Le moineau 番外編

目覚めのシャワーのために裸になって気がついた。首や肩、腕など、昨日揉まれたところが指の形で赤い痣になっている。そうなの、私、痣になりやすい体質なのよね…。マッサージ自体はそれほど痛くはなかったんだけど、やはりずいぶん強く揉まれていたようである。冬でよかった、夏服だったら結構トホホな状態だ。そう言えば、韓国で垢すり&マッサージを受けた時も翌朝痣になったんだ。あの時は、夏で、特に腕の内側が麻薬中毒者の注射跡のような様子を呈していたのだ。

さて、今日も食い倒れの予定はびっしりである。日帰りで温泉にも行く。晩は夜市でのB級フード三昧。「たらふく食べてリラグゼーション」が今回のテーマなのだ。

グルメゾーン・永康街へ

今回、台北に来たのは、「台湾本店の鼎泰豐で」小龍包が食べたかったからである。この店を評するにあまりに有名なフレーズ「NYタイムスが選んだ10大レストラン」。フン、アメリカ人の味覚で選んだってという気持ちで初めて食べたのだが、「すみません。物凄く美味しゅうございます」だった。考えてみたら、並みいる世界中の名料理を押し退け、たかだか肉とスープを皮で包んで蒸した小龍包ひとつでトップ10入りしてしまったのだから、たいしたもんなのである。
その後、新宿高島屋に鳴りもの入りで支店がオープンし、大行列にもめげず時々通った。オープン直後の新宿高島屋店には本店の厨房スタッフが来日していたそうで、確かに同じ味だった。値段は倍以上だけど。
ところが、後から後から支店はオープンし続け、今や日本には8〜9店はあるようである。3年ほど前久し振りに訪れた新宿店は相変わらず混んでいたが、味はがっくり落ちていた。つい最近、二子玉川の高島屋にもオープンし、行ってみたという友達は「全然お話にならない」と言っていた。

…というわけで、やはり台北本店で食べるしかないのだ。以前は、午後3時頃というハンパな時間にもかかわらず、30分ほど行列に並んだ。今回は10:00の開店と同時に入るつもりである。

鼎泰豐のある永康街は、MRTの駅が周囲になく、ちょっと不便な場所にある。タクシーで行ってもいいのだが、しっかりお腹を減らして小龍包様をお迎えするため、歩いていくことにした。10:00までの時間潰しもある。中正紀念堂駅で降り、バカでかい中正紀念公園を抜けて歩く。故・蒋介石総統を偲んだ、青い瑠璃瓦の屋根と白亜の大理石の紀念堂、この建物の姿が私は好きなのである。
紀念堂の内部は以前見たから、もういい。どうせ歩くなら公園の中を歩こうというだけなんだから…。

巨大な正門。門から一直線の真正面に紀念堂がある。四阿みたいだが89段もの階段のてっぺんにあるバカでかい建物。小さく見えるのは、凄く遠い距離だから

広大な中正紀念公園を抜け、さらに10分ほど歩く。鼎泰豐に到着。開店直後だが、またたく間に席が埋まっていく。
念願の小龍包が運ばれてくる。黒酢にひたした生姜をたっぷり乗せて熱々を一口で………うー、たまらん! こんなに皮が薄くて、こんなに肉汁たっぷりで、中の具がふわっと溶けて広がる小龍包は、他にはない。とにかく食べるのは短期決戦だ。冷めるとどんどん味は落ちる。
続けて、花が咲いたように綺麗な形の海老焼売。これもたっぷりのスープが包まれていて美味しい。鶏のスープもオーダーした。鶏の脂が浮いているが、甘くてサッパリ、全然しつこくない。

