Le moineau 番外編

豆漿は、台湾定番朝ごはん

昨晩はホテルに戻ったのは日付が変わる頃で、シャワーを浴びたり歯磨きしたり靴下と下着を洗ったりしていたら、ベッドに入るのが1時を回ってしまった。しかし、横になって毛布をかぶるなり30秒で即、眠りにストン。大熟睡。熟睡し過ぎて、ぱちっと目を開けたらもう8時を過ぎていた。あら、びっくり。このホテルには朝食がついていないので、買ってくるか外に出るかしないと。
窓から外を見ると、ホテルの前には持ち帰り用の朝食を売る店がたくさん並んでいる。ここで買って食べるのは明朝にすることにして、今朝は評判の朝ごはんの店に行くことにする。昨晩からそう決めていたのだ、そうなのだ。

目当ての店はひとつ隣駅にある阜杭豆漿。豆漿とは豆乳のことで、大陸では朝はお粥だが、台湾の伝統朝ごはんは豆乳なのだ。一駅程度の距離なので朝の散歩がてら歩いていっちゃおうと思っていたが、ヒナコ連れなのでMRTに乗ることにした。
たかが朝食のために一駅ばっかり電車に乗るのも面倒でもあるのだが、この店、ネットでの口コミ評価がとても高いのである。そうなると、やっぱり自分の舌で確かめてみたくなって……。

MRT善導寺駅の上あたりにある華山市場の2階。「入っていくのを躊躇する小汚い市場だけど臆せずずんずん行け」とのことだったが、ためらいを感じさせる雰囲気はしない。私がそういうことに対して神経質でないせいもあるけど、普通の建物だし、入口のところに開店祝いのような花がいっぱいあったので、綺麗に改装した直後だったのかもしれない。汚くてビビるというよりは、あまりにも地元っぽいニオイぷんぷんなので、そういう意味で観光客は一瞬二の足を踏むのだろう。市場ならあっちこっちでもっと凄いとこ(いろんな意味で)見たもん。市場の一階は肉や魚や野菜など生鮮を売っているので朝から店を開けているが、階段を登ると衣料や玩具などの店がまだシャッターを下ろしているので、余計「入っちゃダメそうな寂れた感」があるのかも。開店前の衣料問屋の並ぶ二階に、突然人で賑わっている空間があり、そこが目指す店だった。

賑わっているといっても、もう9時を回って混雑も一段落したという様子で、並ぶ客は5〜6組。ここは朝の5時から開けているのだが、7時半から8時半頃は長蛇の列が階段にまでハミ出る大人気という。イートインの列より持ち帰りの列の方が倍以上長いそうで、みんな出勤途中に朝ごはんを買ってオフィスで食べるのだ。

こういうスピード勝負の店でわけわかんない外国人がわけわかんない発音でリズむを乱してしまってはいけない。列に並ぶ間にオーダーをメモメモ、オバちゃんに渡す。
オバちゃんはメモを見て大きく頷き、隣のオバちゃんに指示を飛ばすと、どんぶりを手に取り、刻み葱やら干し海老やらシラス干しやら肉そぼろやらをパパッとつまみ入れ、小さなお玉で調味料のようなもの(恐らく黒酢)を入れ、大きなお玉で豆乳をどばばーと注ぎ、胡麻油かラー油みたいなものをひと垂らしし、ちぎった油條(揚げたパンのような麩のようなもの)をクルトンみたいにひとつかみ乗せる。その間、隣のオバちゃんはクレープのような薄皮と薄焼き卵を重ね、刻み葱か何かを挟んで、くるくるくると巻いて、ダンダンダンと輪切りにして、お皿にトン! どんぶり2つと小皿と丸いパイをトレイに乗せて、ぱぱっと電卓をはじいて数字を見せる。この一連の行為が僅か数十秒

鹹豆漿とは、塩味の豆乳のことだが、見た目は豆乳スープという雰囲気だ。クレープ皮と薄焼き卵のくるくる巻きが蛋餅で、鹹酥餅は葱がたっぷり入ったサクッとしたパイ。豆乳スープは塩と酢の作用からか、トレイに乗せて運ぶ間にもおぼろ豆腐のように固まっていく。さあ、一口!
ふわぁ〜と優しい大豆の味。それから、いろいろ出汁の混ざったスープの旨味。うわわっ、これは、すごく美味しいゾ? クルトンのように浮かんだ油條は揚げたてでサクサク。最初はトロッと濃厚な豆乳スープだったのに、食べているうちに豆腐化していき、分離した茶碗蒸しのようになり、最後はほろほろした豆腐くずとスープとに完全に分かれる。どんどん食感が変わっていって楽しい。

もう、見るからにウマそーな朝ごはん

食べてるそばからどんどんおぼろ豆腐化していく。これがまたウマウマ

サクッとしたパイの中身は葱がたっぷり

クレープと卵のW巻きは、とても薄く焼いてあるのに、卵はふわっとしていて皮はモチモチしている。ヒナコは少し油っぽいと言っていたが。でもねぇ、彼女は普段とことん油を控えた食事してるからねぇ……。私には許容範囲の油である。この程度では世間では油がシツコイとは言わない。
丸いパイの中身は何かなぁ……と割ってみると、青い刻み葱がたっぷり入っていた。無論、たっぷりゴマのまぶされたパイ皮はサクサクである。うーむ、胡椒餅といい水煎包といい、ホテルのパンといい、台湾の“粉モノ”は、ホント美味しい!

