Le moineau 番外編

日曜日。遺跡巡りは暑そうだ。

ポンペイやエルコラーノの遺跡は8時には開く。が、張り切って早起きしていっても、多分気力と体力が持たないだろうと、フツーに起きて朝食をとる。9時頃の電車に乗ることにした。

ヴェスヴィオ周遊鉄道の窓口に行き、全行程の切符をまとめて買う。「ナポリ→エルコラーノ エルコラーノ→ポンペイ ポンペイ→ナポリ」繰り返し、ジェスチャーでも示し、売場の親父にも復唱させる。ちゃんと通じたのか今ひとつ不安な気配。紙に書こうとしたところ、親父はわかったという顔で切符をよこす。1枚きりしかないが、コレで全行程分あるのか? 値段も安すぎる気がする。再確認したかったが、ほい次の人!という態度なので引き下がった。

この私鉄のナポリ駅には自動改札があった。切符を通すと、現在の時刻と120分有効の文字が刻印されている。ここで不安がまた頭をもたげてくる。戻るのは夕方だよ? 120分って……

余計なことを考えていたら乗る電車を間違えてしまった。途中の分岐点までは同じなのだが、終点は全然別の方角だ。慌てて電車を降りる。駅貼りの時刻表を大急ぎで確認。分岐点の駅まで戻って5分後にポンペイ方面の電車に連絡するようだ。どうやら30分ほどのロスですみそう。
今度は間違えまいと、ドア上の路線図を睨みながら各駅で窓ガラスに貼付いて逐一駅名を確認する。10時前、エルコラーノ到着。間違えなければナポリからなら15分程度なのに。

駅から10〜15分ほどで遺跡入口に到着。ここでも切符売場は長蛇の列だった。
前日の朝に、駅の専用窓口で「カンパーニャ・アルテカード」というものを購入してある。1日券、3日券、7日券などがあって、ナポリの美術館や、ポンペイなどの遺跡、世界遺産のカゼルタの王宮までをカバーする便利なカード。
1日券は適用範囲が狭く、3日券は2ケ所が無料であと半額・交通機関乗り放題、7日券はすべてが入場無料・交通機関はナシ。滞在は3日だが、値段を概算してみて7日券を買った。昨日の考古学博物館でもこのカードを使った。

正解だった。この列に並ばなくていいのだから。半額でも払わなくてはいけないということは列に並ぶということである。この時間の差は大きい。

そして遺跡は炎熱地獄であった。

エルコラーノとポンペイの遺跡の内容は特筆しない。文献も写真も紀行文も山のようにあるから、私が敢えて稚拙な文章を綴る必要はないでしょう。
エルコラーノはともかく、ポンペイの遺跡はとても広かった。暑かった。石畳はでこぼこだった。足はパンパンで、とにかく水分を欲した。あちこちにトイレがあるワケではないので、そっち方面も苦労した。

エルコラーノの遺跡は、かなり往時の姿をとどめている

1軒の家に残っていたアトリウムのフレスコ画。ロープが張られて近寄れない

ここの遺跡は展望テラスから、ぐるりを見渡せる。太陽は今日も「やる気満々」である。このテラスにはカフェがある

先にエルコラーノを廻ってよかったと思う。こちらの方がポンペイよりずっと往時の姿を留めている。火山灰に埋まったか溶岩に埋まったかの違いらしい。ポンペイだけでは、過去の繁栄を想像するのはちと苦しいかも。昨日博物館で見た出土品は、現地には文章での表示があるだけで、レプリカでさえほとんど置かれていない。こちらも先に見ておいてよかった。あの壁画がモザイクがここにあったのねー、と想像を膨らませることが出来る。

野良犬だらけ。階段の上にも黒いヤツが1匹いる

とにかく自分の好きな場所で寝ている。発掘された遺体の石膏像の下で死体のようになっている。ココは涼しくてよいのかも?

秘儀荘へと向かう道

この石畳道を昇り降りしていると、足腰ワギワギになる。時々、日本の団体ツアーに出くわすので、ちゃっかり混じって日本語の説明を聞かせてもらう

そして遺跡の中は野良犬天国でもあった。彼等は悪さをするわけではない。ただ、そこらに寝てるだけ。至極無感情で、敵意も愛想もない。人々も気にも留めない。鳩か雀レベルである。

多分ポンペイは半分ほどしか廻れなかったと思う。もともと2つの遺跡を同日に見ようとしたのが欲張りだったのだから。とにかく暑くて、足も痛くて、気持ちはあってもカラダがついていかない。まあ、いい。また訪れる理由が出来たし(笑)
ぐったり疲れて、すぐには電車に乗る気も起きない。2、3本先の時刻だけ調べて、駅横のバールで1時間ほど呆けてしまった。同じような人達で店は満席に近い。顔はにこにことお喋りしながらも、テーブル下に目をやると、靴を脱いで足指を開いたり握ったりしている。あの石畳で足をヤラれるのは洋の東西も老若男女も問わないのね。

