Le moineau 番外編
- 紺碧のイタリアとクロアチア歩き -

甘いものたっぷりで朝から血糖値アゲアゲ朝ごはん

身体がゾクゾクっとしてハッと目が覚めた。部屋の照明は煌煌とついたまま。はめっぱなしの腕時計を見ると午前2時10分。なんだよー、昨日と同じ時間に目が覚めちゃったよ。えーーと……昨晩は21時40分くらいに部屋に戻ってきて……ちょっとネットやって……スマホ握りしめたまま服も着替えずベッドに突っ伏していたみたい。いや、無意識にボトムだけ脱いでいて、ショーツ一枚で尻丸出しだった。どうりで腰回りが冷えるわけだ。

とりあえず寝間着に着替えて、きちんと毛布をかけて寝直して、再び目覚めたのが4時20分。そこから先はちゃんと眠れなくて横になったままゴロゴロし、結局6時半に意を決してシャワーを浴びた。リズムがつかめなくて細切れにしか眠れないのも時差ボケの一種なんだろうなぁ……。その後もなんとなくダラダラぐたぐた、8時を回ってようやく朝食室に。今日は大きな移動はないし、時間に追われることもないので、ゆっくり朝食を楽しむつもり。

ハム2種類とチーズ、パンも2〜3種類はあるものの、ビュッフェテーブルの大部分占めるのは甘いクッキーやケーキ類

お菓子類の充実度たるやハンパなくて、それがまたどれもこれも美味しそう。ひととおり取ったら皿一枚がてんこ盛りに埋まってしまった。ハートのラテアートが施されたカプチーノがさらにテンションあげてくれる

朝食のサーブをしてくれたのは、おっとりと物静かな洗練された雰囲気の女性で、きっと彼女がオーナー夫妻の奥さんの方ね。私の他には連れらしき二組の初老のご夫婦、3人連れの中高年女性、客筋としては年齢層が高めでファミリー向けではない感じ。スイートルームは4人まで泊まれるし、リーズナブルに豪華な雰囲気に浸れるんだろうと思うわ。

たぶんホームメイドと思われるお菓子はどれも美味しかった。普段はあんまり積極的に口にすることのないメレンゲが甘さ控えめでサクサクだったのが感動。
大振りのカップに並々淹れられたカプチーノは、ハートのラテアートに一瞬感激したものの、薄かった。クロワッサンや甘いお菓子をじゃぶじゃぶ浸して食べるとちょうどよくなる濃さなのかも? イタリアでもフランスでもスペインでもみんな、ミルクたっぷりコーヒーやココアに甘いパンを浸して食べているけど、私はそれだけは真似しようと思えないんだよねぇ……。飲み干すとカップの底にパン屑が沈んでるのが嫌だし、コーヒーが油っぽくなるのも嫌。

ようやく果たしたラヴェンナ訪問、念願のモザイク巡りスタート!

ゆっくりした朝食後に、ゆっくり支度をして9時半に出発。今日は丸一日かけてラヴェンナの街歩きをする。駅から中心広場を経てB&Bまでの道筋や、トラットリアに向かう前にささっと巡った時、フェラーリ行列に阻まれて街路を歩いた時にも思ったことだけど、ラヴェンナの街並じたいはあまり特徴のない "普通のイタリアの町" だった。教会建築も外観は地味だし。だけど、その地味な教会の中──内部を彩るモザイク装飾がすごい!のだ。「ラヴェンナの初期キリスト教建築物群 Monumenti paleocristiani di Ravenna」として世界遺産に登録されている。私はタイル装飾とモザイク装飾に弱く、見ていると身体の中からワクワクし、心の底からうっとりしてくるの。

「教会群」と呼ぶように、世界遺産に含まれるモザイクの教会はいくつもあるけれど、まずは教会群の筆頭に当たるサン・ヴィターレ聖堂 Basilica di San Vitale から巡っていこう。ラヴェンナへの観光客はボローニャあたりから日帰りで来る人が多いので、彼らがまだ着いていない空いてるうちに見学できるのは宿泊者のメリットだもんね。サン・ヴィターレ聖堂は駅から一番離れているけれど、宿からは徒歩5〜6分の近さ。居住区の路地を辿ると聖堂の裏手に出た。

せっかく数分で聖堂裏手に到着できても、敷地ごとぐるりと柵囲いされていて入口は反対側みたい。さらに切符売場は入口近くにはなく、聖堂前のサン・ヴィターレ通り Via San Vitale にあるチケットオフィスまで買いに行かなくてはならない。これは "イタリアあるある" だから別に驚かないけれどね。オフィスといっても見た目は普通のスーベニアショップでしかなく、赤地の「BIGLIETTO-TICKET」の大きな看板が目立つことが救い。店内にブース式のチケット窓口があったので、5ヶ所の教会に入れる€11.50のコンビチケットを買った。ガイドマップもくれたけれど、B&Bでもらったマップの方がわかりやすそうだわ。

6世紀前半のビザンチン建築の聖堂は八角形をしたシンプルなバジリカだ。ファサードにも装飾などもほとんどなく、華やかさはない。ていうか、どこが正面とかいう概念はないのかもしれない

この聖堂の構造は教会建築の中でもかなり特異なものらしい。横壁を斜め方向から支える "フライング・バットレス" のようなものは、中世期のフランス・ゴシック建築を特徴だったはず

チケットを入手して戻り、青々とした芝生の敷地に立つ赤煉瓦の聖堂を見た時、何度も旅の同道をした母ヒナコのことを思い出し、ちょっとだけ目頭が熱くなった。一昨年亡くなった彼女もモザイクが好きだったなあ、見せてあげたかったなあ。まあ、10年くらい前から連れてくるのは現実的ではなくなっていたけどね(^^;)

さあ、長らくの懸案事項だったラヴェンナのモザイク巡り! クリムトが大きな感銘を受け、『接吻』などの作品に繋がったというラヴェンナのモザイク群……見てやろうじゃないの!

