このページの記述に関してのご質問、コメントなどがございましたら、直接メールでいただけますようお願いいたします。
|
|
|
前を向いて歩こう
確定診断がおりてちょうど一周年となる7月、Y先生のところに行ってそう話したら
「えー、まだ1年しか経ってないかあ、なんかさあ2〜3年前から来てる感じだよね」と言う。それは私がしょっちゅうしょっちゅう腫れた、膨れた、赤い、痛いとか言って、しょっちゅうしょっちゅう構ってもらってるからだよねぇ。7月の受診は前回から間隔がちょうど5週間あいたのだが、実はそれはこの一年間で最長なのであった。そのくらい通院しているわけだ、私は。放射線も化学療法もしていないのだから本来は3ヶ月おき程度でいいはずなのに。
そして傷跡だが、多少は良くなってはきたものの全体としてはまだまだ悲惨な状態だった。最初の乳癌手術ではいずれシリコンインプラントを入れることを考慮して、Y先生はかなり脂肪を残してくれてあった。毎日の軟膏塗り塗りにより、だいぶふっくらと戻ってきたのだけど、固く引きつれた瘢痕拘縮の部分はそのままだから落差がひどいのだ。餃子みたいにヒダが寄ってしまって、かなり色は薄くなったけどまだまだ赤黒くて、見るたびに悲しくはなるけれど、でももうお風呂場でしくしく泣いたりはしてない。最善の状態で再建手術にのぞむべく気持ちが切り替わってきた。
とりあえず私はダイエットと広背筋の筋トレに励み始めた。血行の悪い貧弱な筋肉は移植後に萎えるし、一緒に移した脂肪にも栄養がいかなくて壊死することもあるという。血糖値が高いと手術時の出血が増えるし、体脂肪が35%超えてると脂肪が溶けてしまって定着しないという。どころかせっかく再建した乳房が変形したり著しく縮小してしまったりするという。
それなら、筋トレ+体脂肪ダウン+血糖値ダウンに励もう!となったわけ。どうせ痛い思いして身体にダメージ加えるのなら最大限リスクは減らしておきたいし、少しでも出来映えに効果があるのなら頑張っておきたいもの。
自家組織での再建を決意して集中的にジム通いを始めた時には、ホルモン剤の副作用もあってなかなか思わしくなく若干くじけ気味ではあったが、1ヶ月半ほど過ぎたあたりから急速に効果が出てきて、体重が2kg、体脂肪も2%落ちた。猛暑も手伝って発汗量がハンパないせいもあるのだろう。でも成果が数字に出ると嬉しいわぁ。
面白いように運動効果が出たあと、体重と体脂肪ダウンは下げ止まり始めた。目立って減ってもいかないけど、うっかり食べ過ぎてもリバウンドも少ないので、これで定着してくれるかもしれない。見た目にもちょっぴりお腹と背中まわりがスッキリして気分がいい。
そんな中、相変わらずに乳腺のクリニックには月一、形成には1ヵ月半おきに通院している。手術跡もだいぶ色も薄く柔らかくなってきた。とはいえ、焼き餃子みたいだったのが水餃子みたいになっただけなので、初めて見た人はギョッとして目を逸らしちゃうレベルなのだけど。
9月には術後一年のフル検査が控えている。再建にまつわるトラブルで振り回されていたが、再発や転移のこと反対側の乳房に新たに原発するということもきちんとチェックしなくてはならないのだ。心のどこかで自分は再発しまうのではという怯えを抱えて生きていくこと──これは癌を患った者が大小の差はあれ等しく持つ恐怖なのだ。この1年は早かったような気もするし長かったような気もする。こうして一回一回乗り越えて月日を重ねていくしかないのだろうな。
やっぱり気持ちは振り子のように大きく揺れる。でも、横に揺れる振り子じゃなくて前後に揺れるブランコのようなものかな。後ろにぐぐーーっと引っぱられても顔はちゃんと前向いている。大丈夫、私は大丈夫。
乳房再建編へつづく
|
|
|