Le moineau 番外編

ちょっとぐうたらな朝

6時前に目覚め、窓の外を見てみると雨だったので、なんだかぐーっとテンションが下がって二度寝してしまった。ヒナコに身体の調子を聞いてみると、少しもたれている感じがあるとのこと。まあーねぇ、普段の食事はほとんど油カット塩分カットだもんねぇ。暑いからと冷たいドリンクも飲み過ぎたかも。年寄りは水分補給を怠ると命取りなのだが、常温のミネラルウォーターでないと駄目かもしれない。
私たちが全幅の信頼を寄せている主治医処方の胃薬を飲ませ、朝食へ。

今日のフルーツは、パパイヤの替わりにパッションフルーツがあった。ものすご〜〜く酸っぱい! パッションフルーツってもっと甘かったと思うけど。
パンは予想以上のウマさ!

今日は、7〜8種類くらいあるパンが食べたい。小ぶりなので、いろいろ試せそう。ハムとチーズを巻き込んで焼いてあるのや、胡桃入り、ライ麦パンやクロワッサン、みんな美味しい。予想以上に美味しい。台湾は“粉もの”が美味しいものね、パンだって例外じゃないのだ。

問題だったのは生野菜で、レタスや紫キャベツなどの葉ものが、アクが強い上、歯ごたえがあり過ぎる。日本で流通する野菜は優しいクセのないものばかりで、良く言えば繊細でまろやか、悪く言えば寝ぼけた頼りない味になってしまう。これが、野菜本来の味なのだろうけど……。
考えてみたら、台湾では葉ものは、炒めたり茹でたり漬物にしたり鰻頭に詰めたりで、生では食べないじゃないか。硬くて苦い生レタスをジャクジャクと咀嚼する。コーンはとても小粒なのだが甘かった。

今日は台北に移動する日だ。本当は午前中に、市政府(日本統治時代の洋館建築で、内部も見学できる。周辺にも同時代の建造物がいくつかある)なんかを見学して、台中名物の太陽餅なんぞを購入して、昼前にチェックアウトして……などなど目論んでいたのだが。意外に台中市内が広くてタクシーでの移動が面倒な上、朝から雨降りでテンションも下がったし、ヒナコが元気バリバリでないので無駄に疲れさせるのもどうかと思い、やめにする。時間をかけてダラダラと朝食をとった。

朝食を終えて部屋に戻るともう9時半。雨はほぼ上がりかけている。このまま台北に直行というのもちょっとツマラナイかなあと思い、精明一街 [ WEB ] までぶらぶら歩いてみることにした。“台中のシャンゼリゼ”だそうで、水路があれば「どこそこのヴェネチア」、お洒落な商店街なら「どこそこのシャンゼリゼ」てのは、いい加減やめたらどうかと思うのだが。

その精明一街へは、ヒナコ連れでホテルから徒歩10分ほど(普通の足なら6〜7分)てくてく行く。到着したそこは台中のシャンゼリゼというよりは、台中の青山・表参道もしくは台中の横浜・元町という感じ。石畳の歩道にブティックやヨーロッパ風オープンカフェの並ぶ「オサレな」通りである。10時前なのでブティックの類いはまだシャッターを下ろしているし、歩く人も閑散としているが、……なるほど「ヨーロッパ風なのよ〜シャンゼリゼなのよ〜そのつもりなのよ〜」と言いたいんだな、ということはわかった。

危険なパールミルクティー

たった10分だけどわざわざ来たのだから、春水堂 [ WEB ] でお茶をして帰ろう。台湾全土で人気爆発した珍珠茶(タピオカミルクティー)を考案した喫茶店である。午前中に市政府見学をしていたら近くの四維街にある一号店に寄るつもりだったのだが、この精明一街の店でもメニューは一緒だから構わない。大抵のガイドブックに載っているのはこちらの店の方だ。
雨はほぼあがっているが、ビショ濡れのテラス席に座る趣味はないので、店内に入った。明朝時代風の家具や飾り窓などのインテリアは、なかなかお洒落で重厚かつモダン、飾り棚の骨董っぽい茶器もセンス◎だし、素敵にシノワ(何故かフランス語で言ってみたくなった)してる。

小サイズの飲み物だけでは最低消費料金をクリア出来ないので、珍珠茶と愛玉檸檬茶の他に、お茶請けのに黒糖方舟と緑茶南瓜子酥のお菓子も注文。

タピオカミルクティーは黒真珠のようなつやつや大粒のブラックタピオカがこれでもかと入っている。台湾の人はプリプリツルツルモチモチした食感が大好きなようで、プリ・ツル・モチしていることをQQと表現する。ミルクティー本体も濃くて香りもよくてほんわか甘く、太いストローで吸い上げると一緒にQQなタピオカが「ちゅぼぼっ」と口に飛び込んでくる。その感触を楽しむ飲み物なのだが……これは高齢のヒナコには危険かも? 一応「タピオカが口に入ってくるから、気をつけて吸って」と言って飲ませてみた。

ヒナコは恐る恐るストローをくわえ、「うん、美味しいかも……んぐっ、ぶへっぶへんげへん」と咳き込む。あら、やっぱりツルンと喉にいっちゃったか。うーん、日本でも蒟蒻ゼリー事故が相次いでるしなあ、サイズはずっと小さいけど、タピオカで窒息死(おまけに客死)されても困るしなあ。
ミルクティーの味は気に入ったようだし、タピオカも好きだが、予想しない状態で喉に詰まりそうなのが怖いと言う。仕方ない、秘密兵器を登場させよう。ただの100円ショップで入手したプラスチックのカトラリーセットなんだけどね。さあ、スプーンでタピオカをすくい出して口に入れてあげるよ。なんだか赤ンボに離乳食あげているみたいだ。

愛玉檸檬茶も同様。愛玉とは、愛玉という植物の種子から作るゼリー状のもので、普通はレモンやライムなどの柑橘系のシロップで食べる。この愛玉をブツ切りにしたものが、サッパリした緑茶のレモンティーに入っていて、QQなモノが「ぷりぷりちゅぴっ」と口に飛び込む感触を楽しむ飲み物なのである。こいつも愛玉のみをスプーンですくって離乳食状態にしてあげなくてはならない。

そういうわけで、台湾ではよくある「ぷりぷりつるつるしたモノをストローで一緒に吸い上げるドリンク」はヒナコに危険で与えられないことが判明。ていうか、店員の目を盗んでスプーンとか取り出してチマチマ救ってあげるのとか、面倒ですからッ! それに私自身も、こういうプリプリチュルチュルなものは飲み物でなく食べ物として口に入れる方が好みだ。ミルクティーはミルクティーだけで飲みたいし、タピオカはココナッツミルクやシロップで食べたい。
日本のエクセルシオールカフェのタピオカは“ふにゃふにゃの小粒”“ひとつまみ”なので、「何かオマケが入ってる」という程度で気にならないが、ここ台湾では“プリプリの大粒”“ひとつかみ”だからだろう。えらく肺活量を必要とするし、思い切りよくずずっと吸うと口の中じゅうタピオカまみれになってしまうのだ。

