Le moineau 番外編
イタリア〜スロヴェニア〜クロアチア漂遊
- ヴェネツィア共和国の足跡を辿る -

今朝の早朝散歩はヴァポレットで距離を稼ぐ!

旅の11日めの目覚めは5時。さあ、今日も早朝散歩するよ! 昨日は徒歩で2時間半もぐるぐる歩き回ったけれど、ヴァポレットの3日券を持っている今日は早朝クルーズ且つ移動距離を稼ぐよ〜! 今朝も共通バスルームを使う人が起きてこないうちにシャワーを使い、張り切って身支度し、6時半にB&Bを出た。今朝もまだ建物内はひっそりしている。

このB&BからはS.Tomaという乗場が一番近く、だいたい徒歩6〜7分程度。昨日の夕方には一度に乗船できないほど混んでいた1番ヴァポレットも朝6時台には数人しか乗っていない。日中では考えられない前方デッキ独占状態でカナル・グランデのクルーズを堪能しまくり。

ガラガラのヴァポレットなら先頭も独占、左右も好きな場所に移動可能。アカデミア橋の下にサルーテ聖堂を見るという素晴らしいアングルの写真も誰の迷惑にもならずに撮り放題

今朝も雲が多く朝焼けの色は今イチ。でも昨日よりはずっとマシだけど……

海からの日の出は無理だったけど、サン・マルコ寺院の鐘楼と朝日とのツーショットには出逢えた

スキアヴォーニ岸から望むサン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂 Chiesa di San Giorgio Maggiore もヴェネツィアの定番風景。その向こうにはリド島も

通常は1番はサン・マルコが終点で折り返すようだけど、朝の何便かはリド島まで行く。リドまで行ってみるつもりだったけど、高級リゾートやカジノのある場所に早朝に行く意味はないと思い直し、いったん Arsenale で下船した。ここからスキアヴォーニ岸 Riva degli Schiavoni をサン・マルコまでのんびり歩いてみるつもり。ゆったりと幅広のスキアヴォーニ岸には、陸側は超高級ホテルが立ち並び、海側にはヴァポレットの停留所やゴンドラの係留所がある。ターミナルのように何路線も集中しているので、乗場もいくつかに分かれていけれど、今は人も疎ら。浮き橋やゴンドラたちが波に揺れていた。

のんびり風に吹かれて散歩していると、途中の桟橋にヴァポレットをちょっと立派にしたような船がゆっくりと接岸するところが見えた。中から30〜40人の人たちがゾロゾロと降りてきて、そのままゾロゾロとサン・マルコ方向へ。明らかに観光客っぽい身なりの人たちだけど大きな荷物は持っていないので、近場からの日帰りツアーなのかな。まだ7時ちょい過ぎだけど、ずいぶん早く到着するのね。"観光地ヴェネツィア" が今日も始動しつつあるってことか……。

700〜800mほど歩くとサン・マルコはすぐそこ。でも広場に入る前に、ヴェネツィアでのお約束の写真「溜息の橋 Ponte dei Sospiri」をベスト撮影ポイントのパリャ橋 Ponte della Paglia 上からパチリ。一昨日の夕方は人が鈴なりになってカメラ構えてたけど、今朝は私ひとりだ。

溜息の橋の前の運河に物資満載の運搬船がいくつも浮かぶのも早朝ならではの光景

ドゥカーレ宮殿 Palazzo Ducale の柱廊が向こうまで見渡せる! ベンチも無人だぁ!

早朝のサン・マルコ広場は人より鳩の数の方がずっと多い。あれ? そういえばここで鳩に餌やると罰金になるんじゃなかったっけ?

日中には長蛇の列ができている鐘楼入口も、見放題、撮り放題。門扉にこんなに綺麗な細工がされていたなんで知らなかった

一日中観光客たちで埋まっている老舗カフェも開店前。広場の回廊からサン・マルコ寺院の逆光をあえて楽しんでみる

改めて広場の大きさと美しさを認識する。広場は長方形ではなく、サン・マルコ寺院側の辺が長い変型の四辺形になっていて、より遠近感が強調されているのだとか

先ほど団体ツアーの第一陣が到着したようだったけど、全体的にはまだヴァネツィアは観光モードに入っていない。サン・マルコ広場もガラガラだった。広場を歩いている人数が目視で数えられるくらいに。この広さが人でうじゃうじゃ埋まっている場に立てば、超A級観光地の賑わいを肌で感じられるけれど、ほぼ無人の広場で建物や空間そのものにじっくり対峙できるのは全然違う。

広場に面した老舗レストラン《Ristorante Quadri》の看板の文字が素敵すぎる。テーブルチャージや生演奏チャージも加わってお値段も素敵すぎることになるので、営業中はおいそれと近づけないけど

老舗カフェ《Caffe Florian》は椅子をあげて掃除機をかけているところだった

帰りのヴァポレットでは高くなってきた太陽が海に反射してキラキラしていた。朝日はピリっとしなかったけど、今日もちゃんと晴れそうでよかった

広場から西にのびるブランド通りもちょっと歩いてみたけれど、当然ながら全部閉まってて面白くない。再び広場を抜けてヴァポレット乗場まで歩く。7時台になってじわじわと人が増えてきた。早朝着の観光客もちらほらいるけれど、通勤らしき人の姿が目立つ。乗り込んだヴァポレットには高校生の男子集団がいて、私と同じ S.Toma でどっと降りて足早に去っていった。

