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乳頭乳輪再建。ついにおっぱいが完成する!

久し振りの手術の夜の痛み

完成おっぱいとの対面はまだお預け

僕が医者続けてる限りずっと診るからね

乳房再建は心の再建

「毛」が生えてきた!?

私はもう “患者” ではない

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乳頭乳輪再建。ついにおっぱいが完成する!

ソチオリンピック開催まっただ中の2014年2月18日、乳頭乳輪の再建手術を受けた。さあ、いよいよ乳房再建の総仕上げだ!

2月7日から9日、日本列島は四国から東北地方にかけて大雪となり、東京都心でも20年ぶりに20cm超の積雪となった。その雪もほとんど溶けないまま14日にも再び雪、関東・甲信越では2週続けての大雪となり、都市機能はかなり麻痺した。特に影響が大きかったのが山梨などの甲信越地方で、記録的な降雪のために文字通りの「陸の孤島」になってしまい、建物は倒壊するわ死傷者は出るわの地震や台風なみの被害が出てしまった。
今回の手術は入院せずに日帰りで受けるのだが、事前の天気予報ではその日は再び雪となっていた。交通機関がストップしたらどうしよう、足元が不安定だったらどうしようと、かなり気を揉みながら迎えた18日の朝、空はカラリと青く晴れあがっていた。

今回の手術もS先生の執刀なのだけど、いつものM病院ではない。術前の診察日に「当日はここに10時ちょっと前に来てね〜」と渡されたのは、ある美容整形クリニックのパンフレットと地図だった。地理的にはM病院よりずっと自宅に近く、電車も乗り換えなしで行けるので行きも帰りも楽ちん。予報が外れて晴天だったので、約束通りにちゃんと10時前に到着できた。待合室で待っていると、ほどなくS先生登場。
「はいはい、おはよう〜〜! 今日はよろしくねえ〜」と、相変わらずシャキシャキと元気いい。
診察室で今日の体調などを問診、写真撮影、そして乳頭乳輪のデザイン。乳房再建の時のように身体に作図されるのだけど、要する時間はずっと短い。

乳房再建の方法もさまざまなように乳頭乳輪再建の方法もいろいろある。
代表的な乳頭の作り方としては、健側の乳首を半分カットして縫いつける方法がある。元々の乳頭の大きさや形状に合わせてカットの方向は縦方向でも横方向でもいい。いずれにせよ自身の乳首を分け合うのであれば、形や色も揃うのは当然なのだ。 授乳機能を残しておくために健側乳頭を傷つけたくない若い患者さんや、両側乳癌で移植すべき乳頭がない患者さんの場合には、皮膚表面を切り起こして縫い縮めて乳首らしい形状に作る方法もある。私は出産予定もなく両側乳癌でもないけれど、こちらの方法を選んだ。術式を決める診察の時、S先生は健側を指差して「こっち側を切っちゃっていいかな?」と言ったけど、私は即座に「嫌ですッ!」と拒絶してしまったのだ。だって私は元々の乳頭が小さめなんだもの、半分切られたらものすごく小ちゃくなっちゃうもの。

一部を切って作った乳首は潰れやすいため芯に小さなシリコン片や軟骨組織を入れることが多いそうだけど、S先生は「自家組織再建の場合はあくまで100%本人の組織で」がモットーなので、出来る限り人工物との併用はしない。切り出した皮膚の下から真皮を引っぱり上げて立ち上げるように根元を縫い止める術式らしく、ただ縫い縮めたものよりはずっと潰れにくいそうなのだ。後で聞いたことだが、体質によっては再建乳房に小さなシコリや脂肪のコブができてしまうことがあり、切除がてら再建乳頭の芯に使ったりすることもあるらしい。でも、そのシコリもコブも本人の組織だものね。なんというリサイクル精神!