注文した飲み物とお茶請け。下3分の1を埋める大量タピオカ

大感動したカボチャの種のお菓子

飲み物はちょっと面倒なことになったわけだが、お茶請けのお菓子が素晴らし過ぎたのでヒナコの機嫌は悪くならない。最低消費金額をクリアするために頼んだだけなのに……。黒糖のコクのある甘さが優しい蒸しパンのようなケーキは、しっとりしていて普通に美味しい。でも、まあ想像通りの味でもあった。
もうひとつは緑茶南瓜子酥。南瓜子はカボチャの種のことで、酥はサクッとしたもののこと。じゃあ、緑茶は? 字面だけではよくわからなかったのだが、出てきたものは……「カボチャの種を濃い緑茶味の水飴のようなものでバットか何かに流し固めて、細かく割ったもの」だった。雷おこしのカボチャの種バージョン、かな? 
「何、この緑色の物体は…」と口に入れたところ、これが、これが、もう、素ン晴らしく旨いッ、のである。カボチャの種がサクッと香ばしく、飴のようなものが微かに甘く、緑茶の僅かな苦味が香る。メインの味はカボチャの種の香ばしさと歯触りなのだが、ごくごく微かな甘味と苦味と粘りが加わることによって、種の香りと味が150%増強されているのである。

精明一街の近くで見かけた看板。整形手術はやっぱり“韓風”なんですね。それは別にいいんだけど、コレ、使用前使用後というよりは他人だと思うが?

この“カボチャの種おこし”を持ち帰り用に購入してこなかったことを後悔している。売っていたかわからないけど、聞いてみればよかった。飲み物はそれぞれ60元、黒糖ケーキは50元。“カボチャの種おこし”は80元だったので、心持ち高めといえる。

新幹線で台北へGO!

春水堂からホテルに戻り、チェックアウト。タクシーで駅に向かう。台中長栄桂冠酒店のベルボーイのお兄さんたち、滞在中(たった2泊だったけど)いろいろありがとう。タクシーの乗り降りの時、ヒナコは自分のことで夢中で全然気づいてなかったけど、お兄さんたちがさり気なく手助けしてくれてたこと、私はちゃんと見てたからね。キャンペーン価格で格安で泊まった客なのに、丁重に扱ってくれてありがとう。結構好青年だったから、言うんだけどね(笑)

さあ、台湾新幹線である。二転三転七転八倒して開業が遅れに遅れ、ようやく去年開通した新幹線は、台湾高速鐵道といい、国鉄であるところの台湾鐵路局とは別会社なのであった。国鉄の優等列車なわけではないのである。会社が違うのだから、線路も違い、駅も違う。台北駅だけはスペースを分け合っているが、他は空港なみに市街地から離れた場所にあるのである。使い勝手としては非常によろしくないわけだが、せっかくなので一回乗ってみよう、と、思ったわけだ。

果たして高鐵台中駅は遠かった。なんせ市街地から駅に行くのに高速道路に乗るのだから。台鐵台中駅までは150元だったタクシー代が270元もかかった。のどかな田園の真ん中に近未来的な駅がどーんとそびえている。まあ、日本の新幹線にも、こういう新幹線駅ってあるけどね……政治的な意味合いで作られちゃった、ね。

対面販売の窓口には行列が出来ていたので、自動券売機で買おうと試みたが、老人割引のボタンがないようなので、やっぱり並ぶことにする。老人割引適用のためパスポートの提示を求められ、IDを打ち込んだりしていたが、クレジットカード払いも出来た。列車は1時間に4本あり、すぐ次の12:15のチケットが買えた。
車輌はJRが技術投入しているので、車体デザインとか車内の座席の感じとか、日本の新幹線や特急列車によく似ている。乗り込んだ車内はガラガラだった。一両に3〜4組しかいない。ヒトケタの人数しかいないことは確実だ。平日真っ昼間というのはこんなもんなのだろうか? 開業当時は珍しさと運賃半額大サービスというのもあって大人気だったようだが……。これなら自由席でもよかった、少し安かったのに。

台中〜台北はたった50分。700元(約2,300円)という金額は、日本の列車の値段から考えると激安に感じる。その700元も、今日は平日だから560元になっている。ヒナコなんて老人割引で350元だ。だがしかし、台鐵の自強号という特急なら2時間で375元なのだ。時間は倍だが半額である。ついでに言えば駅までのタクシー代も半額なのだ。倍近い金額を払ってたった1時間の短縮……。いや、辺鄙な高鐵駅に向かう時間のロス分も足すので、実際は40分くらいの短縮にしかならないのでは? これまで4時間半かかかっていた台北〜高雄間が90分になるのは便利だけど、台中程度の距離ならあまりメリットないんじゃ…というのが率直な感想。

何より値段の点でいったら、各社競合入り乱れているバスにはかなわない。3時間くらいかかるようであるが「台中〜台北 180元」なんて大書きした看板を市内でも見かけたし、早朝や平日の夜などはもっとダンピングするようだし。ちなみに私は、一気に高雄まで南下するとかでなければ、高鐵はもう使わないな。

高鐵のHPはコチラ [ WEB ]  時刻表も検索できます。駅周辺観光情報なども

…などということを、座席ポケットに入っている車内誌をめくりながら、つらつら考えているうちに、あっさりと台北駅に到着。途中駅にはいっさい停まらなかった。地下ホームは台鐵と仲良く分け合っている感じで、両側から見渡せるが、改札出口は別個であった。
車窓の風景を眺めている時から「あ〜あ」と思っていたのだが、台北も雨だった。気温としては、半袖でも寒くないが長袖着てても暑くない、というところか。過ごしやすい気温ではあるが、雨は……イヤだなあ。

とりあえず、ホテルに向かおう。台中での宿は、どうせ移動にはタクシー使わなくてはならないし、台北よりは全体に料金も安めだし、秋キャンペーンでさらに安かったしで、最近の私にしては「星の多いホテル」を選んでしまった。しかし、MRTという新交通システム(主に地下鉄)が網羅されている台北では、またそれを駆使しまくろうと目論む私には「交通の便がよい」ということが最重要条件になるのであった。
そういう基準で選んだ新驛旅店 [ WEB ] は、台北駅のすぐ近く、平たく言えばエコノミーな“駅前旅館”である。エコノミーホテルではあるけれど、オープンしたのが1年ちょっと前でピカピカ新しいので、ヨシとしたのだ。フットワーク軽く動くには抜群のロケーションだからね。

台北駅は、地上部と地下に台鐵と高鐵と2路線のMRT、2階に巨大美食広場を持ち、名古屋駅のように地下商店街が枝葉のように伸びている。つまり、下水道を縦横に行き来するドブ鼠のように、上手く使えば交通事故の心配も傘の必要もなしで目的地に到達可能だが、うっかりするととんでもない場所に出ちゃうと……そういうことだ。ホテルのある懐寧街は、駅真下の「台北新世界購物中心」から駅前大通りの忠孝西路真下を走る「站前地下街」を進めばよいようだ。

ホテルにはほどなく到着したが、13時過ぎではまだチェックイン出来なかった。ラブホテルのない台湾ではこういうエコノミーホテルを“時間貸し”するわけだ。だから、宿泊者がチェックイン出来るのは15時以降なのである。そんなことだろうと思っていたので、荷物をフロントに預けておいて街に出ることにした。

お腹空いたよ〜、とにかくお昼ごはんにしなくっちゃ!