今日も美味しい朝食。そしてムラーノ島へ

今日は8時半になると同時に朝ごはん。基本的にヴェネツィアは1泊の人が多いのか(私も前はそうだったけどね)、食堂の顔ぶれはガラッと入れ替わっていた。昨日の朝はアジア人男性のひとり客がいたけれど、今日はアジア人の若い女性。服装の感じから日本人に見えて声をかけてみたら中国人だった。昨日の中国人男性は薄手の白い下着みたいなTシャツに短パンで、おまけに坊主頭で、一応英語で挨拶したけど無視されたので日本人ではなかったと思うわ。まあ、裸の大将ファッションでヴェネツィア歩く日本人はいないと思うので。老婆心ながらTシャツはもう少し厚めの透けないタイプか色つきがいいと思うけど、まあ大きなお世話でしょうが。

このB&Bの朝ごはんはホントに種類が豊富で、連泊の身には嬉しいことこのうえない。今日のパンはクロワッサンに、ジュースは青リンゴにしてみた。昨日は気づかなかったヨーグルトも何種類かあるのを発見!

さあ、今日は本島を離れてムラーノ&ブラーノに遠征する日! まずは鉄道駅前からムラーノ直行の3番に乗るのだけれど、その前にこのB&Bからローマ広場 Piazzale Roma までの道筋と空港行きのバスの乗場を確認しておかなくちゃ。昨日までの2日間でヴェネツィアにおいては GoogleMap のナビは割と無能だと悟ったのだ。クルマが入れない町のせいもあるけれど、路地が混み入り過ぎてて、なおかつ運河が阻む場所がいくつもあって、ソットポルテゴなどという建物の下をくぐる道もある。網羅しきれないのよね。だから、行き先検索すると目の前の橋を渡れば着くものをぐるっと回ってヴァポレットに乗れなどととんでもないルートを提示してくる。あんなもん見てるとかえって迷うということが判明した。紙の地図と、おおまなか方向だけ覚えて歩くのが正解。

ローマ広場までは地図上の最短ルートでは橋を3回渡らなくてはならず、ちょっとだけ大回りルートなら2回ですむとわかった。2つの橋のうちひとつは長いけれど運搬用のスロープがついていることもわかった。かなり広いローマ広場の空港バス乗場の近くにその橋があることもわかった。バスの時刻表もチェックして、ウェブで見たものと同じであることも確認してきた。これで明後日の朝は重い荷物引きずって迷ったり焦ったりしないですむ。こういう重要なことは自分の目と足で確かめておかなくてはね。

3番ヴァポレットの始発はローマ広場だったので駅前まで行く必要はなかったけれど、乗場がたくさんあって迷っているうちに1本逃してしまった。9:55発まで20分待ちながらも、気持ちはわくわく昂ってくる。だってヴェネツィア4回目にしてようやく離島めぐりだもん!
ローマ広場を出た時には3割ほどの乗船率だったけど、駅前から大量に乗り込んできて、瞬時にぎゅうぎゅうになる。だけど私は沿岸の風景がきちんと眺められるポジションをゲットしているのだよ(^^) デッキと船室をつなぐ通路の柱の陰で、ちょっと見には悪い場所のようにだけど、3段くらいのステップの上に立てるので頭ひとつ抜き出て写真を撮るには最適な場所なのさ。柱の陰に身を引けば通り抜けの邪魔にもならないし。

ヴェネツィア・サンタ・ルチア駅舎前の大運河をワイン樽を満載に積んだ船がゆきすぎる

カンナレージョ運河を進んでいく。普通の住宅などのある静かで落ち着いたエリアのよう

運河から外海に出た途端に揺れとうねりが強くなり、波も高くなった。写真撮影ベストポジションに立っていたせいで、頭から波しぶきをかぶってしまった。カメラはなんとか守ったけど、前髪びしょびしょの私を見て、隣に立ってたインド系のカップルが大受けしていた。特に女の子の方、箸が転がっても可笑しい年頃でしょうけど……アナタ笑い過ぎよ!

鉄道駅を出てすぐ隣に現れるのは彫像で飾られたファサードが優美なサンタ・マリア・ディ・ナザレ教会 Chiesa di Santa Maria di Nazareth。今まで駅からヴァポレットに乗って最初に見えるので、いつかそのうちに入ってみようと思ってたけど、たぶん今回も無理。ほどなくカナル・グランデを左に折れて小さなカンナレージョ運河に入っていく、その曲がり角にあるのがサン・ジェレミア教会 Chiesa di San Geremia。カンナレージョ運河を抜けて外海に出ると、本島の北側をかすめるようにしてノンストップでムラーノ島に向かう。

なんとカメラの充電切れ! ガラスの島ムラーノ島の滞在はわずか15分

ムラーノ島は本島からも近く、ローマ広場から Murano Colonna までは20分ほど。実を言うとヴェネツァアンガラスの島ムラーノには時間があったら見ればいいやくれいの興味度で、本命はブラーノ島の方。距離もあるし、一回で乗り切れないほど混むこともあるというので、先にブラーノを見ることにした。ブラーノ行きの12番の出る Murano Faro までは500mほど離れているので、移動がてら運河沿いの写真などを撮っているとカメラのバッテリーがほぼ切れていることに気がついた。あー、昨日充電するの忘れちゃってたんだ、だけどちゃーんと予備のバッテリーも持ってるもんねー、ふっふっふ。ほくそ笑みながら入れ替えると……なんと予備も充電切れ。充電したつもりでしてなかったってこと?? ひゃー、とんでもない大ポカじゃないのお! しばし悩んだ。フォトジェニックな島ブラーノに行くのにカメラなしはありえない。スマホで撮る? いや、私のiPhoneは古いのでカメラの性能もさほどでない、古いから充電も保たない、容量も少ない、却下。一回戻って充電して出直す? いや、それではあまりに遅くなり過ぎてしまう、ありえない。

