Le moineau 番外編
イタリア〜スロヴェニア〜クロアチア漂遊
- ヴェネツィア共和国の栄華を辿る -

出発は雨に見送られて(旅の暗雲の暗示?)

出発の朝は今にも雨が降りそうな空色をしていた。自宅からの最寄り駅に着いたところでポツポツ降り始め、リムジン乗場に着いた時にはすっかり本降りになっていた。走り出したリムジンバスの車窓からの新宿の町には出勤していく人たちの色とりどり傘の波が連なっている。

予定しているアリタリア785便は13:15発で、ウェブチェックイン済み。11時半頃の到着でも構わないのだけど、10時半にはもう成田空港に着いてしまった。若い頃は遅刻スレスレで綱渡りしてたけど、最近では時間には余裕持たせておいて悪いことはないって思うようになっている。バタバタとパニクるとロクなことないからね。ま、私も歳を重ねてるってことかしら(^^)
スーツケースを預けて、5万円だけユーロを両替し、朝ごはん抜きだったので回転寿司で5皿いただき、展望デッキでぼーっと雨の中の離着陸を眺める。それでも時間があったのでカード提携ラウンジで柿の種をつまみにビールも飲み、メールなんかも書いてしまう。

そろそろ搭乗ゲートに行くかと腰をあげると、出国審査には導入されたばかりという顔承認マシン。あー、コレ、大型連休の時のニュースでやってヤツだぁ、わーい、初体験。ちなみに今のパスポート写真は満面ニッコリしていて若く写っている "奇跡の1枚" を使っている。なので同じ顔になるようにと、ついカメラに向かって微笑んでしまった。顔認証通過の場合はスタンプは必要ないらしいけれど、欲しい人には押してくれるので一応もらっておいた。だって、なんかさぁ、パスポートのページって埋めたいものじゃない?

フィウミチーノでのトランジットは長かった

成田は定刻に出発し、ローマ・フィウミチーノ空港には45分も早く18時15分に到着。そもそも乗り継ぎに3時間近くあるというのにね、さらに45分プラスとは……。でも3年前の乗り継ぎではもともと1時間半しかないのに成田便が遅れて、空港大疾走で駆け込んだんだから、あれに比べれば「時間に余裕があるにこしたことはない」。3年前はターミナル間の移動はバスだったので、よけいにイライラしたんだったわ。

国内線のターミナルまで延々と歩く途中には入国審査がある。行列しているのに開いている窓口は1つだけで、数人の係官たちは固まって談笑している。サボってんじゃねーよ!とつく悪態も心底からではない。私の前に並ぶ旅慣れたふうの中年夫婦が「こっちの人ってああいうの全然気にしないよねぇ」などと苦笑している。そうなんだよねぇ……と心の中で相槌打てるのも、時間に余裕があるからこそ。あり過ぎるから少しここで時間つぶししたいくらいだもん。とはいえ、私の後ろにもどんどん列は伸びてくるので、さすがの彼らもお喋りをやめて、ほどなく4つの窓口が開いた。

入国審査はいきなりサクサクと進んでしまい、まだ時間はたっぷりある。トイレでしっかり歯磨き、しっかり化粧直し。身なりに構う余裕があって元気なのは、飛行機の中でたっぷり眠ったから。私はエコノミーの狭さの中でも窓際席にぱっかり収まって熟睡する技術を会得しているけど、一昨年と去年は持ち込んだ本が面白過ぎるという失態を犯してしまった。今年は没頭してしまう長編小説は避け、適度に引っかかる文体の短編集にしたのだ。すらすら進みすぎず、ところどころで小休止できるこのチョイスは正解だった。おかげでそこそこ眠れて体力温存されているというわけ。

そうそう、水を入手しておかなくちゃ。免税店のような店を覗いてみたら、エビアンとかヴォルヴィックとかそういう銘柄の水が2本で€6とあって、憤死しそうになる。SALEみたいな赤字で2本でおトクみたいに装ってるけど、明らかにバカ高でしょ! 冗談じゃないわ。憤慨しながら別の売店に行ったら1本€1.80。高めではあるけど、まあこのくらいなら空港値段ということでやむなしかな。朝までもてばいいので1本だけ購入。

初イタリアごはんは空港バールのちょっぴり割高のパニーノと、1年ぶりのカフェ・マッキャート。パニーノは基本のハム&チーズをセレクト。ああーイタリアのエスプレッソ、やっぱりシャキッとするぅ〜〜〜

到着間際の機内食のせいで今はまだお腹は空いてないけれど、夜食も入手しておかないと。ヴェネツィアの空港着は23時近くなのでカフェやバールが開いているとは限らないもの。去年は夜中に空腹で眠れなくなったからね。到着日にきちんと眠れるかどうかは旅の明暗を分けるのだ。温かいうちに半分だけ食べて、残りはジップロックに入れてしまっておく。パニーノとカフェで€6.10。

ようよう時間をつぶし終え、搭乗口に並んでいるとスマホが震え、メーッセージが届いた。英文で「あなたの21:50のフライトは22:20に変更になった」とある。何、この間違いメール、ちゃんと定刻で今搭乗中なのにと思ったら……本当だった。ヴェネツィアへの最終便だから遅れた乗り継ぎ客を待っているのかも。そうか、ウェブチェックインしておくと、こういう連絡もスマホに届くのね。