きらびやかに輝くモザイクに圧倒される

さまざまな色大理石を組み合わせた床モザイク、高く抜けた丸天井を支える8本の柱に施された彫刻、天井中央に描かれたフレスコ画……聖堂に入って最初に目に飛び込んでくるそれらは、とても美しくはあるけれど、ここで鑑賞すべきメインのものではない。入口からまっすぐ進んで丸天井の下に立ち、おもむろに左側の後陣へと視点をずらしていく。まだ遠目のうちから、きらびやかに輝く世界があることがすでにわかる。その神々しい輝きの方向へ少しずつ視線のピントを合わせながらゆっくりと一歩一歩。

私が知っている "いわゆるキリスト教会の主祭壇" のようなものはないけれど、本来なら祭壇が設えられているべき場所の真正面に立った瞬間、思わず感嘆のため息が漏れた。なんて、なんて、なんて素晴らしい色たちの奏でるシンフォニーなのかしら! ああ、ずっと逢いたいと思ってたの、やっと逢えた………

聖堂に足を踏み入れて最初に目に入ってくるのは床のモザイク。緻密で美しいものだけど、特に囲いもせずに観光客にずかずかと踏みつけさせているということは、古くもなくて価値もさしてないものってことよね。

柱に支えられた丸天井には、赤茶系のシックな色合いのフレスコ画が描かれ、草花モチーフの装飾で彩られている。でもこれも後世で付け足されたものだと思う

モザイクで彩られた内陣は遠目にあっても神々しく輝き、窓からの採光も加味されて、まるで発光しているかのような……

側壁上のアーチに描かれた旧約聖書の『アブラハムのもてなしとイサクの犠牲』のエピソードのシーン。テーブルにピッツァみたいなものが並んでる! もてなしてる??

対面のアーチにも旧約聖書から『アベルとメルキセデクの捧げ物』のシーン。天上から『全能の神の手』がおりてきている

私のカメラではここまでのズームが限界。後陣天蓋の半円球には『サン・ヴィターレと司教エクレシウスを両脇に従えるキリスト』。若きキリストは地球のような球体に腰掛け、両脇に2人の天使、さらに外側に聖堂ゆかりの聖人と聖堂を建てた司教の姿が描かれている

天井は、中央の『神の子羊』を4人の大天使が四方から支えているというデザインになっている。植物のような文様もとにかく緻密で美しい。天井アーチに並ぶ円形のメダルの中にはさまざまな表情の聖人たちの顔が

モザイクの絵柄は基本的に旧約聖書を題材としているらしい。新約聖書でもエピソードがわからないのに、旧約聖書だなんて、どの場面で誰が描かれているのかちんぷんかんぷん。ただただ、うっとり見るだけしかできない。わずか1cmにも満たない小さな色片をちまちま組み合わせてこれだけのものを描いているなんて! 気の遠くなるような作業だこと。
全体を引いて眺め、近寄って眺め、双眼鏡で細部を眺め……反っくり返ってばかりで首は痛くなるし、双眼鏡のピント合わせで目の奥も痛くなったけど、この美しい世界ではそんなのは些細なことだわ。

天蓋のキリストの顔が可愛らしくサッパリした顔立ちに見える。なんでだろう? 見つめているうちに気がついた。あれっ? キリストが短髪だし、髭もない! それで10代の少年みたいに見えるんだ!

>> "髭なしのキリスト" は若さと知恵の象徴なんだとか。"髭あり" で描かれ始めたのは4世紀くらいからだけど、12世紀頃まではいろいろな姿や年齢のキリストが混在していたらしい。今は "髭あり" "長髪" "面長でこけた頬" がスタンダードなキリスト像として完全定着しているけれど、本当のキリストがどんな顔だったかは誰にもわからない

サン・ヴィターレ聖堂の内陣モザイクを心ゆくまで堪能して、次は同じ敷地内にあるガッラ・プラチディア霊廟 Mausoleo di Galla Placidia へ。内部モザイクはビザンチン式のモザイクとしては最古のものだとか。

ガッラ・プラチディア霊廟はホノリウス帝の異母妹の墓で、ギリシャ式十字形の小さな礼拝堂。地味で素朴な外観で、この中に世界遺産のモザイクがあるとはとうてい思えない

紺色ベースなので全体的に色調が暗く感じる。サン・ヴィターレ聖堂よりは間近で見ることが出来るけれど、表情までもじっくり見るなら双眼鏡は必要

入口通路の壁面は大理石に覆われているけれど、アーチ型の天井には草花文様のモザイクが美しく残されている

地味で小さな建物に入ると、いきなり艶やかなモザイクに迎えられた。草花文様の施された短い通路を抜けると、中央のヴォールト天井には満点の星空が広がっていた。その天空中心には黄金の十字架。十字架を守るように四隅に4人の天使。赤色に縁取られた四辺のアーチ。アーチ下の壁面には採光の小窓があき、小窓の両側に聖人が立つ。一面に2人ずつの合計8人。小窓の下には水を飲む鳩。十字型の建物の入口通路以外の3方向には石棺があるので、ここが霊廟なんだとわかる。
廟内は8畳間ほどの広さしかなく、ここに10人以上の観光客がひしめいているので息苦しいような気がする。「墓」だと思うせいもあるのかな?

