパイであった。
パイを割った途端、ふわ〜っと花の香りが立ちのぼる。ちょっと何コレ!である。予期せずヤラれた!という感じだ。たっぷりの茶葉が、白あんのような練った芋のような薄甘いものと一緒にサクサクのパイ皮に包まれている。

梅のお菓子と緑豆の羊羹

細長いのが芋餅。中央がお薦めのジャスミン茶のパイ。どちらも温かい

茶葉がびっしり入っている。ほのかな苦味が上品

大きなガラス窓からは、町並と海岸線とが雨に煙っている。足元の鉄瓶はしゅんしゅん音を立てている。古色豊かな店内で、お茶の香りに包まれて雨の午後をまったり過ごす。

料金は2人で¥2,500ほど。台湾での他の飲食の値段に比べるとずっと割高ではある。でも、余った茶葉は綺麗な茶筒に入れて持帰れるし、この雰囲気や味を考えれば…。だって銀座でケーキセット頼めば¥1,200くらいは取られるんである。

阿妹茶酒館 DATA 瑞芳鎮崇文里市下巷20號

意外な穴場の金鉱博物館

せっかくだから、かつての金鉱の町であった部分も見てみることにする。親子三代で発掘作業の傍ら集めた石や鉱山の様子を集めた個人博物館のようだった。町の通りを少し外側に出た斜面の中腹あたり。
急な石段を降りる。雨脚が強くなってきて滑りそう。客なんて誰もいない。坑道跡がそのまま入口になっている。1階にはいろいろな鉱石があり、ヒマそうに本を読んでいたお姉さんがつきっきりで色々説明してくれる。訪れたお客さんたちらしいスナップ写真も一緒に展示してあるのが、なんとも微笑ましい。

2階に映写室と道具の展示があるというので行く。階段を登ると、そこでは館長らしきおじさんがカラオケの練習をしているところだった。BGMだと思っていたのはおじさんの歌だったらしい。おじさんは私たちに気がつくと大慌てでカラオケのビデオを止め、ガイド用のビデオをかけてくれた。いれてくれたお茶を飲みながらビデオを見るが、台湾語なのでサッパリわからない。

ビデオが終わると、今度はおじさんによる当時の金の精製の実演である。私たちにもやらせてくれる。いつもこうなのか、ヒマだから大サービスなのかはわからないが、たっぷり1時間はかかったかも。なかなか個性強烈なおじさん。興味を持った方は、どう強烈かぜひ確かめてみるといいかも。

博物館の外観のセンスはちょっとどうかと(笑)。入口は坑道を模している。トロッコに乗って写真を撮ってもいいよ、と言われたが、辞退した。だって恥ずかしいじゃない

大熱演のおじさん

何度も水をかけ、揺らし、砂金をよりわけていく。キラキラと富士山が浮かび上がった時には思わず歓声をあげてしまった

九分金鉱博物館 DATA 瑞芳鎮頌徳里石碑巷66號

さらっと流すつもりで覗いた博物館だったが、結構時間を食ってしまった。時刻は16:00、まだ日暮れには少し早いが、こんな天気なのでそろそろ薄暗くなりかけてきている。メインストリートの豎崎路の赤い提灯が灯り始めた。この風景はどこかで見た気が……
思い出した! 『千と千尋の神隠し』で、千尋の迷い混んだ不思議な町。宮崎駿は、ここをイメージしたのではないのか?? 立ち並ぶ屋台から湯気があふれるのも、狭い入り組んだ階段道もそっくりである。確信する。ここには「天空之城」なる茶藝店もあるのだ。

絶対、絶対、そっくりである。雨で人がいないから余計そう感じる。もののけな世界に連れていかれるのは真っ平である

最近の九分は、日本人だらけで興醒めだと聞いた。こういうコメントを見ると、自分も日本人のくせにどうして海外で日本人に会うのをイヤがるのか疑問に思う。別にみんなが行ったっていいじゃない。人を呼ぶには呼ぶなりの魅力があるんだから。でも、確かにこういう風情のある町で観光客ゾロゾロは興醒めな気はする。今日は、悪天の午後というのが、雰囲気を味わうにはかえって良い方向に作用したように思う。
これから九分に訪れる方、張り切って朝一で台北から向かうより、午後遅めから夕刻を目指した方が情緒を味わえるかと思います。

