Le moineau 番外編

いわゆるひとつのプロローグ

なぜ発作的かつ衝動的に台湾行きなのか。ちなみに私は、中華圏の国や地域では、台湾が一番好きだ。大きな声では言えないが、大陸は苦手である。あの国で個人旅行をする気持ちにはなれない。香港もいいが、ちょっとエネルギッシュ過ぎる。10年以上前ならあのエネルギッシュさと猥雑さにワクワクしたのでもあるが。そういうわけで、台湾の中国的喧噪を持ちつつもどこかゆったりした穏やかさが好きだ。年とったのかな、私(笑)。

ホントはクロアチアに行きたいと考えていて、なんとなくプランも練っていたのである。しかし、しがない個人事業主な私は、いくら夢見て計画を練ったって、日程的&金銭的にいろいろ事情が許さないのである。ヨーロッパ行きを躊躇してしまう第一の理由は、とにもかくにも、原油高騰による燃油サーチャージのバカ高さ! 10〜15万円の航空券に5万円以上プラスしなくてはならない。これはもう「付加」なんていう範疇の金額ではない。

そんな時、新聞の日曜版に「鼎泰豐」の小籠包の記事が出ていた。ああっ、小籠包、食べたいッ! 食べたいったら、食べたいッ! そうだ! 台湾に食べに行こう。他にもおいしいモノ食べに行こう。台湾なら日程的&金銭的になんとか事情が許せるはず……。

3年と9ヶ月前、台湾食い倒れ旅に出た私は、ペース配分とメニューの組み立てに失敗した上、温泉に湯当たりして、ホントーに倒れた。新北投〈シンペイトウ〉温泉というところに行ったのだが、ここはかなり強酸性のラジウム泉であった。放射線を排出する北投石──これが私には徹底的に成分が合わなかったようである。(後日、日本で北投石使用の岩盤浴をしたところ、翌日まで頭痛と吐き気が消えなくてツラかった)

雪辱を果たしに行くのだ! 待ってろよ、台湾の旨いモノども!

台湾や香港など中華美食エリアに行くと、「一日はどうして三食しかないの?」などと思ってしまう。「掃除機のごみパックのように胃袋を取り替えられたらいいのにな」とか「もうひとつ胃袋を外付けに出来たらな」とか「クレジットカードの限度額一時引き上げのように胃袋の許容量をあげられたらな」とか考えてしまう。
それでもまあ、4年前とは若干条件は違う。私の胃袋の基本容量が増加しているということだ。はい、はっきり言うと、つまり、その、あの時に比べ格段に太った、ということである。言いたくないんだけどさぁ………、中年太りってやつ? 国保から検診のお知らせ来てたっけ。食い倒れなんてしている場合じゃないじゃん。

でも、いいのだ。その件は数日間保留にしておくことにする。ホントにいいのか?

旅のお供は、旅雀放浪記ではおなじみ、我侭いっぱいの老母ヒナコである。彼女にとっての台湾はかなり久し振りになる。年寄り連れであるからこそ、身体をこわすことなく美味しく食い倒れるには綿密な計算が必要だ。目についた美味しそうなモノを無計画に食べていてはいけない。そして注文したものを大量に残せない性格の私は、ヒナコが「これまず〜い」「もうお腹いっぱ〜い」などと投げ出したモノを責任持って自分の胃袋に収めないではいられないのである。とほほ。
そのために私のした下準備。食べたいモノをウキウキと手帳に書き連ねた。何ページにもわたった。なんだかあんまり「計算」とはいえない気もするが、いいんだもん♪ この段階が楽しいんだもん♪

旅は早朝スタート、一路台中へ

前回の台湾旅行記を見てみると、宿泊と航空券のみの格安パックで30,000円弱で行っている。原油高騰の昨今そこまでの安値は望めないし、随所で待ち時間の多いツアーは、私にとってはやっぱり面倒臭くて肌に合わない。
チケットは、チャイナエアラインの成田午前発・台北午後発のものを33,000円ほどで見つけた。現地での時間が有効に使える往路午前/復路午後のチケットは、午後や夕刻発のものに比べてかなり高くなるはずなのだが、2〜3,000円しか違わなかった。しかし、それにしても! 3万ちょっとの航空券にプラスする燃油サーチャージが15,000円というのは、あまりにも暴力的である。