狭い廟内に団体客がどっと入ってきて、さらに熱気がこもってきたので外に出た。時計を見ると10時半。敷地内にはいくつかのツアー客グループ、10歳くらいの小学生たちの団体も何組も来ている。そうか、ラヴェンナ以外の町から来た人たちが到着し始める時間帯なのね。混んでしまう前にゆっくり堪能できてよかったあ!

地下に潜むかつての邸宅跡は想定外に素晴らしかった

次は近年になって発見されたというドムス・デイ・タッペーティ・ディ・ピエトラ Domus dei Tappeti di Pietra を見ておこう。
ドムス・デイ・タッペーティ・ディ・ピエトラとは「石の絨毯の家」という意味で、ビザンチン時代の私邸の床や壁一面に広がるモザイクがそれはそれは素晴らしいものなのだそうだ。世界遺産になってるモザイクはすべて教会建築だけど、貴族の私邸のものというのもまた興味深い。90年代に駐車場を作ろうと地面を掘ったら出てきちゃったそうで、それから発掘して整備して公開されるようになったのはここ数年のこと。日本のガイドブックには載っていないし、ネットの口コミもまだまだ少ないけれど、モザイク好きの私のアンテナにはちゃんと引っかかってたのよ。B&Bのオーナーもお奨めしてたしね。

旧市街内では町外れに位置するけれど、サン・ヴィターレ聖堂からはさして遠くはなく、観光客が普通に歩き回れる範囲内。地図に従って進むと、何の変哲もない裏通り角に写真入りの看板があり、折れてしばらく進むとまた同じ立て看板があった。矢印が指しているのは聖エウフェミア教会 Chiesa di Sant'Eufemia という裏ぶれた小さい教会で、ここが入口になっているらしい。看板で指示してくれてなきゃ、こんなの絶対に気づけないし、観光客には辿り着けないよ!

教会内部は外観の裏ぶれ具合と同様、小さくて狭くて、祭壇にも装飾らしきものはほとんどなくて、質素を通り越してもはや簡素。「この地味すぎる教会のどこにモザイクが?」と見渡すと、祭壇横の小部屋みたいなところから人の話し声がガンガン響いてきている。ちょうど祭壇の真裏が10畳くらいのホールになっていて、モニタから発掘の様子のビデオが流れていた。なーんだ、話し声の正体はこれかぁ。いくつか並んだ木のベンチに数人の先客がいたので、一緒に座ってしばらくビデオを見る。イタリア語のよくわからない説明を聞きながら周囲を観察したら、左手に通路が見えたので行ってみる。通路には売店があって、ここでチケットを買うしくみになっていた。

ちょっと高いなあと思いながらも€4払い、促されるままに奥の階段から地下に降りていくと、想像以上に広い地下空間が広がっていた。入口の教会の裏ぶれ具合から、ちょこっと床モザイクがある程度だろうと思ってたわ、ナメててごめんなさい。

地上からは想像できないほどの広い空間の床にびっしりとモザイク装飾が施されている。見取り図を見る限りでも、かなりの規模の邸宅だったことが窺える

『四季の精霊のダンス』のモザイク画。真ん前20cmくらいの位置まで近寄ってじっくり見ることができる。同じものが床にもあるので、これはレプリカなのかな?

これだけの広さでこの保存状態はなかなかのものだと思う。幾何学模様や草花文様や、部屋ごとに意匠が異なっていてとても美しい

見学通路の床のところどころがガラス貼りになっていて、間近で眺められるようになっている。この壺の模様は可愛らしくて、気に入ったもののひとつ

個人の邸宅のものなので、教会のモザイクほど色数はなく絵柄もこみいったものではないけれど、1cmにも満たない小さなかけらを組み合わせていく作業の手間は一緒だ。色数が少ないのはかえってシックで落ち着いた印象になる。そうよね、教会や霊廟は特殊な空間なんだから、自宅の床があんなにキラピカしてたら疲れちゃうわよね。
ゆっくり一巡りしてきたタイミングで、30人近くの小学生の集団が入ってきた。入口階段下のパネル展示の前で引率教師の説明が始まったので、見ようと思ってたけどやめにした。まあ、どうせ説明文をすべて読めるわけではないし。想像以上にドムス・デイ・タッペーティ・ディ・ピエトラはよかったので、時間に余裕があればぜひ立ち寄りをお奨め! キラピカモザイクから目先を変えて楽しめること、うけあい。

再びきらびやかなモザイク巡り

ドムス・デイ・タッペーティ・ディ・ピエトラを満喫し、次はドゥオモ Duomo o Basilica Ursiana へと向かう。カテドラルが建てられたのはラヴェンナが首都であった5世紀初頭だけど、現在は18世紀のバロック様式に改築されてしまっている。