待ってました!の小龍包様。またまた敬称付けである。日本の支店は6個で¥580もするが、ここでは10個で¥500ほど

生姜もたっぷり乗せる。日本の支店はケチで少ししかくれないが、ここではいくらでも出してくれる

可愛らしい形の海老焼売

見た目に反し、ちっとも脂っこくない。とろけるくらいに煮込まれた肉も美味

ホントは野菜の餃子も、あんまんも食べたかったのだ。でも、この後すぐ牛肉麺とかき氷を食べるつもりなので我慢した。料金は2人で¥1800ほど。台湾の他の店に比べるとこの店の値段は高めである。

鼎泰豐 DATA 台北市大安區信義路二段194號 MRT中正紀念堂駅、忠孝新生駅または古亭駅から徒歩約20分

大満足で今度はお茶を買いに行く。無農薬茶葉にこだわる専門店・興華名茶がすぐ側にあるのだ。いろいろ話を聞いたり試飲させてもらったりしてお茶を選ぶ。一番の売れ筋だという阿里山高山茶、名前に惹かれた東方美人茶、お湯の中で花びらが広がる球形をした牡丹茶などなど…いっぱい買ってしまう。

悩んだ末、円盤状に固まっている30年もののプーアール茶も買うことに。私はプーアール茶が好きで、事務所近くの専門店でよく買うのだが、10年もので50gで¥1200もする。だが年数のたったプーアールは独特のカビ臭さはちっともなく、まろやかで甘味も苦味もあり美味しいのである。30年ものは350gで¥6000弱、35年ものに至ってはそのまた3倍に値段は跳ね上がる。まあ、そこまで張り込まなくても…ということで30年ものにした。たくさん買ったので、おまけの高山茶のティーバッグもいっぱい貰った。これでしばらくは事務所でのティータイムが楽しめる。

購入したお茶。日本の専門店では3倍近くの値段がするハズ。球形の牡丹茶はガラスのポットで入れると綺麗

この店はネットでの通販でも買物が出来る。値段は台北で買う2割増程度だが、航空便の料金が¥2〜3000余分にかかるのは痛い。

興華名茶 DATA 台北市信義路二段150號 MRT中正紀念堂駅、忠孝新生駅または古亭駅から徒歩約20分

さて、今度は牛肉麺を食べよう。すぐ近くに牛肉麺屋が数軒密集するエリアがあり、中のひとつ永康牛肉麺へ。まだ11:00過ぎであるが、1階席は半分くらいお客で埋まっている。
さっぱりスープ味の清燉牛肉麺と、ピリ辛スープ味の紅燒牛肉麺、それぞれ1個ずつ頼み、ツレと半分こにすることに。

小腕のおソバくらいサクッといけるだろう、くらいのつもりだったが、どうしてどうして。だって牛肉が巨大なんである。巨大な肉が4〜5切れなんである。ちょっとしたステーキくらいの量はある。肉はよく煮込まれていて溶けるように柔らかい。牛骨の出汁が効いたスープもコクがある。麺は…日本のラーメンに比べると柔らかく弾力が少ないが、これが台湾の麺なんだろう。
というワケで、このおソバ1杯自体は大変美味しいのだが、1時間前に小龍包や焼売でそこそこ満たしてきたお腹に、コイツは余りに「どすん!」ときた。

昼近くになり、どんどん客が入って来る。元祖・牛肉麺のここは、やはり人気店のようだ。それはわかる…わかるけど…重い。帰りの際、入口横にバットが10種類以上並び、さまざまな美味しそうな野菜類のおかずが盛られているのが目についた。あー、麺は1種類にして、このおかずを小皿で何品か貰うのが良かったのかもしれない。鶏肉の脂と牛肉の脂では、胃袋へのインパクトが全然違うことをしみじみ実感。