元祖・担仔麺は100年の伝統

てこてこと站前地下街を駅に向かって歩き、MRT台北車站から板南線に乗る。券売機で切符を購入したところ、プラスチックのコイン状のトークンがころんと出て来た。4年前はテレカのような磁気カードだったのに、いつから変わったんだろう? 自動改札でプチッとタッチさせると入場出来、下車駅ではコイン穴みたいのにポロっと落とす。回収されて使い回されるという仕組みなのは同じだが、カードを挿入するよりトークンを触れる方が、時間のロスも少ないしミスも少ないし、丈夫で耐用回数も高そうだ。トークンはペタっと貼り付けるようにタッチさせなくても、縁をコツンと触れさせるだけでちゃんと反応した。

MRT(捷運)のHPはコチラ [WEB] 路線検索や出口案内は勿論、各駅周辺地図などが便利。都市部の地下鉄のWebページは大抵駅周辺の詳細地図が載ってるので「使える」。ここも例外でない

忠孝敦化で下車。ここは銀座のような繁華街だ。大通り一本裏手、台南名物・担仔麺の名店度小月 [ WEB ] へ一目散。
漁の閑散期に漁師が天秤棒を担いで売りに行った麺が担仔麺。どんぶりというよりはお椀に盛られた小さなおそばの元祖で、ここは台北支店となる。
入口をくぐってすぐに台湾の昔風のかまどがあって、おじさんがどっかり座っている。赤い提灯が下がっていて、多分こんなふうに露天で麺を売っていたんだろうな、という雰囲気だ。2階席のおじさんを斜めから見下ろせる場所に座った。

看板メニューの担仔麺をふたつ。滷蛋(煮卵)と貢丸(肉団子)をトッピングするのも忘れない。朝食の生野菜が固くてエグかったことを思い出し、和風凉菜 龍鬚菜(龍鬚菜のおひたし)を注文。
黄金蝦捲という海老すり身の湯葉巻き揚げを頼みかけたのだが、今朝ヒナコは胃もたれしてたっけ。揚げ物……どうだろう? まだやめておくか。躊躇しているとお姉さんが、龍蝦卵河粉捲(伊勢海老の卵の生春巻)を薦めてくれたので、そっちを頼むことにした。揚げてないし。
青菜(湯通しした青菜)も薦められたので、それも頼んでしまった。結構たくさん注文しちゃったかな……。とにかく青い葉っぱがいっぱい食べたい気分だったんだよ。

オーダーをすませて、担仔麺の製作過程を上からとっくりと観察する。
まず麺をひとつかみお玉に乗せて、熱湯の中でゆらゆら、モヤシを入れてさらにゆらゆら、ほんの30秒くらい。茹だった麺をお椀にカパッとあけて、香菜散らして、肉そぼろ乗っけて、スープ注いで、何かエキスみたいのとか塩胡椒みたいのとかチャチャっとかけて、小海老を一匹まん中にポン! さらに大鍋から煮卵と肉団子をすくってポン!ポン! 一丁上がり〜〜。

他の料理は厨房で作るのだろうが、担仔麺だけはここで作っている

じゃーん!担仔麺。トッピングした煮卵がね……たまらん美味しさ。この卵なら1ダースでも食べられると思う。コレステロールも上がるだろうけど

椀の中からぷ〜んとニンニクの香りが立ち上る。大根おろしのように見えるのはおろしニンニクのようだ。まずスープを一口、海老出汁のスープだぁ……ちょっと黒酢の風味もある。それからおもむろに、椀全体をわしわしわしと混ぜる。うーん、ニンニクや香菜の香りが、海老や肉のコクが、麺と絡まって、な〜んて美味しいんざんしょ。ちなみに日本人には嫌われてることの多い香菜、私たちは全然オッケー、むしろ大好き。お店のお姉さんは「香菜、抜く?」とわざわざ聞いてくれたのだが、そんな必要ありませんから! 他の日本人客から取り除いた分、私のに乗っけてくれちゃってもいいくらいですから。

また、煮卵が中まで味が染みていて、美味しいったらないのである。肉団子の方は、少しゴムっぽい固さがあったが、許容範囲。ところで、豚肉団子のことを貢丸というのだが、台湾食について下調べしていた時に私は、これをあろうことか睾丸と読み違えたのだ。
「あら〜、いや〜ん、そんなモノ食べるんだぁ……」などと顔を赤らめたりしていたのだが、「さすが中華、どんな味? 食感?」と好奇心もムクムク、あまりにもあちこちで登場するので「そんなにポピュラーな食材なわけ? 一匹からいっぱい取れるもんじゃないでしょ」などと思い、ようやく気づいて自分のおバカさん具合に改めて赤面した。あー恥ずかしい。だって、ちょっと字が似てるでしょ。発音だって似てるのよ、「コンワン」て読むんだから。

話がそれてしまった。

軽い苦味とエグみがある龍鬚菜のポン酢風味のおひたし。生春巻、絶品! でも、分解させずに食べるのは至難の技。青菜の湯通しは、ほんのりニンニク風味で茎がシャキシャキ。菜っ葉の種類はわからないけれど、チンゲン菜と小松菜を合わせたような、青臭さの少ない菜っ葉だった

お姉さんに薦められた伊勢海老の卵の生春巻にも拍手! 肉でんぶの中に、海老の卵と細いアスパラとマンゴーの果肉、それを海苔とレタスで巻き、さらにもちもちしたライスペーパーで巻いてある。大半が肉でんぶなわけだが、バランスが絶妙なんである。龍鬚菜のおひたしも、湯通し青菜のニンニクオイルがけも美味しかった。野菜になら、少しくらいクセがあっても問題なく食べられる。大満足で完食。ホントは、小さなお椀なので麺を米粉に変えてもう一杯食べてみたかったが、やめておいた。だって、この後デザート食べるんだもの。

ぷるるんタピオカデザート

春水堂でのタピオカミルクティーと愛玉レモンティーはヒナコにはウケが悪かった。味が、ではなくて、プリプリツルツルしたものが予期せぬまま液体と一緒に喉に飛び込んでくるのが怖い、とのことだった。でもさ、同じモノをスプーンで口に運ぶぶんには全然問題ないわけだよね?
…というわけで、ここからすぐ近くのタピオカの美味しいデザート屋さん東區粉圓 [ WEB ] に行くのだ。店名も「東区のタピオカ」である。20年以上前に屋台からスタートした店だけあって、屋根つきの店鋪のまん中に屋台が据えてある。屋根つき店鋪といっても、台湾の大半の店の形態である半露天だが。飲食するスペースは40〜50席くらいあるが、大混雑だった。とはいえ、回転が早いので大丈夫。

ここのメニューは4種類×2しかなくて、タピオカかお汁粉か仙草か豆花、冷たいか温かいかどちらか。それぞれ、26種類のトッピングから3種類選べる。ヒナコに席取りさせておいて、総合粉圓冰を注文。全部指差しで注文出来た。
メインはタピオカ。すごい大粒(春水堂のはストローで吸うために多少小粒になってたんだと気づく)でモチモチの弾力がある。砕いたような氷と黒糖シロップ。トッピングは芋頭圓(タロイモ団子)、地瓜(薩摩芋)、湯圓(白玉団子みたいなの)。お芋以外は、みんなモチモチプリプリしたQQなモノばかり選んでしまった。