「とにかくレモンとオレンジ!」と主張するバールの店先。絞り立てのジュースは美味しい

私は、食事写真を撮る小さな小さなデジカメと、後日絵を描くための風景写真を撮るフィルムカメラとを使い分けている。デジカメは接写に強く、広角に弱いからだ。これは単4の充電電池2本で動くのだが、うっかり充電器を持ってくるのを忘れてしまったのだ。出発前の充電も不十分だったらしく、観光途中で電池切れしてしまった。
とりあえずエルコラーノの街の煙草屋で電池を買ったのだが、卒倒しそうになった。アルカリでもないただの単4電池が4本で¥1200もするのである! おまけに出て来た商品はパナソニック。何が悲しくて異国で日本製品をこんな値段で買わなくてはならないのだ。その上、ただの電池ではカメラに装填しておくだけで3時間ほどで消費してしまう。冗談ではない。まあ、煙草屋だから高かったせいもあるが、明日ナポリのカメラ店でアルカリ電池を買い直し、面倒だけど撮影時のみ電池を入れることにしよう。あまり使わない方のカメラでよかったが、予定外の出費である。

さらに本日の落とし穴はあった。

ナポリの駅で改札に引っかかった。
予感は適中していたのだ。案の定、私の切符はナポリ〜エルコラーノの片道切符でしかなかった。売場の親父の顔が浮かぶ。いや、確認しなかった私がいけない。エルコラーノの駅でもポンペイの駅でも窓口でこの切符でいいのか聞くことは出来たのだ。改札がないのでそのまま通ってしまっていた。一応、その旨説明を試みたが、上手く言えない。素直に謝る。

駅員に別室へ連れて行かれる。あー罰金か、不正乗車は高額なのよね、早くホテル戻ってトイレに行きたいんだけど…
罰金は安かった。10ユーロ(¥1400強)。本来の全行程の料金が¥400弱なわけだから…不正の割には安い。不慣れな旅行者に対する値引きなのかも。ガイドブックにはタダ乗りが見つかると¥10000近い罰金ってあったから。

註)このへん確実な情報ではありません。あくまで私が体験したことのみの記述です。

拍子抜けして2人分20ユーロ払うと、駅員はちょっと待てと言って領収書を書いてよこした。えー、罰金の領収書なんていらないよ。私は自営業だが、経費で落ちない領収書は必要ないのだ(笑)。
帰り道ヒナコが、ローマの空港でタダ乗りしちゃった列車は幾らだったの?と聞く。9.5ユーロと答えると、じゃあトントンじゃない、と笑う。はは…そういう考えもあるわね。

ひと休みして、さてまた食事である。今日も足はガクガクで遠出はしたくないので、中央駅近辺で探すことになる。ところが日曜日の夜。大半のレストランは定休日なのだ。ヒナコは作り置きの店はイヤだと言う。私もイヤ。しばらく徘徊してやっと1軒見つけた。他に選択肢がないので、6〜7組が席の空くのを待っている。でも、雰囲気はよさそうだし、値段も手頃。入口横にはナポリ在住の日本人がこの店の紹介をしたHP記事がプリントされ貼ってあった。

キャパシティはあり、回転も早いようで15分ほどしか待たなかった。
7〜8人のカメリエーレ達はくるくると通路を小走りで回る。そうだよねー、他の店がみんな休みなんだもん、忙しいよねー。ところが彼等、忙し過ぎていろんなコトが抜けまくっているのである。

やはりワインと水をオーダーしたのだが、ワインのデキャンタしか来ない。グラスは〜〜? 皆さん、愛想はよくてお返事もよろしいのだが。
4回頼んでやっとグラスが来た。同様に3回頼んでやっと水。ガス入り頼んだのに、来たのはガスなしだし。途中フォークを取り落としてしまったが、交換を頼んでもいつになるかわからないのでナプキンで拭いてしまった。

料理は前菜に野菜のグリル。メインにムール貝のボイル・レモンソースと、手長海老の炭火焼き。
料理はさっぱりしていてとても美味しかった。…が、しかし、しかしである。
フツー、2人でメインを2品頼めば同時に持って来るもんでしょう? ムール貝をほぼ食べ終わりかけているのに海老が来ない。さらに、どんどん皿を下げようとする。慌ててテーブル担当のカメリエーレを呼ぶと、彼は一瞬キョトンとし「あッ海老!」
おいおい、キミがオーダー取りながら書いてたメモは何だったんだい。海老を半分食べた頃、ようやくパンが出て来た…遅いよ。

デザートもコーヒーもやめて、とっとと帰ることにした。先程の彼は「デザートは?」とのたまう。だって、いつ出てくるか正しく出てくるかわかんないじゃん。外にまだ客だって待ってるしさ。
店を出る時、彼はにこにこ笑って手を振り、投げキッスまでよこした。
そう、愛想はいいのだ。料理も美味しかった。だけど、かしづくまではいらないけど、それなりのサービスと順序は欲しかったよ…しくしく。

レストランに賑わいは必要である。それも立派な食事のスパイスだから。閑古鳥の鳴いている店でモソモソ食べるよりずっといい。でも、何事も「ほどほど」が肝要だな…と教訓にすることにした。
繰り返すが、この店の料理はホントーに美味しかった。ただし日曜の夜は避けることが賢明。

今日はプチ厄日だったのかな。美味しかった料理の写真は、デジカメの電池切れによりナシ。

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