雨はさらに強くなってきた。バス停で立っているのはつらい。ちょうど通りかかったタクシーで最寄りの瑞芳駅まで行ってもらう。約15分、料金は¥450。台北へ向かう電車は、帰宅する高校生たちでいっぱいだった。じっと携帯電話を覗き込んで指を動かしているのも、マスコットのいっぱいぶら下がった鞄も、日本と共通である。

再び台北市内へ

途中、八堵という駅で乗り換え、1時間ほどで台北駅に着いた。そのまま地下鉄でホテルのある西門町に。台北市内の雨はあがっていた。道路の濡れ具合から見て、北部の海岸近くほど強い降りではなかったようである。

ここ西門町は、台北中高生の集まる渋谷のような町らしい。角に立つ「誠品116」とかいうファッションビルも渋谷の109に似ている。裏には煉瓦の敷き詰められた歩道が続き、小洒落たショップやファストフード店が並んでいる。ストリートパフォーマーなんかもちらほら出ている。

そぞろ歩きながら、ここの名物小吃を食べてみることに。立食いそばならぬ立食い麺線。
道路の一画に丼を手にした人々があふれている。椅子はおろかカウンターすらない店だが長蛇の列。メニューは大腕と小腕のみ。大か小かを尋ねお金を受け取る人、麺を器に乗せる人、スープをかける人、トッピングを乗せて客に手渡す人…とベルトコンベア式で長蛇の列もサクサク進む。
麺線は日本のソーメンのような細い麺だが、ずっとコシが強く歯ごたえがある。豚のモツと香菜がトッピングされていて、トロみのあるスープはカツオ出汁とニンニクの風味が効いて甘くて辛い。どことなくウスターソースみたいな後口もある。食感は、瓶詰めなめ茸をすすっている感じ。…どう表現していいのかわからないけど「ハマリそうな味」である。これ、酔っぱらった後に食べると結構イケるかもしれない。

小腕で¥100くらい。小腹満たしに最適である

阿宗麺線 DATA 台北市峨嵋街12-1號 MRT西門駅から徒歩3分

小腹を満たした後は、大腹満たしの晩ご飯である。その後は台湾式マッサージに行くのだ。小一時間ほど部屋で休んでイベントに備える(!)ことにした。

今晩のディナーは鶏料理の専門店にした。私、鶏肉大好きなの…特に地鶏は…。再び地下鉄で向かう。ちょっと古めかしい外観のこの店はすぐ見つかった。店内は地元のグルメたちでほぼ満席である。

鶏肉の並ぶ店頭のショーケース。に、にわとり晒し首…………!! ここも食べるのか? トサカもついてるけど…?

まずは、ここの名物料理・三味鶏。蒸し鶏と燻製とウコッケイ、三種類の盛り合わせである。想像以上に肉は味が濃くて美味しい。ウコッケイって、皮も身も黒いんだぁ…。普通の鶏肉より弾力がある感じで味はむしろ淡白だが独特の匂いがある。手をベタベタにしながら小骨をしゃぶる。あんまりお行儀のいい光景ではないけどね。
鶏肉で作った鶏家豆腐は、チキンスープの旨味が効いて麻婆豆腐よりはずっとまろやか、唐辛子も効いているのだが、ぐぐっとソフトに感じる。鶏スープで炊いた鶏飯の上に乗せて食べると、余計美味しい。野菜も食べなくちゃ、なのでお店のお薦めへちまの炒め煮ももらった。ついタワシにするようなデカイへちまを想像してしまったが、柔らかい若い実だった。瓜よりは柔らかく、冬瓜ほどとろけはせず、といった歯ごたえ。種のプチプチ感もおもしろい味わい。じゃこもたっぷり入っている。

三味鶏。黒いのは焦げているわけではなく、ウコッケイの肉。2種類のソースで食べる。手前のご飯は、普通の白飯のようだが、鶏のスープで炊いてある

見た目は普通の麻婆豆腐

へちまのグリーンが鮮やか

鶏肉がこれほど美味しいのなら、当然卵だって美味しいに決まってる。その程度の気持ちで頼んだデザートのプリンだったが……絶句! 想像を遥かに超えて美味しいのである。これは「卵が違う」のだとしか言いようがない。はっきり言うけれど、そのへんのへっぽこケーキ屋のプリンなんか足元に及ばないね。この瞬間「台北『鶏家荘』の布丁(プーディン)」が、私の人生のプリンランキングにおいて堂々の1位に躍り出たと言えよう。これまでは、スペインのセゴビアで食べたプリンが1位だったんだけど。

しかし、昨日の欣葉の杏仁豆腐に続き、ごくごく当たり前のデザートの美味しさにびっくりさせられている。無難なものほど奥が深いということか…。素材の質に左右されるということか…。
一匙一匙、慈しむようにプリンを堪能しながら、はたと気がついた。オーダーの時お店の人に薦められたのだが、昨日食べたからと断ってしまった切り干し大根入りのオムレツ。これほどの卵なら、絶対絶対美味しかったハズである! うわ〜〜〜〜残念。やっぱり薦められたものは素直に頼むんだったーッ!