お腹いっぱいなので二人で1杯をつつく。タピオカはパチンコ玉より大粒のデカさ。ちっちゃいカップに見えるけど、この器は『赤いきつね』くらいの大きさがあるのだ

ブラックタピオカは最近では日本でもエスニックレストランのデザートに登場しているし、芋圓は過去の台湾旅でその美味しさは知っていた。白玉みたいな湯圓は、想像がつく。今回の旅で新しい出会いをしてしまったのは、地瓜というオレンジ色の薩摩芋だ。朝食ビュッフェに置いてあったので一切れ試してみたところ、もっちりした粘りとねっとりした甘みがあって、スイートポテトみたい。この地瓜には、私よりヒナコの方がハマッたようで、昨日一切れ、今朝なんて胃もたれして食欲ないとか言いながら二切れ食べていた。彼女のために、この“オレンジ色のニクい奴”をチョイスしてあげたのだ。

台湾の料理は甘めの味付けだが、だからなのかデザートは甘さ控えめで、口当たりも喉ごしもサッパリしている。どんぶりやカレー皿サイズの器で出て来るが、すいすいっと別腹におさまるし、2〜3人で分け合ってもいい。値段も嬉しい。この東區粉圓は1品たったの50元(約165円)なんだから。ヒナコの胃もたれも美味しい担仔麺とサッパリデザートですっきり消えたようだ。めでたしめでたし。

さすがにお腹がパンパンになってしまったので、少し歩くことにした。夕食の入るスペースを作らなくちゃいけないからね。

長身イケメンの衛兵交代式

東区の裏路地をプラプラと歩く。台北一番の繁華街・忠孝東路と平行に小道3〜4本入ったあたり。ぽつぽつと飲食店もあるが、華やかな雑踏はない。銀座の裏通りもこんな感じだ。

歩くうちに前方の建物の隙間から、屹立する超高層ビルTaipei101 [ WEB ] の姿が覗けるようになってきた。つい先日、今年8月に完成した、上海環球金融中心と同じ101階建て。最高フロア高さは上海に負けるが、アンテナてっぺんまでを含む高さでは今なお世界一である。
國父紀念館 [ WEB ] のある中山公園まで来ると、遮る建物がなくなり、その堂々とした姿がしっかりと見られる。近代的な全面ガラス貼りでありながら、ビル全体の形状は30年代NYのアールデコな摩天楼風でもあり、割と好みの形だな。少なくとも、DoCoMo代々木ビルよりはずっと。最上階の展望台は高さに比例して値段も高く、今日のような天候では下も遠くもよく見えない可能性絶大なので、登らない。天気がよくても登らないつもりだったけど。

屹立するTaipei101の低階層にはお洒落なショッピングモール、足元には高級ホテルと世界貿易センター、総合娯楽施設のワーナー・ビレッジや台北市政府へと続き、新都心として政治経済商業の発展しているエリアではある。何度か台湾に来ているが、この辺りに足を踏み入れるのは初めてなのであった。

銀座のような忠孝地区と新宿新都心のような信義地区、ふたつの華やかなショッピングエリアのちょうどまん中に國父紀念館はある。中国革命の指導者──文字どおり台湾の父である孫文を祀った記念館だ。彼の号“中山”を冠した「中山路」は、台湾中どこの町でも一番のメインストリートにつけられる名前だ。中山公園というのも大抵あり、ここ台北の中山公園は4万平方メートルもある。公園内は緑が多く、池端のカフェではビジネスマンやマダムがお茶してたり、広場では太極拳してたり凧上げしてたりとの市民憩いの場であるそうだが、天気の悪い平日夕方にはそんな物好きはいない。

公園の中心には、鮮やかなオレンジ色の屋根を持つ中国建築の巨大な記念館がある。また雨がひどくなってきた。屋根から滴る雨の雫も、なにしろ30mの高さから落ちて来るので、なかなか豪快だ。
メモリアルホールの中に入ると、3階分が吹き抜けになった中央に巨大な孫文のブロンズ像が鎮座していた。大迫力ではあるが、中正紀念堂(現・台湾民主紀念館)で見た蒋介石像ほどの威圧感はない。両脇には銃を持ったふたりの衛兵が微動だにせずに立っている。時計を見ると15時50分、毎正時には衛兵交代の儀式があるはず。それまで、隣の展示室を見て過ごす。

國父紀念館の公園からは屹立する台北101がよく見える

国父・孫文の巨大な像。写真では小さく見えるが、9m近くある

銅像を守る衛兵は陸・海・空軍から選抜した精鋭だという。選抜のポイントには「長身」「イケメン」もあるような気が。実は私、このテの制服姿にちょっと弱いので、イケメン評価は3割増になってしまうのは否めませんけど(笑)、長身なのは客観的事実だ。みんな180cmはある。16時になり衛兵交代のセレモニーが始まった。
新たに交代する銃を持った2名を、1名が先導する。足を直角に振り上げ、踵を鳴らす独特の歩き方。声を発するのはリーダー兵なのであろう、銃を持たないひとりだけだ。孫文像への敬礼、銃を回して床に打ちつけ、靴の踵を打ち鳴らし、一糸乱れず一連の儀式は粛々と進む。こちらの背筋もビシっと伸びそうな厳粛で荘厳な雰囲気。いわゆる様式美だなあ……

セレモニー終了まで約10分強。任務終了の2名はリーダー兵に先導され、足を直角に行進して廊下を去って行った。軍兵ではあるが、彼等だって「今どきの若モノ」である。詰所に入った途端「ひゃ〜疲れた〜」と声あげて伸びをしたり首をコキコキさせたりするんだろう。…しないかな? するよねぇ? ちなみに青い制服は空軍、白が海軍、グリーンが陸。この時間の交代は海軍から空軍へのバトンタッチだった。

記念館の建物から出たが、やはり雨はばちゃばちゃしている。もうホテルの部屋にも入れるだろうから、いったん帰ることにしよう。ゆったり広い公園は、晴れていればそれは気持ちいいんだろうが。足早に進む途中に、台湾のこういう場所には大抵ある健康歩道があった。玉状の小石をびっしり敷き詰めた道である。どうせ靴に水が染みて足が湿っているので、靴下を脱いで歩いてみた。一歩…痛い、もう一歩…痛い痛い、もう一歩二歩…痛い痛い痛〜い。50m以上は続いている感じだったのに、10歩くらいでギブアップだった。歩き通せたならともかくも、10歩でも足裏が濡れるのは同じ。立ったまま足裏を拭くのは情けなかった(笑)

公園内のあちこちにいろんな年齢の孫文の像がある。これが一番ダンディ〜

果てしなく続くかに見える健康歩道。不健康な私は3mで痛さのあまりギブアップ

中山公園の角にはMRT國父紀念館駅が隣接している。台北車站まで戻った。

新驛旅店、なかなか快適かもよ?