こんな美味逸品を、市場の片隅に椅子とテーブルを並べたようなクーラーもない場所で、汗をダラダラ流しながら食べるのである。椅子なども、プラスチックのお風呂椅子のデカイようなのやら木製の丸いのやらの寄せ集めで、お洒落なインテリアもへったくれもない。が、しかし! この店は50年以上続く老舗であり、でありながら、ふたりで美味しく食べた合計金額は僅か93元(約305円)なのである。ひとり150円の朝ごはん! 日本じゃドトールのコーヒー一杯飲めませんから(笑)。

林家花園は密かな穴場

激ウマ朝ごはんで、お腹も大満足。
本日の予定であるが、台北市のちょこっと郊外のお茶農家の集まるエリアで、自然の中の茶藝館で美味しいお茶と茶葉料理を味わいながら、まったり……であった。でも、こんなお腹いっぱいで直行してしまっては、茶葉料理を詰め込む胃袋の隙間を作る時間が足りない。ほどよくどこかで観光して消化しなくては……。

で、思い浮かんだのが、台北県の板橋〈バンチャオ〉市にある林本源園邸 [WEB] という6000坪もある中国庭園。福建省から渡った林氏が150年ほど前に大枚費やして造った園邸で、古き良き美しき時代の雰囲気を伝える文化的名園だという。台北の都市交通であるMRTは来るたびにどんどん延線していて、この林本源園邸にも4年前にはなかった最寄り駅というものが出来ていた。わかりづらい路線バスに乗り換えたりせずにすむのだ。

今いる善導寺駅から板南線で1本、ほんの15分ほどだった。府中駅で降りる。ちなみに「板橋」「府中」と続くので、東京住まいの私はつい「イタバシ」「フチュウ」と読みそうになる。
ところが ──これは私にもヒナコにも予想がつかずに突然のことでホントに困るのだが── いきなりヒナコの具合がよくなくなチた。月に1〜2回たまにあるのだが、降圧剤が効き過ぎて低血圧になり貧血状態になる。今日は、朝食時間が遅れて薬の服用時間がズレた(=血圧の高い状態が長く続き、急激に薬で下げることになる)、予想以上に地下鉄駅が深くて階段がたくさんあった(=息が切れて心臓がバクバクして貧血状態がひどくなった)などが、原因みたい。とにかく駅の出口でいきなりヘバった。

駅で見た地図によると10〜15分くらい歩く感じだが、こんな状態で排気ガスのいっぱいの町中に出ると余計具合が悪くなるかもしれない。貧血っぽくなっている上に、ヒナコが不機嫌になる要素「暑い(といっても真夏の暑さではない)」「うるさい(自動車が)」「目の前をものが行き交う(バイクとか)」が揃っているんだもの。敷地は6000坪もあるのだから、入口を探して塀回りをぐるっと一周してしまっても無駄に疲れるだけなので、とっととタクシーに乗ってしまおう。

入口で100元の料金を払って中に入る。ちなみに子供は半額だが、65歳以上は無料。

広い園邸内には、幾つもの建物や園庭、築山や池などが美しく配置されている。建物の造型も美しいが、窓枠や桟の飾りや天井や扉の意匠など、細部も綺麗。寺や廟とは全然違う中国建築の美しさだ。昔に訪れた上海の豫園に似ている。木陰の作る影や池を渡る風は涼やかで、観光客もまばら、塀の外の町の喧噪も嘘のように静かだ。中に足を踏み入れた途端、ヒナコは「あら素敵」と機嫌も急上昇、元気になった。

パーツパーツの細工も綺麗だ

さまざまな建物や庭園があり、のんびりと過ごせる。サンゴ石の洞窟のようなものや孔雀小屋があったりする

だが、しかし。甘かった。

今もなお低血圧ではあるが、貧血からは脱した私。超低血圧で超低体温で貧血だった10〜20代の頃は、午前中は本当につらかった。朝バタバタ動き回らず、ダラダラダラダラ過ごせば昼頃にはシャキッとするのだが、会社勤めではそうもいかない。通勤電車や駅ホームで何度貧血で倒れたことか。だから私は、通勤路線沿線の駅員仮眠室をたくさん知っていた。よくそこで休ませてもらったからだ。そういうわけで、貧血時の対処法はよくわかっている。

静かで涼しく埃っぽくない場所でだらりんと過ごせば、具合も悪くならないだろうと思ってここに来たのに、甘かった。…というよりヒナコは、低血圧が引き起こす貧血状態に対し、私ほど年季を積んでいないから。
そう、貧血の時はね、もう大丈夫そうだな、と自覚するまで、ナマケモノかカメレオンのようにゆっくりゆっくりダラダラ動かなくちゃいけないのよ。キビキビとは対極のぼおおおおおーっとしたぐうたらな動き。なのにヒナコは「あっ、これ綺麗!」「あっ、あの池の橋渡れるみたい!」などとはしゃいじゃったわけだ。たたたたっと走っちゃったり。で、突然「ひゃ〜目が眩んで立てない〜」となったわけだ。

もう! しょうがないなあ! しばらくぱかぱか歩き回るなって言っておいたでしょ!
こういう場合、無理して動くと、具合悪さを一日中引きずるのは経験上よくわかっている。頭を低くして小一時間横になってるしかないな。そうやって快復させれば、そのあとはまずブリ返さないどころか、かえってバリバリ元気になっちゃったりするのだ。
幸いここは、静かで人もまばらな庭園だ。池の上に張り出したテラス状の四阿の長椅子に、鞄を枕にしてヒナコを寝かせた。入口でゲットしたパンフを読むと、かつてたくさんの高位高官たちが集まって、ここで詩を吟じたり楽師の演奏を聴いたりしたようだ。池を渡り木々を揺らす風が気持ちいい。いにしえの風雅な情景を思い浮かべつつ、しばらく本を読んだりぼーっと揺れる水面を眺めたりして50分ほどを過ごした。その間、一番奥にあるこの池の四阿まで来た客は5組ほどだった。

静かだし、のんびり出来るし、ここはリピートしてもいいかなあ。お弁当買って来るのもアリだと思う。

ちゃんと横になってしばらく微睡んだだけあって、ヒナコはそこそこ元気になったが、私の見る感じではまだ70%の快復度だ。帰り道で町中の喧噪に巻き込まれてブリ返しても困るので、MRT駅までタクシーで戻った。

