帰国の朝は早よからイロイロ面倒だ

最初に目覚ましのアラームは5時半にセットしたのである。
ヒナコに「明日の朝は早いからね」と伝えると「何時に出るの?」と尋ねるので「うーん、6時ちょい過ぎくらいにチェックアウトすればいいかな」と答えた。朝食摂るわけでなく、顔洗って着替えて化粧するだけでしょ? 30分あれば普通は大丈夫でしょ? 案の定ヒナコは難色を示す。
「30分じゃ無理よ」
「だって朝ゴハン食べないよ? だから食後の念入りな歯磨きも必要ないし、薬の服用まで時間をおいて…ってのも必要ないよ?」
「無理。4時に起きる。やっぱり4時半」
押し問答の末、間を取って5時にしたのである。だけど、ヒナコはアラームの鳴る前から起きてなんだかゴソゴソやっていた。まあ、いつものことなんだけどね……。こういうことが面倒だから、早朝出発というのは極力避けていたのだが、今回の場合は仕方なく。

朝6時のレセプションなんてガラガラだろうと思っていたら、何組か客がいた。
エアポート・エクスプレスの往復チケットを買ってあるので駅に向かう。初日のロイヤルパシフィック同様、このホテルも無料シャトルバスの経由ルートに入っているのだが、今日は時間が早過ぎて使えない。6時15分からなのである。
お土産でぱつんぱつんになったバッグと紙袋をよいしょっと持ち上げ、ロビーから出ようとすると一人のおっちゃんが寄って来た。
「タクシーか? 空港か?」
「いや、九龍駅」
「空港まで200H$でどうだ」
「ノーノー、カオルーンステーション!」
他の空港行きの客を捕まえるつもりか、彼はあっさり離れていった。ふーん、ホテルのロビーに入り込んで客引きですか……。
ホテル前のタクシースタンドには3台が客待ちしていたが、今声をかけてきたのは一番最後尾の運転手だった。おい! 順番抜かしなのかよ? 私はちゃんと列の順番を守る日本人なので一番先頭の車に近寄っていくと、2台目の車の窓がスルスルと開き、運転手が首を出して「空港まで200H$!」と叫ぶ。
私は順番守るし、だいたいタクシーで直接空港へは行かないよ〜。ノーノーと首を振りながら先頭の車のドアを開け「九龍駅」と伝えて乗り込む。運転手は頷いて車を発進させたが、ハンドルを握りながら振り返って「空港まで200H$」と言う。
「ノー。九龍駅」
「200H$。サービス価格だ」知ってるよ。空港から九龍半島エリアまで280H$前後ってガイドブックに書いてあったから。
「ノー。九龍駅。私は列車を使う」
「200H$。15分で着く」あーもー200H$200H$うるさいッ!
「必要ないッ! 私は列車チケットを持っているのッ!!」
ちょっとキレ気味だったが、さすがに運転手は黙った。ふー……。ヒナコは何を問答しているのかちっともわかっていないようだった。

断固として固辞しても運転手は別に気を損ねるでなく、するすると九龍駅に到着。この時間だとまだ空港から駅に到着する客がいなくて復路にウマ味がないのかもね。とりあえず言ってみて、客が「うーん、じゃ面倒だからこのまま空港行っちゃおう」って気になったらラッキー!という程度なんだろう。

九龍駅と香港島駅では、エアポート・エクスプレスのチケットを持っているとインタウン・チェックインが出来る。かつての箱崎のT-CATみたいなもので、ここで搭乗手続きして荷物預けてボーディング・パスも発券されちゃうのだ。一番大きなバッグを預け荷物にし、お土産のお菓子がギュウギュウ詰めになっている紙袋(外側をガムテープぐるぐる巻きにしてあるのでバラけない)も預けたいと言ったら拒否されてしまった。ガムテぐるぐる巻きの段ボール箱ならOKで、紙袋(正確にはビニール製の持ち手つきショップバッグ)がダメなのは何故なんでしょ?