ホテルは、オレンジを基調にしたモダンポップな雰囲気。まあ、部屋は狭いし内装もブティックホテル風であるのは否めないので、高級感はないけれど、立地の良さとリーズナブルな値段はとにかく嬉しい。いわゆる“駅前の安宿”で、安宿の中ではちょい高めではあるようだが、新しくて綺麗なのでうら寂しい気持ちにはならない。

大半の部屋がシティスイートなどの名称がついているが、その実体はセミダブル。1人でも2人でも同じ値段なので、ふたりで泊まれば大変安くつくわけだが、ラブラブカップルでない場合は少し高くなるけど断固ツインにすることをお勧め。
宿泊した人たちのクチコミでは「狭い」は仕方ないにしても、「壁が薄くて『アノ声』が聞こえた」「トイレの仕切りがすりガラスなのでシルエットが見えちゃう」「窓がない。あっても隣ビルで意味をなさない」などが欠点として挙げられていた。

ツインは6部屋しかないようだけど、トイレに扉はちゃんとあるし、隣の部屋とは洗面所で隔てられているので水音はするが「アノ声」はしない。間口の狭いうなぎの寝床式建物だが、唯一外側に接している側ので、大きな窓がある。…ということは道路に面しているわけだが、この辺りは予備校街なので夜は静かなのである。実体はセミダブルなシティスイートとツインとは日本円にして1,300円くらいしか違わない。一泊ふたりで8,300円だったのだ。やっぱり別々のベッドで眠りたいし、お風呂ならともかくトイレのシルエットが透けて見えるのはちょっとねぇ……。
朝食なしだが、目の前の道には朝ごはんを売る店が並んでるし、隣はファミリーマートだし、不味いトーストなんか出されるよりよっぽどマシ。シャワーオンリーなので、バスタブにどうしてもど〜〜してもこだわる人は駄目だけど。

さすがに浴衣はなかったが、アメニティには歯ブラシや剃刀もあったし、ドライヤーも湯沸かしポットも、ティーバッグのお茶も無料ミネラルウォーターも、使い捨てスリッパもちゃんとあった。ADSLなら無料接続だし、フロントには自由に使えるMacもある。部屋に冷蔵庫はないけど、2階の共同スペースには電子レンジやトースターや電気鍋もある。無料で使える洗濯機・乾燥機・アイロンもある。

そうそう、フロントスタッフは若いコたちばっかりだったんだけど、みんなとても感じがよかった。
私はこれで「十分じゃん?」なんて思っちゃうんですけど。

恒例の食材買い出し

ヒナコをホテルで休憩させておいて、その間に私は自身の買い物に出る。ようやく適度なスピードでテンポよく歩けるのだ。向かうは、台北に来ると必ずリピートする食材店伍中行。ここは良質なカラスミを手頃な価格で買える店として有名だが、他にも乾物類や調味料も充実している。我が家の干し海老や干し貝柱のストックが切れたことも、今回の台湾行きの動機のひとつなのだ。

店番をしていたのは奥さんの方だった。一見無愛想なオジさんだが、話し始めると有り難迷惑なほどにカラスミ保存法調理法などを語ってくれる店長は、今はいないようだ。
まず奥さんにいくつかカラスミを出してもらう。ここのカラスミは肉厚でねっとりしていて、ホントーに良質なのである。まず間違いなく「台湾産」であるし、バイクや車の通る道に野ざらしで売られてホコリまみれに乾燥していたりもしない。大きくて薄いものより、小さくても厚みのあるものの方が断然美味しい。小振りでもしっかりしたものを3つ選んだ。

干し海老と干し貝柱の大袋も出してもらい、しばらく店内の商品を物色。他にお客さんもいないので、オバちゃんにいろいろ聞きながら、いろいろ悩む。干しアワビやフカヒレ、衣笠茸などの乾物は、やっぱり高価だ。見るからに高品質な感じだが、私の料理の腕では高級食材に対し失礼だ。白キクラゲやタピオカは買おうか悩んだが止めた。他にもどう使うのかわからないような乾物がゴロゴロ。ただし、干し椎茸の最高級のものは日本の九州産で、化粧箱に並べられ高値がついていた。
美味しそうな腸詰などもぶら下がっているが、こういうモノは検疫の問題で日本に持ち込み出来ないのよね……。オバちゃんは金華火腿(金門島名産。厳密には金華ハムは中国浙江省・金華地方産のものをいうのだが)を手に取り「コレ、美味しいよぉ〜。いいスープが出るよぉ」と言う。知ってるよ、スペインのハモン・イベリコとイタリアのプロシュット・ディ・パルマと並ぶ世界三大ハムだもん。でもね、日本に持ち込めないのよ。オバちゃんは「ちょっとでもダメなの?」などと言う。うん。量の問題じゃないんだよね(笑)

調味料の棚に移る。貝柱入りオイスターソースと、オバちゃんに薦められた干貝醤なるものを選ぶ。本当はもっといっぱい欲しいものはあったのだ、特に調味料類は。だが、いい気になって買うと、液体であるこいつらは物凄い重量になる。飛行機に乗るにも制限の厳しい昨今、重量オーバーの超過料金もシビアに取られる。実は、私の仕事場の極近に台湾政府直営の物産館があり、ネットショップや輸入食材店よりかなり安価に台湾調味料が入手出来るのである。台湾産・愛文マンゴー(勿論空輸したてフレッシュなもの)を1個380円などで買えたりするので、ちょくちょく覗いているのだ。だから、無理して行商人のように買い込んでいくこともないかなぁ、なんて思ってしまうの。

戦利品の数々

大粒の干し貝柱と干し海老。我が家の美味しいごはんのために、大切に大切に使うんです

帰国後、おばちゃんお勧めの「辣味 干貝醤」でビーフンを炒めてみた。う、う、う、旨いッ! チャーハンにしても旨そうだ。白いゴハンやお粥に乗っけても旨いに違いない。野菜炒めの隠し味にもよさそうだし、ドレッシングにするのもイケそうだ。無限に使い道が妄想出来る。ピータンと貝柱入りオイスターソースはまだ開けていないが、旨いに決まってる

全部を合計すると3,280元になった。カードで払うつもりだったが、現金だったら端数は切り捨ててくれるというので、キャッシュで3,000元払ってきた。この調味料や干し海老たちのおかげで、しばらく我が家の中華料理は美味しくなるのである。うきうきと帰路につく。ホテルまで徒歩7〜8分。この店に行くのは台北滞在時の私の義務であるので、それも考慮したホテル選びなのである。

熱々の絶品小吃・胡椒餅

我が家の中華料理美味向上のための戦利品をゲットした私には、ホテルに戻る前もうひとつ義務があった。B級屋台フードの傑作、胡椒餅の入手である。台北で行列の出来る有名な店はひとつが龍山寺近くの路地裏にある屋台福州元祖 胡椒餅、もうひとつが饒河街夜市の屋台福州世祖 胡椒餅。よく似ているけど「元祖」か「世祖」かが違う別の店。その福州世祖の方が支店を台北駅近くに出しているのだ。本店は屋台で支店は店鋪……。
重慶南路と開封路とが交わる角に行くと、赤と黒と黄の派手な看板の下で人だかりしているので、すぐにわかる。胡椒餅とは、胡椒をたっぷり効かせた肉と葱を包んだ肉まんを、石釜の内側に貼付けて焼き上げたもの。店はオープンキッチンになっているというか、キッチンしかないというか……。釜番するひとり以外のスタッフが胡椒餅包みの作業をしている。

包むのは、惚れ惚れするような早業の流れ作業。練った粉を野球ボール大に分ける人、どうやって包むのか疑問なほど大量のミンチ肉をぐわっと真中に乗せる人、さらに一握りはある葱を乗っけてくるくるっと包む人、包んだ形を整えてゴマをふりかけ釜の前に運ぶ人……これが乱れなきリズムで流れていく。ちょうど50個包み終わると、ひとつの釜の中身が焼き上がるタイミングらしい。大きな鉄のヘラのようなもので内側に貼付いている胡椒餅が剥がされて、どんどん紙袋に入れられる。包み人は売り子にチェンジ。今包んだ胡椒餅はまた釜にどんどん貼付けられていく。この50個が売れると、次が焼き上がるまで待たねばならず、スタッフは再び包み作業だ。ふたつある釜と数人のスタッフはてきぱきフル回転。