自然の中で楽しむお茶

このあと向かうのは木柵というお茶農家の集まる地区なのだが、山の斜面に茶畑が青々と広がっていて、くねくねうねる山道には何十軒と茶藝館が点在している。山上から台北市内も一望出来るので、特に夕方以降は夜景と星空と美味しいお茶を楽しみに、地元の家族連れやカップルに大人気とか……。
地元では猫空〈マオコン〉と呼ばれているエリア。まあ、字面も読みもなんて可愛らしいんでしょ。

この猫空、1年半前に猫空纜車 [WEB] というロープウェイが出来てアクセスが容易になり、なおかつ空中散歩も楽しめるとのことで、人気急上昇スポットとなったのだ。台北の都市交通はどんどん発展していて、来るたびにどこかしら新しく延線したり開通したりしている。おかげで、今行ってきた板橋にしろ、これから向かう猫空にしろ、これまで「ちょっと面倒」だった場所にも簡単に足をのばせるようになった。猫空ゴンドラは箱根のロープウェイと同じくらいの距離があるそうで、道中の風景も楽しみだった。休日や夕方は1時間待ちとの噂もあったが……。
だが、待ち時間を心配する必要は全くなくなった。台風15号の影響で修理点検のため、10月1日よりしばらく営業休止になってしまったのだ。バスかタクシーで行くしかないな。

註)1ヶ月くらいの営業休止かと思ったら、修復には半年くらいかかりそうとのことだった。来年の4月頃の再開ですってさ……。でも、また次の楽しみが出来た感じでいいや。

MRT板南線で忠孝復興まで行き、木柵線に乗り換える。今まで台北市の南側というのは行ったことがなくて、木柵線も初めて乗ったのだが、地下鉄でなくてモノレールのような高架線だった。ごちゃごちゃしたダウンタウンの上やぴかぴかビルの隙間を縫うように走る。萬芳社區で降りたが、バス乗場も閑散としているし、ヒナコの快復率も100%でなさそうなので、客待ちしているタクシーに乗ってしまおう。
乗り込もうとしてふと考える。猫空の茶藝館のある地区はかなり広く、ぷらぷら歩いて店を物色しようものなら、小一時間のハイキングになっちゃうのである。ゴンドラ駅から遠くない店ばかりをピックアップしていたが、タクシーで行くならこだわる必要ないわけだ。じゃあ、行きたいなと思ってた店にしよう! ところが、店の名前をメモしてくるのを忘れてしまった。記憶に残るウロ覚えの字を書いて、運転手に渡してみたところ、しばらく考えて「ヤォユェツァーファン?」と言う。えー、発音なんかもっとわからないよう! まあ、違う店に着いちゃったらそれでもいいやと思って、うんうんと首を振る。運転手は「よっしゃ」という顔をして勢いよく発進させた。

車は商店街や集合住宅などの生活区を抜けてほどなく、うねうねと登る山道に入った。鬱蒼とした緑の中、くねくね道をガンガンと走るので、かなりスリリング。ヒナコは涙目で前のシートを抱きかかえんばかりになっている。しまった、100%快復してなさそうなのに、酔っちゃうかな……? と、思う頃には、何もないただのくねくね山道に茶藝館の案内看板が増え始めた。目指す店は猫空エリアでもかなり奥の方だった。がらーんとしたゴンドラ駅を通り越し、候補にしていた名前の店をいくつも通り過ぎ、ようやく車は雰囲気のある門の前に停まった。ちゃんと邀月茶坊 [WEB] とある。よかった〜、ちゃんと着いたぁ。自分のメモを見たら猫空 遙月茶房と書いてあった。字、間違えてるじゃん(笑)。

降りたタクシーが走り去ってしまうと、静寂が戻った。道路に面した門には赤い提灯が点り、その先に木々に囲まれた歩道が続いている。何か不思議の別世界に続く入口に立ったような心持ちになる。ゆっくり一度深呼吸してから、ゆるゆると小径を降りていく。渓流のせせらぎの音が聞こえる。小鳥のさえずりが聞こえる。

道路に面した邀月茶坊の入口

せせらぎの音を聞きながら小径をずずーっと降りていくと……

ようやくお店入口に。この距離がイイ感じ

山林の心地よい風に吹かれ、鳥の唄をBGMにお茶を飲むのは至福の時

ようやく服務台に到着。先にここで、茶葉やお茶請けを注文して精算してから席に行くのだが、年寄り連れなのでまず好きな席に行かせてくれた。
竹や木を多用したインテリアの室内の席もいいが、雨降りでもない昼間ならやっぱり屋外が気持ちいいな。斜面に沿って広がる店の敷地はとても広く、竹林の中、茶畑の中、渓流を見下ろす場所などにパラソルが並んでいる。あまりにオープンエア過ぎると蚊に食われそうなので、屋根のある半露天の席にした。目の下には緑の山林と茶畑が広がっている。山の窪みに位置する店なので、台北市街の遠景は望めないが、この静かな空間はとても心地いい。
台中で行った無為草堂もそうだが、この店も雑誌や機内誌などでよく紹介される店だ。だって、雰囲気いいし、写真映えするもんね。ミーハーと言われようと、いいのだ。

美味しいお茶、美味しい料理、美味しい自然

まだ本調子に快復していないのに、山道ジェットコースターに振り回されてちょびっと酔ったヒナコは、長椅子に足を投げ出して側面の柵に寄り掛かり、クタっとしている。でも、顔色は戻ってきているので大丈夫そう。しばらくここでダラダラ過ごしてるつもりだし、中国茶で胃袋スッキリさせて、美味しい空気と美味しい食事食べればオッケーだって。

この辺りで栽培しているのは鐵觀音や包種茶。文山包種茶を選んだ。
茶油麺線(お茶の実から取った油で炒めた素麺)と、とっても気に入ったしまった黒椒毛豆。うーん、もう一品どうしようかなぁ……? 烏龍茶で煮た地鶏とか、コロモに茶葉を混ぜて揚げた地鶏とか魚とか、魅力的な茶葉料理がメニューに並んでいるのだが、肉系・揚げ物系はヒナコが復活するまで控えた方がいいのではないだろうか。屋台料理なら一皿が小さいのでオーダーしても問題ないが、値段を見ると高めなので(茶藝館は高めなものだが)きっと量も多いのだ。
結局、素油香桂竹筍というものを頼んだ。香は椎茸のことだし、竹筍は筍だ。油という字がついているが、素の字もあるので精進料理ということになる。