結局、ムラーノ&ブラーノ行きは翌日に変更することにした。考えようによってはここで気づいてよかった、ブラーノ行きの船に乗ってしまったら、向こうについてバッテリーがなかったら……目も当てられない。それと昨日ヴァポレットの3日券を間違えて買ってよかった。明日いっぱい乗り放題だからこそ、予定変更する気になれたんだもん。

とりあえずは Murano Faro の乗場まで行ってみると、ちょうどサン・マルコ行きの7番というのが出るところだったので飛び乗った。10時20分着10時35分発、ムラーノ島の滞在時間は15分。7番は本島の東側半分をぐるりと沿って10ヶ所ほどに停まりながら30分ほどかけて終点サン・マルコに着いた。東側の沿岸にはイタリア海軍管理下の施設があったり、こんもりと森のような公園があったり、観光客が集まるところとも地元民エリアとも景観が全然違う。ちょっとしたクルーズ気分で楽しかったけれど、当然写真は1枚もない。
どうせならこのクルーズ気分をもう少し味わってやれと思い、サン・マルコからは5.2番というのに乗り換えた。今度は本島の南岸からぐるりと西側を半周してローマ広場まで。逆回りで昨日通ったルートだけど、西端のドックには昨日はなかった大型客船が停泊していた。そういえば今朝の散歩の時、路地のすき間からビルみたいなものが動いてるのが見えたっけ。あれはこの客船が入港するところだったのね。

ローマ広場で降りたのは11時40分。ヴァポレットを3路線乗り換えて、ちょうど2時間かけて、本島外周をぐるっと巡ってムラーノ島にも立ち寄ってきたってことか。時間を無駄にしたと思うとトホホだけど、のんびりクルーズを楽しんだんだと思えばいいんだよね。
ローマ広場から宿に戻り、バッテリーをセットして30分ほど充電した。フル充電ではないけれど、たぶんこれで数時間は保つはず。手持ちで液晶見ながらだとバッテリー消費も早いけど、どのみちファインダー覗いて撮ってるしね。今日は本島内の教会巡りをするんだから、残量が少なくなってきたらすぐに戻って、セットしておいて予備バッテリーと交換すればいい。これこそ中心部に連泊するメリットだわ。

そういうわけで完全に午前中は棒に振り、改めて宿から出発したのは12時半。ここで仕切り直し、じゃあまずはリスタートの景気づけに《Pasticceria Tonolo》でおやつしてからだ! そう、ヴェネツィア初日にも食べた宿から3分の老舗のお菓子屋さん、あんまり美味しかったのでリピートしちゃう。ランチ直前の時間帯なので空いていた。

この店のカスタードクリームは美味しいとわかったので、ミルフィーユみたいなカスタードパイにした。クロアチアでは「クリムピタ」という名前だったケーキね。でも下の層にはかなりお酒が効いてて「おッ?」という美味しい驚き。もうひとつは、チョコ味のタルトみたいなビスケットみたいな上にカスタードクリームとチョコレートクリーム。うーん、美味しい。おまけに安い。カフェ・マッキャートと合計で€3.30!

さあ、スタートが出遅れたけど、夕方まで教会巡りをしていきましょ。

仕切り直しての観光スタートは、静かなアカデミア地区の教会巡り

まずは、クロアチアからのフェリーが着いたサン・バジリオ埠頭周辺へ。このあたりは観光客が見るようなものはあまりないので、とても静かでのんびりしている。外からは様子はわからないけれどゴンドラ修理所なんかもあった。その近くにあるサン・セバスティアーノ教会 Chiesa di San Sebastiano は小さくて地味で、教会前の広場もなくてスペースも狭くてうまくファインダーに収まらないので外観写真は撮らなかった。周辺の景色もあまりフォトジェニックじゃなかったし。

ところが足を踏み入れてびっくり。側廊の四角い空間の中は色鮮やかな絵で埋め尽くされていたのだ。全部ヴェロネーゼによるものなんだとか。教会って外と内の印象が全然異なることが多くて面白いわぁ、こういう驚きが醍醐味だわ。

地味で小さい外観からあまり期待せずに足を踏み入れたらいきなりこの世界。左側の祭壇絵は修復中で外されていて、右側もまるっとシートに覆われていたけれど、全部揃っていたならもっと感動したはず

主祭壇も絵で埋め尽くされている。私はヴェロネーゼという人をよく知らないのだけど、とにかく絵の色が輝くように鮮やかで、パっと灯りが点ったように感じる


オルガンの扉に絵が描かれてる! これってかなり珍しいのでは? 扉の内側はどうなってるんだろう? たぶん内側にも絵があるような気がする。見たいなあ……

小さいけれど扉に絵の描かれた美しいオルガンの下をくぐり抜けていくと右奥に Sacrestia の表示があった。この単語覚えたもんね、聖具室でしょ。この聖具室も天井から壁までぐるりと絵で取り囲まれていた。部屋の中央のテーブルに撮影禁止のプレートが目立つように立ててある。なんとなく、撮影していいものといけないものの基準がわかってきた気がするわ。「聖体」や「聖遺物」や「聖具」のようなものは撮影などで複製をしてはいけないのよ、きっと。