並ばなくちゃならなくても、こうして作る作業を見ていられるので楽しい。出来たて熱々の胡椒餅は本当に美味しそうだ。ここからホテルまでは2分とかからない距離、熱々胡椒餅と戦利品の詰まった紙袋を抱えて、スキップらんらんらんな状態で部屋に戻った。

釜から剥がすのを見守りながら、焼き上がりを待って群がる人々

ヒナコは起きていた。昼寝は出来なかったようだが、靴を脱いでベッドの上でストレッチしたりしたので元気になったようだ。胃もたれもしていないと言う。良かった、じゃあ、晩ごはんはバッチリだね、でもその前にじゃ〜ん!と、熱々胡椒餅を出す。なかなかボリューミーなので(なんせ包む時の肉と葱の量を私は見ている)1個を半分こ。熱くて半分に割るのも大変。
溢れる肉汁をこぼさないように……ぱくり! お肉たっぷり、葱たっぷり、胡椒ピリリ、肉汁じゅわ〜〜。皮は、内側は肉汁が染み込んでしっとり、中間はもっちり、ゴマをまぶした外側はカリカリ。胡椒は相当ピリピリ辛い。でも、美味しい美味しい美味しい、これはかな〜り美味しい! 肉もミンチというよりは粗みじんという感じで、かなり肉々した感触がある。とにかく美味しい。でも、冷ましてしまってはいけない、肉の脂が固まって肉汁の染みた皮がぺしょぺしょしてしまう、外側のカリカリも湿気てしまう。これは熱々のうちに一気呵成に食べるものだ。5分を過ぎるようなら、道端ででも急いで頬張らねばならない。値段も嬉しい1個45元。

ハンバーガーくらいの大きさだけど……

「あひあひハフハフ、ウマ〜〜、あっ肉汁たれたぁ!」などと言いながら、熱々を頬張るのが正しい食し方

来台時に必ず食べなければいけないものが、またひとつ増えてしまった。

お久し振りの士林夜市で課題をクリア

半分ずつとはいえ、胡椒餅はボリュームがあったので、しばらくTVを見ながらゴロゴロして消化するのを待った。前回の来台時に温泉湯当たりして行けなかった夜市の雪辱を果たしに行くのである。きっちり胃袋にスペースを作っておかなくてはいけないのだ。MRT劍潭駅からちょっと離れていた夜市の食エリアは、2002年にMRT劍潭駅前に移動し、明るく綺麗になり屋台数も倍増したという。前回はそれを確かめに行くはずだったのに……。

20時近くなり、ほどよくお腹が空いてきた。よし! 出動だッ!
MRT淡水線に乗り、劍潭で降りる。駅前に出ると、惨然と輝く士林夜市 美食廣場の看板、さあ、行くゾ。
週末の夜は激混みで当然だが、今日は平日でも雨だから屋根のある美食広場はそこそこ混んでいるかと思ったが、そうでもなかった。かといって閑古鳥というわけでもない。時間帯のせいもあるかもしれない。17時オープンなので早々来た人はもう食べ終わって帰ってるし、ツアーの人たちが“食事でなく観光として”きちんとしたレストランでの食事後連れて来られるにはまだ早い。でも、かなり綺麗に整然として、阿鼻叫喚度は押さえられたように思う。かつての活気と熱気と喧噪凄まじい夜市でもしっかり食事出来た私としては、あの頃よりずっと衛生的にも大丈夫そうに感じるが、これでも潔癖性全開なヒトはダメなんだろうな。

駅前にどどーんと広がる美食広場。この間口幅より奥行の方が長いんです!

ズラッと並ぶ看板たち。ど・れ・に・し・よう・か・な

夜市に行くにあたり、私には課題があった。「台湾小吃の代表、あの臭豆腐を食べる」である。だいたい食べ物に臭という字を使用すること自体凄い。豆腐を発酵させたもので、調理中のコイツは生ゴミの腐ったような強烈な匂いがする。何軒か臭豆腐の屋台があればその匂いは倍増し、屋内型の屋台であれば匂いは周辺に充満し、デリケートな人ならその場にいるのも耐えられず食欲もぎゅるぎゅると減退することであろう。でもね、台湾人はこれが大好きだし、だいたい臭い食べ物はハマってしまえば旨いモノなのである。納豆しかり、くさやしかり。で、側にいる人間には臭くても、食べている本人は臭くないものなのである。

まず、一番表側にある屋台で水煎包を買った。日本の焼き餃子方式で、小さな中華まんを油をひいた鉄板でこんがり焼き、少量のスープを注いで蓋をしてしばらく蒸し焼きにしたものだ。高麗菜包(キャベツ)と猪肉包(豚肉)を1個ずつ、各10元という安さ。ビニール袋に入れてもらい、裏手の『臭豆腐之家』と看板を出した屋台で現炸臭豆腐の小を一皿頼んだ。60元。現炸とは“その場で揚げた”ということだ。揚げたものが一番臭くないと聞いたから……。
ドキドキしながら出来上がるのを席で待つ。今買ったばかりの焼きたて水煎包を早速食べたいところだが、コイツはバッグの中の水とあわせて、どうにも臭豆腐が合わない場合の大切な「口直し」なのだ。

「老」がつくのは老舗のしるし

水煎包は日本の焼き餃子方式で作られる

こっちは高麗菜包のほう。キャベツと春雨と黒胡椒だが、薄味過ぎるかも

やったぁ! ついに臭豆腐をクリアしたッ!! いや〜美味しいじゃないかッ! ぱちぱちぱち

いよいよ現炸臭豆腐登場。一口大に切られた厚揚げのようなものの上に、キャベツの漬け物が乗っていて、赤い辛そうなタレが添えられている。問題の匂いだが、完成した料理はあまり臭くない。凄いのは調理中の匂いのようである。臭豆腐一切れとキャベツの漬け物と辛そうなタレを同時に口に入れる。揚げた豆腐は表面がサクサクしていて、中は少しスの入った木綿豆腐風、キャベツの漬け物は酸っぱくて、豆板醤みたいなタレがピリ辛で……臭くない。味も発酵したもの独特の酸味があるけど、意外とあっさりしてる。ていうか、独特の風味と深みがある。どっちかというと、美味しいんじゃないの? コレ。

ぱくぱく食べてしまった。もうこれで臭豆腐の匂いを嗅いでも問題ない。むしろパブロフの犬よろしく食べたくなってしまうかもしれない。同じ店で高校生くらいの少年たち4人が、真っ赤なスープで煮込んだ臭豆腐を食べていた。麻辣臭豆腐というヤツだな。あっちの方が臭そうだ。それ以前に辛さにリタイアしそうだが……。
臭豆腐は他に、串刺しにして炭火で焼いたり、蒸したりもするそうだ。蒸し臭豆腐が一番ハードルが高そうな気がする。

まだまだ続くB級美食巡り

空腹状態なら多少口に合わなくても何とかなると、いの一番に食べた臭豆腐は、予想を裏切って美味しかった。それはいいのだが、なんせ揚げだし豆腐だから……結構腹にたまるのであった。

次は評判の台湾ソーセージ店『昇記士林大香腸』へ。炭火グリルの上でいろんなサイズの香腸(ソーセージ)がじゅわじゅわと美味しそうに焼けている。気になっていたのは大腸包小腸なるモノなのだ。“大腸で小腸を包む”という、何か解剖学的スプラッタな世界を想像してしまう名前の食べ物の正体は、餅米を詰めた大きいソーセージに切れ目を入れて、キュウリや千切りキャベツと普通の肉詰めソーセージをはさんだもの。見た目「ホットドック」なのだ。美味しそうじゃあないですか!