絶品のプリン様。敬称付きでお呼び申し上げたい。一緒に出してくれた梅茶とかいうものは、ちょっといただけなかった。食後に甘ったるいお茶ってのは、どうも……

鷄家荘 DATA 台北市長春路55號 MRT中山駅から徒歩約10分

極楽マッサージで癒されに

舌とお腹を大満足させた後は、今度は全身を満足させる番である。高級ホテルの超ゴージャス・エステサロンから、道端に面して間口の開いたリーズナブルな足ツボマッサージの店まで、マッサージ関係の店はよりどりみどりである。深夜や明け方までやっている店も多い。現在22:00過ぎだが、まだまだ余裕なのである。そうそう、消化をよくするツボも押してもらおう♪ あれほど食べておいて、贅沢な話(笑)

すぐ近くのサロン、温莎堡視廳理容名店に行くことに決めたが、今現在のはち切れそうなお腹では背中を押されたら苦しいかも。腹ごなしに30分ほどそこらの店を散策するが、この時間では飲食店しか開いていない。

表通りに面した入口からは、ホテルのようなキラキラのロビーが見える。300坪以上のスペース、1人〜7人用の個室が50室、マッサージ師やエステティシャンやネイリストは100人以上常駐しているそうだ。台湾式全身マッサージ120分にオプションで足裏マッサージ40分をつけることにした。

2人用の個室に通され、用意された着物に着替え、歯医者椅子のようなマッサージベッドに横たわる。まずは蒸しタオルを20枚くらい使って顔やら足やら背中やら包んでくれるのだが、これがもう蕩けそうに気持ちいい。脚全体はお茶で洗ってくれる。マッサージする部分にもオイルやら乳液やらを潤沢に使う。2時間の間には何度も何度も蒸しタオルを取り替える。途中、フェイシャルエステや、爪切りや、シャンプーや、耳掻きや…さまざまセールスに来るが、お断り申し上げる。だって、金額が凄いことになっちゃうもの。

夢見心地の気分で隣の椅子のツレを観察していると、どうやら手順や集中的にマッサージしている場所が違うようである。触っているウチにその人それぞれの「悪い部分」がわかるのだろうか? 実は私は、長年の肩凝り人生のツケから、去年重度の腱鞘炎と筋脱力症を患い、情けないことに四十肩まで重なって、右肩から右腕が動かなくなり、じっとしていても鈍痛で眠れないほどだったのだ。ほぼ1年がかりの鍼治療でほとんど治したのだが、まだ右肩と左肩では微妙に可動範囲が違う。

この肩を、マッサージ師に見抜かれた。ツレの方も、寝ていてよく足がつるのではないか?と見抜かれていた。睡眠の質とリズムが悪いことも見抜かれた。…恐るべし。でも肝臓はバリバリ丈夫らしい。だいぶお酒弱くなったと思ってたけど、「ストロング・レバーすずめ」はまだまだ健在ってことね(笑)

2時間はあっという間だった。椅子から降りた時、一皮も二皮も剥けて身体が軽くなったような気持ちがした。血液も細胞も新しくなった感じ、胃袋だってスッキリしてる。冗談でなく本当に。料金は¥8000ほど。高いと見るか安いと見るか人それぞれだが、私は大満足である。ひとりに使う蒸しタオルだって何十枚という数なのだ。

帰りはホテルまで送迎してくれる。運転手の他に、フロントのおばさんと、休憩時間だという担当マッサージ師までみんなで車に乗り込んできた。私達を降ろした後、夜食食べて帰るんだって。真っ赤なセーターがお洒落なおばさんの日本語は、イントネーションまで物凄く正確。なんでも、日本に15年も住んでいたそうで…。なるほど。

長い長い一日が終わった。明日はそんなに頑張って早起きはしないでおこう。

温莎堡視廳理容名店 DATA 台北市長春路26號1F MRT中山駅より徒歩約10分

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