世界遺産の教会群のせいで印象が霞んでしまうラヴェンナのドゥオモ。大きなクーポラや円筒の鐘楼は遠目にはなかなか目立つし、内部もそれなりなんだけど……

ドゥオモ前広場も、広場というよりはちょっとした緑地ロータリーのような感じで、人通りもクルマ通りもほとんどない。そろそろ歩き疲れたので休憩のタイミングなんだけど、ドゥオモ前ならカフェかバールがあるだろうと思ったのに、小さなピアディーナ屋が一軒だけ店を開けているだけ。仕方ないのでとりあえずドゥオモに入った。
内部は広くて明るく、バロック様式の三廊式の構造になっている。それなりに荘厳な雰囲気はあり、左右の礼拝堂はローマ風のバロック装飾が施されていてキラキラしているけれど、なにしろさっきまでのモザイクの印象が強過ぎてねぇ……。とにかく腰掛けてしばらく休憩したかったのよ。ぼーっと座って少しウトウトしたりしているうちに30分近くが過ぎていた。疲れた時に「教会で祈りを捧げてるふうを装ってうたた寝」ってのが習慣化しつつある私。

改築されてしまったドゥオモにはモザイクはないけれど、隣に附属しているネオニアーノ洗礼堂 Battistero Neoniano は創建当時のモザイク装飾が残り、コンビチケットで見られる。ドゥオモからほんの数m歩いただけなのに、ここにはたくさんの観光客がいた。ちょうど30人くらいの団体が入っていくところだったので、彼らが終わるまでしばらく外で待つ。今朝は曇り空で空気がひんやりしていたので、コットンセーターを着て出てきた。それでも涼しいくらいだったけれど、昼近くなってようやく陽射しが強くなってきて、洗礼堂横の花壇脇に立っているとちょっとじりじりしてくる。でも空気はサラリと爽やかで太糸のセーターでも暑くはなく、かといってTシャツでも別に平気だろうという気持ちのいい気温だ。

ドゥオモの左側に隣接したネオニアーノ洗礼堂は、小さく地味な八角形の建物。ドゥオモと同時に5世紀初期に建てられたラヴェンナ最古の建造物なんだとか

天蓋のモザイクには、キリストが洗礼者ヨハネに洗礼を受けている場面が描かれ、周りを12使徒が取り囲んでいる。さらに下方には旧約聖書の予言者たちのレリーフがある

サン・ヴィターレ教会のキリストや天使たちは可愛らしい顔をしていたけれど、ここの聖人たちの表情はどことなく精悍な感じ

団体客たちが三々五々に外に出てき始めたので入れ違いに堂内に入った。まだ10人以上が残っていて、ムッとした熱気と同時に目に飛び込んでくるのはきらびやかなモザイクの洪水! 狭い堂内の天井は高く、天蓋から柱のアーチ、壁の上部にいたるまでびっしりとモザイクで覆われている。ガッラ・プラチディア霊廟同様、紺色の分量が多いけれど金もかなり使われていて、その使い方がまた効果的だわぁ。床の中心には井戸のような浴槽が据えられている。全身を水に浸けて沐浴のように洗礼を行ったということかしら? それとも本当に浴槽だった? そんなことを思いながら覗き込んでみると、底にはコインがお賽銭のように放り込まれていた。ほとんどが€0.1以下の茶色くて小ちゃいバラ銭ばかりだったけど。

迷い彷徨い、さらにランチにも迷う

さて、この近くには大司教博物館 Museo Arcivescovile があるんだけど、それはパスしよう。コンビチケットの4つめのアルチヴェスコヴィーレ礼拝堂 Cappella Arcivescovile がネオニアーノ洗礼堂とは反対側でドゥオモに隣接してるはずなんだけど……? 門扉に貼られたマップ、チケット購入時に渡されたマップ、GoogleMapすべてをつき合わせて場所探しするものの、どうしても見つからない。ネットに投稿されている写真はモザイクのアップばかりで、礼拝堂の外観がわからないせいもあってなかなか探せない。入口ぐらい示してくれてもいいのに……と思いながらドゥオモ周りを一周半してしまった。

>> 実は、私がパスしてしまった大司教博物館内に礼拝堂はあったのだ。地図上では博物館もドゥオモに隣接しているはずなのに、それらしき入口も見つからなかった。実はドゥオモ内部の祭壇の左側出口が博物館に通じていたとのことだった。モザイクの礼拝堂以外にも、細工の美しい司教座などがあってなかなか見応えがあったらしい。私の下調べ不足&ドゥオモ内での観察不足が重なったわけだけど、その時はそんなこと知る由もない

首をひねりながらとりあえず別方向に歩いてみると路地の奥になにやら東屋のような白い建物が見える。あらッ? あれがそうかしら? 全然方向が違うけどきっと地図が間違ってるんだわと決めつけて、路地を突き進んでみた。細工の施された鉄柵で囲われた祠のような建造物があり、高校生か大学生くらいの若者たちがたくさん並んでいる。祠内部からは灯されたキャンドルの光が漏れていて、柵の表示をよく見ると「ダンテの墓 Sepolcro di Dante」とあった。道をはさんだ背後にはサン・フランチェスコ教会 Basilica di San Francesco があり、モザイク画のような看板が出ている。少なくともここが目指す礼拝堂ではないことは確実だった。

>> ダンテはイタリアのルネサンス期のフィレンツェの作家で、政争で追放されたラヴェンナで晩年に『神曲』を書き上げたとのこと。墓じたいはモニュメントのようなこじんまりした霊廟だけど、背後のサン・フランチェスコ教会には祭壇下に古い時代のモザイクが水没しているのが見られるそうだ。ただ、午前中は12時まででこの時はもう閉まっていた。やっぱり私の下調べが足りなかったということ