ビーフシチューみたいな味。美味しいが、途中で飽きるかな? 空腹でのぞめば、このボリュームは嬉しいところだろう

一口目は少し物足りない感があるが、最後まで食べるならこっち。小腕で¥500くらい

永康牛肉麺 DATA 台北市金山南路二段31巷17號 MRT中正紀念堂駅、忠孝新生駅または古亭駅から徒歩約20分

次はデザートである。胃袋はパンパンだが、甘いものは別腹なのね(笑)。マンゴーかき氷の一大ブームを巻き起こしたという人気の冰館へ。
一番人気のマンゴーかき氷は、店側があくまで台湾産マンゴーにこだわるため、冬の期間はお休み。そのかわりに登場する苺のかき氷を食べる。話には聞いていたが…すごい量である。スープ皿くらいの器に、蜜をかけたかき氷どん! 苺どっさり! 苺アイスがでん! 練乳がむにゅぅ〜〜〜! ………。
ガイドブックにも出てる店だから、日本人の女のコたちも入れ替わり立ち替わり来る。当たり前よね、女のコは甘いもの屋情報は決して見逃さないのだよ。「うわ〜すごぉ〜い」などと言いながら、全部ペロリ!なのも彼女たちの常である。

苺は1パック分くらいは軽くありそう。ビタミンCを一気に補充した!という感じ

冰館 DATA 台北市永康街15號1F MRT中正紀念堂駅、忠孝新生駅または古亭駅から徒歩約20分

なんだかあちこち行っているようだが、200m四方くらいの範囲をウロウロしているだけなのである。ちょっと行きづらい場所に行きたい店が固まってるから…という理由で短時間にあれこれ集中して食べることになってしまった。午前中2時間足らずの間に胃袋に入れる量ではなかったかもしれない。そして、このことは今日のちのち暗い影を落とすこととなるのである。だが、今はまだ「苦しい〜〜ぃ、でも、美味しかった〜〜〜ぁ」などと幸せなのだ。

温泉でまったりゆったり

以前来た時も、温泉に行ってみたかった。
今回、故宮博物院をもう一度見るか悩んだが…現在改装中で展示物も縮小されているらしいということもあり、温泉を選んだ。MRT一本で行ける場所に新北投温泉がある。中心部から30分、めちゃくちゃ手軽♪

MRT最寄り駅まで、またてくてく歩く。少しは胃の中身を消化させなくちゃ、なので。雨粒こそ落ちてはこないが、今日の空もどんより暗い。おまけに少し寒い。東京よりはだいぶ暖かいのだけど…。でも、ツレはそうでもないらしい。今思えば、私だけが感じた「なんとなくゾクゾク」も、予兆のひとつだったわけだが。

到着した新北投の駅舎は中国風の立派なもののようだが、改装中で全面シートで覆われていた。駅前はマクドナルドやバーガーキングの並ぶフツーの景観だが、かすかに硫黄の匂いもする。道を渡って川沿いに進むと、温泉旅館やSPA施設などが軒を連ね始めた。看板は漢字ばっかりだけど、この光景は日本各地どこでもある温泉街となんら変わらない。異国情緒を求める人には、不向き。

まあ、もともと台湾の温泉は、日本が統治時代に開発したのだからねぇ…。後で調べてわかったのだが、第二次世界大戦後、ほんの四半世紀前まで公娼制度がある歓楽街だった場所なのだ。つまり…台湾の高級官僚とか、ベトナム戦争時の駐留米兵とか、悪名高き日本の買春ツアーとか…すけべオヤジたちの酒池肉林天国だったワケなのね。こういう話はガイドブックには書かれない。
エステもセットだったり、レストランも併設したり、プールやアスレチックジムもあったり、のゴージャスなSPA施設やクアハウスがずらずら並んでいるが、どことな〜〜く漂う淫靡な雰囲気はそういう過去の匂いなのかもしれない。日本の温泉地でもそういう過去のある場所って独特の匂い、あるでしょ?