石丸謙二郎を若くして線を細くしたような青年が、お茶と料理を運んできてくれた。彼は英語が喋れるのだが、話し方がソフトで当たりが柔らかく、とても感じがいいのだ。一回目のお茶だけ彼に淹れてもらう。無為草堂の辻加護ちゃんとは違い、流れるような所作で淹れてくれた。聞香杯を嗅ぐとふわ〜っと甘い香りが胸いっぱいになる。口に含むと香りは喉に抜け、最後にほんのり甘みが残る。うわ〜、美味しい。
台湾の謙二郎青年はニッコリ微笑んで去っていった。この後はもう、店側は基本的に放置してくれる。卓上コンロのお湯がなくなったら、所々にある給湯器に汲みに行き、何時間いたっていいのが茶藝館のいいところである。別に茶葉を買わなくたって、茶水料という名目の場所代を払えば、持ち込みしたっていい。

無為草堂より茹で方は軟らかめ、胡椒のピリリも押さえめだった。それにしても、美味しいなぁ〜、コレ。絶対来年の夏に自分で作ってみるんだ! ビールのつまみにバッチリなはず

お茶の油で炒めた素麺は、意外にサッパリ。スルスルツルツル口に入る

竹みたいな形しているのに柔らかい不思議な筍。肉厚の椎茸と一緒に油で煮てあるのだが、全然しつこくない

想像した通り、料理は4人分くらいの量があった。素麺も筍と椎茸も、油がキトキトしているのだが、ちっともしつこくなくてスルスルと口に入っていく。筍は日本の筍とはちょっと違い、竹の節そのままの形をしている箇所がある。そんな場所、固くて絶対食べられないのに……これが柔らかいのだ!
ヒナコは、目では「素麺美味しそう! 筍美味しそう! 食べた〜〜い」と思いつつもスッキリしないようで、1本の素麺を3cmくらいずつチミチミと食べていたが、何杯かお茶を飲ませているうちに、突然全快した。具合悪くなるのも良くなるのも、どっちも突然なんだから、もう! でも、まあ、元気になってよかった。そろそろ良くなる頃合かとは思っていたんだけどね。

ふたりでばくばくと素麺や筍や枝豆を食べ、お茶をクイクイと飲んでいると、ニャンコが二匹やって来た。こやつらは、先程から店長や女将の挨拶のように敷地内を回遊しているのだ。この店の飼い猫ではなく野良のようである。それが証拠に、どんなに近づいても1メートル半の距離を絶対に保つからだ。それでも、こうして挨拶回りをすれば、それなりに実入りはあるのだろう。
申し訳ないことに、私たちのテーブルには肉や魚の料理がいっさいなかった。駄目もとであげてみた筍も椎茸も枝豆も全部そっぽ向かれた。そうよね、ベジタリアンの猫なんて……

挨拶(?)回りのニャンコたち。スリムでおそろしく美形で声も愛らしい。しかしガードは固く、絶対に身体に触れさせない。何かに似ていると思ったら……高級ホステスだ!
「スタイル抜群の美人」「甘い声でおねだり上手」「でも、お触りはダメよ」「もらうモノいただいたら後はもう用はないわ」

よい中国茶は7〜8煎くらいは余裕で出る。私たちは9煎くらいまで無理矢理淹れ、茶葉を入れ替えてさらに何杯も淹れた。お湯も2回も取りに行った。風は気持ちよくて、空気も気持ちよくて、鳥のさえずりや虫の鳴き声や木々の葉が揺れる音が気持ちいい。
私たちが長々といる間、日本人の若い女のコのふたり連れが少し離れたテーブルに座った。彼女たちのお茶を淹れていた店員はゴツい熊のような青年だったのだが、ヒナコはちらりと見て「私たちに淹れてくれた人の方が優しそうで柔らかい感じでいいわよね」などと言った。いや、それは私も思ったことだけどさぁ……、その時アンタは具合がよくなくてクタッとしてたじゃないの。そういうことはちゃんと見てるのね(苦笑)。

3時間はぼけーっと過ごしただろうか。そろそろ帰ろうか。

ミラクル・トリプル・レインボー!?

お店の人にタクシーを呼んでもらってもいいのだが、日が暮れるまではまだ時間があるし、空気が清冽で気持ちいいので、少し道路をぷらぷらと歩いてみることにした。通り沿いにバス停を見つけたら、そこからバスに乗って帰ろう。市内に出てしまえば、どうとでもなる。

茶畑の広がる山間部。どこかの茶藝館のものらしき赤いパラソルが見える

もともと今日は朝からパキッと晴れてはいなかったが、雨が降ることもなく、じんわりと暑かった。でも今は、山の中ということもあるのだろうが、暑くもなく寒くもなくちょうどいい。しばらく深呼吸を繰り返しながら散策をしていたら、急にざわざわと風が強くなってきた。起伏のある斜面を確かに“風の塊”が走っているのがわかる。猫空だけに、猫バスでも来るというの? そんな雰囲気もないではないが……。
いや、心なしか空も暗くなってきたような……? これは“雨の来る風”だ。「降り始める」のではない、「来る」のだ。彰化の大仏さまの山で実感したのと同じ風だ。とりあえず、早足になる。

先程の邀月茶坊のような雰囲気のある店、もう少しくだけて気軽に入れそうな感じの店、地元御用達・プレハブの建物でカラオケ大盛り上がりの店……さまざまな店を通り越して行くと、弧を描いた屋根がなんとも可愛いバス停が見えてきた。バス停のベンチにぺたりと腰を下ろした途端……雨が来た。「来た」と表現するしかない降り始め方だった。ああ、なんてタイミング。