ああ、無駄に歩き回ってくたびれちゃったよ。休憩がてらランチにしようと決めたのに、またもぐるぐる巡り歩く羽目になる。昼は軽くすませて予約したディナーのために胃袋スペース残しておかなくちゃならないのに、なかなか手頃な店が見つからない。もうケーキやお菓子類で小腹満たしとけばいいか……と小洒落たパステッチェリアを覗くと、なんとサラダプレートのランチを出しているではないの! これだ、これだ!
ランチのサラダは4種類あり、あまりボリューミーだったり奇をてらっていても困るので "Classica" というものを選んでみた。

サラダといえどB4くらいの大きさのプレートにどっさりあるので、軽めランチとしては十分。たっぷりのレタスと紫キャベツにゆで卵と塊をザクザク切ったモッツァレラチーズ。ドレッシングはオリーブオイル&ビネガーと塩胡椒のみ。テラスを吹き抜ける爽やかな風も美味しいスパイスになる

ビールと合わせて€12というのは割高ではあるけれど、ゆっくり寛ぎながらも軽めにすませたい時にはパステッチェリアでのランチは結構いいかもしれない。この店には小ぶりのピッツァのランチもあった。なんなら食後にケーキも食べられるしね。すっごく高くついちゃうとは思うけど。

ショーケースには見た目も麗しいケーキが並んでいたけど我慢したのは、この後でジェラート食べるつもりだったから。目指すは宿のオーナーお奨めでもある《Gelateria Papilla》というお店。もちろん私も最初からリサーチ済みだったけどね。オーナーは「広場のココね、こっちじゃないよ、こっちでもないよ」と念押ししながら地図にマーキングしてくれた。確かに広場に面して二軒のジェラテリアがある。本命の店はというと広場には面しておらず、ちょっとだけズレている。なるほどぉ、間違えて他の店に入ってしまう人多し、なんだな。

一番小さいコーンで€2.50。梨と生姜とチョコレートというフレーバーを選び、もう一種類はいつも食べ比べてみるピスタチオにした。

ウェハースの蓋をされてしまって見えづらいけれど、爽やかな梨のジェラートの中に生姜の砂糖漬けがピリリと効いて、チョコレートチップがパリパリっとアクセントになって、意外な組み合わせだと思ったけれどむちゃくちゃ美味しい! これまでイタリアで食べたジェラートフレーバーの10本の指に入れちゃう。ピスタチオもクランチしたものが入っててこれも美味しい。どちらも食感の違いが楽しめるフレーバーだった

B&Bはすぐ近く。ジェラート舐め舐め歩いて部屋まで戻り、1時間ほど昼寝した。ま、時差対応のシエスタってことね。

テオドリコ廟には辿り着けなかった

さーて、午前中の疲れはリセットされたことだし、ラヴェンナ観光後半戦も頑張りましょ! 14時10分に再び出発。
世界遺産のモザイク教会群はラヴェンナ市内徒歩圏内にコンパクトに散らばっているけれど、そのうちひとつだけがちょっと離れた場所にある。離れているといっても隣のクラッセという町で、列車で5分、バスで15分といった程度。パワーの甦った午後一番に遠征してきて、戻って残りをなりゆきで見ることにしようっと。

バスの方が頻発していて便利だそうだけど、どうせなら往路と復路で別々にしてみたい。クラッセ方面の4番バスは鉄道駅近くからの発着なので、いずれにしても駅までは行かなくちゃならない。途中のタバッキでバスの切符を1枚だけ買った。

往路を列車にすることにした。クラッセまではたった一駅だけど、各駅停車しか停まらないので1時間に1本しかない。次は14:35、その次は15:32、その次が16:35………。普通なら10分後の14:35に乗るところだけど、実はちょっと迷ってるの。実はラヴェンナには、テオドリコ廟 Mausoleo di Teodorico という7つめの世界遺産が鉄道駅の北側にあるのだ。巨大な一枚岩から造り出された霊廟で、モザイク装飾があるわけでもなく地味そうだけど、ちょっと目先が変わって面白そうではある。市内中心部から1kmちょっとの距離をわざわざ来るのは大変だけど、せっかく近くまで来たしねぇ。1時間あれば見て来られるんじゃないかしら? よし、決まり!

駅舎から出て右手方向に向かっていくと、ブランカレオーネ城塞 Rocca di Brancaleone と思われるものが見えてきた。今でこそ北イタリアの小さな町でしかないラヴェンナだけど、かつては西ローマ帝国の首都だったんだもの、城塞だって立派なわけだわ。城塞らしき建物は見えないけれど威風ある城壁が延々連なり、さらに今は草地となった濠で囲まれ、ところどころに門がある。濠を跨ぐ橋から内部に入れるようだけど、通り抜けできるかは不明なので、結局広大な城塞沿いをぐるっと回っていかなくちゃならない。

ようやく城塞の端に辿り着き、そのまま右に折れて城塞に沿いながら道なりに進むとそのまま線路を跨ぐ道になる。これがかなりの交通量のある自動車道で、歩道は幅30cmくらいの申し訳程度のものがあるだけ。車道よりは一段高くなっているだけでも良しとしなくちゃだけど、すぐ横をクルマがガンガンすり抜けるので怖い。ラヴェンナは行き止まりの終点駅なので車両待避線が10数本もあり、跨線橋部分だけでもずいぶんな距離がある。地図だと駅のちょっとだけ向こう側という感じだったけど、なんかすごく遠いんだけど? 城塞沿いの道も線路を跨ぐ道も陽射しを遮るものがなく、ひとりトボトボ歩くうちにげんなりしてきた。

