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入院の日

手術──辛く長い一夜 その1

手術──辛く長い一夜 その2

“術後ハイ”になる入院生活

とりあえず退院しちゃおう

雑踏が怖い、満員電車が怖い

おっぱいが2倍に腫れてきた!?

ああ、自分の場所に帰ってきたんだ

病理結果に打ちのめされる

感染した!!!!

どんどん変な色と形になってくる

いつまで足踏みしてたらいいのだろう

一歩進んで二歩戻る

二度目の手術は日帰りで

今度こそよくなっていくといいなあ

4ヵ月遅れの再建スタート

どうしてまた腫れてくるの!?

再建は諦めなくちゃならないのかな

「なんとかしてやれなくてごめんな」

三度目は一番悲しい手術だった

痛みより痒みの方がつらいなんて

醜い瘢痕拘縮

自家組織での再建を決意する

前を向いて歩こう


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病理結果に打ちのめされる

9月26日、秋めいた涼しい日だった。今日は形成と乳腺とダブル受診だ。9月は連休も多かったので、やっぱり待合室は激混みだった。
1時間近く待って最初に形成に呼ばれたが、まだ腫れがひどいので水の注入は当然してもらえない。それどころか、痛みに耐えかねて腹巻のような圧迫帯を外して前開きの胸帯に取り替えてしまったことを咎められてしまった。鬱血している箇所を締め付けるのも苦しかったし、筒状の圧迫帯は脇下で端が丸まるのでセンチネルリンパ生検の傷跡に擦れるのも痛かったんだもの。
S先生曰く、しっかり強く圧迫している方が早く滲出液も止まり、結果的に胸の形を綺麗に保てるとのことなのだ。乳腺のY先生はこの胸帯を見ても何も言わなかったのに……。形成外科医はやっぱり美しく仕上げることが治療の最上位にあるので、「ちょっとくらい痛くても頑張って我慢して」というスタンスなのだ。

しょぼんとして待合室に戻る。それから1時間半くらい待ってようやくY先生に呼ばれた。病理の結果も出ていた。何枚綴りかのレポートになっていて、摘出組織のカラー写真も添えられている。焼く前のハンバーグみたいだった私の乳腺組織は、ホルマリン固定して数ミリ幅にスライスされており、今度はカットして並べられたチキンカツのようになっていた。ちょうど乳頭の真下あたりの位置が、センチネルリンパ生検のために青黒く染色されている。スライスした断面を上に向けて並べ変えた写真もある。そのどちらにも染色部分を中心に小さな赤い丸印がたくさん書き込まれていた。えっ、このコマコマと散らばってるのが全部癌だったてこと?

所見欄の冒頭には腫瘍範囲を決めるのが著しく困難な症例だとあった。一応6.0×3.5×1.3cmとしたけれど、その境界はとても曖昧で、非腫瘍とした部分にも癌にはなっていないけど正常細胞とも違う何かが散在している、つまりはもっと広範囲であると考えてもいいかもしれない──そんな内容のことが漢字だらけの難しい言葉を連ねて書かれてあった。術前の針生検では非浸潤癌とのことだったが、何ヶ所かで浸潤して硬癌になりかけていたという。
「……浸潤してた、ねぇ」Y先生はちょっと痛ましげな表情だ。
「えええー! 6cm!?」術前MRIでは範囲は4cm以上はあるだろうとのことだったけど、まさか6cmもとは思わなかった。ショックだ。
「だから、最初に広いよ、って言ってたじゃない」
こんなに広い範囲でところどころで浸潤し始めてたってことは……気づくのが遅かったらどうなってたのだろう……? 一気にゴリゴリと硬くなったのだろうか? どれだけ広範囲でも非浸潤であれば0期なのだが、浸潤していたことで私の病期は一気に2bへと4段階もあがってしまうこととなった。センチネルリンパ生検でリンパを2つ取ったわけだが、術中迅速判断でも陰性、じっくり調べた結果も陰性だったので、脇のリンパ転移はないと考えていい。