20分ほど散策している間、バスはおろか1台か2台しか車が通らなかった。バス停には時刻表も何もないし、どのくらい待つのか見当もつかなかったが、3分もしないうちにバスは来た。マイクロバスのような小さなバスだ。事前の調べによると「棕15」か「小10」に乗らなくてはならないのだが、来たバスの表示はそのどちらでもない。見送ろうとしていると、運転手が乗れ乗れというジェスチャーをする。首を横に振っていると、それでも乗れと言う。タクシーに乗る可能性を考えて「捷運 萬芳社區」と書いたメモ用紙がポケットにあったので見せてみると、うんうんと頷くではないの! ラッキー! 大慌てで乗り込む。バス代、僅か15元。

走り出す寸前、バス停の背後の谷に目をやると、そこに見えたのはなんと三重の虹! すぐさまバスが走り出してしまったために、大急ぎでカメラを取り出し1枚だけシャッター切るのがやっとだった。古くて傷だらけの窓ガラス越し、煙るほどの驟雨、揺れて方向転換してしまうため定まらないフレーミング……鮮明な写真は撮れなかった。残念だ。でも、この目ではしっかりと見た。三重の虹って珍しい『奇跡の虹』なんですってね。何かいいコトあるかな(笑)

猫空のバス停でバスを待つヒナコ

走るバスの窓ガラス越しという悪条件でようやく撮った1枚。レベル補正してもこれ以上鮮明にするのは限界……三重になってるのわかります?

土砂降りの雨の山道をバスはごんごんと走る。外が煙ってよく見えないので、かえってあまり怖くない。乗客はシルバーパスで乗ってそうな地元の爺婆が大半だったが、山を降りて「町エリア」に入ると学校帰りの中高生などが頻繁に乗り降りするようになった。どこをどう走っているのかわからなかったが、見覚えのある高架線路と駅が前方に見えたので「あっ」と指さすと、運転手も指さして笑っていた。私の降りたいところ覚えててくれたんですね、謝謝。

猫空、よかったなー。今度はぜひゴンドラでアプローチして、途中駅にある指南宮などにもお参りしよう。今日のような山中の深閑とした味わいもいいが、次は台北市街を眺望しながらまったり一服もいいな。天気のいい日ならゴンドラの空中散歩とダブルで楽しめるな。
あっ、ひとつ思い出した。茶油を買ってくるんだった……。まあ、いいや、また来る理由が出来たしね。

道路はびしょ濡れだが、雨はもう上がっていた。MRTに乗り、いったんホテルに戻ることにする。
ほんの10年ちょっと前はまだ開通していなかったMRT。それが、来るたびにどんどん延線しているし、新路線の計画もある。いずれは空港線まで延びる計画もあるようで、そうなったらどれほど便利なことか! 旅行者にとってわかりやすいのは勿論だが、構内は綺麗だし、トイレも綺麗だし、エレベーターもほぼ完備してバリアフリー度も高い。乗客の整列ラインや動線ラインも明確で、みんなそれを守って秩序正しい。はっきり言って、大陸ではありえなさそうな光景だ。ヒナコを連れて乗り込んだ場合、ほぼ98%座席は譲られる。日本では3回に1回くらいしか譲られることはない。

MRTに乗っていたり町中を歩いていて、4年前と違うなーと思うことは、行き交う人々が格段に垢抜けたということ。どこの国でも一番最初に若い女のコが垢抜けるものだが、少なくとも台北に於いては、服装やメイクなど東京の女のコと同じ。女のコもだが、男のコもなかなか、中高年でもマダム風の女性をちらほら見かけ、全体にお洒落になってきている。20年ぶりというわけじゃない、ほんの3年9ヶ月前に比べてなんだから。うーん、アジアの都市ってどこもどんどん同じ感じになっていくなあ。こないだバンコクでもそう感じたけど。上海然り、ソウル然り、香港然り、シンガポール然り………

MRTを乗り継いで台北車站駅に戻ってきたが、ちょっと甘いものが食べたくなった。駅前にチェーンのスイーツ屋鮮芋仙があったので、食べてから帰ろう。仙草と豆花が気に入っちゃったのだ。
ちょうど夕方の時刻で、いろんな路線の交差する台北駅前、なおかつ予備校街ということもあって、10代の男女で店内は満載に混んでいた。奥の方になんとか席を確保して注文。仙草に地瓜(気に入ってしまったさつまいも)と珍珠(タピオカ)と仁(ハトムギを柔らかく煮たもの)をトッピング、豆花には芋圓(モチモチ芋餅団子)をトッピング。
ほろ苦の仙草つるるん、さつまいもホクホク、タピオカぷるるん、初体験の煮ハトムギは柔らか〜。ああー、美味しいよお。
氷がシャリシャリ、きめ細かな豆花なめらか〜、芋圓モチモチ、ほの甘黒糖シロップ。ああああー、こっちも美味しいよおお。

雨降って気温が下がったから、ちょっとお腹が冷えちゃった(笑)

黒い仙草に黒いタピオカのトッピングでは良く見えないが、実はどっさり乗っているのだ

氷を除けて、豆花をめくると、下にモチモチ芋圓がごろごろ

隣のテーブルでは女子高校生4人組が仙草や芋圓を頬張りながら、分厚いテキストを広げて答え合わせのようなことをしている。勉強、頑張ってね〜。

お買い物タイム、再び

ウマウマおやつの後は、ヒナコをホテルへ送り届け、少し昼寝しておくよう言い渡す。「えー、さっき横になったから眠くないも〜ん」などとほざいているが、私はこれから買い物に出るの! 2〜3軒ハシゴしたいの! だから、たったか歩きたいの! だいたいアナタは買い物には興味ないでしょう?
「わかった。邪魔なのね?」……そういうことです。