註)ちなみにホットドックは熱狗という。そのまんま熱い犬なのであった

美味しそうなんだけど注文をためらったのは、コッペパン大もある餅米ソーセージなんぞ食べたら、それだけで満腹してしまってその後は何も入らないであろうことは、のーたりんな私でもちゃんと想像出来るからである。
でも、音をたてて炭火でじゅわじゅわ焼けるソーセージの魅力には抗えず、一番小さいものを一本だけ買った。40元。プチッと皮を噛むと、ジューシーできちんと感触がある粗挽き肉が……が、甘みがある。素材の持つ甘さでなく、砂糖や蜂蜜を混ぜた甘さだ。このビジュアルは日本で出回っている馴染みのソーセージではチョリソーに一番近く、なんとなく「ピリ辛」を想像して齧りついた。食感は思った通りだったが、この甘さが想像を裏切ってくれて、それも面白い。

プリプリソーセージは独特の甘みがあり、好みの分かれるところ

鉄板焼の店は大人気。ぬいぐるみ同伴のおっさんがいるのでよく見てみたら、生きているワンコだった。カメラを向けたらわざわざこちらを向いてポーズしてくれた
※写真にカーソルを乗せるとワンコを拡大します

さて、次はどうしよう。なんせ連れが高齢なヒナコなものだから、シェアして食べるといっても8:2くらいの比率で私が引き受けなくてはならない。品数が減ってしまい、それだけは残念なのである。
せっかく牡蠣の産地の鹿港まで行ったのに、店の味付けが好みでなかった仔煎のリベンジをしようか。デンプンを加えた卵で牡蠣をオムレツ風お好み焼きにした仔煎は、まだ汚く怪しい雰囲気のムンムンしてたカオス全開な頃の士林夜市で最初に食べて、美味しさに感動した小吃である。アジア特有の熱気と喧噪に圧倒され、しばらくどうしていいかわからず、おっかなびっくり指差しオーダーして、ようやく口にしたのだ。そしたら美味しくて、一気に屋台フードに対する敷居が低くなったのだ。元々、食に対して守備範囲も間口も広い私なので、大抵のものは口にする自信はある。年齢重ねるごとにさらに度胸はついて、いろんな食文化を臆せず楽しめるようになった。まだまだ臆病だったなあ、あの頃の私……(遠い目)。
夜市での人気メニューであるだけに、出す屋台は多く「仔煎」の文字はあちこちに見える。もうひとつの人気メニュー、花枝(モンゴウイカのとろみスープ)と両方食べよう。

よさそうな店を物色していると、海老釣りの屋台があった。縁日の金魚すくいの海老バージョンで、割り箸に糸をつけた竿で「釣る」よりは「吊る」ようだ。子供もいい年の大人も、結構楽しそうにやっていた。海老がウヨウヨ泳ぐビニールプールの隣では、うっかり釣られてしまった不運な彼らがグリル上でじゅうじゅう焼かれており……遊ぶと食べる、ふたつの楽しみが見事に直結しているのであった。ちょっと興をそそられたが、私は金魚すくいもヨーヨー釣りも全くもって下手くそなので、多分海老も釣れまい。食い意地から釣れるのかなあ(笑)

海老釣り屋台から離れ、美味しい仔煎と花枝を食べるべく、一軒の店を選んだ。基準は……ただの直感。鹿港の時は疲れていて面倒になり、呼び込みに引かれるまま入店して、ミスッた。今日は元気満々で、食べるもの食べるものみんなスマッシュヒットかクリーンヒットかホームラン。多分、勘は冴えているはず。
その店には牡蠣を入れた仔煎の他、海老入りの蝦仁煎、イカ入りの花枝煎、海老と牡蠣の両方入った綜合煎があった。せっかくなので綜合煎にする。花枝も注文。全品50元だが、綜合煎のみ60元。
ドラム缶のような丸い鉄板の上で牡蠣と海老がちゃちゃちゃっと炒められ、青菜も加わり、溶き卵のタネも加わってクルクルッと混ぜて伸ばして……こういうパフォーマンス見るのも屋台の楽しさだ。

鹿港の店のようにつなぎのデンプンが強力過ぎることもなく、卵のふわふわが保たれていて、全然美味しかった。ただ、かかっているタレがピーナッツ味で甘いのはちょっと苦手。でも、これなら除けてしまえば問題ない。臭豆腐の店でもそうだったが、皿に薄いポリ袋が被せられている。ペロッと剥いて捨てるだけで皿洗いの必要がないわけだ。盛り付けのビジュアル的にはちょっと…ではあるが、屋台においては衛生的であるし、使い捨て容器を使うよりゴミも出ないしコストダウンなので、合理的なのだろう。

鹿港で食べた牡蠣オムレツよりも、デンプン控えめ卵ふわふわでこっちの方が好み。ただ、ピーナッツ味のソースはちょっと……なぁ

これは激ウマ! イカがこれでもかと入っている。これはすでに二切れほどイカを食べたあとの写真

無事果たした牡蠣オムレツのリベンジに小さくガッツポーズをしていると、花枝が置かれた。一瞬「何コレ?」と思ってしまったのは、花枝とはモンゴウイカのことと聞いていたので、真っ白な陶器のような肌の飾り切りされたイカがスープの中にポツポツ浮いている──そういうものを想像していたからだ。
登場したイカのとろみスープなるものは、ブツ切りイカと筍と青菜のあんかけ以外の何ものでもない。スチロールの使い捨て容器は大きめのお椀程度のサイズだが、とろとろのスープは表面張力の許す限り縁スレスレまで満たされ、ザクザク切られたイカは積み重なって上下左右にハミ出しており、反り返ったイカの先端部からはスープの雫がぽとぽととテーブルに滴っている。

165円くらいの値段で、イカをこんなに大盤振る舞いしていいのかよ、日本の縁日の焼きイカはいったい幾らするよ、と思いながら一切れ。どんなにそーっとイカを抜いても、僅かな揺れでスープがこぼれそうになる。イカは柔らかくてとっても美味しい。そして海鮮出汁がたっぷり出たスープは、もっともっと美味しい。

またも、ぱくぱく食べてしまった。勿論、激ウマとろみスープは一滴残さず舐めるように完食である。うまうまと食べていると、頭の上で「こういうところのモノ食べる気がしれないわねぇ、不味そうだし、第一不潔じゃない?」という日本語の声がした。ツアーで夜市見物に連れて来られたらしき母娘だったが、私たちに聞こえよがしに言ったようだった。食べる気を起こすかどうかは個人の感覚だから自由だけど、美味しく食べている人に向かってそう言うのはどうかと思うけど? それに台湾の人って日本語わかる人多いから、あんまり大きい声で不潔とか言わない方がいいとも思うけどね。夜市なんかに来ないで、テーブルクロスのかかった高級レストランでお食事なさって下さいな。

〆は冷た〜いカキ氷!