チケットを手配しホテルを予約してウキウキ待っていると、台湾を台風15号が襲った。出発の一週間前なのでちょっと心配だったが、次の16号はフィリピンあたりにちんまりしているだけ、さらに17号が突然発生してそれがものすごい大型だということもあるまい。まあ、その時はその時だ。果たして直前の週間予報では(台風に関しては)問題なさそうだった。

新宿駅6時半のNEXで空港へ向かう。空港はそこそこ混んではいたが、出発便の多い時間帯にしてはそうでもないのかもしれない。原油高で旅客が減っているのか、三連休の一週間前だからか、日曜日でビジネス客が少ないせいか。

9時40分、きちんと定刻で機体は成田空港を飛び立った。台北・桃園国際空港には僅か3時間半、食事して文庫本でもパラパラ眺めているうちに着く距離である。
ところが、離陸してしばらくたち高度が安定した頃、治療途中の奥歯がすさまじく痛み始めた。神経の治療はもう済んでいて、ひどく痛むはずはないのに、である。気圧が関係しているの? それは不明だが、機体が高度を下げるうちに痛みは徐々に治まり、着陸した時にはウソみたいにケロッとしていた。

混雑により上空でしばらく旋回していたが、到着は定刻より15分ほどの遅れですんだ。ATMで台湾元をおろし、観光局のカウンターでパンフレット類を拾い集め、トイレを済ませてバス乗場へ。今回は台北ではなく、まず台中〈タイチュン〉へ向かうのだ。
台中へは3つのバス会社から空港バスが出ているが、出口一番近くの飛狗バスのカウンターのおばちゃんが声をかけてきたので、ここから買ってしまう。台中まで250元。レートは台湾元1元が約3.3円なので800円ちょっとということだ。
おばちゃんは「イソイデ、イソイデ」と言いながらチケットを渡してくれる。よく見ると13:00発のチケットだ。現在時刻が13時15分なのに。ある程度座席が埋まらないと採算も合わないから、埋まるまで待っていたと思われる。おばちゃんの示す乗場へと急ぐ。

乗り込んだバスの車内は、飛行機のビジネスクラス並のシートが3列。ひじ掛け、リクライニング、フットレスト、前後の間隔、どれもゆったり。これは楽ちんだ。台湾はバス会社が乱立していて、値段や豪華さを各社競合しあっているという。ポンポンのついた水色のカーテンが今ひとつ場末の安スナックみたいな雰囲気を醸しているんだが、台湾的には「ゴージャス演出」のつもりなのだろう。台湾的ゴージャスバスは、ポンポンをひらひら揺らし高速道路をひた走る。

20代の運転手はジャパニーズポップスを低く流していた。あゆとか、ミスチルとか、である。走っている車も日本車が多いし、道路標識は緑や青に漢字の白抜き文字だし、車窓に見える看板も漢字だしで、なんだか「さくらんぼ狩り・食べ放題付バスツアー」かなんかで東北自動車道を走っているみたいな雰囲気。時々、屋根の上に金色の観音様が鎮座するハデハデなお寺が見えたりするので、やっぱり異国なんだなと認識するくらいだ。

ひた走ること約2時間、高速道からおりたバスは台中市の郊外にある朝馬ターミナルへ。このあと終点の台中駅まで市内何箇所かに停車していく。途中の長栄桂冠酒店前で車を降りた。今回の台中の滞在先はこの長栄桂冠酒店 [ >> WEB ] なのである。普段は中級クラスのリーズナブルな宿を選択する私が、空港バスが横付けするような高級ホテルを予約したのは、某サイトで秋キャンペーンのため格安になっていたのを見つけたからである。一番安いスーペリアクラスの部屋だが、ツインで朝食付き13,500円はこのクラスではかな〜りお得。

スーペリアといっても、部屋は広く、必要十分以上である。海外のホテルでは高級なところでも歯ブラシはアメニティにないところが多いが、ここはちゃんとある。浴衣まであった。寝巻きがあるというのは、日本の宿の「いい部分」なのだが、そこを真似してくれているのは嬉しい。