ようやく線路上を渡りきった。前方左側にこんもりと木立の塊があり、テオドリコ廟の看板らしきものが垣間見えている。私が立っているのは道の右側なので、まずはこの道を横断しなくちゃならない。なのにクルマはガンガン走っていてちっとも途切れない。横断歩道も信号もない。ヨーロッパ全般ではあんまり律儀に信号守らない(例外ドイツ)。郷に入ってはというか、周りに感化されちゃうっていうか、私もこれまで信号のないところで渡っちゃったことは何度もあるけど、地元の慣れた人にくっついての便乗横断がほとんどだった。今日はひとりだし、何より街中よりもクルマのスピードが早過ぎる。
こんなところで怪我するのも死ぬのも嫌だ。

>> 2010年のフランスの旅以降、自己責任で車道を渡ることに強烈なトラウマができた。隙をみて車道を横断した若い女性が撥ねられる瞬間を目の前で見てしまったのだ。撥ねたのは二階建ての展望バスで、さほどスピードは出ていなかったはずなのに、ぶつかった瞬間の音、倒れた彼女が路面に叩きつけられた音は忘れられない。目を見開いたままピクリとも動かない彼女の姿も脳裏に焼きついている

無理に渡ることはしないとして、じゃあ、ずーーーっと手前の横断歩道まで戻るの? それとも横断歩道が出てくるまでまっすぐ進むの? そんなことしてたら時間足りなくならない? 看板が見えてるからってすぐ側にあるとは限らないんじゃない? むしろ側にない方がイタリアあるあるじゃない? ていうか、そこまでしてテオドリコ廟が見たい? 否。私はそこで踵を返した。
もしまたラヴェンナを訪れる機会があってテオドリコ廟に行くとしたら、1時間半くらいの余裕を持って、最初から跨線橋の左側を歩くことにするわ。

さて時間が余った分、戻りがてらにブランカレオーネ城塞でも覗いてみようかな? 濠跡に架かる橋を渡って城壁の門をくぐると、中は普通の緑地公園だった。遊歩道があり、木々があり、花壇があり、ベンチがあり、子供の遊具があり、売店に毛の生えた程度のバールがあり、コイン式のトイレがある。昼下がりの公園内には誰もいなかった。無駄に歩いても疲れるだけなので、木陰のベンチで時間つぶし。聞こえてくるのは、城壁の修復工事の鎚音と作業員たちの話し声、鳥のさえずり、吹き抜ける風が木の葉を揺らす音。普通の公園なんだけど、城壁に囲まれているので、古の空間にトリップしているような心持ち。ああ、なんかリラックスするわぁ、気持ちいい。

ずぶ濡れで味わったクラッセのモザイク

余裕を持って10分以上も早めに駅に戻り、プラットフォームで列車を待っていると空が一瞬ピカっと光った気がした。そういえば急に陽が翳ってきて雲が垂れ込めてきている。風も吹いてきた。まるで雨が近づいてくるような……?

始発のくせに5分遅れで出発した列車が一駅先のクラッセ駅に着き、降りたのは私とバックパッカーのような若い女性の二人きりだった。ホームに降り立って見上げた空は低く重い鈍色。大丈夫、今にも降りそうだけどまだ降ってない……と思った途端、まばらながらもパラパラときた。白く乾いたコンクリートに黒い水玉模様ができていく。大丈夫、まだ降り始めだし、目的地までは数分だし。
若い女性はビニールの雨合羽を取り出し、足早に去って行った。そう、ここで私の悪いクセが出たのよねー。根拠なく信じ込んで反対側に突き進んでしまうのよねー。若い彼女と私の目的地は同じだと決めつけ、確認もしないまま彼女の去った方向へずんずん歩く。すぐに教会が見えてくるはず、そのうち、そのうち……とウロウロするうちに雨は本降りになってきた。迷い込んだのは明らかに住宅街、それもガレージや前庭つきの一戸建ての並ぶ瀟洒なエリアだ。誰かに尋ねようにも人なんかいない、店もない。雨はさらにザーザー降ってくる。折畳み傘も、帽子も、フードつきの服も、全部持って来てたのに、この時はすべて宿に置いてきてしまっていたという不幸の二段重ね。

ようやくサンタポッリナーレ・イン・クラッセ聖堂 Basilica di Sant’Apollionare in Classe に辿り着いた時には、駅を出てから20分以上も経っていた。前髪から滴るほどにすっかりびしょ濡れ。

びしょ濡れで彷徨い、サンタポッリナーレ・イン・クラッセ聖堂の裏手に出た時には、雨はあがりつつあった。カッコいい紋章のついた門があるけれど、ここからは入れないので反対側までぐるっと回っていかなくちゃならない