昨日は調味料や乾物などの食材を仕入れたので、今日はお菓子と中国茶。
鳳梨酥(パイナップルケーキ)や月餅などの焼き菓子が欲しいのだが、お土産用に個別包装・箱詰めされたものでなく、ベーカリーのものが侮れないとの噂に、それは聞き捨てならん!と思ったわけだ。いわゆるパン屋さん、バラ売りで自分でトレイに乗っけてレジに持って行くところね。
台北駅徒歩圏内でクチコミ評価の高いのは十字軒餅店というベーカリーだった。ホテルからの距離は昨日行った伍中行と同じくらい、博愛路という道路沿いにある。店はすぐに見つかったのだが、なんと空しくシャッターが閉まっていた。定休日は日曜だったはずだけど? 営業時間は何時までなんだろう? まだ18時過ぎなのになあ……。でも、閉まってるものは仕方ない。

博愛路沿いには、いわゆるお土産店である新東陽や世運食品などの店も近くにあるのだが。他にもベーカリーのような店はあるのだが。なんだかいっぺんに買う気持ちが萎えてしまった。だって、きっと、並んでるの見たら、いっぱい買っちゃうもん。いっぱいあったら、きっと、全部食べちゃうもん。全部食べたら……あー怖いこと考えちゃった(笑)

城中市場というトラディショナルかつ庶民的かつローカルパワー炸裂の市場を通り抜けて戻る。年季の入った入口アーチをくぐると……道幅1.5mの両側に店がぎっしり。洋服、アクセサリー、コスメ、靴、フルーツ、健康食品、惣菜、タイムセールの呼び込み、自助餐(ビュッフェ形式飲食店)……etc。店鋪の形になっている店から、ワゴンやテーブルだけの店、道路にハミ出てシートを広げる店、路上ヘアカットは椅子ひとつの店。
あまりのパワフルさに圧倒されて一枚もシャッターが切れなかった私であった。チラチラ見た感じでは衣料品や靴などは、なかなか凄まじく価格破壊しているようだった。色やデザインや素材が凄まじいものも多いが、割といいんじゃない?というものも少なくない。
ここは根性すえていろいろ掘り出しに来るところだな、ちょっと通り抜けてみようなどと考えたのが甘かった。

100mに満たない距離しか市場の中を歩いていないのに、パワーを30%くらい吸い取られたようだ。道すがらふと見ると「日式 妻籠拉麺」という店があり、地元台湾っ子で大賑わいしている。ガラス貼りの綺麗な店で、みんなが食べているのは確かに日本風の縮れた黄色いラーメン。台湾の麺は日本のラーメンや中華そばとは似て非なるものなのだ。日式拉麺だというのはわかるが、何故妻籠? 木曽中山道の小さな宿場町で、魅力的な場所だが、決してメジャーな観光地じゃないし、飛騨高山などに比べてかなりマニアックだと思う。だいたい妻籠の名物はラーメンじゃないぞ?? 高山ラーメンというのはあったけど。

ふらふらとタウン・ウォッチングしながら、ようやく峰圃茶荘に到着。ここでお茶を買うことに決めたのは、去年台湾土産に凍頂烏龍茶を頂いて、ティーバッグであったにも関わらずと〜〜っても美味しかったからなのだ。台中のホテルでも部屋に置いてあったティーバッグは峰圃茶荘のもので、やっぱり美味しかったので、この店でいっぱい買って帰る計画は間違っていないことを確信したわけだ。

そろそろ観光客は夕食を食べに出かける時刻なので、お店はガラガラだった。あれもこれもと茶葉を出してくれてゆっくりと接客してもらえる。
この店の売りは阿里山に畑を持っていることで、標高が上がるほど値段が高くなる。
標高1000mの阿里山凍頂烏龍茶、新竹・蛾眉山の東方美人茶、珍珠花開というジャスミン茶、銀峰プーアール茶、木柵の鐵観音、100gずつ購入。お菓子を買いそびれた反動のようにドカドカ買ってしまった。高級なものには「雀突」という文字がついているので、「どういう意味?」と訊ねる ──雀という単語に弱いのだ── と、手摘みということらしい。なるほど、雀がつんつん突つくように茶葉を摘むということね。

註)ちなみに我が家にいた雀のポチくんは、私を起こす時に睫毛をクチバシで引っ張った。ああいうふうに摘むんだな、と、激しく理解し納得した私

合計で1,800元。カードも使えた。店名と電話番号入りではあるが、聞香杯と品茗杯のセットを2組と、いろんな種類のティーバッグを10個くらいもらった。

戦利品のお茶。容器も綺麗

コロコロ可愛い珍珠花開

ビタミンCたっぷりの高山烏龍茶は緑茶なのだ! 茶色い渋い烏龍茶は嫌いだけど、これは大好き

新芽の東方美人茶は桃の香り。ミルクと蜂蜜を入れても美味しい

今日も戦利品を抱えてウキウキと帰る。福州世祖 胡椒餅の前を通りかかったら、ガッツリ行列が出来ていて、スタッフはガンガン餅を包みまくり焼きまくっていた。美味しかったよなあ、食べたいなあ、でもボリュームあるんだよなあ。そうだ、明日帰る直前に買って空港バスの中で食べるっていうのはどうだろう? よし、決〜めたッと。

魯肉飯はベスト・オブ・庶民ごはん

ひと休みしたら、晩ごはんである。その後足裏マッサージに行くのだ。

台北車站からMRT淡水線で民権西路駅まで行く。今回は徹底して、ちゃんとした“レストラン”と呼べるような場所は避けている。
目指すは鬚張魯肉飯 [WEB] 民権西路店、むさ苦しいヒゲ面ボサボサ頭のおじさんの顔がトレードマークの店である。屋台からスタートした張さんが、ヒゲを剃る間もなく働いて働いてチェーン展開するまでに大きくしたお店。だから店名は「ヒゲの張さん」なのだ。魯肉飯というのは、日本風に言えば“つゆだく豚ソボロごはん”。小さなお茶碗で20元〜30元のシンプルきわまりない小吃だ。庶民フードの代表格なので「まあ、美味しゅうございます、おほほ」と優雅にいただくものではない。吉野家で牛丼を食べるように「旨ぇ〜」とガッガッガッと食べて、ぱっぱと店を出るのが正しい(と思う)。