ジュデッカ運河に面したザッテレ岸に出た。かなり陽射しが強くなってきていて、対岸のジュデッカ島の家並は逆光で真っ黒

ザッテレ岸には小さなバールやトラットリアのテラス席がところどころに出ているけれど、全体的にはのんびりしている。それにしてもかなり暑い。数日前まで雨で震えてたのが嘘みたい。運河に沿って東方向に歩き、サンタ・マリア・デル・ロザリオ教会 Chiesa Santa Maria del Rosario へ。ジェズアーティ教会 Gesuati というのが正式名称で、でも別名のロザリオ教会の方が認知されているらしい。
昨日ジュデッカ島のオステリアから正面に見えていた、ファサードの柱が印象的な白亜の教会は5月の陽光を浴びて眩しいほど。運河に面しているので後ろに下がるにも限界があって真正面に立っても上まではよく見えない。ファサード全体をきちんと見るには対岸のジュデッカ島からでないとダメね。

大きな『ロザリオの聖母像』が入口に置かれている。ティエポロの天井画も美しい! 彼の絵はとても明るくて軽やかな華やかさがあるなあ。天井画はあまり重々しくない方がいいものね

天井画には『ロザリオの制定』が描かれている。聖ドミニクスがロザリオを掲げて異端者を追い払っている図で、これが別名で「ロザリオ」とされる教会名の由来とか

側廊の祭壇では絵画よりも彫刻の華麗さに目がいく。色大理石の柱もいい


堂内はバロック風で豪華だけどゴテゴテしてなく、白くて優美で清楚な感じ

小腹満たしに三角サンドのトラメッツィーノ再び

さて14時になってしまったので、ちょっとはお腹に何か入れておこう。
アカデミア橋へと至る途中の狭い路地にある、何てことない普通のバール《Bar Alla Toletta》。だけど、手作りのトラメッツィーノが美味しいと口コミが伝わり、さらにはSNSなどで広がり、時々メディアで取り上げられたりする隠れ人気店となったとか。昨日のチケッティの美味しい酒屋もこのすぐ近くで、どちらも観光客が通りがかるエリアではないわけで。うーむ、ネットの口コミ侮り難し……。そのせいで観光客でとても混んでいた。席に座ると倍近い値段になることだし、そもそも空席もないし、またもショーケースの上でぱぱっと立ち食いしちゃおう。

トラメッツィーノの種類は20以上はある。もしかしたら30種近いのでは? しばし悩んで、ここはやはりヴェネツィアらしい具材をと、干し鱈のすり身のクリームペーストであるバッカラ・マンテカートを選んだ。飲物はビールといきたいところだけど、カプチーノにしておく。立ち席なら合計でたったの€2.80だった。
昨日の店は夕方だったせいもあってパンがちょっと乾いちゃってたけれど、ここはしっとり柔らかい。ショーケースの中でも湿った布巾を被せてあるけれど、たぶん作るそばから売れてて、出来たてに近いんだと思う。

パンのサイズは昨日の店より小さいけど具材量はずっと多く、みちみちに詰まってる。写真は白っぽく飛んじゃったけど。きちんと鱈の風味があるクリーミーでふわっふわなバッカラに、紫キャベツとルッコラのシャキシャキ歯ごたえが美味しい

サクっと小腹を満たした後はアカデミア橋を渡って北側へ。こちら側はアカデミア周辺からサン・マルコ地区へと抜ける通り道に当たるので、それなりに観光客が多くなってきた。
橋を渡って最初にひっそりとサン・ヴィダル教会 Chiesa di San Vidal が佇んでいる。ここもコールス加盟教会なので入ってみたけれど、どのへんが有料部分なのかわからなかった。むしろコンサート会場として有名で、毎晩のようにヴェネツィア室内合奏団がヴィヴァルディ作品を演奏しているらしい。このコンサート、素敵でお手頃なので行くべきかものすごく悩んでしまった。ただ、今回街歩き用の服しか持って来てないんだよなあ……厳密なドレスコードはないだろうけど、せめて薄手のワンピース1枚くらい突っ込んでくればよかった。まあ、来れそうなら来てみよう。

教会の扉にコンサートのポスターが貼ってある。毎晩21時から、2種類の演目を交互にやっているみたいで、€30というのは魅力的。今日の演目はヴィヴァルディの協奏曲をいくつかで、明日は四季! 明日聴きたいなあ……ムラーノ&ブラーノからの戻り時間次第だな

アカデミア橋とサン・マルコ地区の間には観光客がうじゃうじゃ

小さなサン・ヴィダル教会を通り過ぎるとサント・ステファノ広場 Campo Santo Stefano はすぐ。南北に長いかなり広い広場の中ほどにサント・ステファノ教会 Chiesa di Santo Stefano がある。教会入口は広場に面していない側面側にあるけれど、中に入ってまずパッと感じるのは特徴的な船底天井だった。三廊式のかなり大きな教会。

サント・ステファノ広場にはカフェのテラス席もいくつも出て観光客たちもたくさん。かといってサン・マルコ界隈やリアルト橋周辺の大混雑もなく、ゆったりした開放感がある

教会部分は無料で入れるのでそれなりに見学者が多くいた

ヴェネツィアに多くある竜骨状の船底天井だけど、格子状に梁が渡されて、さらにその下にも梁がという重層的な構造になっている。よくみると梁にも繊細な装飾が施されている

ティントレット作品を集めた小部屋が有料エリアとなっている。『最後の晩餐』の保存状態はかなりよく、サン・ポーロ教会のものほど "酒席の乱闘" 度はないものの "晩餐" にフォーカスした感じはする。スポットライトの効果も相まって陰影と躍動感が強調されてますねー