癌の核異型スコアは2、核分裂スコアは1と悪性度を示す数値は軒並み低く、トータルでグレードは1だった。Her2も陰性。ホルモン受容体は90%以上の強陽性。リンパ管や静脈の浸襲はなし。私の癌は乳房内だけで限局していて、それは完全に切除できたと考えてよいのだ。増殖スピードを示すKi67も1〜5%と低く、性質としては最上級におとなしい癌だった。術後の化学療法の必要もなく、このままホルモン治療のみ続けていけばいいそうだ。化学療法での脱毛も覚悟して医療ウィッグのパンフレットを集めてはいたのだけどね、こういう無駄なら大歓迎だ。確定診断時の「いい癌でよかったね」というY先生の言葉が意味するところを少しずつ実感できてきた。

問題なのは、半分残した乳首が断端陽性かもしれないということだった。とにかく腫瘍部分と健常部分の境目が曖昧なので、この場合も断端陽性とハッキリ断言はされていない。切除した側の乳首は術中迅速判断では陰性だったが、術後しっかり調べたら乳頭腫になっていてそこに癌細胞の浸潤が認められると書いてあった。でも切断面には癌はない。果たして切り取らなかった乳頭に癌の遺残はあるのかないのか、これは判断に迷うところ。こんなケースでは放射線を当てちゃうらしいけど、私はシリコンでの再建をするのでそれが出来ない。放射線を当てた皮膚は伸縮性がなくなり綺麗に伸びないからで、S先生は絶対に嫌がるはず。エキスパンダーには薄い金属板がついているのでどのみち挿入中は当てられないのだが。

となると、乳頭乳輪は切除するしかないのだろうか。癌は残っていないと賭けに出てもいいが、もし残っていて再建を終えてから皮膚再発するのなんか絶対に嫌だ。不自然になるのが嫌で自前の乳頭乳輪にこだわったけど、半分カットされちゃった上にずーっとガーゼ当てられてたからペタンコにつぶれちゃってるしねえ。この際、綺麗に作り直してもらうのもありかなあ……それにしても手術の回数増えるなあ……レポートを睨みつけながら私が悩んでいると
「そんなに大急ぎで決めなくてもいいんだよ」とY先生は言った。
「あのね、今日ね、これから手術があるんだけど。外来が終わらないんだよ〜〜」あっ、先生忙しいのにウジウジ迷っててごめんなさい。とっとと帰ります〜〜!
いずれにしても今はまだ腫れがひいていないのだし、来月か再来月あたりに頃合を見て、先生と私のスケジュールをすりあわせて切除手術することにした。この追加手術は外来で日帰りで出来るそうだ。仕方ないか……だって先生は7:3くらいで切ることになるんじゃないかって最初から言ってたんだもんね。
「ね、S先生に綺麗に造ってもらいなさいよ」Y先生はそう慰めてくれた。

“不幸中の幸い”はもうひとつある。
私はガン保険に加入しているのだが、浸潤していたせいで給付金はガツンと跳ね上がるはずだ。金喰い虫の放射線治療も化学療法も分子標的治療薬もしないのだし、ちょっとくらい再建費用が嵩んでしまっても十二分に充てられる。費用の心配をしなくてすむのはとても心強いことだ。
ちなみに私が懇意にしている保険屋さんとは20数年以上のおつきあいで、ガン保険の他にも年金型生命保険や事業保険などまとめてお世話になっている。乳癌疑いが濃厚になってきた時に彼に連絡を取ったわけだが、
「大丈夫ですよ! 僕のお客さんたちでガン保険使って治療している人はたくさんたくさんいますけど、癌で死んじゃってる人は一人もいません!」と、彼は力強く励ましてくれた。つまり保険に入って備える人というのは、その時点で癌に罹るかもしれないという心構えが出来ているので、検診や異常を感じた際の受診なども早めにするようになり、結果的に早期発見となるケースが多く、すぐさま死に至ることもないというわけだ。このことはY先生も著書の中でまるっきり同じことを述べている。「癌を受け容れる一番の準備は事前に保険に入っておくこと」であると。

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