大仏さまの微笑みに逢いに

時刻は15時45分。ちょっとひと休みしたいところだが、明るいうちにさくっと観光を済ませてしまおう。台中市は地下鉄などの新交通システムはまだなく、路線バスオンリーである。市街地でのバスはお手上げなので、素直にタクシーを使うことにした。まずは、巨大な弥勒大仏が鎮座する寶覺寺(宝覚寺)へ。発音に自信はないのでメモに書いて渡すのだが、すさまじく画数の多い旧字は書くのも大変。

タクシーは「寶覺寺」と書かれた門の前で停まった。しかし、門も、その後ろの本殿らしきものも、足場が組まれてシートで覆われている。工事中? もしかして閉まってるの? 恐る恐る境内に足を踏み入れてみる。狛犬ではなく2頭の白い象さん、寝そべった布袋さまの小さな像と何かの碑、その奥の建物の裏に金色の大仏さまが文字どおり「どすん」とお座りあそばしていた。

私は弥勒と聞いて、奈良の中宮寺にある弥勒菩薩を思い起こしていた。同じ名前の仏さまでも、国が変わるとずいぶん様相も変わるものだけど、あのたおやかな流れるような気品ある姿とは、あまりにもかけ離れ過ぎている。そうか、あれは弥勒菩薩で、弥勒大仏というのは“布袋さま”のことか! この布袋さま、おそらくはコンクリート製なのだろうけれど、触ると柔らかいんじゃないかと思えるほど、目も鼻も唇も頬も顎も耳たぶも肩もお腹も足指までもが、ふっくら丸い。そして何よりも丸いのは、この福々とした笑顔! 対峙しているとこちらの口元も思わず緩んで、心の底から幸せな気持ちになってしまう。おヘソが丸窓になっていて、側面裏面にも窓がいくつかあり、かつては胎内巡りが出来たようだが、入口の扉は板で塞がれていた。

幸せオーラを発する笑顔の大仏さまの足元で、腕振り体操をするおばちゃんがいた。ただ腕を前後に振っているだけ。運動効果のほどは謎である

正門側からでは大仏さまは建物の陰になってしまうが、寺の右側からアプローチすると、道路からもよく見える
「誰かに似てる、誰だろう?」と思っていたが、後日写真を見ると内山信二だったことが判明。そっか、内山クンを金色に塗ると台中の布袋さんになるのね……

寶覺寺を後にして、比較的近くにある孔子廟へと歩く。確か17時で閉まるので、あんまりのんびりしていられないのである。
空は薄曇りで陽射しがガンガンしているわけではないが、身体がじっとりと汗ばむ。日本もほんの1ヶ月前までは同じくらい暑かったのだけどね。じんわりとする暑さだが、それでも台湾ももう夏の終わりなのだろう。

目が合った途端、ふさふさの尻尾を振ってくれた留守番中のワンコ。愛嬌ふりまき担当としては有能なようだが、おそらく店番は出来まい

孔子廟へは年寄りののたのたした足でも15分ほどで着いた。なかなか敷地は広く、建物もいくつもある。色彩は中国的で派手なんだけど、綺麗に調和しているし、建物や庭の配置が奈良のお寺みたいで、あまり違和感がない。この後いくつか寺や廟を巡って気がつくことなのだが、台湾の鐘楼は鐘と太鼓が対になっている。狛犬は“阿吽”でなく、両方とも口を開けている。(たまに“阿”と“吽”になっているものもあったが)

孔子さまは学問の神様だから、台湾の受験生たちもシーズンにはお参りに来るらしい。回廊の横の扉を覗いたら、学習室になっていて、小中学生くらいの子供たちが参考書やノートを机に広げていた。
17時10分前、なにやら胡弓とか二胡とかのような中国的音楽が流れ始めた。日本における閉館閉店の定番メロディ『蛍の光』『ドボ9・第二楽章(家路)』ということなんだろう。係員らしき人が回廊の扉を閉めたりしている。やっぱり5時でクローズなんだ。