ティントレットの『復活』と『弟子の足を洗うキリスト』は、かなり荒々しいタッチ。その他の絵画の保存状態もかなり良好なように思うな

パスを見せて有料部分に入ると、ふたつめに「ティントレットの小部屋」がある。さして広い部屋ではないけれど、しっかり絵と対峙できる位置に木のベンチが設えられていて、全身ぐるりと絵画にを包まれる。存分に堪能した後、さらに奥に進むと聖杯や十字架などを展示した聖具室があり、その奥に彫像の並ぶ回廊が続き、さらに配電盤やバケツやモップや脚立なんかの置いてある普通の廊下がある。「スタッフオンリー」感が漂う中をめげずに進んでいくと、主祭壇の裏側を通って、木彫りの椅子のある半円形の小さな礼拝室に至った。ほぉー……何、この隠し部屋みたいなの? 手渡された説明書には書かれてないので、ここが何なのかはわからずじまい。

サント・ステファノ教会を出て東向きに方向転換、サン・マルコ方面に向かっていく。向かう道筋にはだんだん観光客が増えてきた。さらにどんどん増えてくる。この周辺は観光客が必ず訪れるエリアではあるけれど、今日の混雑っぽりは昨日や一昨日の比ではないように思うわ。よそ見してたらすれ違いざまにどつき飛ばされそうなほどに狭い小径に人人人……何なのコレ。ああー、もしかして今朝、大型客船が入港したから?

サン・マルコ広場に至る少し手前のサンタ・マリア・デル・ジッリョ教会 Chiesa di Santa Maria del Giglio のファサードは、ヴェネツィアでは割と珍しいバロック様式で、彫像満載で超豪華。サン・マルコ広場からショッピングストリートを抜けたところに位置してるので、観光客のほとんどが通るし、華やかで特徴的で目立つので、ツアーの集合場所に指定されてたりするみたい。だから外観の写真撮ってネットにあげてる人はたくさんいるのに、内部についてのコメントはほとんど見かけなかった。

ファサードの装飾の彫像はこの教会を建造した人の兄弟や親類なんだとか。普通はキリスト教の聖人の像なんだけど……。ローマやフィレンツェなどの他の町の地図のレリーフもあって、豪華で綺麗だけど実はちょっと変なのよね

ファサードの横幅とゴージャスさに比べて、内部はあまり奥行きがなくこじんまりしている。祭壇の右側に小部屋があって、小さな礼拝堂と聖具室があった

色大理石の柱?と思ったら絨毯のような織物が巻いてある

さほど大きくはないものの内部は重厚な雰囲気。天井画もオルガンもシックで落ち着いた色合いだ

教会の外はさらに観光客でわさわさになっていた。扉一枚内側の静寂が嘘のよう。明らかに一昨日や昨日よりも観光客密度が倍増している。やっぱり大型客船入港のせい? 曜日は関係するのかな? 今日は金曜日だけど……。
すぐ近くにヴァポレット乗場の S.Giglio があるはずなのに、あまりの人の多さにのぼせてしまったのか、見つけられずに行ったり来たり。実は手前に規模の大きなゴンドラステーションがあって、その陰に隠れてたのだった。それならサン・マルコまで行っちゃえと、3月22日通り Calle Larga il 22 Marzo を歩いたら、これがまたとんでもない混雑。ハイブランドのブティックや洒落たショップなどの並ぶ高級感漂う通りは、休日の原宿竹下通りや渋谷センター街のようなありさまを呈していた。そぞろ歩きを楽しむというよりは、ノロノロそぞろ歩くしかない。いやはや……

リアルト橋周辺にも観光客がうじゃうじゃ

当然ながらサン・マルコのヴァポレット乗場も混んでいて、待ち合いの浮き橋からは外まで列がはみ出している。昨日は一回で乗れなかったんだよねぇ……。どうせ1本送るなら急行の方が多少早いかもと2番の乗場に行ってみると、こちらは空いていてすぐ乗れた。日本の通勤電車は急行が混むものだけど、ヴァポレットに乗る観光客はほとんどが各駅の1番に乗るのね。短時間で移動するより、のんびり周辺景観を眺める目的もあるのでね、確か私もそうだったわ。

急行は目的地の Ca' d'Oro には停まらないので、ひとつ手前の Rialto で降りる。当然ながらこの周辺の人混みも狂気じみた混雑っぷりだった。リアルト周辺はサン・マルコのように広い空間があるわけでないので、なおさら。息苦しさまで感じるわ。

リアルト橋たもとのテラス席も満杯、橋の上も鈴なりの人人人……。ドリンクはこれ一種類しかないのか?と思えるほどに、み〜〜〜んなアペロールを飲んでいる。場所柄、高〜い一杯なんだろうなぁ……と下世話なことを思う

ここにもヴェネツィア・ビエンナーレのラッピングヴァポレットが。ゴンドラも次から次へと、カナル・グランデの交通量はハンパない

せっかくここまで来たので、橋のすぐ側のサン・ジャコモ・ディ・リアルト教会 Chiesa di San Giacomo di Rialto に立ち寄った。17世紀に再建されてはいるけれど、もともとは町一番の古い教会だそう。教会じたいはこじんまりと可愛らしく、時計台とロッジアのある形式も一風変わってて、時計のサイズが建物に対してとても大きいアンバランスさがまた絶妙に可愛い。この教会もほぼ毎晩コンサートが開催されているようで、教会内にチケットデスクがあった。ポスターを見ると€25で、サン・ヴィダル教会より安いけど、でもプログラムは向こうの方がいいな。うん、明日聴きに行けたらいいな。

時計台のある可愛いビジュアルの教会なので、ここで記念撮影をする人もたくさん。前の広場にはウンザリするほどの人人人……

礼拝堂に毛の生えた小さく可愛らしい堂内。瓶底のような丸いガラス装飾がツボにはまった

16〜17世紀頃のヴァイオリンやヴィオラなどの古い楽器のコレクションがある。ここもコーラス加盟教会のはずだけど、教会内部には誰でも入れて古楽器コレクションも見ることが出来る。有料部分がどこなのかは結局わからずじまい