まるで体育館か講堂のように、ずどーーんと長方形に広い空間。木組みがむき出しの天井は素っ気ないけれど、逆にモザイクの美しさを際立たせているようにも思える

側面の柱廊上に並ぶ丸枠の中はラヴェンナの司教や大司教の肖像画。この肖像もアーチの三角形の装飾もモザイクのように見えるけど、モザイク風に描いた絵だった

現存する古いモザイクは、後陣の部分とその周辺の壁面だけ。青い円の中の黄金の十字架、これを囲む3匹の羊はペテロ、ヨハネ、ヤコブの3聖人なのだとか

天蓋の半円球に描かれるのは『聖アッポリナーレと12使徒を表す羊』。他の教会のものに比べて絵柄や色使いが可愛くて牧歌的な雰囲気がする。緑が多い&羊=牧歌的というのも私の短絡発想ではあるけれど

サンタポッリナーレ・イン・クラッセ聖堂にはコンビチケットでは入れないので、別途€4のチケットを買う。初期キリスト教の三廊式のバシリカ式聖堂で、身廊と側廊は12本の列柱で仕切られている。幅は30m、奥行きは55mもあるそうで、普通の教会のように礼拝用の椅子が並べられているわけでもないので、とにかく四角く、高く、広い、といった感じで、モザイクの残る天蓋と壁面以外は質素で素朴な印象だ。急な雷雨のせいで堂内全体が薄暗いせいもあって、なおさらそう感じるのかも。

堂内には小学生の団体が何組もいた。高い天井に彼らの声がわんわん響いているけれど、大部分は教会建築見学やモザイク鑑賞はそっちのけで、売店に群がってお土産の物色に余念がない。まあ、ねぇー、子供の頃なんて得てしてそんなものよねぇ。彼らは雨宿りがてらに長居していたようで、いっせいに引き上げていき一気に内部は閑散となった。静かにゆっくりとモザイクを堪能……といきたいところだったけど。服や髪が湿っぽいままなのが気になって、あまり気持ちがのめり込めなかったなぁ。

残りのモザイク鑑賞は大急ぎ

テオドリコ廟に行き着けなくて諦めた1時間、クラッセ駅から雨の中を彷徨った20分、なんだかんだと時間を無駄遣いしてしまい、もう16時をずいぶん過ぎてしまった。まだ世界遺産のモザイクを全部見終わっていないんだもん、とっととラヴェンナ市内に戻らなくちゃ。急げ急げ!

聖堂を背に草原の中を貫く道路をラヴェンナ方向へ300mほど歩くとバス停があった。待つ人は誰もいなかったけれど、多分天気と時間帯のせいね。時刻表を見ると次は16:35。
列車とバス、両方試してみたけど、ラヴェンナ〜クラッセの移動はバスに軍配あがるかな。クラッセの鉄道駅は無人駅のようだったし、聖堂周辺にバスチケット買えそうなところもないので、いずれにしてもラヴェンナ市内で往復とも切符は入手しておく必要はある。
列車は1時間に1本、所要時間5分、料金€1.50、ただし駅からの道で迷う可能性あり。
かたやバスは、平日なら1時間に3〜5本、所要時間15分、料金€1.30(車内で€2で購入できる説あり、詳細不明)。ラヴェンナ側から来る時は聖堂を通り越した先の停留所で降りるので、迷わない。

ラヴェンナに戻るバスの停留所から。サンタポッリナーレ・イン・クラッセ聖堂は、こんな何もない野っぱらにぽつんとある

……などということを考えていたらバスが来た。車内はからっぽで乗客は私ひとり。でも途中でかなり乗り降りがあり、終着のラヴェンナ駅に着く頃には立っている人が10数人はいたので、ちゃんと地元民の足として機能しているようだった。こんなんで採算とれるのか一瞬心配したけど大きなお世話だったわね(^^;)

駅前に降り立つと、ラヴェンナ市内にも通り雨の名残りがあり、あちこちに水たまりができている。どうやらこっちの方が雨が強かったみたいね。傘が要るか要らないかのような細かい雨が残っているけど、私は一回ずぶ濡れになって服も髪もよれよれなんだもん、今さらどうでもいいや。もう17時近い。急いでモザイク見学の残りをこなそう。

駅前からのびるファリーニ通りをガンガン突き進み、ローマ通りで右折して北上、最初の信号を左折してコスタ通りVia Costa という路地に入る。道なりに路地裏を進んだ奥に、テオドリコ帝が建立したというアリアーニ洗礼堂 Battistero degli Ariani がひっそりとある。この洗礼堂は、手前にあるスピリト・サント教会 Chiesa dello Spirito Santo の附属物という位置づけらしく、€1で見学できる。

くねくねした路地の途中にいきなり異空間のような広場があって、素朴な外観の教会と小さな洗礼堂がひっそり佇んでいる。内部のモザイクのきらびやかさは、この大きさとこの外観からはとても想像できない

午前中に見たネオニアーノ洗礼堂よりもさらに小さいアリアーニ洗礼堂。モザイク装飾も天蓋部分のみで、壁も床も粗石がむきだしのまま

洗礼者ヨハネに洗礼を受けるキリストを中心に、周りを十二使徒が取り囲んでいるという構図もネオニアーノ洗礼堂と同じもの。輪郭線がハッキリしていて動きのない平面的な感じだけど表情はややリアル。全体的に金の割合の多い綺麗なモザイクだった

アリアーニ洗礼堂見学を10分で切り上げ、コスタ通りのくねくね路地から再びローマ通りに戻って今度は南下。通りに面したサンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂 Basilica di Sant'Apollinare Nuovo へ。ここはコンビチケットで入れる。ヌォーボ(新しい)とつくのは、クラッセの聖堂から聖アッポリナーレの聖遺物がもたらされて作られた聖堂だからとのこと。そのためか、クラッセの聖堂に構造がよく似ていた。