まあ、そんなことはさておき、ほのかに湯気の立ち上る川沿いをのんびり歩くのは気持ちいい。睡蓮の池などもあって、のんびり散策するにはいい場所。途中に温泉博物館というのがあり、入場無料なので入ってみた。かつて日本が作った公共浴場だったらしく、昭和天皇も皇太子時代に立ち寄ったらしい。当時の施設がそのまま残っている。

建物は赤煉瓦のお洒落な洋館風。中はだだっ広い畳敷きの休憩室や、障子の廊下、石造りのベランダなどなど、昭和初期のレトロモダン建築が素敵。モザイクタイルの大浴場や、ステンドグラスの脱衣所はちょこっと古代ローマ風。展示物の説明は中国語のみなので、文字から意味を類推することしか出来なかったけど。

北投温泉博物館。うーん、ホント、いいよなぁ、昭和初期の洋風建築って

緩やかな坂道をてくてくと登る。親水露天浴池と看板が出ている。水着で入る市営の公共露天風呂施設。家族連れなんかが気軽に遊びに来るんだろう。料金は¥200くらい。安〜い。
さらにてくてく。屋台の食堂が並ぶあたりに来ると食べ物の匂いに混じって強烈な硫黄臭が漂ってきた。屋台街を抜けると源泉の地熱谷があった。蒸気もくもく。「熱いから入るな」みたいな内容の看板が立っている。この湯気見て入るヤツはいないだろうよ。こういう状況を見ると、温泉卵作ってないかなーなどと思うのだが、そんなモンは売ってなかった。地熱谷のさらに先には日本旅館風の宿も何軒かあるようだった。

もうもうと湯気のあがる地熱谷。ただそれだけといえば、それだけ

そろそろ、温泉に入ってみることにしよう。立ち並ぶ施設のひとつ水都北投温泉会館へ。まあまあ中規模の内容と値段なので選んだワケだが…
フロントで日帰り入浴を申込む。2時間で¥1800くらい。ジャグジーやジェットバス、サウナなどのスパ施設と男女別浴場、屋上の露天風呂が使える。結論から言ってしまうと、この設備から考えると、ちと高かったかも…という感じだ。昨今の日本のクアハウスや温泉施設の豪華さ綺麗さ清潔さ、その割に廉価なことに比べると、正直なところ首が傾ぐ。日本人が浴室に求める「手入れが行き届き、明るく開放的で伸び伸び」といった要素はかなり薄い。綺麗で豪華なところもあるんだろうが、その場合はそれなりに値段も高いものとなるだろう。
「鄙びた味」というものとも、また違う。ヨーロッパのスパ施設にある「リゾート感覚の優雅さ」というものも、ない。潔癖性タイプの人には、あまりお薦めしない…かな。決して不潔というわけではないんだけど。日本が清潔すぎるのかもしれないけど。
つまり、ちょっと話の種に温泉に浸かってみたいだけなら、安い公共施設で「へぇーなるほどねぇ」で十分だったのではないだろうか? 後になって思うことではあったが。

引用になるが、泉質は強酸性のラジウム泉で、北投石と呼ばれる温泉沈殿物から自然界の約10倍の放射線を排出、唯一日本の秋田県玉川温泉だけがここと泉質が同じ、ということらしい。
硫黄のような金属的腐敗臭が強い。浴槽の種類はいくつもあるが、熱過ぎるかぬる過ぎるかで、ちょうどいいのがない。ぬるい湯でも、浸かっていると、肌がピリピリしてくるのがわかる。目に入るとしみるし、石鹸は泡が立たない。お湯は少し粘った感じで、色は濁った薄緑色。
この粘った薄緑色の濁りというのが…そういう泉質なのか、あまり清潔でないのか…判断に迷う感じもする。

屋上の露天風呂には、直通エレベターで宿泊やレストランフロアを通らずに行ける。でも、ショーケースに綺麗なケーキの並ぶカフェテラスの中を、水着にシャワーキャップという間抜けな姿で通り抜けなくてはならないという構造には疑問を抱くが? 吹き抜ける風と、木々の植え込みは気持ちがいいが、薄緑のお湯に浸かっていると、自分が蛙になったような気もしなくはない。