リアルト橋たもと近くの魚市場はすべて撤収されてがら〜んとしていたけれど、魚臭さが残っているのでここがそうだとすぐわかる。カナル・グランデを隔てた対岸には、これから向かう予定のカ・ドーロ Ca' d'Oro が優美な姿を見せている。……って、こちらは反対側じゃないの! ものの30m先に見えているのに大運河に阻まれて行くことが出来ない、それがヴェネツィアの面白いところであり、厄介なところでもあり。リアルト橋までまた戻って渡ってぐるーっと大回りしなくちゃならないんだった。モタモタしてたら昨日のように閉館になっちゃう。

リアルト橋上はステップが見えないほどの人人人……。ここは新宿駅の階段ですか?というくらいの雑踏っぷり

カ・ドーロで開催中の企画展は想像以上に面白い

イタリアの他の都市では執政者や貴族の宮殿や邸宅、市庁舎や裁判所などの公共建築分をパラッツォと呼ぶけれど、ここヴェネツィアではカ・○○だ。そういえば、私の泊まっているB&Bも「カ・リザ」だったっけ。

カ・ドーロ Ca’ d’Oro──すなわち「黄金の館」は、カナル・グランデに面した美しい歴史的建造物の中でも特に美しい部類に入る。もヴェネツィアの中でも最も美しいとされる建物のひとつとされる。レース編みのような繊細な装飾のアーチが連続するバルコニーは、典型的なヴェネツィアン・ゴシック様式で、それだけでも美しいのにかつてはさらに金で装飾されピカピカだったというんだから。
15世紀の趣を残すのは運河側から見た外観のみで、内部はバルコニーと中庭以外はまるっと改装されてジョルジョ・フランケッティ美術館 Galleria Giorgio Franchetti になっている。折しもビエンナーレ期間中ということで、ここでは『DYSFUNCTIONAL.』という現代美術の企画展が同時に行われている。Dysfunctional とは「機能不全」という意味らしい。料金はどちらも込みで€8.50だった。

パドヴァのエレミターニ教会で出逢って虜になってしまったマンテーニャ。彼の傑作『聖セバスティアヌス』の前には、小さな灯りたちが流れ落ちるように繊細に飾られたエレガントな作品が。対極にあるように異質で、それでいてまるでコラボしたかのように共鳴もしている

バルコニーからカナル・グランデを見下ろしてみる

連続するアーチの装飾の美しい2階のバルコニー。ここにも丸い瓶底のようなガラス窓がある。置いてあるベンチや椅子は作品なので座っちゃダメ〜〜

最上階のバルコニーには、割れそうで割れることのないガラスのシャボン玉のような作品が。アーチの装飾、運河越しに望む景色、美術作品、そのすべてがとてもとても美しく融合している。この時期、この天気、この時間帯に来てよかった!

企画展は別室にまとめてあるのかなと思ったら、常設の展示室のそこここに "同時に" 置いてあった。

私はもともとカ・ドーロ内の美術館がどうなっているのかは知らない。ただ、ガイドブックを見ると15〜18世紀の絵画や彫刻や陶器などの展示とある。超目玉作品が大量にあるわけでもなく、かつての館の居室空間が残されているわけでもなく、床や壁も改装しての展示なので、もしかすると常設展示だけでは物足りなく感じたかもしれない。そこにまるで異質な現代美術作品が置かれ、邪魔なような融合しているような引き立て合っているような……なんとも摩訶不思議でいて落ち着く空間になっている。たったひとつでもビエンナーレがらみの展示が見られたことも嬉しい。
実を言うと、本来の収蔵美術品で心惹かれたのはマンティーニャの『聖セバスティアヌス』だけだったので、この展示に出逢えてよかった。だけど、無機質な白い壁の美術館でこの現代美術だけ見せられても何だかなーだったと思う。そう考えるとやっぱり常設展と企画展とで融合して面白さを醸し出していたということかな?

1階のカナル・グランデに面したフロア。息を飲むほどに美しい床モザイクは美術館改装時につけ加えられたものかと思う。それでも100年くらいは経ってるのかな? 真ん中から奥が水浸しになっているようで、ロープが張られて立ち入り禁止になっていた。ここから水面に向き合いたかったのに……

ネットを被せたようなシャンデリア、そこから洩れる暖かく柔らかい光のランプ。これも現代美術作品なのだけど、この空間になんとマッチしているのかしら。なくなってしまったら寂しく思えそうだけど、ビエンナーレ期間限定風景だからこそ美しいのね


この中庭にある井戸は15世紀初期のもので歴史的価値があるそう。古い時代の彫刻作品やレリーフなんかと同居して展示してある

カ・ドーロに着いた頃からカメラのバッテリー残量表示が少なくなってきていて、各フロアの現代美術作品は気前よくパチパチ撮れない。本当に撮りたいものだけパッと電源入れてはパッと撮っていたけれど、いよいよ電池マークがが赤く点滅してヤバくなってきた。ムラーノで引き返してきて30分充電しただけだけど、夕方までの数時間よくもったと思う。頑張ってくれたよね。液晶画面を使わないようにしたので消耗が抑えられたせいもある。このへんでいったん宿まで帰ろう。