ここに現存する6世紀のモザイクは内部の壁面上部のものだけ。最上段に『キリストの奇跡と受難』が26場面、その下段の高窓の間には聖人たちの像、さらにその下の段にはズラリと連なる殉教者たちの参列。一番見やすい高さのせいもあるけれど、この殉教者の参列図がとにかく圧巻だった。

サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂は、クラッセの聖堂と同じ三廊式のバシリカ式聖堂で、講堂のように広い空間。若干小ぶりかな? 天井も主祭壇も17世紀頃のバロック様式に改装されてしまっているので、なんだか収まりが悪くチグハグな感じがする

祭壇右側には、ラヴェンナの王宮から聖マルティヌスに導かれてキリストまで至る26人の殉教者たちが描かれている。よく見ると顔や髪の色や髪型がひとりひとり違う。モデルがいたのかも?

左側はクラッセの港から聖母子のもとへと向かう22人の聖女の殉教者たちの参列。聖女の方はクローン人間のようにみんな同じ容姿をしているのは、制作者の技量の問題?

外に出ると18時近かった。この季節は多くの施設が19時まで開いているけど、もういいや。主要なモザイクはしっかり十分に堪能しきったと思う。

ラヴェンナのモザイクは、ヴェネツィアのサン・マルコ寺院やシチリアの大聖堂(私はまだ未訪だけど)のものほど全体が黄金でキラキラ豪華なものではなかった。そのかわり色彩が豊かで特に緑色や青色が美しく、権力や隆盛や畏敬の誇示よりも、親しみやすさを感じるものだった。まるで美しい絵本を見るような。今では北イタリアの端っこの小さな町でしかないラヴェンナ。早々と表舞台から消えたことで、結果的に5〜6世紀のモザイクが破壊されずにそのまま残ったというわけで。歴史の皮肉には感謝、だわね。

念願のトラットリアで大満足のディナー

モザイク観光は18時でフィニッシュ、いったん宿まで戻って雨に濡れてよれよれになった髪と化粧を直し、着替えて予約しておいた《Trattoria La Rustica》に行った。19時10分過ぎ、店はまだガランとしていて私が第一号、それから20分くらいの間に立て続けに3組の客が来た。テーブルはまだいくつも空いていたけれど、その後の新規の客は断られていた。やっぱり今晩も予約だけで全席埋まっているのね、昨日予約しておいてよかったぁ。

ランチをサラダだけですませて胃袋の空き容量を確保、しっかり食べる気満々の私。わざわざ予約したんだからあまりショボいオーダーでは申し訳ないよね。小さな店だけどリストに並ぶワインはずいぶん豊富で、ハーフボトルも種類がある。いつもはハウスワイン一辺倒の私だけど、ハーフがあるなら今日はボトルで張り込んでみようかな? 銘柄選びにしばし悩んでから注文しようとすると、マダムの方から「ワインはハウスワインよね? 2分の1リットル? グラス?」。つい「赤を4分の1……」とひよる私。見抜かれてたのかしら。
まあ、美味しい店はハウスワインも安くて美味しくて、その店の料理に合うようになってるんだけどね。

家庭的な雰囲気のトラットリア。壁には昔の調理器具がたくさんディスプレイされている。なんか工具にも見えるようなものもあるけど、何に使ったんだろう?

ハウスワインは結構どっしりした飲み口で美味しい。いつもはパスするコペルトが、焼きたてホカホカのフォカッチャとパリパリに香ばしいピアディーナだったので、思わずワインを飲みながらつまんでしまう。これが満腹になりすぎる元凶なんだけど……

昨日のトルテッローニのように帽子型しているカッペレッティは、ずっと小ぶりなので皮が薄くて、もちもちよりも "トゥルン" とした食感。トマトの酸味強めのさらりとしたラグーソースがよく合う

メインディッシュは野菜のミックスグリル。焼いてトロトロになったペコリーノチーズを絡めて食べる。ズッキーニ、茄子、トマト、カルチョーフィ、じゃがいも……どれも野菜の甘みが強く本当に美味しかった。量は半分でいいんだけどなぁ

料理はやっぱりこの地方のパスタを選び、ハーフポーションにしてもらった。フルポーションでは胃袋が耐えきれんわ。でもメインはさすがにハーフにしてってわけにはいかない。昨日のカツレツは最後の20%でリタイアしちゃったから、今日は野菜なら何とかなると思ったんだけど。チーズの量がすごいのと、うっかりコペルトのパンを食べちゃったせいで、最後は少々苦戦を強いられた。チーズを残せばいいんだけど、絡めると野菜の味がより引き立つし、焦げてパリパリになったところとかめちゃくちゃ美味しいし……苦戦しつつ完食したけどね!
余裕あったらデザートもいっちゃおうと思ってたけど、とてもとても無理だった。合計€24。ごちそうさまでした。

食事終了は20時半。日没前後の時刻なのでまだ明るさがあるけれど、どんより曇り空では夕焼けも期待できない。ふらふらうろつくこともせずにまっすぐに宿へ帰った。ディナータイム真っただ中にあるラヴァンナの町は閑散としている。
明日はクロアチアへの移動なんだから、今日は早めに休んで、早起きして荷造りしなくっちゃ。

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