日本のどこにでもあるフツーの温泉旅館という感じ

親水露天浴池。ふー…ん、浴「池」なんだぁ。「プール」という意味の方が近いのかな…

「瀧の湯」という公共施設。銭湯みたい。こういう所で、ささっと入るだけにしておけばよかった

ツレは、もともとのぼせやすい体質ということもあって、長時間浸かることはせず出たり入ったりを繰り返していた。
私はというと、あの湯当たりする人が多いという草津の湯でさえ、三日間朝昼晩と入り続けて平気だった(同行した友人は湯当たりして熱を出した)ので、ミョーな自信を持ってしまっていた。だが、この北投石のラジウムの強さはハンパではなかった。

見事に湯当たりしてしまったのである。悲劇の幕開け(大袈裟!)であった。

水都北投温泉会館 DATA 台北市北投区光明路283號 MRT新北投駅から徒歩約15分

台湾のヴェネチア・淡水へ夕陽を見に

旅なんて、絶対計画どおりになんていかないのである。

でも、この時はまだ計画を着々と進めているところであった。MRTの終点・淡水まで行き、淡水河に沈む夕陽を眺めながら、淡水ならではの名物小吃を食べ歩くのである。最近出来たお洒落なスポット・漁人埠頭にも行けたら行っちゃおう。お台場みたいなんだろな。台北市内に戻ったら、士林夜市の屋台で夜食行脚だわっ、新しくなったっていう美食広場も見たいしね。翌朝は帰国日だから、早起きしてお粥横町で朝粥の食べおさめよッ! ………なーんて、考えていた。

ロッカーの鍵をフロントに返して温泉会館を出る。
浴槽の中でのんびり温まったという気持ちはなかったのだが、身体が火照る感じがする。なんかホロ酔い状態のふわ〜っとした感覚もある。午前中あれほど食べたのではあるが、何時間かたっているのに胃がまだ重苦しい。うーん、なんだか、ヘンだぞ?

「なんとなくパッとしない感」を背負いながら、駅まで歩く。「パッとしない感」は「なんか具合よくないぞ感」に変わっていく。駅で少し悩んだ。ここ新北投は、次の予定の淡水と台北中心部の中間にある。どっち方向の電車に乗るか……。
ツレはいたって元気だし、この時は湯当たりだなんてまだ思ってない。河沿いを散歩すれば気分もスッキリするだろうからと、予定通り淡水に向かうことに。

淡水は、台北の北西25km、河口近くの港町である。スペインやオランダに統治された過去もあり、そういった異国情緒もそこはかとなくある。台北からMRTで一本という気軽さもあり、名物の食べ物の美味しさをもう一度味わいたかったのだ。

再訪した淡水は、駅裏の川沿いの遊歩道がとても綺麗に整備されていた。もうひとつの名物・淡水河に沈む夕陽は、あいにくの天気でとても美しいと言えるものではなかった。
「台湾のヴェネチア」だそうだが………あのー、思うんですけど、水の多い街のことを何でもかんでも「○○のヴェネチア」って言うのは止した方がいいんじゃないでしょうかね? 「小京都」や「小江戸」にしてもそうだが、亜流や二番煎じみたいな感じがする。ヴェネチアは確かに魅力的な街だが、他の街にはみんなそれぞれの違った魅力があるんだから。淡水には淡水の魅力があるんである。

ところが、この時、私はわずか15分の電車に酔い、「なんかよくないぞ感」は「すごーくよくないぞ感」に変わっていた。でも、ホテルまで戻るにしても、今の状態でまた電車に乗るのはゴメンだ。とりあえずは目当ての何軒かの店に行こう。のこらのこらと綺麗になった遊歩道を歩く。