とりあえず私は、鶏でも豚でも牛でもソボロごはんが大大大好きなのだが、ヒナコは挽肉料理があまり好きでない。炊き込みご飯やチャーハンならいいのだが、いわゆるぶっかけ飯というか、白飯に汁が染みているのが好きじゃなかったはず。あの染みたとこがウマウマなんだけどなぁ……だから、許して! 食べたいのよ、私、ソボロごはんが。

やはりこの店を押し上げた魯肉飯は外せない。だけど、きっとヒナコはあまり好きじゃないだろうから、彼女のために鶏肉飯。苦瓜排骨湯(ゴーヤとスペアリブのスープ)は品切れだと言われたので、無難に貢丸湯にする。青菜とモヤシどっちがいい?とヒナコに聞くと、モヤシと答えたので、豆芽菜。
一気にどかどかと出て来た。量的には全然問題ない。魯肉飯と鶏肉飯に一切れ乗った黄色いタクアンが可愛い。

魯肉飯は脂トロトロの細切れ肉がツヤツヤぴかぴかしている。タレは台湾風で甘め、だけどちょっと八角の風味が強い。ソボロごはん好きなので、それなりに美味しく食べる私だけれど、鬚張の魯肉飯は「まだまだ」という感じかな。いや、どちらかというと美味しい部類に入ると思う。私のソボロ好きは筋金入りなので、鶏・豚・牛・合挽あらゆる肉の甘いの辛いのスパイシーなどのオリジナル・ソボロレシピもいっぱい持ってるのである。ソボロに関してはうるさいのだ。
で、台湾全土あちこちにある普遍的メニューで、100軒あれば100通り味が違うという魯肉飯──そうなると、絶対に好みドンぴしゃりのモノがあるんじゃないか、そう思ってしまうではないの。オール台湾・魯肉飯行脚をしてみたいくらい。

こんなにソボロ好きな私の親なのに、ヒナコは一口食べて「油っぽ〜い、ちょっと苦手」。逆に鶏肉飯は、私にとっては肉がパサパサで味も淡白過ぎるのだが、ヒナコはこっちの方が好きだと言う。肉団子スープは可もなく不可もなく。で、モヤシだが、炒めものなのかなと思ったら、茹でた豆モヤシにおろしニンニクソースをかけたものだった。そういえば、渡小月で食べた青菜がこのスタイルだったな。多少エグみを持つ青菜であれば問題ないが、淡白なモヤシだとニンニクソースの強烈な風味に負けてしまうように感じた。ニンニクだけでなく、黒酢のようなもの、オイル、何かスパイス系の風味も微かに感じる。私には全くもって許容範囲なのだが、ヒナコにはアウトだった。

インパクトある髭面張さんの看板

豚ソボロごはん、細切り鶏肉ごはん、肉団子スープ

こんなにツヤぴかで美味しいんだけどな……

モヤシは、おろしニンニクソースがヒナコのお気に召さなかった様子。美味しいのに……

なにか全体的に気に入らなかった様子で、鶏肉飯も乗っかった肉だけ食べて「もうお腹いっぱい」。まあ、今日は午前中に具合悪かったんだから、無理強いするのはやめよう。見ると、鶏スープの染みこんだご飯はそっくり残っている。あー、もう、一番美味しい部分を残してぇ……と、残りを食べてしまった私は、またひとつおでぶへの階段を登ってしまったのであった。魯肉飯行脚なんてとんでもございません。
とりあえず合計125元。リーズナブルな夕食であった。

スッキリ足裏マッサージ

鬚張魯肉飯を出て、5分ほど歩いて元気養生会館というマッサージ店へ。金城武と志村けんがJAAのCMのポスター撮りをしたところだ。ビルの2階にあるが、ガラス張りになっていてよく見えるし、大きな看板も出ている。受付で迎えてくれたのはタレントの千秋にちょっと似ていた。
足ツボマッサージ+足湯70分・1000元のコースをチョイス。足でバンバン踏み付ける台湾式マッサージだと、骨のモロくなっているヒナコがうっかり骨折でもしたら困るので、基本の足裏のみがよかろうとの判断である。

足ツボ用のソファがズラッと並んでいるが、時間帯が中途半端なのか、お客は誰もいなかった。素足になって座ると、千秋嬢がソファの下からステンレスのシンクみたいなものを出してきて、ラベンダーの香りのお湯を溜め始める。ここで10分間足湯をするのだが、う〜〜ん、気持ちいい……。(実を言うと、踵に靴擦れがあって皮が剥けているので、そこがちょっと滲みたんだけど)

この足湯の10分の間に電話でマッサージ師を呼び出すようだった。ほかほか温かい足湯にうっとりしていると、チャイナカラーの白衣を来たマッサージ師さんが2人登場。2人ともお兄さんとおじさんの中間くらいだ。
まずは、お湯から出した足を丁寧にタオルで拭いてくれ、乳液をこれでもかとたっぷりと足裏に塗りこみ、いよいよマッサージ。棒などの道具は使わないが、甲のや指の関節などでかなりグリグリとやってくれる。所々痛い箇所もあるが、適度に「効くゥ〜」という感じ

まず、酒飲みなのがバレた。でも、肝臓は丈夫だと。胃腸が疲れ気味でもあった。えっと、それは、食べ過ぎってことだよね……。慢性的眼精疲労もバレた。腰にも負担がかかっていると。座りっぱなしでパソコン凝視してる仕事だから、それは仕方ないでしょ。そのあたりは「ちょっと痛いかな」という程度だったが、眉根を寄せて「うっ、痛たたた…」となるのが、子宮や卵巣などの婦人科系のツボだった。そうなの、ホルモンバランスの崩れるお年頃なの、私。あーやっぱり……って、ちょっとショック。時折「あ」とか「う」とか言ってる私の横で、ヒナコは全然痛がらなかった。多分、年寄りだから弱めにしてくれてるんだと思うよ。ショック死されたりすると困るもんねぇ。