孔子と弟子を祀る大成殿の石段には、なかなか見事な龍の彫刻があった。
あちらもこちらも中国的な派手な色彩なんだけど、綺麗に調和している

すぐ近くの歩道橋の上から眺めた孔子廟

懐古的町中で美味飲食

ああ、お腹が空いた! 台湾フードを一種類でも多く食べる心づもりだから、朝5時起きだったにもかかわらず、まだショボイ機内食しか口にしてない。
孔子廟の近くには、名物レストラン台灣香蕉新樂園 [ >> WEB ] (台湾バナナ・ニュー・パラダイスの意)がある。何が名物って、店内には戦前の頃の台湾の町並が再現されているのである。池袋のナンジャタウンや横濱のラーメン博物館みたいなものと思えばいい。戦前といえば、日本が台湾を統治していた時代である。イコール“戦前の日本の町並”に近いということだ。

レストランの外観はコンクリートのそっけない建物だが、入口横に古い青い列車車両がどーんとあるのが目印。昔台湾を走っていた車両のようだが、なんと東急電鉄製である。“鉄分”の高い人は喜びそう。
店内に入ると、そこに広がるはノスタルジー満載の町並が広がっていた。まだ生まれていない時代のはずなのに、懐かしさを感じるのは何故だろう? いろいろな商店が立ち並び、店内に当たる部分にも往来に当たる部分にもテーブルと椅子が並んでいる。どこに座ろうか悩んで、写真館を模したスペースの奥まった席に落ち着くことにした。

タイムスリップしたかのような店内。床屋さん、歯医者さん、駄菓子屋さん、自転車の修理屋さん、写真館に映画館、古いタクシーもあるし、ポストもある。雑貨屋の壁には懐かしいブリキの看板(「金鳥」なんてのも!)

夜、茶藝館に行くので、ここでは軽く小腹を満たすにとどめることにした。私は台湾ビール、果物好きなヒナコにはこの店の名物・水果茶(フルーツティー)をオーダーした。ビールが大瓶だったのは構わないが、フルーツティーのグラスが1リットル入りだったのはびっくりした。たくさんのカットフルーツが入っていて、ヒナコが食べやすいよう取り出してあげたのだが、ご飯茶碗に2杯分はあった。うろ覚えだが、オレンジ、レモン、キウイ、パパイア、マンゴー、リンゴ………(そういえば、「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね」とかいう歌があったような?)。フルーツティーというよりは、どことなく紅茶の風味がついた薄いミックスジュースみたいな味だった。

しっかりした食事メニューが出るのは18時以降で、まだ“ティータイム”の時間区分なのだが、お腹を満たしてくれそうなものはたくさんある。芋泥芝麻球(タロ芋ゴマ団子)、小吃の定番蘿蔔(大根餅)、港式海鮮湯包なるものを頼んだ。

芝麻球は揚げたて熱々、タロ芋の餡は、こし餡に比べて甘さが優しい。
港式海鮮湯包は単価が若干高めだったので量が多いのかと思ったら、小さな器でお上品に登場した。「港式」とつくので、香港風ということだろう。トロみのあるスープに、白っぽい皮(多分材料は米かと)でいろんな具を包んだものが入っている。まずは、トロみのあるスープを一口。貝柱の出汁が効いていてあっさり薄味だが、どことなく肉系のコクもあって、なかなか格調高いお味である。もっちりツルツルした皮の中には、貝柱や小海老や筍や茸などがたっぷり入っていた。黒酢が添えられていて、ちょこっと垂らしても美味しい。高めの単価は、このふんだんに入った貝柱の値段ということか。
とはいえ、合計で425元(約1,400円)。この店は台湾では高めの部類とのことだが、日本での感覚に比べればまだまだ安い。

フルーツティーは1リットルグラスで出てきた。果物もこれでもかと入っていて、ドリンクというよりは「紅茶風味薄甘シロップたっぷりフルーツポンチ」というモノに近い

熱々ゴマ団子

中身は優しい甘さのタロ芋餡だった

ツルっとした感触が嬉しい大根餅。この店のタレは塩けと甘さとピリ辛さがちょうどいい。甘ったる過ぎるところあるからね

軽やかで上品な味の香港風海鮮皮包みスープ。蟹でなくカニカマだったのは御愛嬌

とりあえず空腹を満たしたところでホッとして、少し店内を見て廻った。みんなカメラ片手に撮影に余念がない。私たちが入店したのは17時頃でまだ客もまばらだったのだが、18時半を過ぎて席もずいぶん埋まってきた。いったんホテルに戻ることにしよう。