まずは、港町ならではの「魚団子」だ。白身の魚のすり身で、結構あちこちの屋台にあり、そこそこ美味しいが、淡水の可口魚丸という店のものが絶品なんである。頭はかなりぼーっとしてきていたが、こういう記憶は確かだ。以前と同じ場所にその店はあり、相変わらず客であふれている。テーブルのデコラ貼りを新しくしたようで、綺麗になっていた。

人気の魚団子のスープと肉まんを頼む。魚団子はプリップリで中央に肉のペーストが入っており、ちくわやかまぼこより柔らかいクセに歯ごたえがしっかりある。刻んだセロリたくさんの透明スープはあっさりとしている。肉まんも肉汁たっぷりである。ところが、これがどうしても食べられないのだ。団子を一口、肉まんも一口、後はかろうじてセロリ風味のスープがすすれるだけ。あー、あんなに楽しみにしてたのに………! ツレは嬉しそうに隣で頬張っている。うん、よかったね、美味しいのはよーく知ってるよ。くすん。

魚丸湯。小腕で¥70は感激の安さ!

ちょびっとだけ入ったこの肉ペーストが味のコクのポイントかな

肉包は¥30也。皮はふわふわ、肉はジューシー。悔しい! こんなものひとつ食べきれないなんて!

可口魚丸 DATA 台北県淡水鎮中正路17號 MRT淡水駅より徒歩10分

その後、以前興味があって食べたかった、阿給の美味しいという店に行ってみる。阿給は「ア〜ゲィ」と読み、日本語の「揚げ」からきている。油揚に肉や春雨を詰めたもの──日本で言うところの「おでんの袋」である。
絶好調だったら美味しかったかもしれないが、今の私は匂いだけで「もう駄目!」である。ツレ談によると、油揚よりはやや厚揚寄り、肉や春雨はいいけど、かかってる甘酸っぱいソースが今いち合わない、日本の袋とは似て非なるものである……とのことであった。

召し上がった経験のある方……そうでしたか??

見てくれは、なんとも魅力的なお姿です。次回は試すゾ!

苦しみの夜を迎える

ツレには申し訳ないが、私の「すごーくよくないぞ感」は「めちゃくちゃ気持ち悪いぞ感」に変わってきた。思わずトイレに駆け込み、さっき飲んだスープを吐いてしまった。びっくりしたのはツレである。そこまで具合が悪いとは思っていなかったらしい。急いでホテルに帰ろうと言った。

この時は、まだ食べ過ぎか、食べあわせの悪さか、などと考えていた。食中毒の可能性は考えなかった。だって、食べ物にあたったんなら「上も下もすぐ『来る』」はずだから。私は同行者がどんなにヒドイ目にあっていてもアジアで食べ物にあたったことはないのである。そしてこの後におよんでなお、ホテルで少し休憩すれば改めて夜市に繰り出せるだろうなどと、まだ考えていた。

しかし、台北へ戻るMRTの40分間は、具合の悪さに拍車をかけた。タクシーで帰った方がよかったんだろうか? でも、どっちみち乗り物酔いはしただろうから……。
駅からホテルまでのほんの3分が我慢出来ず、駅のトイレで大量に胃液を吐いたのである。胃は空っぽなんだから当然だが。熱も出て来た。実は湯当たりを引金に、ひどい風邪の症状が出て来たのだったのだが、その時はそう思わなかった。朝、私だけが感じた寒さはやっぱり予兆だったのだ。

よろよろと宿に戻ってベッドに倒れこんだ。明日は帰国だし、病院に行くほどではない。士林夜市は諦めることにした。100軒以上の食べ物屋台の並ぶあの阿鼻叫喚の場に、今この身を立たせるのは不可能だ。ツレ、ごめんね。
とりあえず、持参した胃薬を飲んだ。部屋には湯沸かしポットが備えてあったので、大量に白湯を作っては飲んだ。夜中に何度か胃液を吐きに起き、合間にこんこんと眠った。熱は下がらなかった。

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