S先生は最近、術後妊娠授乳希望の患者さんには健側乳頭の外側だけドーナツ状に剥離採取して移植に使い、乳頭中央の乳管を温存して授乳機能を保つという術式も考案し実施しているという。すごいなあ……挙児希望の若い患者さんにとってはどれほどの喜びとなることか。
私はもう授乳という本来の役割は求めてないので、そんな繊細な手術の必要はなく、あくまで見た目がそれっぽく左右で揃っていればそれで十分なのだ。

乳輪の作成方法は、刺青で染める方法と、大腿部の色のついた皮膚を移植する方法がある。乳輪が大きめの人なら、ドーナツ状に周辺をカットして再建乳頭に被せる方法もある。要は左右対称になればいいわけだから、半分サイズの乳輪になっても両方とも綺麗に揃えば問題なしなわけ。刺青法は保険適用にはならないけれど5〜10万円程度と驚くような金額ではなく、施術としては手軽なので、乳房再建と乳頭乳輪再建を手がける施設の大部分がこの方法を取り入れているそうだ。ひとりひとりに合わせて染料の色調合が微妙なことと、時間の経過ともに薄れてくるので定期的に色を入れ直す必要があることなどがデメリット。

大腿部の色のついた皮膚というのは、つまりは脚の付け根の部分。脚の付け根っていってもビキニラインとか鼠蹊部とか呼ばれる場所ではなくて、もっと真ん中の方というか……婦人科のお医者さん以外にそんなところを見せるの?という場所。なるほどね、確かに色みは近そう。でも、痛そう。
「右側と左側、どちら側から皮膚を採るんですか?」と尋ねてみたら、乳輪が外側に向けて薄くなっていくのに揃えるべく、半円ずつ両側から切り取るんだそうだ。へええ、そこまでこだわる? でも、両側とも切られちゃうのね。

基本的に局所麻酔で出来る手術だけど、静脈麻酔で眠らせてくれることになっている。局所麻酔での手術はY先生の時に経験済みだから怖いわけではないけれど、眠っているうちに終わるのはありがたい。確かに乳腺や形成の医師や医療スタッフの前で裸になることには何の抵抗もない……ただし上半身に限り、だ。下半身はやっぱり婦人科以外では恥ずかしいよ。まあ、慣れの問題なんだろうけど。
そんな場所を色の合う部分を探したり、切り取ったり、縫ったりするわけでしょ? 会話も丸聞こえでしょ? 出産なんかと違って意識がハッキリして冷静な状態では恥ずかしくていたたまれないよね。

手術着に着替えて手術室に向かう。ビルのワンフロア程度の美容クリニックだから、診察室隣の小部屋を通り抜けるといきなり手術室だ。S先生を含む手術スタッフはもう全員スタンバイしていた。一番弟子のT先生も来ている。
「よろしくお願いします」と手術台によじ登ったところで起床時以来トイレに行っていないことに気がついてしまった。カテーテルは挿れないのだから粗相があっては大変、平身低頭しながら皆さんに待ってもらってトイレに走ってきた。
再び手術台によじ登って横たわり、機器を装着されたりしていると、今度はお腹が「ぐううぅぅぅっ」と鳴ってしまった。手術も5回目ともなると緊張感がなくなるにもほどがある。
「お腹鳴っちゃったあ」と誤摩化すと
「朝ごはん抜きだもんなあ。お腹も減るよなあ。すぐすむからね、終わったら美味しいもの食べてよ」とS先生。
「でも麻酔残ってるから3時頃までは固形物はお預けです」とT先生。

静脈麻酔の点滴針を刺されながらチラリと見た壁の時計は10時35分だった。今回の麻酔は、これまで受けて来た全身麻酔のように瞬時に “ストンと落ちる” 感じではなく、抗いがたい眠りに引き込まれていくような感じ。すーっと滑らかに眠りに入るのではなく、カクンカクンと意識が飛び飛びになりながら手術室のスタッフたちの会話が徐々に遠のいていく。
「○子ちゃんさあ、そこの何それをどうとかしてくれる?」S先生は私がもう眠ったと思ったらしく、T先生をファーストネームに「ちゃん」づけで呼んだ。
彼女はS先生の娘くらいの年齢だが、私たち患者の前では一応「T先生」って呼んで「ですます」で話しているくせに、普段は「○子ちゃん」なんだあ……。やっぱりねー、そんな感じがしたんだよねー……。ちょっと微笑ましい気持ちになったところでプツリと意識が途切れた。

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