「イタリアで一番美しいスーパーマーケット」でお土産を買う

1番のヴァポレットに乗って S.Toma で降りる。ここからB&Bまでの道筋も覚えてしまった。このあたりは観光客も通り抜けず静かで、さらに夕暮れ間近のゆる〜い空気が漂っている。犬を連れて散歩している人もちらほら。そういえば今回の旅では犬に会うことが多くて、あまり猫に会わないなあ。悪天候だったせいもあるけど、ロヴィニの階段バーの常連猫くらいかしら。あ、プーラの脱糞猫もいたっけ。ヴェネツィアの町にはなおさら猫はいないねぇ。あっちもこっちも運河で、さらに大量すぎる人混みという彼らの嫌いなものばかりの街だから仕方ないよね。

観光客の多いエリアは満員ラッシュだけど、静かな地区はこんなにのんびりしている。のどかにアヒルが散歩していた

部屋に戻ってバッテリーを入れ替える。30分ほど休息してから、夕食のバーカロ巡りに再出発! 今日は本島の北側のカンナレージョ地区を攻めてみるつもり。鉄道駅を降りて左側のかなり広いエリアで、駅周辺からリアルト橋手前のカ・ドーロあたりは観光客が闊歩しているけれど、その北側奥には旧ユダヤ人ゲットーなどもあり、狭い運河がいくつも平行して庶民的な雰囲気だという。この周辺には気軽なバーカロがたくさん軒を連ねてよりどりみどりらしい。

今度はローマ広場から2番のヴァポレットに乗った。思ってた以上にこのB&Bのロケーションは連泊に適してるわね。行きたい方向に応じて3ヶ所の乗場に7分〜15分くらいで歩けるんだもの。鉄道駅とリアルト橋の間の Casino' di Venezia で降りる。ヴェナツィアのカジノ……カジノがあるの? こんへんに?

ローマ広場へ向かう道筋に、若い人たちが大量にたむろしているバーカロが。彼らはメストレあたりの安い宿に帰るために駅近くで飲んでるのかもしれない。今日は金曜の夜なんだっけ? そのせい?

素敵な建物があるなあ、どうやら今は自然史博物館になっているらしいなどと見ていたら、けたたましいサイレンを鳴らして救急モーターボートが疾走していった

ヴェネツィア通の知人によると、このカンナレージョ地区には「イタリアで一番美しいスーパーマッケット」があるとのこと。100年以上前に造られた劇場の外観内装そのままにスーパーにしているというのだ。どうせお土産を見繕わなくちゃならなかったので、立ち寄ってみることにした。

東京の私鉄沿線の駅前通りみたいな雰囲気の賑やかな通り沿いにその建物はあった。ヴィザンチン様式の建物の並ぶ中、ヴェネツィアン・ゴシックのアーチの装飾が往来でひときわ存在感を放っている。白大理石と赤い煉瓦のコンビネーションがとても目立つ

TEATRO ITALIA の文字を残した外装もそのまま。ここでも2階の窓ガラスが瓶底みたいな装飾になっていて、屋上の手すりには有翼のライオンのレリーフがある

2階には上がれないけれど、かつての階段がそのままになっているスーパーの入口。鉄線細工の手すりの優美なこと!

古い建造物と現代の日常生活風景は実は当たり前に同居してていいんだなって思う

優美な装飾の半円の窓、壁や天井のフレスコ画もそのままに、内部は食料品の棚や冷蔵ケースの並ぶ普通のスーパーだ

一番奥の肉類やチーズの売場はかつては舞台だった場所かと思う。華やかな舞台装飾があり、舞台照明のようなスポットライトが当てられている。でもね、この写真を撮った瞬間、売場のお兄さんに叱られてしまったのだ。ごめんなさい

美しいスーパーマーケットで30分も時間を使ってしまった。装飾を丁寧に見るのもうっとりだし、商品をひとつひとつ見るのも楽しい。結局買ったものはお菓子とかペーストとか水とか、たいしたものではなかったのだけど。
よりによってスーパーに改装というのは、おそらく賛否両論はあったのだと思うけど、こういう形で文化財保護していく姿勢は素敵ね。毎日のように買い物袋下げて行ける場所っていうのもいい。日本の蔵造りカフェなんかも考え方の根っ子は同じに思う。

バーカロ難民化してカンナレージョの運河を彷徨う

カンナレージョ地区には南から順にミセルコルディア運河、センサ運河、サンタルヴィゼ運河と細い運河が東西に走っている。この運河に沿ってバーカロやオステリアが軒を連ねている。このあたりのどこかで適当に見繕ってハシゴ酒といこうと思うの。

本島北部のカンナレージョ地区には細い運河沿いに気軽そうな店がたくさん並んでいる。離れた場所からでも楽し気に盛り上がっている気配と暮れていく空が見えた

金曜の夜のせいなのか、気軽な店の並ぶエリアには若いグループがたくさん集まっている。うーむ、ちょっと気軽すぎるかも……

運河に沿った通りには確かにズラリと店が並んでいて、そのどこもが賑わっていた。基本的に小さな店ばかりだから室内スペースは狭く、外に設えてある席も2人掛けの小さなテーブルばかり。客の大半を占めているのは20代の若いグループで、彼らは地べたでも橋の上でもそのへんに浮いているボートの上でも、あっちこっちで呑んで喰っての大騒ぎ。大音量で音楽を流している店の前では、ほろ酔いの女の子が「私、踊りまーす!」みたいにダンス始めたり、それを7〜8人の仲間が囃し立てたり一緒に歌い踊り始めたり。運河の縁に腰掛けて足プラプラで寄り添う若いカップル、地べたに胡座で呑みながら話し込む男性2人。うひゃー……この状態はおばちゃんひとりには抵抗あるなー(>_<) おひとりさまスキルのあがった私の中にも越えられないラインというものがあるのよ。

カンナレージョ地区の運河まわりはおおむねそんな感じだった。もちろん室内できちんとテーブルで食事できる店もちゃんとある。でも、私はバーカロ巡りしたいんだもの。しばらく難民化して彷徨い歩き、カ・ドーロ周辺まで、さらに彷徨い、結局リアルト界隈までやって来た。たぶん1時間半近く歩いてたと思う。うー……お腹空いたよぉ。

難民に終止符、バーカロはしご三連弾!