私の担当のマッサージ師は、整った顔だちながら、前頭部から頭頂部にかけて残念なことになっている好青年(好中年?)だ。「慣れてきたのか痛くなくなった」と伝えると、「そお?」などと言いつつギュゥゥと押してくれたりして、なかなか茶目っ気があるのだった。
片足30分ずつ、くるぶしやふくらはぎまで軽くマッサージしてくれ、最後は熱い蒸しタオルで足全体を包んでくれる。ああー、脚が軽くなったぁ、スッキリ。

受付横の壁面は巨大落書き板と化しており、ビッシリと過去の客たちのコメントや喜びの声が書き込まれていた。支払いを済ませ、ヒナコがトイレを借りている間、壁のコメント集を見ていると、千秋嬢が「台湾は初めて?」と聞いてくる。何度かリピートしてると答えると「じゃあ、北京語出来る?」
「ううん、ニイハオとシェイシェイだけ」「あとハオチー(好吃=美味しい)と?」「そうそう」「それで充分!」
そういえば、どこの国に行くんでも、必ず口にする現地語は「こんにちは」「ありがとう」「美味しい」だっけ。これだけは現地の言葉で言うようにしてるので(笑)

とどめの雙城街屋台ストリート

脚が軽くなったら、小腹も空いた。
元気養生会館は農安街という通りにあったのだが、この農安街と民権東路という大通りにはさまれた雙城街という1本の道が夜市のような状態なのだ。昔、台湾レストラン欣葉本店への行き帰りに通ったはずだが、ただの舗装路で、ちらほらと屋台が出ていた程度だった記憶がある。それが煉瓦風敷石に変えられ、両側に店鋪が、中央に移動式の屋台が、所々に共用の椅子テーブルも設置されているホコテンの夜市(朝も昼もやっているらしいが)にヘ〜ンシン!していた。ほんの50mくらいのミニミニエリアだが、熱気ムンムンで結構いい感じである。

ヒナコは「まだ食べるのぉ?」と呆れているが、「今日フルーツ食べてないでしょ、牛乳も!」と言いくるめて屋台ストリートになだれ込む。
まずカットフルーツの屋台で、蓮霧(ワックスアップル)という果物を60元で購入。屋台のフルーツは割高だが、今回はナイフを持って来てないから仕方ない。フルーツの入ったポリ袋をぷらぷらさせて通りを物色する。

ちなみにこの通りで人気なのは黄記という店の魯肉飯で、昼も夜も大行列だという。鬚張と食べ比べてみたい気持ちがムラムラと沸き上がったが、ふて腐れているヒナコを連れて列に並ぶわけにはいかない。彼女はワガママなので、機嫌が悪い時にそういうことをすると、具合が悪くなったとか言い始めるのである。多分、学校行きたくなくて腹痛起こす子供と一緒で、本当に気分が悪くなっちゃうんだろうけど。そう言われたら、私はなす術はなく、お従いするよりないのだ。

くだんの黄記には、ちょびっとではあるが行列が出来ていた。今になって思えば、やっぱり試してみればよかった。だって、台湾人の食に対するエネルギーは凄いものがあるのだ。飲食店の数からいったら、日本の何倍もある。あっち向いてもこっち向いても食べ物食べ物食べ物のオンパレード。そういう状態にありながら、たとえ隣がガラ空きであっても、評判の店にはずら〜っと並んで待つのである。クルマやバイクを乗り付けてでも買いに行くのである。この数日間で並んで買って食べたものを思い浮かべると……阿振肉包、胡椒餅、阜杭豆漿……どれも行列の意味あるよね!だったではないか。食べておけばよかった!としみじみ後悔するのであった。いいもん、また行って食べるもん。

これは今になって後悔しているだけであって、その時は2時間もあけずに同じ魯肉飯というのもちょっとね……という気持ちだった。ただ、何かちょっと食べてみたかっただけなのだ。地瓜の焼き芋は重そうだし、串焼きみたいなのにしようか、ワンタン春雨みたいなのにしようか、ウロウロ迷ったが、結局シンプルな乾麺(タレで和えた汁なしの麺)にした。小ならたった30元。看板に阿婆麺(多分“お婆ちゃんのおそば”って意味?)とある通り、ヒナコとどっこいどっこいのお婆ちゃんがお玉をカポカポさせて麺を作ってくれる。お向かいの果物屋さんで木瓜牛(パパイヤミルク)を作ってもらった。

雙城街の屋台ストリート、夜の部。ほどよいサイズのほどよい賑わい

蓮霧は、ワックスを塗ったようにツヤピカしている

ニンニクがっつりおばあちゃんの乾麺は、混ぜる前にヒナコがつまみ食いした痕跡あり。パパイヤミルクは懐かしのフルーツ牛乳をぐっと濃厚にした感じ

共用スペースの椅子とテーブルをひとつ占拠して、いただきま〜す!
蓮霧はナシのような歯触りで、でもあんなに水っぽくなくて、酸味も甘みもずーっと淡白にしたリンゴみたいな味。しゃくしゃくした食感でサッパリしているが、もうちょっと主張してもいいような。
私がパパイヤミルクを買いに行っている間に、ヒナコはこっそり乾麺をつまみ食いしていたようだ。「味濃すぎ! いらな〜い」などと言ってるが、混ぜないでタレの部分だけ食べればそりゃあ濃いと思うよ? いかにも台湾風な甘めのタレにがっつり効いたニンニク、たっぷりかかった香菜、細うどん風のツルツル麺、B級フードかくありきのお味♪ ちょっとクドめだが、この小椀だと飽きる前に食べ終わるのがいい。
パパイヤミルクは前にチェーン店の台北牛乳大王 [WEB] で飲んだのよりトロッと濃厚で美味しかった。値段も40元(台北牛乳大王は70元する)だし。やっぱり果物屋さんだからか、パパイヤを惜し気もなくドカドカ入れてくれてある。あの時は冬だったので、10月の今の方がパパイヤ自体が甘いのかもしれないが。

うーん、今日もよく食べました!
明日は帰国日だ。今日のように寝坊などすることなく、空港に向かう時間まで食を楽しむのだ!

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