仕方ないので紙袋は手で提げて空港へ向かった。空港から市内へ向かった時もそうだったが、やはり車内はガラガラだった。荷物を預けて身軽で楽ちん……と喜びたいところだが、荷物置き場も座席もガラガラで大型スーツケースだろうがサーフィンボードだろうがコントラバスの楽器ケースだろうが置き放題だ。もう自分の座席は確保したゾ、搭乗口に向かうだけだゾ、という妙な安心感はあるけれど、空港着いてチェックインしたとしても時間的にはたいした違いはないんだろうなあ。駅でのインタウン・チェックインは早朝5時半から可能なので、早朝一番の便から間に合うし。……それにしてもガラガラだなあ、バスなどに比べて高いからなんだろうが、採算合うんだろうか? でもまあ、到着の日は深夜で今日は早朝だ。無料シャトルバスも始まっていない&終わっている時間なのだから、あまり参考にはならないか……。無料シャトルの恩恵には与れなかったので、高いチケット(香港の公共交通機関としては)を買ったメリットをとりあえず実感したかったのかもな、私。

旅の最後を飾る飲食は……

空港には順調に着いたが、順調過ぎて時間を持て余した。『許留山』でマンゴデザート食べ納めが出来れば願ったりかなったりなのだが、あいにく11時半からの営業だ。他のカフェや飲茶の類いも10時や11時頃からか、早くても8時。私の乗る飛行機は8時20分発なのよぉぉ。ようやくセルフスタンドのカフェを見つけてカフェオレを頼んだら、砂糖入りだった。ああ、思い出したよ、香港のコーヒーはあらかじめ砂糖が入っていることが多いんだった。でもさあ、空港のようなインターナショナルな場所でそーゆーのやめて欲しいんだけど! そういえば昨日コンビニで買った牛乳も甘かったっけ。カフェオレに砂糖が入っていたのではなくて、ミルクが最初から甘かったとか??

まさかカフェオレをハズすとは思わず、がっくりうなだれて機上の人となった。往路で証明済みだったが、やっぱり機内食はスペシャル不味かった。そもそもエコノミーのミールだし、所詮作り置きの温め直しの食事なのだから限界はあるのだが、それを差し引いても米系の会社の機内食は群を抜いて不味過ぎる。日本の居酒屋より高い有料アルコールなんか飲む気もしないし、コーヒーも紅茶も薄くて香りもへったくれもないし。たった4時間しか乗らないで済むのが唯一の救いだ。

13時55分の定刻に10分ほど遅れて無事成田空港に到着。
この旅行記を最初から読んでくれた方はご存知だろうが、私はやりかけの仕事を中途のままでこの旅行に出た。出発の日は空港に向かうギリギリまで飲まず食わず眠らずで出来るところまで終わらせたが、なにしろやりかけなんだから、状況次第では空港から仕事場直行も覚悟していた。とりあえず滞在期間中にメールチェックだけはしていて、「思ったほど原稿整理が進んでいないから、気にしないでゆっくり休暇を楽しんでくれ」という連絡が来ているのを確認はしていた。だから、到着して最初に仕事相手への「無事帰りましたあ!」の電話。当時は新型インフル・パニックの最中だったので、何が怖いって感染して足止め……だったのよね。

とりあえずこの後の事務所直行はしないで済むことがわかると、お腹が空いてきた。同時にスペシャル不味い機内食のリベンジを果たさねば!という気持ちになった。普段の私の海外旅行の〆行動はいつものラーメン屋でネギたっぷり支那そばを食べることなんだが、今回は美味しい麺を毎日食べていたのでラーメン方向に食指が動かない。滅多に空港での食事はしないのだが、なんとなくレストランフロアまで行ってみた。そしてなんとなくフラフラ漂いながらサンプルの並ぶガラスケースを眺めていると……うどんチェーンの『杵屋』の三色冷やしうどんの扇情的なお姿に視線がロックオン! 横を見ると、ヒナコの視線も同じところで固まっていた。顔を見合わせて無言でコクコクと頷き合う。ほい、これに決定!

白いうどんと、梅を練り込んだうどんと、青菜を練り込んだうどんが蒸篭に乗っているだけのもの。いやー、冷たくてツルツルして美味しかったよ〜〜。あんなに美味しいモノいっぱい食べてきたのにね。最近、観光客誘致に力を入れているマカオ、思いのほか面白かった。食事が美味しいっていうのがよかったな。香港旅行のオプションのようでいて全然違う。今回、香港がトランジットに毛が生えた程度の滞在しか出来なかったのがちょっと残念だけど、いろんな意味で変動していくアジアを感じられたことは確かだ。でも、最近の自分のココロは香港より台湾に向いているんだよな……。

次の休暇はどうなるだろう? またマイレージ消えそうになって『ちょこっと加算旅』するんだろうか(笑)。念願のクロアチアに行けるかな、近場でお茶濁すのかな、中部フランスの旅ってのにも惹かれつつあるんだよな。さて………?

--完--

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