そこそこ満腹してしまったが、昨今の私は胃袋の容量が増加しているので、まだ詰め込むことは出来る。でも、止めておいた方がいいよねぇ? こんなこと続けていたら、メタボまっしぐらだ。紅油炒手(ラー油和えワンタン)とかいうモノも食べたかったんだけど……。ヒナコは即座に却下した。「私は、一口しか手伝わないからねッ」でも、一口は食べるのね(笑)。
小皿とはいえ、さすがにワンタン一皿全部は無理か。デザートなら当然別腹だよね?

美食広場内では2軒のカキ氷屋が向かい合わせていた。しつこく客引きをしてこなかった方の『楓霖冰果』に入る。そろそろシーズン終わるからどうかなぁと思っていたマンゴーはまだあるようだ。台湾産じゃないかもしれないけど。芒果雪綿冰をふたりでシェアする。芒果はマンゴー、雪綿冰とは、店によって雪片とか雪削とかいろいろ呼び方が違うが、凍らせた牛乳を削ったカキ氷のこと。

楓霖冰果はこちらの青い看板のお店

横のコインは10元玉。500円玉より心持ち小さいが100円玉よりは大きい。ボリュームがわかるでしょ?

登場したカキ氷はトッピングのマンゴーがサンプル写真よりはだいぶ少なめ。サンプルと実物とには多少のギャップはあるものだし、マンゴーが終わる季節のせいかもしれないし。それでも日本の感覚からすれば、充分どっちゃりなんだが。
ミルクを削った氷はふわふわしていて、口溶けもしゅわ〜んと優しい。とろとろ柔らかなマンゴーの果肉がゴロゴロ乗って、マンゴピューレがちょこっとかかって、練乳がドバッとかけられている。ふわふわとろとろしゅわ〜の感触の中、時たま感じる弾力ある歯ごたえは、細切りのナタデココ。

ふわふわミルク氷は、溶けるのも早く「おいし〜〜ぃ♪」などと目をハートにしている間にどんどん液状化してしまう。私とヒナコは目配せで美味しいことを確認しあいつつ、双方からスプーンをわしわしと突っ込み、マンゴー・ミルク氷を平らげていった。カレー皿に山盛りの氷を見た時は「えッ!?」と思ったが、全然ちょろいじゃん。ひとり一皿いけたかもしれない、などとちょっと思う。

これで80元(約270円)なんだよね。千疋屋や高野フルーツパーラーで同じものを出したらどうなるか? 3分の1くらいの量で1,280円などという値段がつくに決まっている。マンゴーは5切れ乗れば上出来かな。
贅沢とはわかっているけど、旬まっただ中の甘〜いマンゴーをこれでもかと食べてみたいなぁ。そのためには真夏に来台しなきゃいけないんだよね。クソ暑いよね、台風シーズンでもあるよね。イイとこ取りは出来ないか(笑)

最後に愛玉檸檬汁を購入

気持ちよく腹を満たした私は、最後に愛玉入りのレモンジュースを購入。ちゅぱちゅぱと吸いながら、夜市の路上をちょっとだけ流してみることにした。
今はとりあえず雨は上がっているが、降ったりやんだりの不安定な一日だったので、道の真中にビニールシート敷いているような不法店鋪は出ていない。人出はそこそこという感じ。週末だと師走のアメ横のような混雑になるというから、この程度の方が歩きやすくていいや。

わんこ、にゃんこ、ハムちゃんたちに癒される

美食広場として駅前に移転する以前に屋台群があった場所には、CITY JUNGLEというアミューズメントビルが出来ていた。入口には詰め放題お菓子のワゴン、入ってみるとゲームセンター(SEGAなどのハイテクゲームからクレーンゲーム、プリクラ、射的や輪投げのような懐かしアナログゲームまで)、きらびやかなチャイニーズカラーの門の奥にはブースの並ぶ占い横町が続き、ネイルやアクセサリーのショップ、クレープやジュースのスタンド、そんなものが雑多に混在している。違うフロアにはボーリング場やビリヤード場もあって、台湾のワカモノたちが遊んでいた。渋谷のセンター街と109と上野アメ横と風俗抜きの歌舞伎町を合わせた感じ。

とにかく台湾の夜市というのは、縁日のお祭り状態が1年365日毎晩繰り広げられているわけなのだ。
でも、このCITY JUNGLE内で私が感じた懐かしさは、縁日の夜店を思い出してではない。私が10代の頃よく行った、原宿の竹下通りや裏路地のちっちゃなブティックやセントラルアパートの地下街などがこんな感じだった。……30年前だな(笑)。今日は人出が少ないからいいものの、ワカモノてんこ盛りの週末なら確実に私らオバさんとバアさんは浮きまくるに違いない空間であった。

だが一番奥まで進むと、そこには癒されるエリアがあった。なんとペットショップ街。ああ、こんなものまで夜市で売ってしまうのね。深夜まで売場にさらされてペットたちのストレスはどうなのよ?と心配になってしまうが、とりあえず奴らは可愛い。

羽二重餅のように重なったハムスター、一心不乱に口もモゴモゴさせている兎、鞠のようにケージ内で跳ね返っている子猫、うるうるした瞳で見上げる子犬、我関せず爆睡する犬猫……んもう、動物好きにはたまらん世界が展開されているのであった。
台湾での住宅事情からか、やはり大半が小型犬。チワワ、トイプードル、ミニチュアダックスなどなど。血統の程度はわからないが、40,000円から100,000円くらいなので、日本の相場からすると安いのかな? 私はよくわからないのだけど。ペットというのは、自分にとって可愛ければ値段も血統も私には関係ない。

それにしても、どいつもこいつも可愛いなあ……目を細めて見て歩いていると、一匹のシュナウザーの子犬と目が合った。折り重なるようにして3匹が寝ていたのだが、そのうちの一匹が視線に気づいたか顔を上げ、ぱちっと目が合った。瞬間、奴は笑った。本当に笑ったのだ。ぴんっと飛び起き、短い尻尾を尻ごと振りながら、ゴムまりのように弾んで私の方へ突進してきたのだ。ああああ、こうして「出会っちゃう」んだろう。くぅちゃんに出会ってしまってアイフルと相談したくなる気持ちもちょっとわかった。
ごめんね、私はキミをウチのコにはしてあげられないんだよ。台湾から日本に連れ帰るのだと、検疫とかいろいろ大変なんだよ。でも、キミのその愛想の良さなら、きっといい御主人が見つかるからね。
後ろ髪を引かれるようにシュナウザーのケージから離れる。振り返ると子犬は「行っちゃうのぉ?」みたいな顔をして、柵につかまり立ちして、それでも尻を振ってこちらを見ていた。くぅうううう、たまらん。あれはうっかり抱かせてもらったりしたら、非常にヤバかった。

赤字で大書きされた「特価」札をつけられた、成犬となってしまったフレンチブルドックにも一抹の悲しさを感じつつ、ペットショップ街を後にする。
MRTに乗って台北車站まで戻ったが、出口を間違えてしまった。いくつもの路線の乗り入れる大きな駅で反対側に出てしまうというのは、とんでもなく面倒なことである。最寄り駅内を30分近くも俳諧、無駄に疲労してしまった。ホテルに帰り着いたら12時になっていた。

今日もよく食べました! あー眠い。

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