時計台のある可愛いサン・ジャコモ・ディ・リアルト教会前の広場は昼間の喧噪が嘘のように行き交う人はまばらになっていた。ただ、この周辺に観光客たちがいないわけではない。このあたりには何軒も飲食店が集まっているけれど、カンナレージョ地区ではほとんどの客が道や橋にはみ出ていたけれど、ここではみんな景観のいいテラス席やクロスのかかった室内席にいる。お店は賑わっているけれど、カウンター席は空いている。これって、願ったり叶ったりすぎるじゃん! あーあ、結局リアルト地区で落ち着くのね。素直にこっちに来てればよかった。確かにここでは若い子たちは羽目を外せない。

リアルト橋近くも古くからバーカロの集まるエリアだけど、21時を回って昼間は人で埋まってた広場もまばら。でも、なんか良い感じの店が並んでるではありませんか!

広場に面した回廊の中の一軒の《Al Pesador Osteria》という店に入ってみた。ここのバーカロカウンターには止まり木のような高椅子があったから。腰を寄りかからせる程度だけど、さすがに歩き疲れて立ちっぱなしはしんどいのでね。
店名にオステリアとあるように、基本はきちんと食事をする店だけど、入ってすぐのところにバーカロスペースがある。ガラスケースの脇の狭いカウンターと、店の外に大樽のような立ち席テーブルが2つ3つ。私が着いた時には外の立ち席に3〜4人グループが2組いて、店内カウンターには誰もいなかった。バーカロエリアの向こうにバーカウンターがあって、その奥がテーブル席エリア、さらにその先はリアルト橋を望むテラス席になっているようで、そちらは恐ろしく賑わっている(気配がする)。

カウンターの女の子は大車輪で働いていたけれど、とても感じがよかった。私が注文する直前に、外で呑んでたグループがてんでんばらばらなドリンクを5杯もオーダーし、中からもオーダーが入りして、てんやわんや。
「ごめんなさい、2分待って」と申し訳なさそうに言われて、結局10分近く待ったけど、いいのよ〜。おばちゃんは働き者の可愛い女の子には寛容なのよ〜(^^)

キリッと冷えた辛口のプロセッコ、揚げ肉団子、ピリ辛のバッカラ・マンテカート、焼きヤリイカ。イカはタコに見えるけど、切り開いて何か詰め物されて真ん丸にしてある。忙しいのにちゃんと温めてくれた。特にピリ辛の鱈は絶品。合計€9。ロケーション的にテーブル席はおそらくそれなりのお値段だろうけど、バーカロはお手頃なお値段になっている

ようやく人心地がついたわ。さあ2軒目行こう! 次はリアルト地区のちょっと奥まったところに行ってみる。ガイドブックにも出てたりバーカロ巡りのオプショナルツアーなどでも定番の老舗バーカロ《Cantina Do Mori》の側を通ったけれど、もう閉まってる。20時半の早じまいなのだ。

次の店は路地の奥の《Il Diavolo E'Lacqua Santa》というトラットリア。テラス席テーブルも店内のテーブルも8割がた埋まっていたけれど、店内にバーカロのカウンターがある。トラットリアとはメニューが違うようで、ガラスケースには「チケッティは立ち席のみ」といった内容のメモが貼られていた。真っ赤っかにできあがった地元のおじちゃんが、徳大寺有恒似の店主と軽口を叩きながら呑んでいる。おじちゃんの横に立って私も注文。

2杯目は赤ワイン。イタリア式揚げおにぎりのアランチーノと、茄子とトマトとモッツァレラのはさみ揚げ。茄子はトロトロに柔らかく揚がってて美味しかったけど、アランチーノはかつてシチリアで食べたものには遠く及ばず。あー……シチリアに行きたくなってきちゃったよ。料金はなんと€4.50──500円ちょっとだ。この気軽さが正しいバーカロの姿なのね、きっと。

アランチーノはちょっと残念だったけど、そこそこ満足した。もう22時半だし、帰ろう。Rialto まで戻ってヴァポレットに乗り、S.Toma で降りて歩く途中、一昨日入った《El San Pantalon》の灯りが見えた。そしたらもう一杯飲みたい気分になっちゃって、ついふらっと3軒め。ここからなら3分で帰れるしね。物腰が柔らかくてとても感じがいい店のおじさんはリピートした私のことをちゃんと覚えててくれた。バーカロでひとり呑みするアジア人のおばちゃんはたぶんそう多くはないだろうからね。

もうお腹は満たされているので、さっぱりとヴェネトの白ワイン。つまみはカルチョーフィの酢漬けのみ。でも、綺麗に盛りつけてくれる。さすがに歩き疲れてて座らせてもらったので、チケッティひとつでも€5.50

今日はこれまでの最高歩数の32332歩。初の三万歩超! ヴァポレットに乗りっぱなしだった時間が1時間半以上はあるんだけど……カメラのバッテリー充電させに部屋に戻って30分待ってた時間も……なんでそんな歩数になったんだろう? ヴェネツィアに慣れた気になってちょこちょこ迷宮にハマり込んでたので、それが歩数のばしたのかな? カンナレージョで難民化して彷徨ったせいかな? さすがに部屋に帰り着いた時にはふくらはぎがちょっとつっていた。しっかり足湯してほぐさなきゃ!




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