無事にヴェネツィア─正確にはヴェネツィア・メストレ─到着

飛行機に乗り込んだまま延々と待たされ、30分どころか50分も出発は遅れた。機内で1時間以上はじっと待ってたことになる。本当なら到着している時刻にようやく離陸し、ヴェネツィア・マルコポーロ空港に降り立ったのは23:40になっていた。着陸の瞬間に後方で歓声と拍手が起こった。いやー、久し振りで飛行機での拍手聞いたわ(^^;)
到着時の機内アナウンスで、機長は一応「遅れてすまんかった」というようなことは言っていた。そんなことより心配なのは空港バスの時間だわ。ここまで遅くなると、残るのは0:20と0:50の2本しかない。0:20に乗れるといいんだけど。

私の荷物はなかなか出てこない。これは0:20のバス無理っぽいな、乗り遅れたら終バスだし、到着は1時を回っちゃうし、夜中に30分待つのも不安だし、タクシーにする? ぐるぐる考えていると見覚えのあるスーツケースが! ターンテーブルから引きずり下ろしながら時計を見ると0:08。うわ、微妙……。小さい空港だけどここに来たのは28年ぶり、改装されて綺麗になってほとんど初めてのようなところで、果たして10分でバス乗場を探せるかな? 無理だな、タクシーにするべきかな、うんそうしよう、到着早々なんだし安心はお金で買わなくちゃ……という決意は、タクシー乗場の長蛇の列を見ていきなり萎える。

ダメもとでバス乗場に行ってみよう。出口から道路を渡って直進するとATAC(いわゆる路線バス)の乗場があり、真っ暗で閑散としている。右に折れた方向に明るい人だかりがあって、そこが空港バスのATVOの乗場だった。S.Lucia と Mestre の表示がちゃんと出ている。タクシー乗場に並んでいたのは中年以降の人たちだったけど、こちらは学生のような若いコたちばっかりで蜂の巣を突ついたような大騒ぎ。彼らの中で一人旅のアジアのオバちゃんは浮きまくりだけど、値段的に時間的にもタクシーよりバスの方が賢いはず。切符はどこで買うのかとキョロキョロしていると、係員の方から寄ってきてくれた。ヴェネツィア・メストレ駅までは€8。こんな夜中なのにほぼ満席状態のバスは、20分弱で到着した。

今回はヴェネツィア空港でイン・アウトだけど、ヴェネツィアに行くのは旅のフィナーレに決めているの。だから最初はヴェネツィア本島にはあえて近づかないの。ヴェネツィア以外の町に遠征するつもりでメストレ基点に3泊する予定。

>> 本土側のメストレから本島までは、列車でもバスでもトラムでも所要時間は5〜10分、早朝から遅くまで頻発しているので、"メストレから本島に通う" というのもホテル代節約の裏技らしい。ただヴェネツィア本島の宿泊費がバカ高すぎるので、あくまで比較の問題だけで、客観的に考えるとホテルランクや設備の割にはメストレだって安くない。特に駅近は

予約したHotel Paris(ヴェネツィアなのになぜかパリ……)はシングルが€80もしていたので、最初は候補に入れてなかった。駅から徒歩10分も離れると手頃な中級宿は多くあったけど、途中に公園があったり路地に入り込むので、深夜着だとやっぱり危険。それに列車で遠征するんだから駅前がいいに決まってる。でも予算的には一泊€60くらいで押さえたいよなあ……と、ここより若干格落ちの駅近ホテルをふたつほど検討していた。航空券購入後も迷っていたら、Booking comのタイムセールで33%引き、さらにGenius特典もかかってダブルのシングルユースが€69というのが引っかかったわけ。候補2ヶ所より広くて駅に近い! 朝食なし返金不可のプランだったけど、これは買いでしょ!と即押さえしたという経緯。

空港バスはメストレ駅の東側に到着し、ホテルは西側なので、駅前を一直線に歩いて5分ほど。バスのトランク付近でワイワイ騒いでいる若者たちのすき間からスーツケースをさっさと引き出して、ストリートビューで予習済みのルートを一目散に小走り。だって、深夜1時近いんだもん、やっぱりちょっと怖いよね。

迷わず到着したものの、ホテルは看板も消灯されていて、さらにエントランスには鍵がかけられていた。ガラス戸の奥には小さなロビーが見え、うっすらと小さな灯り。ええっ!? 到着が夜になる初日は24時間フロント常駐のところを選んでいるのに! あらかじめ「遅くなるけど部屋は確保しておいてね」とメールもしてあるのに! どうして! こんな夜中にどうすんの! 疲れも相まって頭に血が上って扉を乱暴にガチャガチャ、渾身の力で押す引っ張る、ドア横のブザーに気づいてピンポン連打……と同時に奥から男性が走り出て来た。ああ〜よかったぁ。でも、ちょっと恥ずかしくなって「キャンセルされたかと思って……」などとモゴモゴ。男性は40代くらいで小柄ながらもイケメンで、こんな無礼な私に対してもとてもニコニコ感じがよかった。

部屋はさほど広くないけどベッドが大きいのは嬉しいな。内装は飾り気なくシンプルで、良くも悪くも普通のビジネスホテル。€69ならこんなもんでもいいけど、正規料金が€120近いっていうのはやっぱり高いよね。一人旅だと宿泊代だけは割高だわぁ

乗り継ぎに4時間半もかかったけど、ちゃんと着いたので良しとしましょう。部屋に落ち着いたらやっぱり小腹が空いていることに気づいた。半分残しておいたパニーノを食べて、サッとシャワー浴びて、1時半には速攻でベッド入り。気温は12℃くらいで寒い。天気も下り坂で予報では雨続き、週末はさらに荒れて雷雨になるかもとのこと。アドリア海の青い海……どうなることやら。




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