註)ちなみにこのお店、最低消費金額が100元だか120元だかに決まっている。飲み物ひとつでは100元に満たないので注意。

タイムスリップしたかのような空間から外に出ると、日はとっぷりと暮れていて、これもまた一瞬別世界気分。とりあえずホテルに戻りたいのだが、流しのタクシーが拾えるまで15分ほど歩かなくてはならなかった。

哲学的趣の茶藝館で思索にふける

ホテルに戻ってしばらくひと休み。TVをつけてみると、NHKのBSハイビジョンが映った。ちょうどイタリアの絶景がどうしたこうしたという番組をやっていて、これが結構面白く、おまけにTVは我が家のよりずっとデカくて新しいものだったりするしで、真剣に見てしまい、気がつくと8時半を回っていた。いかん、いかん。NHK見に来たわけじゃあないのだよ。

再びタクシーで目当ての茶藝館、無為草堂 人文茶館 [ >> WEB ] へ。
車のガンガン走る大通りに面して、見落としてしまいそうな小さな門がひっそりとある。夜だけにそのひっそり度は尚更で、自分で歩いて来たのじゃ見つけられないかもしれない。門をくぐると、台中の市街地とはとても思えないゆったりと穏やかな空気が流れる空間があった。

敷地は400坪もあるらしい。中央に配置された池のぐるりを、二階建ての木造の建物が取り囲んでいる。大きな座卓を置いた畳の部屋に腰を落ち着けた。週末などは混むのかもしれないが、日曜の9時近く、私たちを含めて4〜5組ほどしか客はいない(と思われる。広い店内に点在しているようなので不明)。

「無為」とは、老子の思想がお手本だそう

香りも味も、私の好みには少し軽過ぎたお茶だったが……。こういう茶芸セットは見ていて嬉しい

お茶は花の香りがするという瑞里金宣茶を選び、お茶請けを注文する。お茶請けといったって、立派に食事になるようなものもいっぱいあるのだ。
まず、黒椒毛豆なるもの。固めに茹でた枝豆なのだが、日本のように塩をふるのでなく、粗挽き黒胡椒と少量の油で和えてある。胡椒粒がかなりピリピリと辛いが、めちゃくちゃ美味しい。私もヒナコもものすごく気に入ってしまった。塩も旨いが、胡椒も旨い! 来年の夏、露地もののしっかりした枝豆が出たら、是非作ってみよう!

それから、てんぷら。日本と同じで「天婦羅」と書くが、その実体は薩摩揚げである。この店では「甜不辣」の文字を充てている。「甘い」意味の「甜」と、「辛い」意味の「辣」の間に「不」を挟むのには、どういう意味があるのだろう? などと、ちょっとこ難しいことを考えたりしたが、一口運んだ途端、鳥頭なのでさっさと忘れる。お、お、おいし〜〜い♪ 南瓜餅は小ぶりのパンプキンコロッケだった。お菓子みたいにほんわかと甘い。

……ここまでは、メニューの字面から中身が想像出来、実際その通りのものが出てきた。
今回初めて出逢った味は豆干なるもの。お豆腐を押して水切りして乾燥させたものらしいということは前知識としてあったのだが、こんな黒い消しゴムみたいな外観をしているとは思わなかった。表面はラミネート加工したような軽い弾力がある。中身は確かに水分の少ない豆腐なのだが、日本の高野豆腐などとは全く食感が違う。食感も違うが、風味も独特だ。初めての味、なんだかクセになりそう。

これだけでもかなり腹は満足するのだが、一応食事として鶏絲麺なるものも注文した。鶏ガラスープの鍋焼き素麺。シュウマイとか麩とか卵とか里芋とかカマボコとか、いろんな具が乗っている。あっさりしていて美味しい。

枝豆は可愛いハート形の器に入って出てきた

カボチャコロッケ(奥)はほんのり甘くて、お菓子のような味わい。
薩摩揚げは、かなり粗挽きで魚肉の食感が残っている。何を使っているんだろう? トビウオみたいな味だけど

黒い消しゴムみたいな外観の豆干は、初めて食べる味

素麺というよりは冷麦くらいの太さ。つけ合わせは、太い茎わかめの醤油唐辛子煮。チューリップ模様のなるとが可愛い

店の雰囲気も料理もとても素敵なのだが、さらに。
お茶を運んでくれた女の子が、ものすごくものすごく可愛い子だったのである。多分まだ10代、とにかく初々しくて。一番可愛かった頃の辻ちゃん加護ちゃんをさらに可愛く純粋にしたような……
ここでのお茶は、小さな急須(茶壺)と小さな茶杯(香りを聞く杯と実際に飲む杯がある)で淹れる、いわゆる「工夫茶」というもの。ちまちまとした“おままごと感”がちょっと楽しい。私は一応手順は知っているのだが、うろ覚えだったので、一煎目はお店の人に淹れてもらうつもりだった。

で、この台湾の辻加護ちゃん、お茶道具を運んで設置後、たどたどしい日本語で自分で淹れられるかを一応尋ねてきた。淹れてくれるようお願いすると、一瞬「あ、やっぱ、私がやらなきゃダメ?」みたいな表情が浮かび、それから「仕方ない、よっしゃ」という顔になった。淹れる手順も当然たどたどしく、ひとつ作業をしては「えっ……と、これでいい?」みたいにチラりとこちらを確認、こちらも「うんうんうん」みたいにニコニコ頷いちゃったりして。とにかくもう可愛いから、ちょっとくらい間違えたって許しちゃう。
茶壺や茶杯や茶海などの道具を温め、茶葉を入れ、お湯を入れ、さらに茶壺にお湯をかけ、聞香杯に注ぎ分け、続いて品茗杯を………台湾の辻加護ちゃんはひとつひとつ思い出すように、たどたどたどたどと一連の作業をなんとか完遂、最後に「ふぅー、出来たぁ、終わったぁ」みたいにニッコリ安堵の笑顔。か、か、可愛い〜い♪ 茶芸というのは、味や香りだけでなく流れるような所作を観賞するものでもあるので、そういう意味では彼女は不合格なわけだが。いいんだよ、あれだけ可愛ければ!

彼女が去った後、ヒナコと声を揃えて「今のコ、可愛かったね〜〜〜っ」
あんまり所作は見ていなかった私たちであった。

大きなお世話ではあるが、この辻加護ちゃん、最近台湾の若者向け繁華街でも増え始めてきたという“メイドカフェ”などにいたら確実に一番人気となるであろう。いや、もう、ホント、大きなお世話であるが……

さて、肝心のお茶のお味だが、味も香りも全体的にあっさりし過ぎな気が。個人的にはもう少し主張したお茶が好みだな。でも茶葉はとっても良質のもの、しつこく何煎も淹れられた。

それにしても静かだ……敷地が広いし二階にも席はあるからはっきりとはわからないけど、私たちの他にはもう一組くらい残っていない感じ。足元に置かれた小さな火鉢の上では大きな鉄瓶が、しゅんしゅんと音をたてている。美味しいお茶請けをつまみ、香りのいいお茶を飲みながら、ゆったりのったりまったり時間を過ごす。どの料理もみんなお茶に合うなあ……。つまみつつサラサラと飲み続けられる。でも、これは酒のつまみにしても合うと思うぞ? 結論。茶藝館のお茶請けは一杯呑み屋の“あて”としても通用するお味であるということだ。

畳に座卓、藍染めの座布団……と、一瞬日本風だが、よく見ると細部はちゃんとチャイニーズしている

この建築様式を「草堂様式」というらしい。池の上に張り出した席も気持ちよさそう(でも蚊に食われそう)

「ぶきゅぱ きゅっぱん ぶきゅぶきゅきゅ」などと凄まじい吸い込みパワーで餌を喰らう池の鯉ども。

……怖かった

2時間以上ものんびりしてしまった。この場所は、陽光降り注ぐ時間帯に、暑さと喧噪を忘れてぼーっと過ごすのもいいかもしれない。茶葉は半包のものを買ったので、料理をたくさん頼んだ割には金額は張らなかった。全部で850元(約2,805円)。

タクシーを呼んでもらって帰路につく。ホテルまでは基本料金の85元で到着する距離。台中に着いて結構いろいろ楽しんでしまったので昨日からいるような気分だけど、今朝早くに東京の自宅を出たのだった。5時起きなのでさすがに眠い。

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